全国大学ラグビー選手権準々決勝が21日・秩父宮ラグビー場で行われ、慶大は大会4連覇を狙う帝京大と対戦した。慶大は積極的なタックルやモールからのトライで持ち味を発揮したが、帝京大のフィジカルを活かした攻撃に終始苦しめられ、計11トライを許し、24-73で敗北。主将・中山を中心に死力を尽くした第125代慶大蹴球部の戦いはここで幕を閉じた。
2024年12月21日(土)ラグビー大学選手権 準々決勝 対 帝京大学
@秩父宮ラグビー場
ラグビー大学選手権 準々決勝 | ||||
慶應義塾大学 | 2024/12/21(土)12:05 K.O. @秩父宮ラグビー場 | 帝京大学 | ||
前半 | 後半 | 前半 | 後半 | |
2 | 2 | トライ(T) | 6 | 5 |
2 | 0 | コンバージョン(G) | 4 | 5 |
0 | 0 | ペナルティゴール(PG) | 0 | 0 |
0 | 0 | ドロップゴール(DG) | 0 | 0 |
14 | 10 | 計 | 38 | 35 |
24 | 合計 | 73 | ||
前半21分 今野 椋平(T) 前半22分 和田 健太郎(G) 前半34分 石垣 慎之介(T) 前半35分 和田 健太郎(G) 前半29分 冨永 万作(T) 前半38分 中山 大暉(T) | 得点者 | 前半5分 グアイニ優人(T) 前半6分 大町 佳生(G) 前半12分 日隈 太陽(T) 前半28分 森元 一気(T) 前半29分 大町 佳生(G) 前半31分 當眞 蓮(T) 前半32分 大町 佳生(G) 後半6分 日隈 太陽(T) 後半7分 大町 佳生(G) 後半14分 日隈 太陽(T) 後半15分 大町 佳生(G) 後半22分 本橋 拓馬(T) 後半23分 大町 佳生(G) 後半32分 神田 陸斗(T) 後半33分 大町 佳生(G) 後半41分 知念 優来(T) 後半42分 本橋 尭也(G) |
慶應義塾大学 | ||||
# | 氏名 | 身長(cm)/体重(kg) | 学年学部 | 出身校 |
1 | 成田 薫 | 183/104 | 経4 | 慶應 |
2 | 中山 大暉 | 176/102 | 環4 | 桐蔭学園 |
3 | 吉村 隆志 | 177/107 | 環4 | 本郷 |
4 | 中矢 健太 | 183/105 | 総4 | 大阪桐蔭 |
5 | 浅井 勇暉 | 188/106 | 総4 | 仙台 |
6 | 中野 誠章 | 178/101 | 文1 | 桐蔭学園 |
7 | 田沼 英哲 | 176/96 | 総4 | 國學院久我山 |
8 | 冨永 万作 | 188/101 | 商4 | 仙台第三 |
9 | 小城 大和 | 168/72 | 商4 | 北嶺 |
10 | 和田 健太郎 | 168/70 | 理1 | 清真学園 |
11 | 石垣 慎之介 | 175/80 | 政3 | 慶應志木 |
12 | 今野 椋平 | 183/87 | 環3 | 桐蔭学園 |
13 | 村田 絋輔 | 174/85 | 経4 | 慶應 |
14 | 廣瀬 暸 | 178/78 | 環4 | 慶應 |
15 | 伊吹 央 | 176/81 | 経3 | 慶應 |
16 | 渥美 和政 | 173/99 | 経3 | 慶應 |
17 | 井吹 勇吾 | 175/98 | 環1 | 桐蔭学園 |
18 | 中谷 太星 | 180/114 | 環1 | 東福岡 |
19 | 矢﨑 隼太 | 184/94 | 政3 | 県立千葉 |
20 | 米津 幸治 | 175/88 | 商3 | 慶應 |
21 | 橋本 弾介 | 170/77 | 法3 | 慶應 |
22 | 田村 優太郎 | 175/77 | 総1 | 茗溪学園 |
23 | 山本 大悟 | 174/86 | 環3 | 常翔学園 |
帝京大学 | ||||
# | 氏名 | 身長(cm)/体重(kg) | 学年学部 | 出身校 |
1 | 平井 半次郎 | 178/104 | 医療4 | 御所実業 |
2 | 當眞 蓮 | 174/100 | 医療4 | 流通経済大柏 |
3 | 森山 飛翔 | 180/109 | 医療2 | 京都成章 |
4 | ダウナカマカマ カイサ | 182/120 | 医療2 | 大分東明 |
5 | 本橋 拓馬 | 194/116 | 医療4 | 京都成章 |
6 | 青木 恵斗 | 187/106 | 医療4 | 桐蔭学園 |
7 | 森元 一気 | 169/89 | 教4 | 尾道 |
8 | グアイニ 優人 | 177/89 | 医療4 | 石見智翠館 |
9 | 李 錦寿 | 174/80 | 医療4 | 大阪朝鮮 |
10 | 本橋 尭也 | 182/86 | 医療2 | 京都成章 |
11 | 日隈 太陽 | 186/86 | 医療3 | 大分東明 |
12 | 大町 佳生 | 172/82 | 教3 | 長崎北陽台 |
13 | 上田 倭士 | 180/84 | 医療2 | 大阪桐蔭 |
14 | 生田 弦己 | 169/83 | 医療3 | 御所実業 |
15 | 小村 真也 | 180/92 | 医療4 | Hamilton Boys High School |
16 | 知念 優来 | 171/100 | 医療4 | 常翔学園 |
17 | 清水 栞太 | 177/115 | 医療2 | 東京 |
18 | 小林 龍司 | 178/115 | 医療4 | 御所実業 |
19 | 坪根 章晃 | 184/95 | 医療1 | 東福岡 |
20 | 倉橋 歓太 | 182/107 | 医療4 | 東海大仰星 |
21 | 赤迫 幸知 | 161/67 | 医療3 | 尾道 |
22 | 松澤 駿平 | 177/84 | 医療4 | 京都成章 |
23 | 神田 陸斗 | 173/80 | 医療3 | 常翔学園 |
前回の東洋大戦では攻守の躍動で快勝を収めた慶大。そんな彼らが準々決勝にて相対したのは、大学選手権4連覇を狙う帝京大。10月の対抗戦で大差をつけられた難敵だ。PR成田薫(経4・慶應)のスタメン復帰で戦力が整う中、フィジカルで優位な帝京大に慶大が対抗するには、集中力を維持し“魂のタックル”と“攻めの慶應”という自分たちの持ち味を最大限発揮することが絶対条件となる。
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相手の猛攻を食い止める中矢(左)と成田(右)
失点を最小限にとどめることが鍵となる前半。しかし慶大は試合開始直後から、帝京大の大きな展開と緻密なパスワークに翻弄される。4分、右サイドでオーバーラップを作られ先制トライを許すと、続く11分には、左サイドへの展開から突破を許し、帝京大SO本橋尭也(医療2・京都成章)が出したゴール前の高めのキックパスをWTB石垣慎之介 (政3・慶應志木)が競り負け追加点を奪われた(0-12)。
劣勢の中、14分に今試合初となるマイボールで組まれたスクラムは慶大が勝利。慶大は22メートルライン内でラインアウトのチャンスを得るも、得意のモールに持ち込めず得点には至らない。それでも19分、CTB今野椋平(環3・桐蔭学園)が自陣深くから50m近いキックで陣を回復させると、ラインアウトからモールでゴール前に迫り、最後は今野自身がFWをかわしてチーム初トライを挙げる。和田健太郎(理1・清真学園)のコンバージョンも成功し、スコアは7-12となった。
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ロングキックが冴えた今野
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コンバージョンキックをする和田
しかし27分、慶大はスクラム後のボールを奪われ、左サイドの突破から再びトライを献上。直後の29分には、積極的なハイプレスが帝京大の展開力に打ち破られ、一気にオーバーラップを作られる。ロングキックで自陣深くまで押し込まれると、スクラムから再びトライを許し、7-24と差を広げられた。
それでも33分、帝京大にアドバンテージが出ている中、CTB村田紘輔(経4・慶應)が相手ディフェンスを突破すると、ゴール前で村田からオフロードパスを受けた石垣が飛び込みトライ。和田のコンバージョンで14-24と再び追い上げを見せた。しかし35分、慶大の反則をきっかけに帝京大がゴール前のラインアウトからトライを奪うと、終了間際の38分にも追加点を許し、14-38と突き放される形で前半を終えた。
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ディフェンスラインを何枚も突破した村田(中央)
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オフロードパスを受け走る石垣
序盤から帝京大の展開力に苦戦しながらも反撃を見せた慶大だったが、守備の隙を突かれ大量リードを許す形となった。
後半に入っても帝京大の圧倒的な攻撃力は止まらず、6分にはハイパントの競り合いを制し、慶大のディフェンスラインが整う前に陣形を崩してトライを奪った(14-45)。その後も13分にはスクラムからのリスタートでボールを奪うと、大きく右サイドに展開しトライ(14-52)。慶大は石垣のロングキックや和田の巧みなスペース作りで敵陣深くに攻め込む場面を作るも、得点に結びつけられない。
24分から28分、慶大は途中出場の山本大悟(環3・常翔学園)などの4分間16フェーズにも及ぶ連続攻撃で敵陣ゴールラインまで10mに迫り、フィジカルで負ける帝京大に対して再度スクラムで押し込むと、最後はNO8冨永万作(商4・仙台第三)がねじ込みトライを奪取。さらに38分にはラインアウトからのモールで約15m押し進め、最後はキャプテン中山大暉(環4・桐蔭学園)がトライを決めた。しかし帝京大は後半もセットプレーを巧みに活用し、5つのトライを追加。守備では1対1の局面で優勢を保ち、最終スコア24-73で慶大を圧倒した。
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途中出場ながら存在感を見せた山本
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ランでもスクラムでも強かった冨永
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たくましいアタックとランでチームを勢いづけてくれた主将・中山
慶大は“魂のタックル”を繰り出すも、終始帝京大のミスのない統率の取れた攻撃を抑えることが出来ず苦杯を喫した。
最終的には49点もの差をつけられ敗れたこの試合。フィジカルでは帝京大有利と評されていたが、慶大フィフティーンのタックルは決して力負けしていなかった。攻撃ではセットプレーからモールで押し切るトライ、守備では前に出るディフェンスなど、この1年間力を入れて取り組んできた練習の成果は帝京大相手にも十分に発揮された。
一番の敗因は技術面やフィジカルとは別にあるのか。試合後、慶大の青貫監督はこう振り返った。「前半14-24と10点差となった前半残り5分の場面。帝京大学の選手の皆さんからは“ここで流れは渡さない、勝負どころだ”という意地が一人一人のプレーに表れていました。一方でうち(慶大)は反則を犯し、相手に勢いを与えてしまいました。」前半終盤の5分、帝京大はその間に2トライ・14点を上げ、慶大を大きく突き放した。この5分間で両校の間に生まれた僅かな集中力の差が明暗を分けた。
今年創部125周年を迎えた慶大蹴球部。キャプテン中山を中心に「No Magic」をチームスローガンに掲げ、“攻める慶應”を体現してきた。中山は試合後にこう振り返った。「何度も諦めそうになりました。それでも、とにかく自分のラグビーをしようと。23人で最後まで戦い切ったこの80分は必ず今後に繋がると思います。」
この試合のノーサイドの笛は、中山たち4年生の学生競技の終わりを意味する。彼らは最後までその闘志を燃やし続けた。後半38分のセットプレーでモールを選択したこと。これは自分達のこれまでの努力を信じた上での決断だった。今年の関東大学対抗戦、鋼のフィジカルが武器である帝京大を相手にモールトライを決めたのはなんと明大と慶大のみ。攻める慶應を体現すべく努力してきた慶大は決してフィジカルで劣ってなどいなかった。後半ロスタイムにダメ押しのトライを許した後も、コンバージョンでの2点を防ぐため、その後の攻撃のため、その可能性に懸けてフィフティーンは全力ダッシュでキッカーへプレッシャーをかけに行った。これが“タイガージャージを身にまとう者”の執念である。後輩たちはその姿を目に焼き付けた。慶大蹴球部の伝統はこうして次の世代へと受け継がれていく。
(写真:島森沙奈美、宇田川志乃 文:竹腰環)
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トライが決まり笑顔を見せる選手たち
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途中出場の1年生PR・井吹勇吾
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副将小城に代わり途中出場のSH・橋本弾介
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守るシーンが多いこの試合を支えてくれたFB・伊吹央
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満面の笑みを浮かべる米津幸治
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力強いアタックで魅せてくれたLO・浅井勇暉
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最後まで諦めず感動を与えてくれた