【What is 〇〇部?】日本唯一の海洋遠泳部! 未知なる大海を拓く”水の伝道師たち”/File.37 水泳部葉山部門(前編)

葉山

慶應義塾体育会を深掘りしていく連載企画 、「What is ○○部? 」。第37回目は、なんと日本で唯一の遠泳部である水泳部葉山部門!  

葉山部門(正式名称:慶應義塾体育会水泳部葉山部門)は1902年に創部され、以後100年以上にわたって海洋遠泳を行ってきた。今回ケイスポでは、日吉キャンパス協生館プールでの練習風景を取材し、彼らの経歴や活動内容、今後の目標などについて話を伺った。  

 

練習と歴史  

夏の暑さも落ち着いた10月中旬のある夜、取材班は日吉キャンパスにある協生館プールを訪れた。  

2025年11月現在、慶應義塾体育会水泳部には競泳部門、飛込部門、水球部門、葉山部門の4つの部門が存在している。水泳部は1902年に創部され、神奈川県葉山の海を拠点として活動していた「葉山水泳部」から始まったが、当時から行われていた海洋遠泳を引き継いでいるのが、現在の葉山部門である。  

葉山部門は通常、日吉キャンパスの協生館プールで日曜日を除く週6日、午前6時30分から朝練を行い、火曜・木曜の18時からは午後練も実施している。通常練習では、時期ごとの目標に応じて泳力向上を目的としたスイム練を行っている。  

 

合宿と4つの柱  

夏休み・春休み期間には、千葉県館山市にある合宿所で長期合宿を行う。合宿中には、エンジン付きの船舶船やボートの操縦技術向上を目的とした訓練を行い、夏合宿では海での遠泳練習や日本泳法の練習、さらには1年をかけて計画される遠泳も実施される。 

また、葉山部門には、次の4つの柱がある。 

項目 

内容 

遠泳・OWS(Open Water Swimming) 

海での泳ぎの速さを競うOWS大会への出場や、海洋遠泳の成功 

日本泳法  

日本古来の泳法「日本泳法」の継承 

船舶訓練 

遠泳に必要な船の操縦技術の向上 

初心者指導 

葉山部門が掲げる人材育成方針 

 

遠泳とOWS 

遠泳においては、日吉から東京ディズニーランドまでの直線距離に相当する約40キロや、日吉から箱根温泉までの直線距離に相当する約65キロを完泳する部員もいる。大学から本格的に水泳を始めた部員も、1年生の夏には15キロの遠泳を完泳できるようになるという。 

また、2008年の北京五輪から正式種目となった海、川、湖などの自然水域の中で行われる長距離の水泳競技である、オープンウォータースイミング(OWS)にも注力している。夏には、インカレ(全日本学生選手権)を含む日本水泳連盟の認定の大会に数多く出場しており、OWS日本選手権への出場も部の目標として掲げている。

遠泳中の様子

OWS大会の様子

 
日本泳法・大会での成果  

日本泳法については、全国大会での入賞や日本泳法の部内泳法試験の合格を目指して日々練習を重ね、伝統を受け継いでいる。部内泳法試験も年に数回実施され、3級以上に昇級した選手は毎年8月の日本泳法大会に出場する。2025年8月の大会では、妻井安那(政3・ Lycée Francais de Bruxelles)が泳法競技5位入賞、横泳ぎ競泳で宇佐見颯士(経4・慶應)が5位に入るなど、毎年実績を残している。 

 

船舶訓練 

泳者に伴走する指揮船と、ルート上のコンディション確認や緊急対応を行う監視船という2種類の船舶を操縦するために、合宿では操船練習を行い、全部員が船舶免許を取得する。   

船艇訓練の様子

初心者指導と人材育成  

初心者指導に関しては、大学から水泳を始めた部員への指導はもちろんのこと、慶應義塾高校水泳部葉山部門と合同で活動し、慶應義塾幼稚舎の生徒に海での泳ぎを教える「幼稚舎遠泳合宿」のサポート活動も行うなど、幅広い人材育成に取り組んでいる。 

 

取材を通じて  

今回の取材を通じて印象的だったのは、個人の泳力だけでなく、さまざまな能力が求められる遠泳に対し、チーム一丸となって部員同士が教え合い、向上心をもって練習に励む姿だ。その様子は、果てしなく広がる海と向き合うチームにふさわしい、無限大の可能性を感じさせた。  

 

後編では、慶應義塾高校時代から葉山部門で活動している現主将・竹崎優人(法3・慶應義塾)、大学から水泳を始めた松本幸太郎(商2・高知学芸)、そして各種大会でも実績を残す妻井安那の3選手による対談形式のインタビューを掲載予定。 

 ぜひご覧ください!  

 

※写真は葉山部門提供

(取材:竹腰環、佐々木瞬、小野寺叶翔、記事:佐々木瞬)

 
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