【バスケ(男⼦)】「バスケが好きだから」ハイレベルな環境にしがみついて掴んだもの/4年生卒業企画「光るとき」 No.67・安田彪吾

バスケ男子

25年度に卒業を迎える4年生を特集する特別企画「光るとき」。第67回となる今回は、男子バスケットボール部の安田彪吾(経4・岐阜)。バスケットボールが大好きで、ハイレベルなチームに飛び込んだ安田が4年間で掴んだものとは。彼のバスケ人生をたどりながら探る。

バスケとの出会い

スペインで生まれ、日本の岐阜県で育った安田。バスケとの出会いは中学生のときだった。当時通っていた中学校は規模が小さく、部活らしい部活はなかったため、体育の延長線上で様々なスポーツをしていた。その中で「一番楽しかった」のがバスケだと安田は話した。中学3年時には、自ら中心となって部員やコーチを集め、さらにユニフォームもデザインし、試合に出場した。「負けてみんなで泣いたのを覚えている」と笑顔で当時を思い出しながら語った。

高校は県内屈指の進学校である岐阜高校へ進学。自由な校風であったこともあり、バスケに熱を注いだ3年間だった。Bリーグ経験のある顧問のもと、県ベスト8という目標を達成することができた。

大学バスケの高い壁

より高いレベルのバスケに興味を持った安田は、慶大を志望し見事合格。体格に恵まれていた安田は最初に練習を見たとき、「自分でもやれそうと感じた」と言う。しかし、その自信はすぐに打ち砕かれる。周りには、國學院久我山や福大大濠など、強豪校出身の選手が並んでいた。「経験の差。バスケットボール観に違いがあった」。その言葉が示す通り、コートで見えている世界が違っていた。

六大学対抗戦・東大戦

大好きなバスケだからこそ

差を埋めるのは容易ではなかった。2年時に多少の出場機会はあったものの、3年時にはDNP(ベンチ入りするもプレータイムが0)が続く。「遠い体育館まで行ってアップだけして1時間座る土日。バスケットボールをすごくやりたいという気持ちでずっと大学にいたので、試合に出られなかったのが1番きつかった」と、好きだからこそプレーさせてもらえない苦しさは人一倍大きかった。

2年時の早慶戦で同期の活躍をベンチから眺める安田

そんな苦しい時期を支えたのは、先輩の言葉だった。バスケ部では例年、卒業時に部員が4年間を振り返るブログを執筆する。そのブログに書かれた2学年上の先輩の言葉が、安田を救った。「苦しい思いをした人たちのブログを読むと、人としてすごく大きいなと、成長したのだなというのがすごく伝わった。苦労した人の方が実りのある4年間になるのかなと卒業ブログを読んで感じた。自分に、出られなくても大丈夫だよねという安心感を与えてくれていたと思います」と先輩たちに感謝した。

試合には出られずとも、安田はしがみついた。「それでもバスケットボールが好きだった。いつか大きな舞台で活躍してみたい」と前を向いた。周りとの経験の差を埋めるため、A・B両チームの練習に参加し、さらに大学外でも練習を積んだ。その結果、オフェンスでもディフェンスでも「気を使えるようになった」と言う。4年時の2月から春シーズンが始まって2ヶ月で徐々にアピールに成功し、5月末の早慶戦ではチームトップの19得点を決める活躍を見せた。バスケが好きだからこそ、苦しみから逃げ出さなかった。愛し続けたバスケが安田に振り向いたのだ。

4年時の早慶戦

掴みきれなかったもの

しかし、大活躍を見せた早慶戦は「試合に敗れたので、良い思い出ではない」と話した。そんな安田が4年時に記憶に残っている試合に挙げたのは、入替戦出場をかけて戦ったリーグ戦2巡目の國學院大戦。「3年間出られなかった入替戦がすぐ目の前にあるという感覚だった」と臨んだ。しかし惜しくも敗れ、入替戦出場は叶わなかった。「何かを懸けた戦いが楽しかった。だからもう1試合やりたかった」と試合から5ヶ月が過ぎようとしていた取材時にも悔しさをにじませていた。

バスケが教えてくれたこと

中高時代の安田は、出場時間で苦しむことはなかった。それゆえ「頑張ればなんでもできると思っていた」。しかし、大学に入り努力を重ねても報われない現実を知った。「人を見るとき、『あいつは頑張っていないから今こうなのだ』というふうに考えなくなった。頑張っているけど、環境などの色々な原因で上手くいっていないこともあるというのが分かった」。4年間を通して得たのは、他者への理解だった。

9月からは母の母国スペインの大学院へ進む安田。「今後どんな仕事に就くか分からないが、色々な国や違った考え・価値観の人々を繋げる手伝いができたら」と、将来の夢を語った。大学バスケでは、大舞台での活躍は掴んだ。だが勝利は掴めなかった。成しきれなかった男が、これからはどのような舞台で活躍していくのか。ひっそりと応援したい。

(記事:大泉洋渡)

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