目の前での早大優勝を阻止し、2位を懸けて行われた今年最後の伝統の一戦。けがから復帰し先発を託された加嶋(商3)は2回に先制を許すと、後を受けた救援陣が早大打線に攻め立てられる。結局、登板した投手は全員失点を喫するなど、被安打20で9失点。一方の打撃も6回まで得点圏に走者を置けず苦戦する。終盤こそチャンスを演出するも最後まで若き血を響かせることはできず。0‐9で敗戦しこの結果、今秋の慶大は4位で終了。TEAM2014を勝利で締めることはできなかった。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | ||
慶大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
早大 | 0 | 1 | 1 | 0 | 4 | 2 | 1 | 0 | × | 9 |
早大:○竹内、黄本、安達公、鈴木健―土屋、梶矢
◆慶大出場選手
ポジション | 選手名(学部学年・出身高校) | |
1 | [7] | 佐藤旭(商4・慶應) |
2 | [6] | 山本泰寛(環3・慶應) |
3 | [9] | 谷田成吾(商3・慶應) |
4 | [5] | 横尾俊建(総3・日大三) |
5 | [8] | 藤本知輝(環4・慶應) |
6 | [4] | 竹内惇(商4・慶應) |
7 | [3] | 齋藤大輝(商2・慶應) |
1 | 明大貴(政4・慶應) | |
1 | 加藤拓也(政2・慶應) | |
H | 北村祐樹(商3・丸亀) | |
1 | 三宮舜(商3・慶應) | |
8 | [2] | 小笠原知弘(環3・智弁和歌山) |
9 | [1] | 加嶋宏毅(商3・慶應志木) |
H | 藤井健友(環4・郡山) | |
1 | 佐伯瞭太(商4・慶應) | |
1 | 亀井倫太朗(商1・慶應) | |
3 | 近藤俊(環4・國學院久我山) | |
H3 | 羽入田雄大(環4・長野) |
勝利した方が2位、敗戦した方が4位という状況下で行われた早大3回戦。泣いても笑っても今年ラストゲームとなる一戦、慶大はこの早大1回戦からベンチ入りしている加嶋(商3)を先発に起用。今年5月19日の立大3回戦以来、けがに苦しみ実戦から遠ざかっていた左腕に最終戦のスターターを託した。一方の早大は3連投となる竹内が先発。
その加嶋は立ち上がり安打と盗塁で1死二,三塁といきなりピンチを招く。それでも、ピンチでも決して動じないマウンドさばきは健在で、武藤を右飛、昨秋の早慶戦で本塁打を浴びた小野田を二ゴロに切って取る。昨日から敷かれている『小野田シフト』がまたも功を奏した形になった。
しかし続く2回、得点圏に走者を置いて8番・中澤に対する初球、中に入ってきた変化球をとらえられ適時二塁打を浴び先制を許してしまう。加嶋は当初の予定通り、打席が回ってきたところで交代。「自分の責任の回数を0点に抑えられなかったというのはちょっと反省」と口にするも、来年に向けて明るい兆しが見えた登板となった。その代打として送られたのは副将・藤井(環4)。常に陰からチームを支えてきた男の最終打席は、インコース直球を打ち三ゴロに終わった。
加嶋に続き登板したのは、今季ブルペンの屋台骨を支える変則左腕・佐伯(商4)。だが今日はピリッとせず、被安打3、1失点を喫し1死しか取れずに降板する。ラストマウンドは悔しいものとなってしまった。1死満塁の状況で登板した亀井(商1)は、「思いきった気持ちでいけた」と強気の投球を見せ、このピンチを切り抜ける。
久々のマウンドで好投を続けていた亀井であったが、5回に突如崩れてしまう。武藤からの打順で3連打を浴びて失点し、マウンドを明(政4)に託す。しかし、その明も早大打線の勢いを止めることはできず、さらに3連打、合わせて6連打の猛攻を受けこの回4失点。
その守備での悪いリズムは、攻撃にも影響を及ぼしてしまう。早大・竹内の厳しく内側をついてくる直球とゆるい変化球を織り交ぜた投球を前に、6回までに放った安打は山本泰(環3)の2安打、途中出場の近藤(環4)の今季初安打による3本のみ。さらに2つの併殺打があるなど、得点圏に走者を置くことすらできず試合は早大ペースで進行していく。
さらに負の連鎖は続く。6回から登板したエース・加藤拓(政2)は先頭の中村に被弾するなど2失点。7回には三宮(商3)が河原に中堅手の頭を超える適時二塁打を放たれ、この試合9失点目を喫する。チーム防御率2点台前半を誇っていた慶大投手陣が、今季最終戦で崩壊してしまった。
何とか意地を見せたい慶大は7回、先頭の谷田(商3)が内野安打で出塁すると、2死となって竹内惇(商4)が中堅手前に落ちる安打で一,三塁とこの日初めてのチャンス。ここで迎えるは代打・北村。粘って8級目、この日冴えていた低めへの変化球にバットが空を切ってしまう。8回にも、代わった黄本に対し2死から佐藤旭(商4)、山本泰の連打などで2死二,三塁とするが、谷田が二ゴロに倒れまたもチャンスを逸する。最終回は横尾(総3)、藤本知(環4)、竹内惇の強打者が簡単に倒れ試合終了。今年ラストゲームを勝利で飾ることはできなかった。しかし、「最後の最後まで勝ちへの執念をもって試合をすることができた」(佐藤旭主将)、「最後の最後まで慶應らしさでやれた」(近藤)と振り返るように、今年の慶大に強く表れていた勝利への気持ちを決して切らすことはなかった。
0‐9とまさかの大敗となった今季最終戦。その差として挙げられるのは、機動力だろう。慶大はこの試合6つの盗塁を許した。機動力を絡める野球を展開する早大に対し、慶大は盗塁や犠打は選択せずに『攻め』のスタイルを崩すことなく今年を戦い抜いてきた。打のチームを掲げ、この『攻め』の野球で春の頂点に輝いたのだが、今秋は春に比べて打力が低調気味に。前の試合で梅野(環3)の足で1点をもぎ取った場面や今日の試合を通じて、攻撃のアクセントとしての機動力の重要さを身をもって感じた。山本泰、谷田、横尾と長打力を備える主軸は来年も残るが、外野や二塁のポジションが空白となるため、梅野、原田(商3)、照屋(環1)といった俊足を誇る選手たちの起用法が一つのカギになりそうだ。
さらに、秋季リーグ戦では投手層の厚さが順位につながったと言っても過言ではない。ブルペン陣は佐伯、明ら4年生投手陣が支えたが、やはり先発の加藤拓、三宮にかかる負担が大きくなったのも事実。この早慶戦で復帰した加嶋や、当時1年生にして登板機会が与えられた小原(環2)、渡邉義(環2)らの逆襲に期待したい。
最後に、今年の慶大野球部に〝学生野球〟〝大学スポーツ〟のあるべき姿というものを見た気がする。それは、『最上級生である4年生が中心となりチームを引っ張り、チーム一丸となって勝利に突き進む』ということだ。佐藤旭主将が就任当初、「下の代から勝たせたいと思われるような4年生でいなければならない」と言っていたように、やはりチームの中心としているべきは4年生である。これは試合中だけに限られないだろう。そして今年の慶大を見てみると、常に勝利への貪欲さを顕示しチームをまとめた佐藤旭主将、出場機会は少ないがブルペンからチームを盛り立てた藤井副将、監督不在という苦難を乗り越えて選手と監督のパイプ役となった杉山スタッフ(商4)、大野スタッフ(商4)ら学生スタッフ。さらに4年生にして台頭した竹内惇や佐伯といった苦労人の活躍は、チームに大きな力をもたらした。枚挙に暇がないが、4年生を中心としたチーム作りが今年の慶大にはできていた。確かに、チームの主軸となったのは谷田、横尾、加藤拓ら2,3年生が多かったかもしれない。それでも、数字、成績だけがチームの勝利に直結するわけではない。4年生が〝How to play, How to win〟のスローガンのもと、勝利に貪欲になって野球に取り組んできたからこその春優勝、秋の驚異的な粘りだったのだろう。
それでも、秋は優勝争いに最後まで加わりながらも4位。「あと一つ勝ち切ることの難しさを痛感させられた」(佐藤旭主将)シーズンとなった。早大1回戦後、春秋連覇の可能性が消滅し、人目もはばからず涙を流した4年生たち。この涙に、3年生以下の選手たちは何を見るのだろうか。来年は下級生時から出場してきた選手が最高学年となり、慶大にとっていわば勝負の年である。「下級生を引っ張っていきたい」(横尾)、「来年は本当に連覇したい」(山本泰)。さまざまな思いを抱き、慶大野球部は常勝軍団に向けて新たな旅路に出る。
【Keispo pick up】KEIOの誇り胸に次なるステージへ 佐藤旭
8回表に迎えた大学最後の打席。「自分のスイングをしてこの4年間の思いをすべてぶつけてこよう」。5球目を弾き返した打球は右翼手の前に落ちる安打。いかにも佐藤旭らしい、右方向への素晴らしい当たりだった。試合には敗れたが、「最後の最後まで勝ちへの執念をもって試合をすることができました」と清々しい表情で語った佐藤旭。慶大卒業後は社会人で野球を続ける。この1年、主将としてぶち当たった壁を何度も乗り越えつかんだ春の栄光。そして秋の驚異的な粘り強さ。KEIOで培った野球を次の舞台でも存分に披露してほしい。さらなる躍動に期待してやまない。
(記事 山内貴矢)
◆打撃成績
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | ||
[7] | 佐藤旭 | 三ゴ | 右飛 | 空三振 | 右安 | |||||
[6] | 山本泰 | 遊安 | 右安 | 中飛 | 中安 | |||||
[9] | 谷田 | 空三振 | 遊併打 | 三安 | 二ゴ | |||||
[5] | 横尾 | 見三振 | 中飛 | 空三振 | 右飛 | |||||
[8] | 藤本知 | 右飛 | 一失 | 中飛 | 中飛 | |||||
[4] | 竹内惇 | 二ゴ | 空三振 | 中安 | 二ゴ | |||||
[3] | 齋藤 | 二ゴ | 投併打 | |||||||
1 | 明 | |||||||||
1 | 加藤拓 | |||||||||
H | 北村 | 空三振 | ||||||||
1 | 三宮 | |||||||||
[2] | 小笠原 | 遊ゴ | 一ゴ | 空三振 | ||||||
[1] | 加嶋 | |||||||||
H | 藤井 | 三ゴ | ||||||||
1 | 佐伯 | |||||||||
1 | 亀井 | |||||||||
3 | 近藤 | 右安 | ||||||||
H3 | 羽入田 | 二飛 |
投球回数 | 打者数 | 球数 | 安打 | 三振 | 四死球 | 失点 | 自責 | |
加嶋 | 2 | 10 | 31 | 5 | 1 | 0 | 1 | 1 |
佐伯 | 1/3 | 5 | 11 | 3 | 0 | 1 | 1 | 1 |
亀井 | 1 2/3 | 9 | 27 | 4 | 2 | 0 | 3 | 3 |
明 | 1 | 5 | 12 | 3 | 0 | 0 | 1 | 1 |
加藤拓 | 1 | 6 | 19 | 2 | 0 | 1 | 2 | 1 |
三宮 | 2 | 9 | 39 | 3 | 4 | 0 | 1 | 1 |
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