【應援指導部】激動の2022③ 2年生対談~自分たちが作り上げる新しい応援の形~

應援指導部

ツールの共有や2部門体制への移行。應援指導部89年の歴史の中でも2022年は大きな変革があった1年だった。今回お話ししてくださったのは吹奏楽団2年のTさんとチアリーディング部2年のHさん。いち部員として取り組んだことや、変化した應援指導部についてどのように感じたかなど、1年を振り返りながら語ってくれた。

 

――他己紹介

Hさん:新鮮な組み合わせだから……(笑)

T君です。経済学部の2年生で、應援指導部の2年生をまとめてくれるリーダーシップのある頼れる同期です。

Tさん:Hさんは経済学部で、何にも染まっていないところがあります。純粋に部活を楽しんでいるというイメージがあります。

 

――入部理由は

Hさん:早慶戦に行く機会があり、応援が楽しくてやりたいと思いました。一番は踊ることが小さいころから大好きで、その踊りができることに加えて大好きな応援ができるのはこの部活しかないと思い入りました。

Tさん:塾高(=慶應高)時代から応援に携わらせていただき、1回出会った仲間たちの大学生活を応援しないわけにはいかないという使命感もありました。他団体では演奏をホールの中で楽しませることはできるが、屋外でお客さんを呼んだり選手を後押ししたりできるのはどこでもなくうちしかないので、入部しました。

 

――2022年印象に残っている応援は

Hさん:秋の野球の慶早戦です。内外で応援することが初めてだったし、お客さんがあんなに入った神宮球場を見るのも初めてでした。一貫校の企画など、コロナによる制限が緩和されて今までできなかったことができるようになり、様々な挑戦ができたのですごく印象に残っています。

秋は内野席にもメイン台が設置された

Tさん:1つは野球の慶早戦で、春秋どちらも印象に残っています。春は外野にお客さんがいる慶早戦が戻ってきて、今までは「我々のエリア」でしたが、その時は「これが応援席か」と感じられました。秋は内外でしたが、試合前企画は内野だけで行いました。その時の演奏人数が塾高生を含めて60、70人で、自分が指揮を振ってチャンスパターンを轟かせたのですが、「どこにも負けないな」と一音目で感じました。慶早戦は特別な舞台だが今までは制限もあり部員も少なく、思うようにいきませんでしたが、慶早戦の特別感を継承することができて、盛り上がりを作り上げることができたと思います。

――やはり野球が印象に残っているのですね

Tさん:今は演奏が野球くらいしかできないです。野球は復活できましたが、もう少し狭い屋内での応援ですと、チアリーディング部は行けますが演奏はダメということも多いです。吹奏楽団の人数の問題もあります。アメフトは1回だけ演奏ができましたが、野球しか演奏できていないことが今年の課題でもあったと思います。

Hさん:私は侍ジャパン(野球 侍ジャパンU―18壮行試合 高校日本代表vs大学代表)も印象に残っています。ナイター試合で神宮とも雰囲気が違って楽しかったです!

――慶早戦で印象に残っている企画など

Hさん:自分が慶早戦の有志でグッズを作ったのですが、それが実現できたことがうれしかったです。また、チアリーディング部員が踊るステップス企画で、男子部員と女子部員が合わさってメイン台の上で踊り、今年1年が目に見えた形でした。新しい体制になってチアリーディング部に男子部員が増え変化が大きかった中で、本当にチアリーディング部員になったと慶早戦の舞台で感じられて、新鮮でうれしかったです。

Tさん:僕は一貫校企画です。今年は他団体は厳しかったですが一貫校は呼ぶことができました。学校としては他校ではありますが、同じ慶應義塾の中で縦のつながりが復活できたことがうれしかったです。今年は、塾高吹奏楽部、塾高應援指導部、女子高(=慶應女子高)バトン部が合わせて50人ほど参加してくれました。招待でも、女子高と志木高(=慶應志木高)やSFC(=慶應湘南藤沢中高)も中3と高3が来てくれました。それが実現できて、そこから未来の応援好きな人や應援指導部員が生まれると思います。高校のコーチをやっていることもあり、メイン台に一貫校生を乗せることができてうれしかったです。彼らもコロナで今年まで応援すらできなく、応援には興味ないという高校生が多かった中で、ステージに立つまでに成長してくれました。立って目の色を変えて、みんなそれぞれ思うこともあったと思います。そういう経験をさせられたのがうれしかったです。

吹奏楽団に所属し活躍するTさん

――今年務めた係や担当など

Hさん:私は1年生の秋に野球の慶明戦のサブサブになってから今年の春も秋もずっと慶明戦でした(笑)。明治は強いので慶明戦は天王山で一番熱くなれる試合ですし、自分が一番熱くなっているからかもしれませんがみんなの思いが強い試合だと感じています。結果として春は負けてしまいすごく悔しかったので、秋は自分がサブサブとして絶対に勝とうと思っていた中で勝ち点を取ることができて本当にうれしかったです。他の部員は早稲田のイメージが強いと思いますが、私はサブサブをやったことで明治線への思い入れも強く、「孔明」という明治戦でしか使わない曲もありますし、人一倍楽しみにしています。

Tさん:僕は広報をやりました。1年生の時から広報はキーで変えないといけないと思っていました。吹奏楽団の部員がほしい時期ですし、再建して2部門体制になりこれが慶應の形だと見せるに当たり、決めても発信しないと意味がないので、広報を変えていかないといけないという思いがありました。広報は各学年から選ばれた2名だけでやっていたのを今年は投稿を管理する人とは別に動画などを作る人などを有志で募りました。また、広報はチアを撮ることが多く、應援指導部と言ったらチアはイメージがつきますが、吹奏楽団は思い浮かべない人が多いです。自分が「應援指導部の吹奏楽団で……」と言っても「どういうこと?」と言う人もいるくらいなので、太鼓をたたいている人や踊っている人たちと同じく演奏している我らもいるということを伝えたかったです。チアリーディング部員の男女に比べても、応援席では吹奏楽団だけ「ただの関係者」のように見られるのは悔しかったので、体育会生や塾生にも我らもいるといことを知ってもらいたかったのと、新歓でも應援指導部で演奏するという選択肢を持たせるという趣旨で広報を1年間やっていました。

 

――明大戦は盛り上がりますよね

Tさん:慶早戦は今回は年齢層が高い方だけでなく結構(若い人も)いたよね。あとは子ども連れの親子とかも増えてきました。それより前の試合は来ないよね……

Hさん:一貫校生は「慶早戦」という名前でいっぱい来ますが、慶明戦は本当に野球が好きな人が来るというイメージです。

もちろん慶早戦にも来てほしいですが、言ったら全試合に来てほしいです(笑)。

 

――應援指導部は変化の1年、下級生視点で感じること

Hさん:今年は應援指導部にとって変化の多い1年だったように感じています。チアリーディング部と吹奏楽団の2部門体制となり、新しい形で應援指導部が動き始めました。応援指揮や塾旗への部門を越えての参加や、チアリーディング部員が吹奏楽団に混ざって神宮で演奏するなど新たな試みがなされ、應援指導部員として部門の垣根を越えた活動が様々な場面で見られるようになりました。新体制となり普段の練習や神宮での部門を越えた活動を目の当たりにし、應援指導部の一つの組織としての一体感をより一層感じています。今年1年は全部員でのミーティングが多く、他部門の上級生や下級生など普段の練習ではなかなか顔を合わせることがない部員ともコミュニケーションの機会が増えたことも部員同士の結束を強くしていると思います。また、ミーティングによって應援指導部や自分自身と向き合う時間も増えたように感じます。ほとんどの部員が應援指導部の活動に対して各々の意見を持てていると思います。

4年生の方々が一人一人の部員を應指導部の一員として大切にしてくださり、下級生の意見も多く吸い取ってくださり、例年に比べて下級生の声が通りやすい1年だったように感じます4年生の方々がそのような環境を作ってくださったので、新体制になるという應援指導部にとって初めての状況でも、学年関係なく全部員が同じ方向を向いて活動することができました。私たち下級生は来年以降、今年挑戦した部門を越えた活動や組織の体制を部に定着させる使命があるので、今まで以上に應援指導部や一人一人の部員と向き合っていきたいと考えています。

Tさん:全部員ミーティングや2年生以下ほぼ全員が参加した慶早戦有志が良かったです。今までは「吹奏楽団」や「メジャレッツ」に固着していた部分があったのですが、全体で応援を作っていくという意識が生まれ、そのコミュニケーションができたことが今年の功績だと思います。

自分視点で変わったと思うことは部員の向き合い方です。部門に固着せずにということもですが、自分でツールを選択できるようになったので、自らが選んだルーツに対して周りがやっているからやるのではなく、自ら追い求めないといけない環境になりました。一人一人の成熟度や向き合い方が例にないと思いました。また、今まで各部門の2年生が1年生に教えるという既定路線がありましたが、今は部門学年問わずツールに参加しているので今まで以上に普段関わったことのない先輩がアドバイスをしてくれたり、吹奏楽団では上下関係なくアドバイスをし合ったりできています。部門の上下で完結していたものが、自ら選んで参加したツールで全員で高め合っていて、それがツールごとさらには応援という全体の枠組みでも(全員で高め合う形に)近づきつつあると思います。みんなで作っていると感じられたことは進歩ですし、昔を知っている4年生も「今の応援が一番楽しい」と言っています。数年前まで客側で見ていた自分から見てもそう思うので、今のみんなでアイコンタクトを取って1+1を3にも10にも100にもしていくような雰囲気が今の慶應だと感じています。

 

――来年以降どういう應援指導部が理想か

Tさん:今年は大きな視点での変化はできたと思いますが、来年は小さいことを見ていかないといけないと思っています。大きな波に乗って進みましたが、一人一人の部員の声を吸収できたかと言われると、難しかったと思います。来年は新生應援指導部2年目なので、小さなこと細かいこと、全部員ではなく一人一人と向き合うところを意識していきたいです。再建面だけではなく、応援でも一人一人の特徴を引っ張り出せているかと言われればそうではなかったと思います。

また、塾内でも應援指導部が昔ほど知名度もなくなり、処分もされ、コロナ後にようやく復活しました。昔のような花形ではない中で應援指導部や慶應にどれくらい誇りを持てるのかと思っています。みんな外側に魅力を発信したり、応援を強化したりすることは考えるとは思うので、(内側に対してもそうして)部員の誇りを取り戻したいです。今すごく良い環境で楽しいとは思いますが、胸を張って「應援指導部です」や他大学に対して「これが慶應の応援です」と言えるかを考えると、まだ不完全な部分が多いです。だからこそ詰めるところは詰めて、「これが應援指導部だ」「これが慶應だ」と言えるようにしたいです。

「部員の誇りを取り戻したい」と語るTさん

Hさん:私も同じだと思っていて、今年は新しい挑戦が多かった1年で来年以降はそれを安定させていかないといけないということを全員が思っています。今年取り組んだことを来年以降より良い形で定着させていく上で、処分解除されたから終わらせるのではなく、全部員ミーティングも継続して、全員が部門関係なく同じ方向を向くということが一つの応援席を作る上で絶対に必要で大切なことです。部員同士のコミュニケーションや意見を言い合える今の環境を大切にしていかないといけないと思います。

理想はこの間、(前)三将の齋藤英里伽さんが「今の2部門化した應援指導部に誇りを持ってほしい。これからの応援を引っ張っていくのは慶應で、2部門体制が日本の応援に新たな風を吹かせる」と言っていました。素敵な考え方で自分たちの応援席に誇りを持っていると思います。どの部員も慶應の応援席が日本一、世界一だと思っていて、応援が大好きだからこそ自分たちの組織の体制が安定しない状況でいろいろ思っていることはあると思います。それによって不安定にならずにこれから新しく始まるって来年自分たちが上に立つ代として、部自体も応援も一から作り上げるという気持ちです。今年1年4年生の背中を見てきたので、どういう部活にしてどういう応援にしたいかを、ずっと考えていきたいと思っています。

 

――2年生はどういう特徴のある代か

Hさん:部活が大好きだよね(笑)。

Tさん:例にないくらい仲がいいんじゃない? 部活だとやらないといけないという使命感もあってわだかまりもできやすい中で、我らの代はないです。

Hさん:また、自分から部に貢献したいと前に出ていく部員が多いです。

Tさん:意見がうまく言えなくても何か秘めたものがあり、言わずに動いている子もいるし、意見を言いに行く子もいます。自分のキャラクターに合わせて部に貢献していると思います。

 

――4年生の言葉を聞いて

Tさん:今までの再建は4年になってから1年間頑張るものでした。僕は2年生からいるので、この部を3年間かけて目標に向かって取り組めるのですごくありがたいです。1年間だと課題が見えて終わってしまいますが、3年間同じ位置で考えられるのはすごく大きいと感じます。

Hさん:4年生が下の意見も大事にしてくれるから、私たちの意見が通っているので、上級生の器の広さや下の意見を汲み取ろうという雰囲気がありがたかったです。

Tさん:100人いる部だと汲み取るのも大変で、それをやり切ったのがすごいです。(乃坂さんは)ちゃんと100人分のGoogle Formを読んでいました。

Hさん:チアリーディング部員は毎日練習後に、「チアノート」に今日の振り返りを日記のように書きますが、トレーニングチーフのNさんも全員分ほぼすべての練習後に読んでいました。

Tさん:今の4年生はそこがすごいです。応援の目標もすべて読んでいます。4年生だけなら20人の意見でいいものを、1年生から4年生の120人の意見をしっかり聞く姿勢がすごいです。

チアリーディング部員として活躍するHさん

――今後の意気込みは

Hさん:感染症により昨年までは数多くの応援が制限され、現地に足を運び応援することのできるスポーツが限られていましたが今年は様々な会場で直接選手を応援することができました。應援指導部は応援が本業なので、その応援にたくさん参加させていただけるようになったことはやはり大きな変化だと感じます。昨年までなかなか応援に行けなかったからこそ今年多くの応援に参加し、応援できるありがたさをより一層感じられました。来年は今年以上に多くの応援に参加して、慶應の勝利を後押ししたいです!

Tさん:「コロナ前」など過去を越えるということを言われがちで、OBなどに「あの時代は良かった」と言われることが悔しいです。僕は越えるつもりはなく、そう言ってくるような人たちに、これが慶應の形だと胸を張って言えるような1年にしたいです。新しい形を納得させられるようにしたいです。

 

――ありがとうございました!

 

(取材:長沢美伸)

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