ぐずついた曇り空の下、関東学生女子ラクロスリーグFINALへの切符をかけた日体大戦が行われた。試合は序盤から慶大がボールをキープし続け相手の反撃を振り切り9-5と勝利した。ゴールを奪う姿勢を最後までみせた慶大が悲願の優勝へと一歩近づいた。
関東学生女子ラクロスリーグFINAL4 VS日体大
2011/11/6(日)15:10ドロー@大井ふ頭中央海浜公園第二球技場
チーム | 前半 | 後半 | 合計 |
慶大 | 6 | 4 | 10 |
日体大 | 4 | 1 | 5 |
「負けたら後がない」(佐藤副将)、この執念が前半から形に現れた。前半開始早々、自陣深くからカウンターを狙い、そのパスをうけたAT戸花主将(経4)がステップで敵をかわしシュートを決める。すると、続く6分には谷北(環4)のFSからパスを受けたAT佐藤(法3)が至近距離でシュートを決め、出だしは波に乗る慶大。しかし日体大も黙ってはいない。パスで翻弄していた慶大だったが、次第に形成を逆転され始め、7分、8分に連続シュートを奪われてしまう。その後両者一点ずつ追加し、3-3の同点。まさに一進一退の攻防、と思われたがここから慶大の怒涛の攻撃が始まる。相手のパスをインターセプトし、ボールをキープ。そこから敵陣に持っていき、DF陣の穴を付いたパス回しで相手を翻弄。素早いステップで敵をかわしたMD出原(政2)が中央からダイレクトシュートを叩き込み、勝ち越すと流れは慶大のものに。前半22分、MD小嶋(経3)がDF陣を抜き、クリース裏から素早く飛び出したAT戸花主将が難しい角度のシュートを放つ。また24分には、AT佐藤が空中で高速キャッチ&リリースをみせ、さらに一点を奪った。両者ミスが少なく、グランドボールを倒れ込みながらも取りに行くといった激しく白熱した試合が続く。終盤、一点を返され6-4とするも、中央からきりこんでいく姿勢を崩さずオフェンスの強さが発揮された前半だった。
後半を迎えると日体大が意地を見せ始める。ボールを長くキープせず、一人を大勢でつぶしにかかるスタンスで慶大は中央突破を阻止されてしまう。さらに、慶大は自陣に詰め寄られFSのチャンスを与えてしまう。G中曽根(商3)の見事なゴーリーセーブもあって難を逃れるが、相手DF陣が機能し点を奪えない状態が続く。しかし慶大はそこから勝機を見出していく。後半7分、相手にプレッシャーを与えパスミスを誘うと、そこからショートパス、ミドルパスを合わせた切り返しの速さでAT佐藤が連続のシュートを成功させる。前半とは違い、サイドを中心に攻める姿勢に相手の混乱を誘ったのか、その後2点を挙げ9-4と相手を大きく引き離した。互いに一点を挙げたところで、雨足が強まる嫌な展開に。だがそんなことはほとんど影響しなかった。慶大のディフェンスはさらに強さを増し、苦しい局面でもG中曽根を中心に安定のまもりをみせる。結局、オフェンスに関して一歩上手だった慶大がリードを守り試合終了。3年ぶりのFINALへと駒を進めた。
「シーズンベストに次ぐ内容」(石川HC)を実践した素晴らしい試合だった。去年、一昨年と負け続けてきた日体大だけに勝利の喜びは大きい。「FINALで負けたら何の意味もない」(佐藤副将)というように選手たちはまだまだ高みを目指している。わずかに残された時間の中でいかに効率よく準備をするか、これが大切であろう。学生王者への道のりはそう遠くない。
By Dai Miyamoto
【コーチ・選手のコメント】
大久保HC
(試合を振り返って)今までの中で一番良いゲームでした。(良かった点は)選手たちが場面ごとにやることをきちんと理解して、それを強くできたことだと思います。(試合にはどういったことを伝えて送りだしたのか)日体大のオフェンス、ディフェンスのしかたは分かっていたので、それに対しての対策はやりました。一番意識したのは「対策に頼らない」ことで、今回のテーマは1人1人の自信・自覚、それが全てだったと思います。「自分ができるんだ」という強さだったり、「自分がゴールを入れるんだ」という強さを意識しました。それがしっかりと出たゲームでしたね。(選手たちの集中力は良かった)そうですね。僕らが伝えたのは、ベンチから指示することはもう無いと。交代選手に「こういうことを伝えて欲しい」と送りだしても、そこではその内容はもう選手たちの中から出ています、と言っていました。本当にコーチとして最高の言葉でしたね。もう選手たちが分かっていたことが一番嬉しいです。(チームを作ってきて、完成形に近付いている実感はあるか)完成形はまだまだだと思いますが、今やるべきことは彼女たちは本当にしっかりやりました。褒めてあげたいですし、自信にしてもらいたいです。(次はいよいよFINALですが、意気込みを)今日のゲームがかなり良い形で終わったので、次のゲームはそれ以上というのは難しい。そうなると、選手たちがそこで慌ててしまうのが次は一番怖いですね。厳しいゲーム展開にはなると思いますし、今日よりミスは多くなると思いますが、それに負けない強さを1週間意識して準備します。
石川HC
(今日の試合を振り返って)準備していたことが予想以上に発揮されシーズンベストに次ぐ内容だったと思います。(今日の試合でうまくいったところ)オフェンス面に関してはひとりひとりの攻撃値を高く保つということ、そういうコンセプトの下での球まわし、そこから相手のディフェンスの穴をついたオフェンス、あとオールコートのオフェンスに関してもボールを持っているプレイヤーが前をむいて、相手にスペースを消された場合ではボールをうまくふって、相手のスペースにボールを運んでいくところがうまくいったこと。相手のスカウティングをした上でそれを絶対にやらないといけないというところで、選手たちが頭を働かして足を動かして良い判断して試合を進めていってくれました。(うまくいかなかったところ)あんまりなかったです。みなさんからみるとこっちのディフェンスで同じような形で何度か失点したと思ったんですけど、捉え方を変えてはっきり割り切ってプレーしていました。(練習したことが出せたか)練習してきたことは、狙っていたことはあったんですけど練習でもあんまりうまくいってなくてこんな展開予想してなかったっていうところが正直な意見です。それができたのは選手の気持ちかなと思います。(具体的に相手の対策はしていたか)相手のオフェンス、ディフェンスに対してどういう対策をするかは練習してきました。特に相手の強さはオールコートのディフェンス、ライドって言われることなんですけど、やはりこっちがゴーリーからディフェンス陣にボールを回しているところであついプレッシャーをかけてきてボールを奪って早い段階でシュートを奪うっていうコンセプトを持っているチームです。でも意外と相手がこっちのことを恐れてくれていたので簡単にクリコールをクリアすることができました。オフェンスに関しても攻撃値の高い状態でボールをどんどん動かしていってというプレーをずっと練習してきたのでそれが機能したのは大きかったです。(選手のモチベーションはどのようか)もちろん高いです。リーグ戦を5戦突破して自分たちの目標である学生優勝の権利を得たということで、しかも今日の試合は過去何試合も負けている日体大で、その壁を乗り越えたいという先輩の思いも含めてモチベーションは非常に高かったです。久しぶりにファイナル出場なんですけど、見たことない光景をみんな見てみたいという気持ちをみんな持っていて、こんなところで浮つくような人たちではないですので、コーチ陣は温かく見守っていくだけです。(決勝に向けてどんなことをしていくか)コンディションをしっかり整えることです。試合が6日後なので。実際選手自身もケガ人も多数出てきていますしそのケガをさらに悪くしないようにしながら、メンタルのコンディションも含めて良い状態で持っていきたいです。メンタルの部分ではこんなに良い試合してしまうと次の試合でこんなはずじゃなかったという展開になったときに一気に崩壊することが学生のスポーツですので、自分たちが一年間目標にしてきた舞台でしたので、そこに向かっての執念を持って強い気持ちで望めるようにしていきたいと思います。
戸花主将
(今日の試合を前半・後半で振り返って)前半は、得点しても相手にも入れられたりして焦った時間帯があったんですけど、それを乗り越えられたことがとても良かったと思います。後半は、リードした状態からスタートしたんですけど、その中でも自分達がやることっていうのを見失わずに出来たことが良かったと思います。(今日の相手はFINAL4で四年連続当たっている日体大でしたが)今日は、去年と一昨年負けている相手であるということを意識しないように意識しました。(見つかった課題は)やはりプレーの精度であったりとか、失点が続くなど上手くいかない時間帯にもう少しディフェンスを修正していくことであったりとか、そういったところだと思います。(次戦はFINALということですが)今回のFINAL4までは1ヶ月準備期間があったんですけど、次戦までは練習が三回しかないので、その中でいかにプレーの精度を上げられるかっていうところを意識してやっていきたいです。ここまで来たら勝つしかないので頑張ります。
谷北副将
最初から皆で共通認識を持って終始圧倒出来たのが良かったかなと思います。全員がシュートに向かう気持ちとかゴールに向かう気持ちとかを持ち続けていたのが良かったかなと思います。(明大戦から1ヶ月開いたがどんな練習をしていたか)戦術を詰め込むというよりはゴールに向かう自信を持つために、個々の技術のレベルアップを図っていきました。(日体大相手に対策は)日体大は体力があり、一人一人のプレッシャーに自信を持ってやってきている。ディフェンスでもゴール前に攻めてきたり、クリアの時も上からプレッシャーをかけてくる感じだった。それに対して、こちらは一枚抜いてサポートを近くしていこうということは話をしていました。ボールサポートが早かったので、良かったと思います。(グランドボールもうまく拾えていたように思えたが)グランドボールに関しては、日体大がすぐに触ってマイボールにしてくる。そこを叩きに行ってファールをするのではなくて、自分達が拾いに行こうということは話をしていた。今日はファーストタッチが出来ていたと思います。サポートが近くにあるとダウンボールが起きた時にすぐ拾いに行けるので、その面で慶應の寄る枚数が日体大と同じかそれ以上出来ていたと思います。(アタックに関しては)皆がゴールに向かう意識があったりとか、練習でも2点ビハインドやリードの想定下での練習をやっていた。皆の中でアタック中に共通認識を持てたので、不安なく出来ました。(FINAL4で4年連続の相手だったが)去年、一昨年の先輩がFINAL4で日体大に負けて引退して、その思いを目の前で見てきた。その思いを感じながらだったんですが、今年は今年で新しい慶應だし、新しい日体で戦っていたと思う。その面では執念を見せながらも、そんなに意識はしていませんでした。(今年は3年ぶりの1位通過だったが)私個人としては1位通過したから強いとは思っていなかったので、しっかり目の前の敵に対して相手が2位通過とか関係なく挑戦者の気持ちでやっていました。(FINALに向けて)今日勝つことが目的では無くて、来週FINALで勝って全日本で勝つということが目標なのであくまで(FINAL4は)通過点。今週1週間気を抜かずに修正するところは修正して、一人一人ゴールに強く向かっていくという点を練習で確認したいです。
佐藤副将
(今日の試合を振り返って)まず今日の試合はFINAL4ということで負けたら後はないので、そういう舞台の中で勝てたということはとても良かったし、内容的にも1試合集中して試合が出来たので非常に良かったと思います。(前半終わって意識したこと)特に後半に向けて戦術的に大きく会えるということは無く、むしろ前半自分たちがやれていたことをしっかりと続けていけるように意識しました。(この試合で得られた収穫と課題)収穫としては、全員が前を向く姿勢が強かったということ、それから個人の力だけではなくチーム一丸となって勝ちを得られたところは非常に良かったと思います。課題としては、特にこのプレーがというのは現時点では確認していないんですけど、こういった勝利の後というのは隙が出来てしまうと思うので、そこのところをもう一回気を引き締めて頑張っていきたいと思います。(次の試合に向けて)FINAL4買ったんですけど、次FINALで負けていたらなんの意味もないと思うので、自分たちが目標に掲げてきた学生優勝というものを目指して、集中して後1週間頑張っていきたいです
出原
(FINAL進出おめでとうございます)ありがとうございます。(FINAL4は昨年と同じカードになりました)日体大は昨年のFINAL4で敗れた相手であり、また昨年の王者ということで意識するところはありました。ただ、自分たちもリーグ戦で良い戦いができていたし、この試合に向けても良い準備ができていたので、自分たちの力を出し切るだけだと思っていました。試合が始まってからはいつものリーグ戦と変わらないなという感じで、(違うのは)いつもより多くの観客が来てくれているなということくらいでした。(大きな声援は聞こえていましたか)はい。自分たちのラクロスはそういった声援があってこそのものだと思うので嬉しかったです。ただ一度ピッチに立ってからは、目の前の一球に集中することが役割だと思っていました。(アタックがことごとく決まっていたように感じたが)人任せなプレーや、パスを出してはいけないということはみんなが意識していたと思います。まず、目の前の1対1に勝つということを考えて、あとはもう今までやってきたことを出し切るだけでした。(ご自身も大量4得点で勝利に貢献しました)今までリーグ戦を戦ってきてうまくいかないこともあったのですが、自分にはピッチに立っている責任があると思っていました。ここまで(FINAL4)きて、プレッシャーなどはありましたが、弱気なプレーを見せて、自分のプレーを出せなかったらもったいないなと思っていたので、執念と強さを持ってプレーしました。こういう結果になって良かったです。(FINALでの勝利となると史上初の快挙です)そうですね。いままでFINALに進んだことも過去に1度しかなく、今回が2度目の挑戦です。(それではその試合に向けて意気込みをお願いします)“さらに強く”です。頑張ります。
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