勝てば全国大会にM1となる大一番を迎えた慶大UNICORNS。トリプルオプションを駆使する最高学府・東京大学を相手に終始苦戦する展開が続く。前半を7点ビハインドで折り返すも、後半は黒澤世吾(商4・慶應)と久保宙(経3・慶應)のタッチダウン、さらに藤崎志恩(商4・慶應)の2点トライフォーポイントで同点に追いつく。両者譲らず14-14の同点で第4クオーターを終了し、試合はタイブレークの延長戦にもつれ込む。ここでも拮抗した試合が続くも、最後は東大にタッチダウンを奪われ万事休す。東大相手に痛恨の敗戦を喫し、慶大は今季3敗目。再度自力PS進出が消滅した。3位までが出場できる全国大会への出場権は、最終節・次戦の慶大の勝利と、法政大-立教大の結果に委ねられることとなった。
※おしらせ※
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10月27日(日)@アミノバイタルフィールド TOP8第6戦
慶應義塾大学 UNICORNS | 東京大学WARRIORS | |
第1Q | 0 | 0 |
第2Q | 0 | 7 |
第3Q | 6 | 7 |
第4Q | 8 | 0 |
計 | 14 | 14 |
延長タイブレーク1回 | 7 | 7 |
延長タイブレーク2回 | 3 | 6X |
総合合計 | 24 | 27 |
ここまでの慶大は3勝2敗。順位も決定し始め、1位・法政大学、2位・早稲田大学は確定した。3位の枠を、慶大・立大・東大で争う形となる。この日の試合開始時点で慶大は4位に位置するが、残りを2勝すれば全国大会へ出場できる、いわば「PS(ポストシーズン)マジック2」の状態。一方の東大としては全国行きの切符を掴むための絶対条件が「慶大に14点以上の差で勝利」。例年の慶東戦とは違った緊張感が両者とも滾っていた。この日の気合の入りようは半端なものではなく、慶大は應援指導部を総動員し、観客席には鎌田泰成(R6政卒)前主将をはじめ、OBも大集結。慶大・東大ともに普段より遥かに多い観客が試合を見守る、まさに大注目の一戦となった。
第1クォーター(以下第1Q、他Qも同様)、慶大は攻撃からリズムを作るべく、東大ディフェンスを攻め立てる。戦いを経るごとに本格的に稼働し始めたランプレーと、慶大自慢のパスユニットがうまく噛み合い、敵陣25ヤード地点まで侵攻。ここで慶大はキックを選択。慶大エースキッカー・佐々木雄大(経4・慶應)にボールを託すが、このゴールキックはポストを掠め、先制とはならなかった。ここから慶大は長い長い防衛体制を取ることになる。
東大オフェンスの要は「トリプルオプション」、日本の最高学府に相応しい上級頭脳プレーだ。慶大は桜美林戦以降の約2週間、トリプルオプション対策に特に力を入れてきた。その実力を発揮できるかが焦点だった。東大はほとんどパスを用いることなく、時間をふんだんに使ってランプレーを続け、慶大は必死にそれを押し込める、という我慢の時間が続く。それでも自陣に深入りされることなく最初の攻撃を抑え切り、慶大ボールとした。しかし両者ともランプレー中心の攻撃を行ったことで時間を使い切り、ここで第1Qは早くも終了となった。
試合が動いたのは第2Q。自陣得点圏内からの防衛を余儀なくされた慶大は、波に一度乗せてしまった東大を止めきれない。エンドゾーンぎりぎりをランで押し込まれ先制を許した。続くキックオフ、悪い流れを断ち切りたい慶大は自陣奥深いところから順調に陣地を回復。松本から藤崎へのロングパスなども確実に決め、第1Qの時よりもさらに深く敵陣16ヤードまで突入。ここはタッチダウンが欲しいところだったが惜しくもここで止められ、今度こそと佐々木に再びボールを託す。しかしここのゴールキックも枠を捉えられず、反撃には及ばなかった。普段の佐々木の姿からすればにわかには信じがたい光景だったが、佐々木は桜美林戦以降コンディション不良に苦しみ、この日の試合も痛みを押しての出場。痛いミスとはいえ止むを得ないものでもあった。このまま前半は残りの時間も尽き、7-0の劣勢で終える。
勝負に出たい第3Q、慶大は見せ場を作る。東大の2プレー目、いきなり丹羽航大(総4・慶應)がインターセプトを決め、攻撃権の奪取に成功する。明治戦でもインターセプトを決めるなど勢いに乗る丹羽は、この日も輝く姿を調布のファンに見せつけた。ここからの攻撃シリーズは不発になるものの、次の攻撃から慶大は一気に勢いに乗る。お得意のパスプレーでファーストダウンを獲得すると、QB・水嶋魁(商4・海陽学園)から黒澤へのフィールド中央を切り裂くロングパスが決まる。黒澤は東大ディフェンス3人を振り切り、そのままエンドゾーンへ一直線。タッチダウンを決め、6-7と肉薄。キックはゴールポストに当たって跳ね返って失敗の判定となり、点差は1点のままとなった。次の守備を手堅く抑えたかったが、東大オフェンスが本領を発揮してくる。トリプルオプションのお手本のようなプレーをフィールド左右で自在に展開され、慶大ディフェンスは対応に苦慮。ビッグゲインを何度も決められ、最後は中央へのランでタッチダウン。6-14と、再び点差をつけられてしまう。
もう後がない第4Q、慶大は次世代エースQB・山岡葵竜(政3・佼成学園)を投入。ボールキャリーに長けた山岡は、その強靭なボディーも武器に東大ディフェンス陣に切り込み、陣地を奪回していく。エンドゾーンまで6ヤードと迫ったところだったが、ここの攻撃をサードダウンまで決めきれない。最後の攻撃で慶大はギャンブルともいえるタッチダウンを狙う。ここで松本から久保への黄金コンビによるパスを決め、12-14の2点差とする。試合残り時間が6分を切り、かつ今日はキックによる得点を期待できないため、慶大はトライフォーポイントでまたもギャンブルプレーとなる2点獲得を目指す。落とせば試合の勝利は絶望的となる中でも、松本は冷静だった。エンドゾーン奥ギリギリを駆ける藤崎に完璧なパスを決めてタッチダウン成功。土壇場での2連続スーパープレーで同点に追いついた。
次の東大の攻撃を1シリーズでピシャリと抑え、逆転に向けて動き出した慶大。水嶋・松本・山岡の異タイプQBを使い分けて東大を翻弄し、再び東大6ヤード地点までボールをキャリー。しかも残り時間は20秒ほどとあって、キックでもタッチダウンでも決めれば勝利はほぼ確実という非常に有利な状況を作る。最後は山岡にボールを託し中央突破を狙ったが、ここで山岡がまさかのファンブル。このボールを東大に抑えられてしまい、得点を得ることはできず。このまま第4Qが終了した。試合の決着は延長戦にもつれ込むこととなった。
延長戦においてはタイブレーク方式。慶大はここまでタイブレーク方式での対戦経験はほとんどないのに対し、東大は明大戦でタイブレークの末に勝利している。タイブレークの経験値で言えば、東大にはやや有利ともいえた。
1回は東大先攻・慶大後攻。1回表、東大はしつこくトリプルオプションで猛攻をかける。慶大はここでも勢いを止め切ることができず、最後まで苦しめられてタッチダウンを許す。キックももちろん決まって東大は7点を先制。1回ウラの慶大は最初のファーストダウンから苦戦を強いられるも、松本がフィールド左端に放ったピンポイントのロングパスを久保が完璧な捕球。続くトライフォーポイントも佐々木がなんとか決め切り、7点を獲得し同点に。試合は2回に移行する。
2回表、今度は慶大が先攻。しかし勢いが衰えてきた慶大は5ヤードしか進むことができず、やむなくキックを選択。佐々木が37ヤードの難しいキックを決め、3点を獲得。最後で彼の持つ本領を発揮した。
2回ウラ、タッチダウンを決められればその場で負けが決まる背水の陣。ここをキックによる得点だけで抑えたかった慶大だったが、東大の死力のランプレーの前に屈した。最後は慶大ディフェンス陣の隙間をねじりこまれてエンドゾーンへの突入を許し、これで試合終了。慶大にとっては痛すぎる敗戦となった。
この敗戦で3勝3敗となり、再び自力PS進出が消滅した慶大UNICORNS。一方でこの試合を3点差に抑えたため、東大はPS進出の可能性が絶たれた。この結果、今季の関東3位の可能性は慶大と立大のみに絞られた。立大は次戦・法大戦に勝利すれば3位が確定。慶大は、次戦の中大戦に勝利した上で、法大が立大に勝利することが必要になる。次戦の相手・中大はここまで1勝もできていない非常に苦しい状況。しかし底力は確実にあるチームであり、昨年の慶大は7-3と僅差のゲームであった。しかもこれも決して楽勝というわけではなく、終始苦しめられながらも先制点を死守して耐え切った勝利。油断して勝てる相手ではないのは言うまでもないだろう。
11/9(土)に中大戦、11/10(日)に法立戦が行われる日程となっている。慶應としてはこの日は野球の早慶戦で盛り上がる週末だが、その裏で最後まで足掻いて全国を目指す慶大UNICORNSにも、ぜひ注目して欲しい。
(記事:東 九龍)