【ラグビー】 攻めの姿勢を貫き通した80分間 黒黄を纏ったラガーらが法大を圧倒/第12回関東大学春季交流大会

ラグビー

第12回関東大学春季交流大会。今季初の公式戦を迎え、いよいよ慶大蹴球部の2023年シーズンがスタートする。第1戦の相手は法大。慶大は前半10分、スタンドオフで先発した山田響(総4・報徳学園)のハイパントを交えた攻撃で敵陣に攻め込むと、124代主将・岡広将(総4・桐蔭学園)がインゴール右側に飛び込み、先制トライをあげる。その後も慶大は山田の多彩なキックを起点にエリアをとり、試合の流れをコントロールする。前半24分、左ウィングの石垣慎之介(政2・慶應志木)が縦へ大きくゲインすると、最後は本郷海志(経4・慶應志木)がトライを決め、前半を29−12で折り返す。

後半の立ち上がり、開始早々自陣から相手陣内に突破すると、No.8の樋口豪(文4・桐蔭学園)がインゴールに運び、慶大が先にトライをあげる。後半36分、42分と連続でトライをあげられ法大に追撃されるも、後半43分には大野嵩明(法4・慶應)がけじめのトライ。65―31と法大に快勝し、青貫浩之新監督のデビュー戦を白星で飾った。

 

 

 法政大学多摩キャンパス内のグラウンドで開催された。閑静な自然が広がる中、黒黄ジャージに袖を通した新生フィフティーンの声だけが響き渡っていた。慶大は右プロップの岡と、1年時から試合経験のあるフッカー・中山大暉(環3・桐蔭学園)の花園優勝メンバー2人を一列目に置いた中心とした強力なFW陣が先発出場した。注目のハーフ団は、昨年度対抗戦で全試合スクラムハーフとして先発出場した小城大和(商3・北嶺)と、フルバックでの出場が主だった山田のコンビとなった。

脳震盪から復帰した行徳冠生(総4・東福岡)

 

慶大は序盤、樋口の好タックルと、山田の左足から繰り出されるロングキック、ハイパントで敵陣に攻め込むと、前半10分に岡がインゴール右側に走り込み、先制トライとなり5点を先制する。前半18分には相手のペナルティーを誘い、山田のショットが成功し3点を追加する。じわじわと差を広げている慶大だが、法大が目を覚ます。前半21分、ラインアウトからモールを組まれると敵陣まで攻め寄られ、岡崎慎(3・国学院栃木)に反撃のトライを許す。相手のコンバージョンキック中、自陣のインゴールで山田が、「俺らのやってきたこと通用してるから」とフィフティーンを鼓舞する。その言葉に奮起した慶大は石垣が縦を突破する快足を見せ、前半25分、さらには前半30分と連続トライをあげ、22−5と突き放す。

強靭な左足を持つ山田

 

 慶大がオフシーズン、磨き上げてきたのはオフェンスだけではない。ディフェンスの強化にも力を入れてきた成果が、そこに出る。前半34分、法大が慶大のインゴールに走り込もうとしたところを、石垣が強烈なタックルを決めて法大選手をタッチライン外に追い出し、トライを許さない。まるで前半終了間際にも、攻撃の手を緩めることなく慶大は攻め込み、本郷がトライをあげ、29−12で前半を終える。

トライを喜ぶ中山と田沼英哲(総3・國學院久我山)

 後半開始直後、互いのキックの応酬でボールのポゼッションが移る中、慶大はボールと相手選手の動きの2つを常にしっかり確認できていた。慶大がボールを奪うと、後半3分、一気にランでゲインを切る。最後は樋口がトライをし、後半も上々の立ち上がりを見せる。この勢いそのままに、後半32分のモールでのトライ含めた3本連続でのトライで、60−19と試合を決定づける。その後法大に2トライを連取され意地を見せられるも、ラストワンプレーで集中力を発揮し、後半44分にダメ押しのトライを大野があげた。ここでノーサイドの笛。終わってみれば10トライの猛攻を見せ、65−31で白星発進した。

勢いのあるトライで魅せた大野

 

 本試合の勝因としては、新チームとなり初の公式戦であったが、選手一人ひとりがオフシーズン鍛錬してきたことを存分に発揮できたことだろう。トライを取られたら、輪になってやるべきことを確認し合ったり、インプレー中もコミュニケーションが取れていたり、踏ん張り時にはベンチから激励の声が飛んだりと、チームを一つにして戦えていた。また、プレー面では、法大の選手との激しいブレイクダウンやラックでの競り合いで、慶大の選手の方が立ち上がっている選手が多かったため、左ウィングを一枚余らせることに成功している場面が多かった。タックル後にはすぐに起き上がりプレーに参加すること、規律を守ることが徹底されていた。

 また、本試合は青貫新監督の初陣ということもあり、選手はいつも以上に闘志をたぎらせていたことだろう。慶大蹴球部の伝統といえば、「魂のタックル」である。監督が変わり、多少の戦術が変わることはあっても、これまで引き継いできた伝統と文化は変わらない。13年ぶりの早慶戦勝利、24年ぶりの日本一に向けて、岡組の挑戦が今、幕を開けた。

 

(取材:野上 賢太郎、愛宕 百華)

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