皆さんは「神宮塾生動員プロジェクト」の存在をご存知だろうか。「神宮塾生動員プロジェクト」とは、現状の塾生たちの野球離れに歯止めをかけるべく、野球部と應援指導部が一体となって、塾生や塾生になることを夢見る子供たちが神宮球場に足を運んでくれるような対策を考案し、実行するというプロジェクトである。コンセプトは、『共に創る100年』。そのテーマは、①交流②熱い青春③学生スポーツの象徴という3点である。今年は東京六大学野球が100周年を迎えることから、どの大学も特に優勝に向けて気合が入っていることだろう。そのような記念イヤーにさらに多くの観客を神宮球場に動員させることで、六大学野球がより一層活性化するために様々な角度から働きかけている、神宮塾生動員プロジェクトの代表たちにお話を伺った。
Q.お名前と、このプロジェクトにおける役割は?
A.坪川:体育会野球部の4年の坪川倫平です。このプロジェクト全体の総括をするリーダーを務めています。
枝廣:應援指導部の代表を務めています、4年の枝廣二葉です。このプロジェクトでは應援指導部におけるリーダーを務めています。
Q.なぜこのようなプロジェクトができたのか?
A.坪川:もともと早慶戦はプロ野球と同じくらい人気があるイベントでしたが、時代とともにその活気も失われつつあることがあることが大きいと思います。自分は応援の力はとても大きいと思うし、それが学生時代の思い出作りにもなるだろうから、そのような機会を作っていきたいと考えています。
枝廣:加えて、コロナ禍でその傾向が加速した気がします。やっぱり六大学野球は、江川卓選手や高橋由伸選手の時代みたいに塾生もたくさん来てお客さんが満席になって野球部も應援指導部も観客も楽しむことが醍醐味だったので、そのようなフィーバーをもう一度取り戻したいと考えています。

統括を務める坪川
Q.その中で野球部と應援指導部が一体となることでどのような利点があるのか?
A.坪川:両者が一体となってこのプロジェクトを成功させることで、野球の神宮大会だけではなく、ひいては今後のサッカーやラグビーなどの他の体育会の試合にも波及していくようなロールモデルとしての影響力を持つ可能性があるという意味で、大きな利点があると思います。
枝廣:口先では「野球部と應援指導部が一つになる」と簡単に言っていたけれど、実際お互い野球部は試合をして、應援指導部は応援して、と役割が異なるから本当に一体となれていなかった気がします。でもこのプロジェクトをきっかけ、に互いが共通の目標に向かうことで本当の意味で一体になれる、という大きな利点があると思います。
Q.プロジェクトの内容としてはこれまでに具体的にどのようなことをしてきたのか?
A.坪川:去年の内容としては『文武の学び舎』というものが一番の走りだったと思います。これは、一般の小・中・高生に応援席に来てもらって、その横に慶大の野球部員がついて野球の解説をしたり、受験を控えている人であれば、『文武の学び舎』という名の通り、勉強の相談などにのったりすることで野球部や應援指導部を知ってもらって、神宮大会をより活性化させようとする取り組みです。
枝廣:今言ってくれた『文武の学び舎』はこの企画の中の一つで、去年は特にこれに力を入れていたのですが、今年からは新たに『チケット販売』と『応援メッセージ企画』を加えた全部で3つの体制で企画をしています。

話し合いの様子
Q.今季の東京六大学野球で初めて観戦する方に向けて伝えたいことは何か?
A.坪川:このプロジェクトを通してたくさんの人の思い出に残ればいいなと思います。塾生だけではなく、小・中・高生にも球場に足を運んでもらうことで「野球部に入りたい!」とか「應援指導部の一員になりたい!」というような憧れを持つきっかけになればいいなと思います。
枝廣:六大学活性化プロジェクトとして動いているので、何をきっかけにして球場に来てくれたのかというのは、次の企画につなげるという意味でもとても気になっています。そのために今年、応援席にアンケートを設ける予定なので、ぜひ神宮球場に来てくださった方には答えてほしいです!それを参考にして何が良くて、何を改善すべきなのかということを分析して、次に反映させていきたいと思います。

ホワイトボードのメモ
【各プロジェクト紹介】
現在、塾生動員プロジェクトとして、計3つのプロジェクトが行われている。それぞれのプロジェクトの概要を説明し、担当者へのインタビューを紹介する。
①文武の学び舎
小学校高学年~高校生を対象に、選手とリーグ戦を観戦することで、野球部の魅力を伝えるイベントである。
https://baseball.sfc.keio.ac.jp/20889
Q.小中高生に企画の存在をどのように広めていますか。
A.野球部の公式のsnsで告知をして、興味持ってくれた子供たちが参加してくれる形です。去年はそれに加えて、チラシ発行して、それを野球部のobがいる高校に対して送りました。
Q.来てくれた小中高生とどのような話をしたい、そしてどのような時間にしたいですか。
A.また来たいと思ってもらえるようにしたいです。心がけていることとしては、小中高生なので、話す内容はそれぞれ結構変えています。高校生からは、勉強の悩みとかも聞いています。
Q.最後に、小中高生の方にメッセージをお願いします。
A.今、甲子園が注目されていると思うんですけど、大学野球も、大学ならではの面白さがあります。このイベントを通してハマってもらえるきっかけになってもらえればいいなと思っているので、ぜひ来てください。
②チケット販売
これまで慶早戦前のみ、キャンパス内でチケット販売を行っていた。それを他の試合(カード)にも広げて、野球部の選手もチケットを手売りすることで、実際の観客動員につなげようという試みである。
Q. 手売りだからこそ伝えられることはありますか?
A. 野球部は、学生から見ると神宮の大きな舞台で戦っている存在で、どこか遠いイメージを持たれがちです。キャンパスで直接会ってチケットを渡すことで、「自分たちと同じ学生なんだ」と感じてもらえる。距離がグッと近づくと思います。
Q. このプロジェクトを通じて伝えたいことは?
A.リーグ戦のすべての試合に熱い展開があります。勝ち負けや順位争いなど、どのカードにも見どころが詰まっています。ぜひ、さまざまな試合に足を運んで、大学野球の魅力を感じてほしいです。
③応援メッセージ企画
日吉キャンパスの食堂に専用のスペースを設けて、塾生の皆さんから野球部への応援メッセージを募集する企画。
Q. メッセージはどのように集めているのですか?
A. ペンで自由に書ける小さな紙を用意して、そこにメッセージを書いていただいています。集まったメッセージは、一つの大きな“野球部のユニフォームのデザイン”として形になる仕組みになっています。
Q. 完成したものはどのように活用される予定ですか?
A. 試合中のベンチに飾ったり、応援席に設置したりと、選手たちが直接目にすることができる形で届ける予定です。選手たちが「応援されている」と実感できる空間を作れたらいいなと思っています。
Q. このプロジェクトを通じて伝えたいことはありますか?
A. 神宮球場で頑張っている野球部員たちの存在を、もっと多くの学生に知ってもらえたら嬉しいです。こうした取り組みを通じて、野球部がより身近な存在になるきっかけになればと思っています。
東京六大学野球100周年を迎えた今季。これまで以上に多くの観客を神宮球場に動員するために、野球部と應援指導部は両者一体となって、戦略と分析を重ねながら脈々と準備をしてきた。そんな彼らの努力の成果は実際に肉眼で見てこそ分かるはずだ。ぜひ神宮球場に足を運んで応援席の雰囲気を存分に堪能してほしい。
(記事・取材: 岩切太志、小林由奈)