【Last message】後悔なく走り抜けた4年間/4年生特集「Last message~4年間の軌跡〜」No.35・小城大和(蹴球部)

ラグビー

24年度に引退を迎えた4年生を特集する「Last message〜4年間の軌跡~」。第35回となる今回は、蹴球部の小城大和(商4・北嶺)。指定校推薦で慶大に進学し、1年生から早慶戦に出場した小城。3年次には怪我をし、今年度も出場できない時期が続いたが、副将そして慶大の機動力として活躍してきた。主将・中山大暉(環4・桐蔭)も「試合に出場できない中でもリーダーシップを持ち、戦い続けてくれたことに感謝しかない。頼もしい存在だった」と小城を評価する。大学でラグビーを終える決断をした小城がこの4年間を振り返る。

 

中高とは正反対のラグビー

 もともと医師を志していた小城。大学ラグビーを見る機会は多く、あまりタレントのいない中、強豪校に勝つ慶大のラグビーに魅力を感じていた。高校2年生の冬には慶大蹴球部の練習に誘われ、参加した。より一層「慶應でラグビーがしたい」と思うようになった。北嶺中・高でやってきたラグビーとは正反対と言っていいほどだった。「北嶺は札幌山の手と試合をしたら大差で負けるようなチームでした。慶應は全国ベスト8に入るようなチームなので練習の質、部員の数など異なる部分が多かったです」と語る。中高6年間、大学4年間と異なる部分が多かったが、どちらも小城にとっては良い思い出だ。涙が溢れた大学最後の帝京戦で敗北が決まった瞬間、「あー、終わっちゃった」という虚しさが湧いてきたと振り返る。小城は試合途中で交代し、残り10分ほどはベンチから試合を見ているだけだったが、最後のスクラムから涙がとまらなくなったという。普段は感情が動いて泣くタイプではなく、映画を見ても泣けないほどだというが、この時ばかりは自然と涙があふれた。「この4年間泣けるくらい頑張ってきたんだなと思えました。本当に最後の帝京戦は自分としてもチームとしても勝てる試合だと思っていたので、悔しさとか虚しさとかもありましたけど、やり切った試合でした。あまり後悔はないです」と語る。

 

4年間のハイライト

 小城が4年間で最も印象深い試合に挙げるのは1年生の時にスタメンで出場した早慶戦だ。「それまで対抗戦には出場したことがなかったが、いきなり早慶戦にスタメンで出場できたのは何にも代えがたい経験だった」という。また、印象に残っているプレーに挙げるのはラストイヤーの大学選手権東洋大戦で決めたトライ。後半21分、東洋大の意表を突く形で小城が相手ディフェンスを何枚も走り抜き、そのままトライを決めた。「結構点差も離れて勝っていたのでチームとしては大事なトライではなかったんですけど、観客席の前でトライできましたし、秩父宮でトライしたことがなかったので、4年生のほぼ最後の試合でトライできたのが嬉しかったです」とラグビーの聖地で決めたトライは格別だったと話す。

思い出のプレーを振り返る

「控えなのに副将」

 1,2年レギュラーに定着していた小城だが、3年生の時に怪我があり、試合に出場できず悔しい思いをしていた。副将に就任直後も順風満帆にはいかず、ずっと控えだった。「『控えなのに副将』というギャップが難しかった。チームのことも考えなきゃいけないし、自分のプレーももっともっとよくしていかないといけないというところが大変だった」と苦しい胸の内を語る。しかし、副将を終えた現在は「それも良い経験だったと思う」と振り返る。

副将の小城と共にチームを牽引したのは主将・中山大暉(環4・桐蔭)だった。チームにとって中山は「本当に絶対的な存在」だと小城はいう。「精神的にもいるだけで違う。プレーでも日本代表を目指せる選手だと世間から言われているくらい。プレーでも精神面でもチームの大黒柱でした」と中山への称賛は止まらない。「彼は自分にはないものを持っている選手。僕は周りに頼るというか、みんなで創っていくイメージで副将をやっていた。彼はそういうこともできるし、一人でガンガン引っ張っていくこともできる。あとは、僕はあまり強く言えない。大暉は強く言える。チームのために厳しく言えるのはすごいところ。僕にないものをたくさん持っている」と語るようにチーム、そして小城にとっても中山は欠かせない存在だった。

共にチームを率いた戦友

自信を得た大学4年間

 「9番で試合出場」と入学時の小城にとって高い目標を設定し、大学ラグビーのスタートをきった。「まさか副将をやるとも思っていなかったし、1年生から試合に出るなんて思ってもみなかった。ずっとチームの中心でやれるとは想像できなかった」と入学時に思い描いていた大学ラグビー生活以上の活躍ができた。

大学4年間を振り返るときついこともたくさんあった。その中で「絶対にぶれずにやり続けるという自信」を得た。チームに残せたものはあるかと尋ねると悩みながらも「ずっと謙虚にやり続けることは示してきたつもり。そういうと

ころがいいなと思ってくれたら嬉しい」と答えてくれた。この返答にも謙虚さが表れている。

掴み取った「9番」

ラグビー生活に終止符

 大学でラグビーを終える決断をした小城。「自分は社会人でやっても通用しない。セカンドキャリアとかを考えた時にラグビーを本気でやるより自分は就職したほうが向いている」と語る。副将として先頭に立ち、周りを見ながら組織

を進めてきた経験を活かし、社会人でも活躍するに違いない。ラグビー漬けの生活を終えた今、楽しみにしていることは今までなかなかできなかった旅行だという。卒業旅行にも行くそうだが、「社会人になってからも休みが取れたら旅行に行きたい」と新たな生活への楽しみを抱く。

 

後輩たちへの期待

 「僕の4年間は最高でもベスト8。特に2年生の時は1点差で負けて惜しくもベスト4行けなかった。まずは国立に立っている姿を観たい」と後輩たちへの期待を語る。

小城が特に期待を寄せているのは和田健太郎(新理2・清真学園)だ。来年には同じポジションに高校日本代表選手が加入する。「残りの3年間は本人にとってきつい3年間になると勝手に思っている。あまり皆には知られていないが、実は彼はメンタルが強く、肝が据わっている。彼らに負けないように今後頑張っていってほしい」という小城の思いに応えてほしい。

 

幼い頃はアメフトをしていた父の影響で「自分も大学でアメフトをやりたい」と思っていた。アメフトへの準備としてラグビーを始めたが、ラグビーの魅力に惹かれて夢中になった。次は新しいステージで機動力として活躍するだろう。

(取材・記事:檜森海希)

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