【What is ○○部】新たな100年へ──大志を胸に、突き出す拳/File.16 空手部①

空手

慶大の体育会を深掘りしていく連載企画、「What is 空手部?」。今回取り上げるのは、伝統ある強さ・美しさを追求する空手部!礼儀と実力を兼ね備えた部員たちの経歴は様々。そんな彼らは普段どのように練習しているのか?彼らを支える仲間やOB・OGとのつながりとは?今回ケイスポは日吉・蝮谷にある道場を取材し、その魅力に迫った。

昨年、創部100年の節目を迎えた慶應義塾体育会空手部が、今年、新たな歴史を刻もうとしている。

 

沖縄発祥の武道である空手は、琉球古武術や中国武術の影響を受けながら発展し、日本本土へと伝わった。2021年の東京五輪でも正式種目として採用されるなど、現在その名は世界へと広がりを見せている。

空手には大きく分けて「組手」と「形」の二つの競技形式がある。「組手」は1対1の対戦で、スピードや技の正確性によってポイントを競う。大学生のルールでは、「6ポイント差をつける」か「2分間でより多くのポイントを獲得する」ことで勝敗が決まる。一方「形」は、決められた技の演武を行い、美しさや力強さ、正確さが審査される。競技性だけでなく、礼儀や精神力の鍛錬も重視される武道である。

強さと美しさが重視される

その奥深さに引きつけられ、今いる部員たちも慶大空手部の門をたたいた。

現在、空手部にはマネージャーを含め15名が所属しており、その出身・経歴はさまざまだ。高校時代から空手を続けている選手は8人、それ以外はブランクを抱えたり、大学から競技を始めたメンバーだ。この環境の中で、選手たちは互いに支え合いながら成長を遂げている。

競技に対する主体的な姿勢も特徴的だ。練習では種目ごとに部員が何人かで練習し、互いに所作や技術的ポイントを確認しあう場面が何度も見受けられた。今年の春より新たに主将としてチームを率いる岩本遼(総4・高松中央)は、チームの雰囲気についてこう語る。

「この部活は非常に仲が良く、良い意味で上下関係が厳しすぎない雰囲気があります。後輩は先輩をリスペクトし、積極的にアドバイスを求めたり実践したりと、練習への意欲も高いです。一方で、気軽に話せる関係でもあり、先輩が後輩と一緒にトレーニングや練習をしたり、プライベートで食事に行くこともよくあるぐらいです」

部員を指導する岩本主将(写真右)

選手たちの情熱は確かにその輪を広げ、人々を魅了している。空手部の一員としてチームを支えるマネージャー・三好果歩(経3・鎌倉)もその一人だ。

「試合で部員のみんなが活躍しているのを見る瞬間が一番楽しいですね。空手は大きな大会が多いので、そうした場面に立ち会えるのは嬉しいんです」

彼女は部の魅力についてもこう語る。

「この部は、強豪の部活と比べて人数が少ない分、選手同士がお互いの強みや弱みを理解しやすい。性格まで熟知し合えて、深い絆が生まれる環境だと思います」

練習をサポートする三好マネージャー(写真右)

また、慶應義塾高校の空手部や幼稚舎との合同練習など、この部活では系列校とのつながりも大切にしている。「小学生や中高生の後輩たちに憧れられる存在でありたい」と部員の一人は語る。

OB・OGの存在も欠かせない。選手たちを指導し、資金を援助するなど、現役部員の活動を支えている。主将の岩本も感謝の気持ちをこう語った。

「OB・OGの皆さんが一番試合を盛り上げてくれる。勝てば一緒に喜び、負けても『次はいける!』と励ましてくれる。彼らの期待に応えたいという思いが、僕のモチベーションの一つです」

昨年度、慶應義塾体育会空手部は創部100年を迎えた。今年は新たな100年への船出となる。そんな101代目の部員たちに向け、この日練習を手伝っていたOBはこう言葉を送った。

「あまり過去の100年に縛られずに、自分たちの新しい歴史をこの1年間で作っていってほしいです。当然彼らは試合で勝つためにやっているので、その成果が得られるように頑張ってほしい。我々はそれをサポートするだけです。彼らが1年間満足して空手ができれば、それだけでいいんですよ」

 

今年の目標は11月に行われる全日本学生選手権での団体戦優勝。その大きな目標を達成するため、岩本を中心に“全員が同じ目標を持つこと”を大切にし、日々鍛錬を積んでいる。

次の100年へ──勝利への執念と伝統への矜持を胸に、彼らは今日も畳に上がる。

(取材:五條理子、竹腰環、野田誉志樹)

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