【ソッカー(女子)】関東リーグ前期第6節 3失点も分厚い攻撃で今季最多3得点、今後につながるドロー 尚美学園大戦

前節、慶大はリーグ最下位の前橋育英高校を相手に勝ちきれず、思うように勝ち点を伸ばせなかった。1年での1部復帰に向け、そろそろ勝ち点3が欲しいという中で迎えた今節だったが、開始早々にカウンターから失点。いきなりビハインドを負う展開となってしまう。しかしこの日の慶大はいつになく攻撃的な姿勢を見せる。17分、小川のゴールで同点とすると直後の19分には再び小川。左足から放たれた鋭いシュートが決まり一気に逆転に成功する。そのまま流れをものにしたい慶大だったが、23分に相手に一瞬の隙を突かれ得点を許してしまう。前半はそのまま2-2の同点で折り返す。後半開始早々には志鎌のゴールで再びリードするも、59分にはまたもカウンターから失点し追いつかれた慶大。結局試合はそのまま3-3で終了し、3試合ぶりの勝利とはならなかった。

 

第23回関東女子サッカー2部リーグ 前期第6節

 

2017/05/27(土)15:00KO@尚美学園大学サッカー場

 

尚美学園大学3-3慶應義塾大学

 

【得点者(アシスト者)】

〔尚〕6分 小川さつき、23分 関恵理子、59分 中山さつき

〔慶〕17分 小川愛(勝木日南子)、19分 小川愛(中島菜々子)、49分 志鎌奈津美(工藤真子)

 

◇慶大出場選手

GK野村智美(4・作陽高)

DF佐藤幸恵(1・十文字高)

DF奥本くるみ(2・浦和レッズレディースユース)

DF熊谷明奈(1・十文字高)

DF 足立智佳(1・大阪桐蔭高)

MF松木里緒(2・常盤木学園高)

MF中島菜々子(3・十文字高)

MF工藤真子(4・日テレ・メニーナ)

MF小川愛(1・神村学園高)

FW勝木日南子(2・大和高)

FW志鎌奈津美(3・常盤木学園高)72 山本華乃(1・山手学院高)

 

前節、得点力不足を露呈し下位相手に勝ちきることができなかった慶大は、勝ち点3差で一つ下の順位にいる尚美学園大との試合に臨んだ。第3節・国士大戦以来勝利から遠ざかっており、1部昇格に向けてそろそろ白星が欲しいところ。メンバーは前節から2人が代わり、右サイドバックに足立智佳(環1・大阪桐蔭高)が、トップの位置に志鎌奈津美(環3・常盤木学園高)が入る。

 

前半、まず先手を取ったのは慶大だった。2分、ペナルティーアーク手前でボールを持った志鎌が左の松木里緒(環2・常盤木学園高)へパスを出すと、これを受けた松木が左足でグラウンダーのシュート。惜しくも相手GKに阻まれてしまったが、慶大が一つ攻撃の形を見せる。しかし、先制したのは尚美学園大だった。6分、低い位置でボールを奪われるとそのままカウンターを受ける。最後はゴール前でフリーになっていた相手選手にシュートを許し失点。だが、この日の慶大はいつも以上に攻撃的な姿勢を見せる。中盤で中島菜々子(総3・十文字高)や工藤真子(総2・日テレ・メニーナ)を中心に積極的にボールを奪うと、前線の志鎌を中心に攻撃を仕掛けていく。そして迎えた17分、その姿勢が実を結ぶ。ペナルティーアーク付近でボールを持った小川愛(総1・神村学園高)が右の勝木日南子(総2・大和高)とのパス交換でゴール前に抜け出すと、相手GKとの一対一を冷静に決めて同点に追いつく。小川の2試合連続のゴールで勢いづいた慶大は続く19分、中島からのパスを受けた小川がペナルティーエリア手前で左足を振り抜くとこれが見事にゴール左隅へ。「もう足を思いっきり振り抜きました」という小川が2分で2ゴールを挙げ、慶大が一気に逆転に成功する。さらなる追加点を狙う慶大だったが、23分にミドルシュートを決められてしまい失点。再び試合は振り出しに。その後も志鎌や小川を中心に分厚い攻撃を見せた慶大だったが、そのまま前半は終了。2-2で試合を折り返す。

 

エンドを入れ替えた後半はいきなり試合が動いた。49分、相手陣内でこぼれ球を拾った工藤がそのまま左サイドを突破。相手DFを抜き去り中央にグラウンダーのクロスを送ると、ゴール前に走りこんでいた志鎌がスライディングでこれに合わせて勝ち越しに成功した。志鎌が「練習通りの形」というプレーで今季リーグ戦初ゴールを決め、再びリードする。その後も慶大は工藤などを中心に中盤でボールを動かし、主導権を握った面白いサッカーを見せる。57分には松木がクロスバーをたたくシュートを放つなど追加点のにおいがしてきた、そんな矢先の59分だった。「リスクマネージメントの部分が、少し前がかりになった分、怠ってしまった」と伊藤洋平監督が話すように、チャンス後のカウンターからまたしても失点。野村智美(総4・作陽高)主将が「相手の戦い方に対応するということができていなかった」と振り返ったように、再三ディフェンスラインの裏を狙ってくる相手に対して対応できずまたも同点に追いつかれてしまう。72分には志鎌に変えて山本華乃(理1・山手学園高)を投入。攻撃陣のさらなる活性化を試みるも得点は生まれず、試合はそのまま終了。打ち合いとなった試合は3―3の痛み分けとなった。

 

2試合勝ちがない中で臨んだ今節は、前節露呈した「得点力不足」という課題に取り組んだ成果がよく見られた試合だった。しかし、それと同時に3失点は今季ワースト。「今までは少ない失点が評価できていた部分だったんですけど、そこが失われてしまったので、それは別にトレードオフじゃないというか、両立できるものだと思っている」という伊藤監督の言葉通り、今後はその両立が求められている。守備はもともと慶大の強みでもある。この試合でも奥本くるみ(環2・浦和レッズレディースユース)がゴールライン際で体を張ったクリアを見せるなど、その力は十分だ。あとは、それをチーム全体でいかに連携を取ってやれるか。そこが上位定着、そして1部昇格に向けての一番の課題だろう。しかし、毎試合成長が見られるこのチームは必ずそのサッカーを見せてくれるに違いない。成長著しい慶大のなでしこたちに、今後も要注目だ。

 

(記事 岩見拓哉)

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試合後コメント

 

伊藤洋平監督

(試合を振り返って)引き分けに終わったんですけど、収穫のとても多い、良い材料と修正すべきところがよく見えた、そんな試合だったと思います。そういう意味では良い試合だったと思います。(具体的な収穫と修正点は)前節得点力不足という課題を露呈したので、今週1週間は点を取るためにどうするのかというところをやってきたのでその成果は出たと思うんですけど、一方で失点が3という、今までは少ない失点が評価できていた部分だったんですけど、そこが失われてしまったので、それは別にトレードオフじゃないというか、両立できるものだと思っているので、そこの最適解を見つけていきたいなと思います。(今日は分厚い攻撃が見られたが、どんなところをポイントとして挙げていたのか)攻撃の優先順位というのをもう一度確認したのと、プレーモデルというのがあると思うんですけど、それのバランスというか、相互関係というか、そこらへんを一回整理しました。(3失点を喫したことについて)もちろんリスクを冒せば得点のチャンスも増えてくると思うし、逆に(リスクを)冒すことで失点のピンチというか、可能性も広がると思うんですよね。だからそこのリスクマネージメントの部分が、少し前がかりになった分、怠ってしまったのかなと思います。(相手は積極的にディフェンスラインの裏を狙ってきていたが)もちろん前から情報としてはあったんですけど、ああいうどんどん蹴ってくる相手に対して、最初はちょっと動揺してしまっていたんですけど、徐々に対応してきて、後半とかはこぼれ球も拾えていたので、しっかり大学リーグもこのリーグも勝ち上がりができるように、良い準備をしていきたいと思います。(3-3になってからはどんな指示を出していたのか)後半は山本華乃を入れて、(相手に)良いボールを前に入れさせないという守備の部分と、あとはお互い間延びしていてあっちも間延びしていたので、スペースのある所で生きるスピードのある山本華乃を入れて、そういう風に勝負しようということを本人には話しました。(交代枠を一つしか使わなかったが)そうですね、結構難しい試合で悪くなかったんで、下手に動いて流れを相手に持っていかれることを恐れたというのはあります。(次節に向けて)本当に毎試合課題と良い部分が出て、1試合1試合成長していると思うので、また次の1週間を、本当に自分たちの課題と向き合って、次こそホームで久々の勝利をあげられるように、良い練習をしていきたいと思います。

 

野村智美(総4・作陽高)主将

(試合を振り返って)前線が3点も取ってくれたのに、後ろが守り切れなかった、特に自分が安定しなかったことに対しての反省しかないです。(非常にスコアが動く試合となったが、そうなった要因は)自分たちは前節からの反省として攻撃的に行こうと話していて、シュート数が少なかったりシュートを打つ位置が低くなっていることが、ここ2、3戦の結果につながっている課題だったので、前向きに行こうとしていました。相手にも点を取られた要因としては、相手のシンプルに縦に速いサッカーに自分たちが対応しきれなかったことが失点につながってしまったかなと思います。(攻撃的にという姿勢が守備の綻びを生んだのか)いや、でも自分たちとしては攻撃的に出る分後ろもしっかり押し上げようというふうに今週1週間やってきていて、紅白戦でも形はできていました。その一方で、相手の戦い方に対応するということができていなかったのかなと思います。(特に1失点目はあっさりとした形だった)そうですね。ロングボールをシンプルに入れてくる相手とは最近やっていなくて、自分たちとしても苦手としているというか、スペースを作られてそこを使われて、というのはかなりやりづらい相手で、あっさりやられたように見えてしまったのかなという印象です。(優勝、昇格を目指すなかでここ3戦勝ち点を落としている)自分たちとしては目標をぶらさずやっていきますし、そのために必要なことを常に考えて行動しているんですけど、目標が遠くなっているのは事実ですし、今まで以上に気を引きしめて戦わなくちゃいけないなと思います。(次節に向けて)ここ最近ずっと言っているんですけど、前線も良くなってきたなかで、前線が決めた分後ろが守ってという関係を大事にしながら、次こそ勝利したいと思います。

 

志鎌奈津美(環3・常盤木学園高)

(試合を振り返って)今まで得点力不足が課題だったので、3点取れたことは大きいと思っています。ただ、カウンターでの失点というのが今まで通りはっきりと課題として残ったので、修正したいと思います。(結果的には追いつかれてしまったが、一時は勝ち越しとなるゴールを決めた)嬉しかったです。ずっと決められていなくてやっと決められたので、これからにつながる1点だったと思います。(サイドからのボールに走り込んで合わせたチャンスは前半にもあったが、得点パターンとして意識しているか)そうですね。あとチームとしてもずっとサイドからのクロスに合わせる練習をしていて、本当に練習通りの形で入ったので、チームとしても良い成果だったと思います。(得点力不足が課題だった中で、FWとして感じていたことは)やっぱり自分が決めなきゃいけないとは感じていましたし、どこがで誰かが1点決めればどんどん入るような試合展開がこれまでもいっぱいあったと思うので、とにかく1つ1つ大事に得点につなげていくことが大事だと思っていて、絶対に決めたいと思っていました。(今日3得点を奪えたのは、何が上手くいったのか)今日は前節よりも前に枚数を掛けられたということと、攻守の切り替えを速くできたと思います。全員が意識していたことなので、速く切り替えて大勢でゴール前に入っていくとか、そういうことができたと思います。(今季は10番を背負っているが、監督やチームメイトの期待や信頼を感じるか)そうですね。やっぱり今までの10番の人たちを見ても、みんなチームを引っ張れる人たちなので、自分もちゃんとそれをつないでいけるというか、10番としてチームに貢献していかなきゃいけないと思うので、期待とかを感じつつ、頑張っていかなきゃと思っています。(今季は1年生で技術のある選手が多く入ったが、ポジション争いなどで良い刺激を受けているのでは)そうですね。すごく上手い選手がいっぱいいて、ポジション争いもそうですけど、1年生の良いところを引き出して合わせていくことでさらに上を目指せると思うので、チーム一丸となって頑張っていきたいと思います。(次節に向けて)修正していかなきゃいけないところはしっかり修正しつつ、攻撃面で成果が出たところはさらに良くしていけるところをもっとみんなで合わせていって、次は絶対に勝ちきれるように頑張りたいと思います。

 

小川愛(総1・神村学園高)

(試合を振り返って)チームの課題だった点が取れないという部分では、3点取れたので良かったと思うんですけど、やっぱり失点が多くて、勝ちきれないというところがチームの課題かなと思いました。(2試合連続でゴールをあげたが)チームでもシュートが少ないというのが課題だったので、自分が前の選手ということで、自分で点を決めるという強い気持ちを持ってゴールに向かおうということを考えていました。(ゴールのシーンを振り返って)1点目も2点目も味方からすごく良いボールが来て、ゴールまですごく良いイメージを持ってタッチできたので、もう足を思いっきり振り抜きました。(今日の狙いは)まず早い時間で1点を決めて、自分たちのペースにするということと、今まで1点しか取れない試合で失点して同点とかが多かったので、2点以上取って勝ちたいという気持ちを持って試合に臨みました。(周りとの連携は)なかなかゴールまで向かえなかったときに比べたらパスとか間の抜け出しとか、お互いに合ってきている部分は増えてきているんですけど、まだまだ合わせるところはあると思うので、これから練習で詰めていきたいと思います。(この1週間はどんな練習をしてきたのか)とりあえず、前線の選手がアクションを大きく起こすということと、ボールを持った選手に対してタイミング良く、ボールが来ても来なくても大きく動き出すというところと、あとはやっぱり、自分たちのベースである切り替えの速さも徹底して練習しました。(次節に向けて)次節も、いろいろな方が応援してくださっていると思うので、その方々のためにも、チームのためにも、自分が点を取って勝ちたいと思います。

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