リーグ再開初戦、迎える相手はここまで首位の早稲田大。勝利すれば首位もありえたが、開始早々に先制点を奪われると、直後にも追加点を奪われる苦しい前半となる。しかし、後半怪我から復帰した風間(商4)の投入で流れが変わり、ピッチを広く使った慶大は、らしいパスサッカーが復活。風間の得点で1点差に詰め寄ると試合終盤にも河井(政4)がPKをきめて同点に追いついた。2点差を追いついてのドロー決着で貴重な勝ち点1を得た。
2011/9/9(金)13:50 KO@国立西が丘サッカー場
慶應義塾大学2-2早稲田大学
{得点者}3分島田(早大)、14分富山 (早大)、62分風間荘志(慶大)、82分河井陽介(慶大)リーグ戦再開の初戦でいきなり激突した早慶の両チーム。慶大の劇的勝利で幕を閉じた6月の早慶サッカー定期戦の記憶も新しく、両者の維持がぶつかり合う激戦が期待された。また、首位早大と勝ち点差1の3位につけている慶大は、勝てば首位も見える状況にあり、より高い士気で試合に臨んでいた。しかし、「最近早稲田に負けてないという自信が過信に」(河井)なってしまったのか、相手の気持ちのこもったプレーを前に序盤は主導権を完全に握られてしまう。
開始早々、慶大は自陣深くでパスを回され、左サイドから白井にクロスを上げられると島田にダイビングヘッドで決められてしまう。その後も早大の素早いプレスと鋭いパスに慶大は圧倒される。14分には右サイドを榎本にドリブルでえぐられ、折り返しを富山に決められてしまった。2点を追う展開となった慶大は26分、河井のパスを受けた大塚(総4)がシュートを放つがボールは惜しくもポストの右にそれていった。相手の素早いプレスによってボールをなかなか前線に運べず、結局チャンスらしいチャンスを大塚のシュート1本しか作れずに前半を終えた。
点を取りにいくしかなくなった後半、「ボールを自分たちで保持して主導権を握る」(須田監督)という意図のもと、慶大はFWの大塚をボランチの位置に下げ、ボランチに入っていた松下(総2)をCBの位置に置く。そしてCBの松岡(商3)に代えて故障明けのFW風間を投入すると、この起用が的中した。ボランチに入った大塚は高い展開力を発揮し右へ左へ次々とパスを散らしていく。この攻撃に気温の高いピッチコンディションも相まって前半から鋭いプレスをかけてきた早大選手の運動量はしだいに落ちていった。慶大はその隙を見逃さずボール支配率を高め試合のペースを握る。
得点が動いたのは62分、大塚の右サイドへの大きな展開からボールを持った森田(経3)が中央に切り込み左足で鋭いクロスをあげるとクロスに反応した途中出場の風間が下がりながらの難しいヘディングシュートをゴール右隅に突き刺し1点差とする。その後もMFの日髙(総4)、河井らが中心となって起点をつくりいくつものチャンスを生み出す。80分河井のスルーパスに反応した風間がキーパーと1対1になると風間はキーパーをかわしにかかる。風間の突破を止めようとしたGKは思わず風間の足に手をかけてしまい、一発レッドカードで退場。このプレーで得たPKを河井が落ち着いてゴール右隅に決めて同点とする。残り時間、一人少ない状況となった早大を慶大は激しく攻め立てるが、早大の粘り強いディフェンスにゴールまであと一歩及ばない。後半ロスタイムに日髙のフリーキックから風間がシュートを放つがこのシュートもポストに嫌われてしまう。結局試合は2-2の同点で終了。両チームが勝ち点1を分け合う結果となった。
数ポイントの勝ち点の間に何チームもひしめき合う今季のリーグ戦において、2点差を追いついての勝ち点1獲得は大きな意味を持つ。またけが人が多い慶大にとって「風間が復帰して結果を出したことはチームにいい影響」(笠松)を与え、明るい話題といえるだろう。しかし、次に迎える相手はここ30年以上勝てていない天敵・筑波大。苦しい戦いが予想されるが、この試合の後半で見せたような華麗なパスサッカーを見せられれば必然的に勝利も見えてくる。厳しい状況を一つひとつ乗り越えることで、その先のリーグ優勝も現実味を帯びてくるはずだ。
By Hideki Nishino
コメント
須田監督
(前半、相手が激しくプレッシャーをかけてきたが)それを予測して、逆にディフェンスラインの裏に長いボールを蹴って、相手のディフェンスラインを下げさせようと思っていた。そこで出来たスペースを使って我々のポゼッションサッカーが出来れば良かったのですが。予想以上に相手の出足が良かったし、1対1で激しくこられて自分たちは何も出来なかったなという印象です。今日は全体的に負けゲーム。選手たちは後半立て直して良く引き分けに持ち込んだと思います。(FWに風間選手を投入したことが的中しました)風間はできれば最初から使いたいのですが、今年はずっと怪我が続いていて。前期も2回怪我したし、夏にも怪我をしていたのでね。やっと戻ってきてくれたという感じですよね。(大塚選手をボランチに下げた理由は)ボールを自分たちで保持して主導権を握りたかった。(もう片方のボランチだった)藤田も怪我明けでボールが落ちつかなかったので、大塚と松下のポジションをそれぞれ下げて、キープ力の高い選手を後ろにおこうと考えました。自分たちでボールを動かせるようになってだいぶリズムがつかめたと思います。(今日は2失点だったが、DFに関しては)夏に練習したんですけどね。ただ今日に関してはコンディションの悪さというのが影響したと思いますね。相手も(10番のドリブルなど良かったが)身体がフィットしてなかったという印象です。(怪我の選手について)武藤は半月板。8月15日に手術をして、今季はとにかく無理ですね。手術は成功したので来年頑張ってもらいたい。(インカレも無理なのか)インカレの決勝まで行ければわからないけど、全治3ケ月なので。田中も怪我です。彼もまた怪我なんですよ。増田は出場停止です。でも彼も怪我してるんですよ。軽傷ですけどね。(次節の相手・筑波大に対して)相手は強いですよ。リーグ戦で30年以上勝てていない相手みたいですからね。まあでも逆に思い切ってやれば良いと思いますけどね。相手だって攻撃に関しては素晴らしいけど、それと比べると守備に関してはそんなに良くはないと思うので。自分たちのサッカーをやれば面白いし、チャンスはあると思いますよ。
笠松主将
(試合を振り返って)立ち上がりで2失点してしまって、前半はほとんど相手のペースになってしまい気持ちやいろんな部分で相手に上回れてしまいましたが、後半に立て直してなんとか2点取って引き分けに持ち込んだという点では価値のある勝ち点1だったと思います。(前半サイドから崩される場面が多かったが守備の反省点は)全体的にコンパクトになれなかったというか間延びしてしまった部分があったので、寄せきれずにサイドチェンジなどを自由にさせてしまってそこで1対1をつくられたり、そこでの1対1の守備が甘かったり、失点のシーンもそうですけど中での対応も良くなかったと思うのでそこは修正していかなければと思っています。(後半に入ってチームのバランスが良くなったように思えましたが)自分たちのサッカーをしようということでパスが回せるようポジショニングなどを確認しました。相手は運動量が落ちてきていたので後半は運動量で上回れたということがポゼッション率の上回れた要因かなと思います。(慶大ピンチの時笠松選手のプレーで多くのピンチをしのぐことが出来ましたがご自身の調子は)前半は自分的には全然ダメだったかなと思っていて、それは自身のプレーもそうですけど主将として立ち上がりは0で行こうと言っていた中で失点して、間延びしてしまった部分もあったのでそこは全然良くなかったですね。後半はなんとか立て直して0で抑えることもできましたし、後半立て直せたことは良かったかなと思います。(チームに怪我人が多い中で風間選手が復帰を果たしました。チームの雰囲気は)決して悪くはないんですけど、今日もテソンが怪我してしまったり、けが人が多い中で誰が出ても戦力が変わらないようにしようとは言っていますけど、4年生などが怪我してしまうとチームに大きな影響があるので、そういったなかで風間が復帰して今日2得点に絡んだということで風間の復帰はチームにいい影響を与えているんじゃないかと思います。(次節も強豪の筑波が相手ですが次の試合の意気込みは)30何年以上勝っていないと言われている中で、今日も神奈川大学に大差で勝っているので強敵であることは間違いないです。相手がどういうサッカーをするかということはもちろんですけど、自分たちのサッカーをしっかり見つめなおしてとにかく勝利を目指していければと思います。
日髙
(引き分けでしたがどのように捉えていますか)相手が首位のチームだったということもありますが、前半ひどい立ち上がりをしてしまったにもかかわらず、後半に2点差を追いつけたことは前向きに捉えるべきかなと思います。後期は長い戦いだと思うので勝ち点1を取れたことは良かったです。(試合の立ち上がりに2点奪われてしまったが、チームの雰囲気は)早稲田が前半から勢いよく来るということは分かっていたのですが、その上で自分たちは、自分たちのサッカーを殺しても最初の10~15分、ロングボールを多めにして入っていこうという話をしていました。ただ普段やっていないサッカーをやってしまうとあわない部分というのも出てきて、攻撃のところで上手くいかなかったことが守備にも影響してしまったように感じます。今後、ロングボールを使っていくとしても、なにか工夫をつける必要性を感じています。(後半、大塚選手がボランチに下がり、風間選手がFWに入ったことでリズムをつかみました)風間は裏にも抜けられるし、ポストプレーという形でもボールをキープできる選手で最近のパフォーマンスも高かった。そして(大塚)尚毅はもともとボランチをやっていた選手で、足元があって展開力もある。そういったそれぞれの特徴も分かってプレーが出来ていたから、ボールを落ちつけることが出来たのかなと思います。(やはり早稲田には負けないジンクスみたいなものがあるのですかね)なんかあるなと感じました。後半が始まってから、これは追いつけるんじゃないかと思えたので。今日に関しては後半に相手が落ちてくるだろうなというのも分かっていたし、自分たちのサッカーが出来ればチャンスがあると思っていました。(逆に次節の相手はなかなか勝てない筑波大ですね)そうですね。ただ日本一を狙っていく上で、何かを乗り越えないとそこには辿りつけないと思うので。そういう意味でずっと勝てていない筑波から勝ち点3を取ることは、乗り越えないといけないことだと思っています。そういう意識を皆が持ってチーム一丸となって勝ちにいきたいです。
河井
(今日の試合を振り返って)前半の試合の入りの所が、自分が経験した中では最も気持ちの入っていない早慶戦だったかなと思います。いつも慶應が気持ちで相手に上回られることはあまりないので、早稲田の気持ちが入っていたというのもあるとは思いますけど、それ以上にうちの出だしだったりがいまいちで、全部後手に回ってしまって、自分としてもこんな早慶戦でいいのかというような気持ちでした。反省するべきことは多いかなと思います。(春の早慶戦で勝ったことが気の緩みにつながったのか)最近早稲田に負けてないということの自信が過信になったのかなとも思いますけど、リーグ戦の初戦ですし、モチベーションを上げるのが難しくなかったのにもかかわらず、ああやって試合の入りの所で相手に圧倒されてしまうというのは、サッカー選手としてもう少し考えるべきことがあるんじゃないのかなと思います。(序盤の失点の原因は)精神的な面が大部分を占めていると思いますし、全然プレスに行けずに相手に自由にやらせ過ぎた部分もあると思うので、その中でも、2失点に抑えたという風に言えるかは分からないですけど、勝ち点1を取れたのは良かったと思います。(相手のプレスに苦しんだ印象だったが)試合前のミーティングでも相手が出だしから前から来るということを確認していて、相手が前から来たら無理せずに相手の裏を狙って行こうという話をしていたのにもかかわらず、それを実践できなかったというのは、選手に責任があると思いますし、やってる僕達が責任を一番感じるべき試合なのかなと思います。(ロングボールを蹴った後のセカンドボールを拾えない場面が目立っていたが)不利な体勢の時に蹴っている場面が多いし、前のタイミングと後ろのタイミングがあっていない時に蹴ってしまうと、セカンドボールを拾えないというのが続くと思うので、そこらへんの意識統一というか、後ろの選手は前の選手に要求するべきだし、そういうことを練習からやって行かないとまた同じことが起きてしまうと思うので、1週間しっかりと練習していきたいと思います。(前半の失点から修正したこと)修正というか、0-2になって点を取りに行くしかなくなったので、そういう意味では気持ちを切り替えるのは難しくない状況で、後半からはリスクとかを考えずにオフェンシブに行くことが出来たので、立ち上がりからそういう風に相手より先に点を取るんだという気持ちで行くことが大事かなと思います。(筑波大戦に向けて)相性とかは考えてもしょうがないので。相手は上位のチームで、勝って上に上がるチャンスですし、しっかりと準備して気持ちの入ったゲームをしたいと思います。
大塚
(今日の試合を振り返って)前後半でやっぱり全く違う内容になって、反省すべき点はやっぱり前半の入り方というか向こうが前まできてるところで、自分たちのサッカーが出来なかったんで、そこをどうするのかというのが反省点だなと強く思ったのと、後半に関してはうちの流れになって、割といいゲームになったなと思います。(首位の早稲田が相手で、また早慶戦ということでプレッシャーや気負いはあったか)6月にも早慶戦があってそこで結構劇的な勝利をおさめて、向こうがかなり勝ちにきていて、ちょっと自分たちが受けてたつみたいな雰囲気があったので、緊張やプレッシャーっていうのは特になかったんですけど、ちょっとその雰囲気とか勢いにのまれたかなというのはありました。(後半はボランチでプレーしていましたが、監督からはどのような指示をうけていましたか)ボールのためを作って、中盤でボール回し、リズムを作って欲しいといわれて、まあ元々やっていたので難しくはなかったです。(現チームにけが人が多いことについては)逆にけが人が多い状況で耐えるというか、いい成績を収められたら、帰ってきたらまたそれがもっといい相乗効果になるとおもうので、今はとりあえずいない段階で、いる駒でどうやって戦っていくかというのを考えていきたいと思います。(その状況で2点差を追いついたのは自信になるのでは)そうですね、割と今年のチームは逆転とかが多くて、石川にも遠征にいったんですけど、結構2点とられて3点取り返して逆転とか1点とられて2点取り逆転とか割とそういうのがあったので、0-2とかになってもそんなに慌てないというのはチームとしてみんな持ってる意識かなと思います。(次節は鬼門の筑波戦ですが、意気込みをお願いします)本当に立ち上がりからガンガンいって、挑戦者という立場で勝ち点3取りたいと思います。
風間
(今日の試合を振り返って)前期はケガしてて、また先週くらいに復帰して、ずっとケガばっかりしてたので本当に今日はやんなきゃいけないなと。(自分は)4年で、武藤もケガしてたのでやんなきゃいけないなと思ってました。しかも前半0-2という形で、自分がやんなきゃダメだと分かっていたので、チャレンジしていくという気持ちでやってました。(1点目を決め、さらに同点弾を呼び込むPKを得るという活躍について)そうですね。もう本当に攻めるしかなかったので、自分はFWなので点に絡めればいいかなと思ってやってて、まあとにかく動かないと始まらないと思ってたんで、その動こうと思ってやった結果がゴールにつながったのでよかったと思います。(今日は日差しが強くて暑い中での試合でしたが、むずかしさはあったか)まあ、45分って分かってたんで、最初から途中交代で出るというのは言われてたから、まあ体力的に戻ってるかは不安だったんですけど0-2で負けてたのでそんな事言ってる場合もなかった。ちょうど気持ちよくできました。(後期リーグ戦が開幕したが、個人としての目標は)そうですね。前期はケガばっかりしてたので、全然、試合に出てないので後期は全試合に出場するということと、その試合でできるだけ点を取るというのが目標です。(途中出場の際、監督からどのような指示でピッチに送りこまれたのか)そんな、なんというか、もうやるしかないという感じだったので、とりあえず俺が流れ変えるしかないっていう感じで、自分的にも、たぶん監督もやってほしいというのが分かってたので、そんな指示とかはなかったです。(次節にむけて一言)まあ次も筑波なので、強い相手なので、三十何年間勝ってなくて、あまりいいイメージはないので本当に苦しい試合になると思うんですけど、先発で出れたら最初からとばして頑張っていきたいと思います。
藤田
(今日の試合を振り返って)本当に負けなくて良かったです。前半入りが悪かったんでどうかなと思ったんですが、後半はチーム全体で切り替えてテンポ良く出来ました。(夏合宿で鍛えていたポイントは)基本的に前期と変わらないんですが、その精度を高めるところで失わないでボールを回すところと守備面の課題の克服に取り組んでいました。(早大相手に対策していた点は)早稲田は最近うちに勝っていないのでそういった意味でもガツガツ来るだろうと予想していた。その中で序盤に失点してしまってあまり良くない(試合)の入りだったかなと思います。(前半立て続けに2点入れられてからはどうでしたか)まあ少しは良くなったと思うんですが、前半は早稲田の勢いにやられた部分が大きかったですね。(そうなった要因は)やっぱり勢いが違ったかなと。この試合に賭けた気持ちとか色々上回られていた気がします。(ハーフタイムにどう立て直したか)監督は厳しく言っていてもっとちゃんとやらなきちゃダメだろうと。そこは切り替えてやりました。(後半はうまく立て直したと思いますが)うちの場合は前半相手にやらせて、相手の運動量が落ちてくる後半に自分達のペースで試合を進めようということがあるので。(試合展開は狙い通りだったのか)そうですね。でも序盤はイージーというかもったいない失点でした。(個人の出来は)まだまだダメな部分が多くて、次の試合に向けてしっかり準備したいと思います。(具体的には)まず途中で代えられてしまったので、そこでまだまだダメだなあと思いました。(今日の試合の収穫は)チームとしては追い付けるような攻撃が出来たところ。個人はあんまりないですね、もっと精度を上げていかないと。(次戦の筑波大戦に向けて)次の筑波は何十年と勝っていないので上位のチーム同士の対決なのでしっかり勝ち点3奪えるように頑張りたいです。
慶大出場選手
GK 中川翔太
DF 黄大城86分→DF 赤木努
DF 松岡淳45分→FW 風間荘志
DF 笠松亮太
DF 保田隆介
MF松下純土
MF藤田息吹77分→MF 山浦公裕
MF日髙慶太
MF森田達見
MF河井陽介
FW 大塚尚毅
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