24年度に引退を迎えた4年生を特集する「Last message~4年間の軌跡~」。第29回となる今回は、ソッカー部(男子)マネージャーの中村友香(文4・慶應女子)。ラストシーズンでは念願の「2部優勝、1部昇格」を成し遂げ、有終の美を飾った慶大ソッカー部。学年で唯一のマネージャーとして数々の仕事をこなし、前例のない状況でも最後までチームを支え続けた中村。彼女がソッカー部という組織に残したもの、4年間を通して感じてきたことを伺った。
「今年は例外が多い年だった」。そう振り返る中村の言葉が示す通り、2024年はソッカー部にとって大きな変化の年だった。序盤、現役の誰も経験したことのなかった延世大学校(韓国)とのアウェー戦を経験し、監督交代という重大な転換期も迎えた。さらには10年ぶりに人工芝の張り替えもあり、練習場所も分からないという状況下で新体制がスタート。マネジメントを担う中村にとって、イレギュラーへの対応が求められる場面が続いた。

例外の多い年だったと語る中村
なかでも特に忘れられないのは、サッカーの聖地・国立競技場での開催を実現させた早慶サッカー定期戦だ。2013年を境に国立から遠ざかっていたが、11年ぶりの国立開催が決定。大きな会場での早慶戦を経験したことのなかった中村らは、右も左も分からない中全てをゼロから準備しなければならなかった。図面や控え室の確認から観客動員計画、収益の見込みに至るまで、全てが手探りの状態だったという。それでも中村は「自分が一番バイタリティを以てハードワークする」という意識で打ち込み、最終的には目標の1万人を超える観客を動員。2025シーズンにも繋げられる大きな実績を残した。選手たちが国立のピッチで輝いた瞬間の裏には、中村の努力が確かに刻まれていたのだ。

国立での成功体験は大きかった
中村は、高校まではバスケットボール部に所属し、主務も経験。中学のコーチに誘われていたため大学でもそれを続ける選択肢はあったが、兄がアメフト部にいたこともあり体育会への入部を自然と考えたという。しかし、現役でのけがの再発を機に、大学4年間をプレイヤーとして過ごすことから離れると決めた。そこで選んだのが、ソッカー部のマネージャーだった。「選手としてじゃなくて、プレイヤーを支える側に回るのも面白いかなと思ったことがきっかけ」と語る。中村は幼稚舎出身であることから早慶戦に行く機会が多く、等々力や国立競技場での定期戦も現地で観戦していた。昔から観てきた早慶戦の舞台がマネージャーたちによって創られていると知り、スポーツ運営の仕事に惹かれて入部を決意した。

自然と体育会加入を選んだ
「仕事が好き、働くことが好き」と、どんなタスクでも楽しくこなしてきた中村が、より熱を注いだのが広報活動だ。「画像や動画を編集するのが好きで、拘りを追い求められる仕事だった」と語るように、中村は1年間「拘り続ける」ことを掲げて幅広いタスクを担ってきた。「ちょっとのズレとか、色味の変化だとか、そういうのも拘らないといけない。妥協したら終わりの部門だと思っている」と、モチベーションビデオの制作やSNS用の画像など、その過程で一切の妥協を許さず選手たちの生き様、魅力を発信し続けた。また、チームを支える上で重要になったのが、グラウンドマネージャーや主務、副務との連携だった。これまで別々に役割を担うことが多かったが、今年は組織体制の兼ね合いもあり、各役職の垣根を越えた連携が生まれた。「マネージャーとグラマネと主務が連携を取れたことは、今年の一番良かったポイント」と振り返る。

主務やGMとの連携を欠かさない
中村にとってソッカー部での4年間は、多様な感情が連鎖する日々でもあった。もともと感情の起伏が少ない中村だが、「この4年間で心が動かされる瞬間にたくさん出会えた」と口にした。1年生の時に経験した10年ぶりの早慶戦勝利、2年生での衝撃的な降格、3年生での昇格、そしてグラウンドマネージャーを決めるミーティング--。どれもが彼女にとって忘れられない感情を抱いた時間だった。「グラマネ決めのミーティングは本当に印象的で、あんな経験はもう2度と出来ない」と振り返る。多くの感情に出会い、悩み、心を動かされた4年間は、まさに中村にとって何にも代えることのできない財産だ。

「拘り続けた」4年間
引退を迎え、改めてソッカー部という組織を振り返ると、「誇りを持てる場所だった」と口にした。「この組織で4年間頑張った自分や同期、一緒にやってきた人たちのことを誇りに思える。良いところも悪いところもあるけれど、そういう中でも同期、監督、社会人スタッフ、OB・OGも含めてみんなソッカー部のことを誇りに思っているということを感じる機会が多くあった」。このように語る組織の中で4年間努力を重ねられた経験が、中村にとっても大きな誇りとなった。後輩たちには、「この4年間しかこの組織に捧げられる時間はない。やりたいこと、目標に向かって努力し続けられる人になってほしい」と期待を寄せた。彼女が残した成功体験、弛まぬ努力と拘りは、これからのソッカー部にも確かに受け継がれていくだろう。
(記事:愛宕百華)