【野球】ニューヒーローの前に打線沈黙 黒星発進 法大①

4月11日(土)東京六大学野球春季リーグ戦 法大1回戦

優勝に向けて、慶大ナインが走り出した

優勝に向けて、慶大ナインが走り出した

球春到来、春秋連覇を狙う慶大の春が開幕した。初戦の相手は法大。開幕投手を務めた加藤拓也(政3)がピンチを作りながらも7回1失点の粘投を見せ、リリーフした加嶋宏毅(商4)も完璧なピッチングを展開した。しかし、期待の打線が法大の1年生開幕投手・森田に封じ込まれ、散発4安打の完封負け。大久保慶大の初陣は、悔しい黒星スタートとなった。

 
法大
慶大
 

法大:○森田、川名―中村

慶大:●加藤拓、加嶋―須藤

◆慶大出場選手

  ポジション 選手名(学部学年・出身高校)
[6] 山本泰寛(環4・慶應義塾)
[8] 梅野魁土(環4・福岡大大濠)
[9] 谷田成吾(商4・慶應義塾)
[5] 横尾俊建(総4・日大三)
[7] 齋藤大輝(商3・慶應義塾)
[3] 沓掛祥和(商3・慶應義塾)
  重田清一(環3・佐賀西)
[4] 北村祐樹(商4・丸亀)
  山口翔大(環3・桐光学園)
[2] 須藤隆成(環3・創志学園)
[1] 加藤拓也(政3・慶應義塾)
  濱田匠(経3・宇都宮北)
  加嶋宏毅(商4・慶應志木)
 

雨により試合開始時刻が遅れ、寒空の下、第2試合である慶大の開幕戦は16時近くに開始となった。

開幕投手を務めた加藤拓

開幕投手を務めた加藤拓

慶大の開幕投手を務めたのは加藤拓也(政3)。今季から背番号18を着ける剛腕エースが、初回からエンジン全開の投球を披露する。先頭の原田に対する初球、いきなり150キロをマーク。その後も150キロ台を連発し、ヒット1本を許したものの危なげないピッチングで無失点に抑えた。昨季や今春のオープン戦では立ち上がりに制球を乱すことが散見されたが、この日は自慢の直球をきっちりコースに投げ分け、上々の立ち上がりを見せた。

 

対する法大の開幕投手は大方の予想に反し、玉熊ではなく昨夏の甲子園を沸かせた富山商業高校のエース、森田だった。1年生投手を早めにつかまえたい打線は初回、先頭の山本泰寛(環4)がラッキーな内野安打で出塁すると、梅野魁土(環4)がきっちり送りバントを決め1死二塁の得点機を演出。続く3番の谷田成吾(商4)はデッドボールで出塁し、初先発で浮足立つ森田に徐々にプレッシャーを与えていく。ここで打席に迎えるは4番の主将、横尾俊建(総4)。この局面で法大の森田、中村の1年生バッテリーは強気の全球内角勝負に出た。これに対し最後は森田のストレートに横尾のバットが空を切り、ツーアウト。続く齋藤大輝(商3)がフォアボールを選び満塁としたものの、後続が続かず先制機を逸した。

2回以降は森田が立ち直り、2回から3回にかけて4者連続三振を喫するなどチャンスを作ることができない。対する慶大の加藤拓も、140キロ台後半の直球にスライダー、スプリットを織り交ぜ法大打線に的を絞らせない。

4回2死満塁、谷田の好返球で二走の蔵桝が本塁タッチアウト。捕手須藤

4回2死満塁、谷田の好返球で二走の蔵桝が本塁タッチアウト。捕手須藤

しかし4回、簡単に2つのアウトを取ったあと、加藤拓が突如乱れた。5番の柴田にこの試合初めてのフォアボールを与えると、その後2人続けて10球以上粘られ、結局3者連続四死球を与え2死満塁のピンチを迎えてしまう。打席には1年生キャッチャー、8番の中村。カウント2-2と追い込んでからの5球目、決めにいった直球をライト前へ弾き返され、先制点を与えてしまう。それでも二塁走者は谷田の好返球で刺し、最少失点に抑えた。

すぐさま反撃に転じたい打線はその裏、2死から初の開幕スタメンを勝ち取った沓掛祥和(商3)が「完璧に近い形で打てた」とセンターへのクリーンヒットを放つ。続く北村祐樹(商4)も三遊間を鋭く破り、さらに四球で再び満塁のチャンスを作るも、9番加藤拓は森田のこの日最速146キロの直球に空振り三振。2度目の満塁のチャンスもものにすることはできなかった。

5回以降の加藤拓は、ピンチを迎えてもあと1本を許さず、「先発としての役割を果たせたと思う」との言葉通り7回を1失点にまとめた。7回表は無死満塁の局面を作ってしまったものの、2者連続三振とショート山本泰のファインプレーで追加点を与えなかった。

二塁打を含む2安打と、一人気を吐いた北村

二塁打を含む2安打と、一人気を吐いた北村

加藤拓の後を受け、8回表から登板した加嶋宏毅(商4)もスライダーが冴えわたり、打者6人をパーフェクトに抑える快投を見せた。

しかし、オープン戦好調だった打線は投手陣を援護することができない。6回には北村がこの日2安打目となる二塁打を放つも、後続が続かなかった。7回から法大は森田から川名にスイッチ。その川名に対し慶大打線は手も足も出ず、結局7回以降一人のランナーも出すことができなかった。最終回の代打攻勢も実らず、慶大は大久保監督の初陣を勝利で飾ることはできなかった。

「春秋連覇」を掲げて臨んだ今シーズン、いきなり初戦でつまずいてしまった慶大。主将の横尾が「今年は打のチーム」だと述べていたものの、開幕戦は1年生のニューヒーロー、法大森田の前に打線が完全に沈黙してしまった。「「(森田投手が)立ち上がりにバタバタしているところでつけ込みたかった」という大久保監督の言葉通り、初回の慶大の攻撃がこの試合を分かれ目だったと言えよう。しかし、投手陣は加藤拓が開幕投手としての責任を十分に果たし、昨春の優勝に先発として大きく貢献したリリーフの加嶋も、素晴らしいピッチングを披露した。守備においても、ショート山本泰が面目躍如の2つのファインプレーで球場を沸かし、谷田も補殺を記録するなど光るものが多く見られた。開幕戦に勝利することはできなかったが、まだ1試合が終わっただけである。「打線は水物」(北村)であり、今季の強力打線が爆発するのもそう遠くはないはずだ。大久保監督は試合後、明日以降への意気込みを力強く述べた。 「やられたら、やり返す。」

 

【Today’s Legend】 完全復活遂げた新クローザー 加嶋宏毅

最終学年を迎える加嶋の投球に注目だ

最終学年を迎える加嶋の投球に注目だ

 

昨春は主に各カードの初戦で先発し、優勝の立役者となった加嶋。しかし優勝をかけた早慶戦の直前に故障し、離脱を余儀なくされた。そこからじっくりリハビリを行い、秋の早慶戦で復帰登板。そして今春のオープン戦で数多くの実戦登板を重ね、今日のマウンドに立った。結果は打者6人パーフェクト。直球とスライダー、チェンジアップのコンビネーションで法大打線を手玉にとり、頼れる左腕がついに完全復活を遂げた。「クローザー指名を受けた」と話す加嶋が、今季の慶大の最後を締める。

 

 

記事:菅谷

 

◆打撃成績

   
[6] 山本泰 一安   空三振   空三振   空三振    
[8] 梅野 投ギ   空三振   三振逃   左飛    
[9] 谷田 死球   右邪飛   二ゴロ     遊ゴロ  
[5] 横尾 空三振     三ゴロ 二飛     三ゴロ  
[7] 齋藤 四球     二ゴロ   一ゴロ   空三振  
[3] 沓掛 二飛     中安   空三振      
重田                 遊ゴロ
[4] 北村   三ゴロ   左安   右中2      
山口                 空三振
[2] 須藤   見三振   四球   空三振     空三振
[1] 加藤拓   空三振   空三振          
濱田             三ゴロ    
加嶋                  
◆投手成績
  投球回数 打者数 球数 安打 三振 四死球 失点 自責
●加藤拓 32 132
加嶋 16
 

◆監督・選手コメント

大久保秀昭監督

(慶大初采配を終えた今の気持ちは)勝てなくて残念です。(試合前には選手にどんな言葉をかけられましたか)今年やってきたことを出す最初の試合、つまり最初の発表会だということで、良い発表会にしようよということを言いました。(開幕投手の加藤拓投手は良い投球内容でしたね)そうですね、理想はゼロに抑えることでしたけど、それでも最少失点でまとめたし、本人は勝ちにつながるピッチングをしなければという思いは当然あったと思いますけど、十分仕事はしたと思います。(大方の予想に反して法大は森田投手が開幕投手でしたが)本当は立ち上がりにバタバタしているところでつけ込みたかったというのはあります。投げていくうちにだんだん調子を上げていったという感じでしたし。(初回の攻撃がキーポイントだったということですか)そうですね、まぁまぁ、仕方ないです。(オープン戦好調だった打線については)いやオープン戦でもこういう打てない日もありましたからね。(それがたまたま開幕戦だったと)そうそうそう、初物ということでやられちゃったかなという感じです。(守備面については山本泰選手の好プレーや谷田選手の好返球もありました)守りに関してはしっかりやっていたので、あとは攻撃にどうやってつなげるかということだけです。(明日の試合に向けて一言)やられたら、やり返す。

横尾俊建主将(総4)

(今日の試合を振り返って)9イニングずっと緊張感のある試合ができたので、負けたのは仕方ないかなと思います。(満塁のチャンスが2度あったが)うちもそうですけど、相手もチャンスがあったので紙一重の試合だったと思います。明日に向けて切り替えたいです。(法大の森田投手の印象は)いいピッチャーですけど、打てないなという感じではないです。次はこのカード3戦目でまた投げてくると思うので、明日勝って3戦目にリベンジしたいなと思います。(初打席の自打球の影響は)痛かったですけど、それ以降の打席に影響はないです。(神宮球場の芝が変わったが)ゴロが取りやすくなりましたね。(明日に向けて)すぐ切り替えて今日も帰って明日の準備をしたいと思います。

加嶋宏毅(商4)

(本日の試合をふりかえって)相手投手がいいピッチングをしていたと思います。(今季はどのような気持ちで望んでいるか) ケガをしたことで、一緒に練習していた2軍、3軍の試合に出れない人たちの悔しさをわかることができたので、神宮で試合に出られる喜びを最終学年になって思い出すことができました。だから今日は楽しんでやろうと思ってマウンドに上がりました。(2イニングを完璧に抑えたが、よかった要因は)ボールが低めに決まっていて、自分の持ち味が出せたと思います。(今季の役割は)クローザー指名を受けたので、自分の役割を果たせればと思います。(明日以降に向けて)負けましたが、明日明後日勝てば勝ち点をとれるので全力で頑張っていきます。

北村祐樹(商4)

(今日の試合を振り返って)僕自身としてはオープン戦でやってきたことを出せたとは思うんですけど、チームとしては”打線は水物”というように最近繋がっていなくて、今日はそれが露呈する試合でした。 (チームの4安打中、2本を放ったことについて)調子自体はよかったのですが、たまたまだったと思います。(オープン戦での手応えを今日の試合でも感じられたか)自分自身の、バットを内側から出すというテーマ通りにできたかなとは思います。でもやはり中々難しいので、練習から考えてやっていました。(チームの打撃について)最近落ちているかなと感じたんですけど、何かがきっかけでまた急に変わるかもしれないので、また明日頑張ります。(寒さの中での試合だった)最近は気温が低かったこともあって準備をしっかりするようにチームでも話していたので、そこはしっかりできていたと思います。(明日に向けて一言)明日も自分の役割を全うして、勝利に貢献できるように頑張ります。

谷田成吾(商4)

(1点が重い試合となりましたが、振り返ってみていかがですか)加藤がすごく踏ん張ってくれていたので申し訳なかったです。(初対戦の森田投手への準備は)ビデオは見ていたんですが、実際打席に初めて立ってすごくいいピッチャーだなと思いました。(具体的にはどのような点ですか)真っすぐがすごくよかったなと。あと変化球もわりと多く投げていて全部うまく決まっていました。4回の守備では走者を刺す場面がありました)そうですね。あれはたぶん無理やり暴投狙いで走ったんだと思いますが、しっかり投げればアウトになると思ったのでよかったです。(まだ1試合負けただけですね)そうですね、まだ始まったばかりなのでまずは明日しっかりと勝てるように準備していきたいと思います。

山本泰寛(環4)

(今日の試合を振り返って)うちも投手を中心に粘り強く守ったんですけど、相手が一枚上だったということだと思います。(守備では良いプレーがいくつかあったが)自分が出来ることをしっかりやるだけなので、それが出来たことは良かったと思います。(法大先発森田投手の印象は)1年生らしく、思い切りストレートや変化球を投げていたので、そういった部分にやられてしまったのかなという感じです。(明日の試合に向けて)明日はもう絶対負けられないので、1イニング1イニング集中して、チャンスでは打って、守備面ではしっかり守れるようにしていきたいです。

加藤拓也(政3)

(本日を振り返って)先発としての仕事を果たせたかといえば果たせたと思います。でも結果的に負けてしまい、自分のチームが点を取るまで点を与えないということはできなかったのですごく残念です。(緊張はありましたか)今年初めての試合なので初めは緊張したのですが、投げているときは緊張しませんでした。(初回は気合入っているように見えたが)いつも通りのつもりでした。(相手ピッチャーは昨夏甲子園を沸かせた森田くんだったが印象は)いいピッチャーだと思いました。4回は3アウト目がなかなか取れない中監督からどのような声をかけられたか)特に何もなかったのですが間をおいてもらいました。(明日に向けて)2連勝して勝ち点取れるように頑張ります。

沓掛祥和(商3)

(開幕戦、どのような気持ちで臨んだか)オープン戦は前半いい形で、後半少し負けてしまっていたんですけど、チームとしては落ち込んでいなくて、やってやろうという感じでした。(個人としては開幕スタメンを勝ち取った)オープン戦でも、結構試合に出していただいたので、心の準備はしていました。でも打てなかったらすぐに代えられてしまうと思って、気を引き締めていたんですけど、初回の満塁で打てなくて残念でした。(法大・森田投手を打ちあぐねてしまった)変化球も真っ直ぐも凄くいい投手だと思いました。しっかり対策したいと思います。(2打席目はクリーンヒットでした、感触は)あの辺りはかなり完璧に近い形で打てたと思います。(明日に向けて)打撃もそうですが、一塁の守備でも細かいミスを何個かしてしまったので、しっかり修正して明日絶対勝ちたいと思います。

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