箱根駅伝予選会まであと1日!目前に迫った予選会に向けて、この記事では当日のコースや想定タイム、慶大の戦力を徹底分析。慶大は第70回大会を最後に本戦出場から遠ざかっていますが、今季は4年生を中心に実績を積み重ね、この正念場に向けて着々と力を養ってきました。出場を決めれば32年ぶり。三色の襷は今年こそ、箱根路を駆けるでしょうか。これを読んで、是非当日も声援を送りましょう!
大エース・田島公太郎、木村有希(ハーフマラソン塾記録保持者)(共に令7卒)らを擁し、「慶大史上最強」ともいえる戦力で挑んだ昨年の箱根駅伝予選会。箱根駅伝プロジェクト7年目、本戦出場への期待に満ちた中で迎えた予選会だった。だが、結果は前年の順位を大きく下回る総合29位。チームがその真価を発揮することはなかった。失意の予選会から一年、今季は4年生がハーフマラソンやトラック種目で活躍を披露し、チームの主力へと成長。夏以降はAチームに加わる下級生も増え、戦力の底上げは着実に進んでいるはずだ。

メンバー発表の様子
そんな慶大が、箱根駅伝本戦へと出場するための鍵は何か。キーワードは「公園」と「200番目」だ。
「公園」とは、予選会のコースに含まれる国営昭和記念公園である。予選会において、選手は陸上自衛隊立川駐屯地→立川市街地→国営昭和記念公園と、3つのエリアを経由して走る。この中で出走経験者たちの多くがポイントに挙げるのが、最後に走る公園内のコースだ。
このコースは14km過ぎのからフィニッシュ地点まで7kmにわたる。平坦な市街地とはうって変わり、公園内では細かいアップダウンが選手たちの体力を奪う。さらには待ち受ける急なヘアピンカーブや折り返し地点、上昇する気温・湿度。昨年の予選会では多くのランナーが公園内で失速、棄権者も多数となった、まさに”魔のコース”なのである。慶大の選手たちは、公園に入るまでの市街地コースでなるべく消耗を防ぎ、最後まで垂れることなく走りきる、ペース配分が求められるだろう。
それでは「200番目」とは何の順位か?これは、予選会での個人順位だ。チーム上位10名の合計タイムを比較してのチーム順位が選考基準となる予選会だが、今回は個人順位に着目してみたい。では、なぜ「個人200位」に着目するのか。今年の予選会と同じルートで行われた、直近3大会を振り返ってみよう。この3大会において、チーム内10番目の選手が個人200位以内でゴールした大学は22チームあったが、その内21チームが本戦に出場している。この条件での本戦出場率は、驚異の9割超えだ。
一方で、近3年で学内9番目・10番目の選手が個人200位よりも後のゴールとなったチームの中で、本戦に出場できたのは僅か5チームのみ。しかもこの5校全てにおいてチーム内の1番手は個人15位以内でゴールしており、いわゆる”絶対的エース”を擁するチームだったのだ。慶大はエントリーメンバーの持ちタイムから見ても、出走メンバー全員の総合力で突破を狙うチームである。つまり慶大のようなチームとしては、9番手・10番手の選手までが個人200位以内で走りきれなければ、本戦への出場は難しいといっていい。
では、「個人200位」でコースを走りきるためのタイムはどれくらいか。このタイムには、当日の気候条件が大きく関係している。近3年の予選会における個人200番目の選手の走破タイムと、予選会当日の午前10時半に計測された東京の気温・湿度は以下の通りだ。
大会 | 記録 | 気温 | 湿度 |
第101回(2024年) | 67分20秒 | 26.1℃ | 79% |
| 第100回(2023年) | 64分46秒 | 18.5℃ | 51% |
| 第99回(2022年) | 66分00秒 | 21.6℃ | 75% |
そして、今年の予選会が行われる10月18日、天気予報は曇り時々晴れ、最高気温は25℃と予想されている。スタート時刻が例年より1時間前倒しされることも鑑みると、当日は第99回に近い気候で試合が行われそうだ。つまり、個人200位以内で走りきるためのタイムは「66分」が目安になる。このタイムを何人がクリアできるのかが、箱根駅伝本戦出場への分かれ道になるだろう。
ここまでは、慶大が予選会を攻略するためのポイントを検討してきた。ここからは、特に当日の走りに注目してほしい選手を3人、ピックアップしていく。

昨年の予選会の東
まず1人目は、駅伝主将の東叶夢(環4・出水中央)である。ハーフマラソンのPBは64分18秒(2025学生ハーフ)。高校時代には決して強豪校ではなかった母校で主将を務め、チームを全国高校駅伝14位に導いた。今季は日本学生ハーフマラソンでPBを更新、駅伝で活躍していた選手と直接戦ったことで「自分が箱根路を走るビジョンが初めて明確に見えたレースだった」と東は語る。チーム内でハーフマラソンの持ちタイムはトップであり、本来の走りを見せられればタイムを稼げる公算は高い。予選会での目標は「チームトップ」、主役となって本選出場へとチームを導く、夢を叶える力走を期待。

関東インカレでの鈴木
2人目は鈴木太陽(環4・宇都宮)だ。ハーフマラソンのPBは65分46秒(2023箱根駅伝予選会)。チームで唯一、4年連続で予選会に出場している。今季は5月に行われた関東インカレ男子1500mで3位表彰台。同種目で6月の日本インカレに出場すると塾記録を大きく塗り替える激走で6位に入賞し、日本選手権にまで出場した。中距離ランナーとして輝かしい結果を残した鈴木だが、昨年までは長距離への適応を課題としていた。ただ、今年の夏合宿では距離を踏む“成功体験”を積み上げ、長距離への苦手意識を克服。合宿後も調子を維持しており、「ミドル鈴木」から「ロング鈴木」への移行は順調と言えそうだ。予選会での目標は東と同じく「チームトップ」。持ち味のスピードを生かし、チームに希望の光を与えられるか。
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日体大記録会での芦野
3人目には芦野清志郎(理3・高田)を推したい。今季は5000mと10000mでPBを更新。4年生が主体となっている駅伝チームにおいて、本選出場への鍵となる、注目の3年生だ。「今年の4月ごろから、1次関数のように順調に伸びてきた」と芦野は語る。今夏にはBチームからAチームへと昇格。その後も順調に練習を積めており、予選会間近の10月5日に行われた日体大記録会ではチーム一番の走りを見せている。昨年の予選会にはエントリーこそされたものの、出走することはかなわず。今回は走る機会を与えてくれた方たちに「魂からの感謝を伝えられるような走りをしたい」と気合十分だ。目標タイムは「64分台」。ダークホースとして、感謝を込めた激走に期待だ。
3人以外のエントリーメンバーに目を向けると、関口功太郎(経4・宇都宮)と弓田一徹(環2・法政二)はハーフマラソンで65分台のPBを持つ。ここに10000mでチーム随一のタイムを誇る副将・安田陸人(商4・開成)が加わり、ここまでがチームの核を形成するか。ここに加わってくるのが66分台中盤のPBを持つ渡辺諒(法4・慶應)や稲生健人(経3・慶應)、ラストイヤーに懸ける島田亘(法4・慶應志木)といった面々になる。また、三四会から加入した2人の医学部ランナー、金丸蒼(医5・国立)と澤田薫(医2・渋谷教育幕張)からも目が離せない。田口涼太(政2・慶應志木)、石野日向(商2・横浜国際)、村松駿平(総1・法政二)といった下級生からの突き上げにも期待したい。この14人の中から、当日は12人がスタートラインに立つ。彼らが100%の実力を発揮すれば、チームとしての総合力は格段に向上するはずだ。
箱根路から30年余り遠ざかっている慶大にとって、本戦への出場はもはや夢物語なのかもしれない。それでも、予選会に臨むランナーたちは死力を尽くし、持てる力の全てを掛けた、魂の走りを見せてくれるはずだ。当日は沿道であれテレビの前であれ、選手に可能な限りの声援を送ってほしい。
(記事:鈴木拓己、中原亜季帆)
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