4年間で2度の優勝に導いた江藤省三監督が秋季リーグ戦を以って退任。江藤前監督の下、助監督として主に投手育成を担っていた竹内秀夫新監督が12月1日付けで慶大野球部監督に就任した。今回ケイスポでは『新チーム始動特集第2弾』として竹内新監督にインタビューを敢行。慶大野球部の伝統についてや今後の展望に至るまで、多岐にわたるお話を伺った。
―監督就任の経緯をお聞かせ下さい
経緯は特にないんですよ。というより私の知るところではないです。三田クラブというOB会に監督選考委員の方々がいらっしゃるそうで、その方々に決めていただいたということです。
―監督就任の要請を告げられた時の心境はいかがでしたか
10月の半ば過ぎに告げられました。自分でもちょっとやってみたいという気持ちはあったので、大変ありがたいお話ですということで、少し考えてお返事させていただいたということですね。
―江藤省三前監督からは何か言われましたか
竹内君の好きなようにやって下さいよ、という事で特にアドバイスといったものは言われませんでした。
―竹内監督から見て、前任の江藤監督はどのような監督でしたか
勝負に厳しいプロでやっていたこともある方ですので、すべてにおいて厳しい方でした。ユニフォームの着こなし方であったりとかそういう部分をしっかり指導していてだきましたし、あらゆる面で厳しかったです。反面、面白さ、ユニークなところもあって、部員の名前も200人近くいるのに全員覚えて、対面するときなど必ず一言二言冗談交じりの会話をしながらコミュニケーションをとられる、といった方ですね。厳しさの中にもきめ細やかさがある方でした。
―助監督時代の4年間を振り返っていかがですか
投手だけですからね。投手だけどんどん見ていましたからね。私の指導の良い面と悪い面で色々と反省する部分があるんですけれども、心残りの分も監督として巻き返していきたいと思っています。過去4年間は自分として満足できる指導ではなかったと思っていますので、それを踏まえてとにかくもう一年頑張っていきたいなと思っております。
―助監督と監督の違いは何だとお考えですか
ぜんぜん違いますよ。全く違うと思っています。何がではなくてすべて。例を挙げるのもちょっと難しいんですが、全体の指揮を執らなければならないので、今までは投手の面倒を見てしっかり試合に臨ませるというのが私の仕事だったんですけども、それだけではいけないのでチーム全体のことを見なければいけないという事で、これはもう大変なことですよ。
―社会人でも監督を務めてらっしゃいましたが、その経験から大学野球へと生かしていきたいというようなことは何かございますか
社会人の世界は勝負の世界としては非常に厳しいんですよ。一回負けたら終わりであるところが、良い投手がそろっているので勝負が1、2点差になるのですが、どこでその1点を取りにいくのか。そういう面を大学野球に生かしていきたいなと思っています。守りは絶対に0点もしくは0点に近い数字に抑える。六大学にはプロレベルの良い投手がたくさんいる。なかなか点を取ることができないので、点を取る機会を逃さずシビアに戦っていけたらなと思っています。そういった意味で社会人野球の経験を大学野球に持ってこられればな、と思います。
―監督として心掛けていきたいと思っていることはございますか
色々ありますが、125年それだけの伝統を背負って戦うわけですから、慶大の良さと言いますか、学生野球の見本となる野球をやっていきたいと思っています。それには、フェアプレー精神といったそういったものをきっちりと理解して、慶應の素晴らしさといったものを出していきたいと思います。
―竹内監督にとって理想の監督像といったものはございますか
私が投手ということもあって、慶應の大先輩で巨人でも活躍された藤田元司さんは尊敬する監督だと思います。あと、私は本を読んでしか知らないのですが慶應の二代目監督の腰本寿さんとかですかね。私が生まれる前の90年も前に活躍なさっていた方ですが、本を読んで、そういう方はご立派だなと思います。
―六大学野球の魅力は何であるとお考えですか
六大学野球は皆さんが注目していただける最高の晴れ舞台。神宮球場で試合ができる喜びと言いますか、そういうものを感じたうえで試合ができればな、と思っています。早慶戦の華やかさとか、対抗戦ならではの熱気とかそういうものが魅力なんじゃないですかね、と私は思います。
―慶應野球部の伝統についてはどのようにお考えでしょうか
125年の歴史を考えると非常に重いものを感じます。早稲田と肩を並べて学生野球の重みをともに感じながら、切磋琢磨していきたいと思っています。お互いが頑張って盛り上げてくことが、皆さんがつくってくださった歴史に対しての感謝のしるしかな、と思います。
―大学野球が目指すべきものとは何であるとお考えでしょうか。
野球選手を目指す青少年の見本でありたいなと考えます。大学野球というものも新しい歴史をつくっていかなければならないと思っているので、それを担う存在をもっともっと育てていかなければならない、と思っています。
―今年一年間の慶大野球を振り返っていかがですか
歯がゆいものをいっぱい感じました。投手をしっかりしないと勝てない、そういう意味では助監督として何度も歯がゆい思いをしました。0点に抑える試合にしよう。0点に抑えれば絶対に負けることはない、そういう指導をしてきたんですけど、一球の重さに対する考えがちょっと足りないので、そういった部分を感じさせていきたいな、と思っています。
―今年一年間通して得ることのできた課題は何かございますか
下級生の投手が伸びてきた、というのがありますよね。加藤(政1)にしても、高校の時と比べてこの一年で大分成長できたかなと思いますし、加嶋(商2)にしてもノーヒットノーランを達成しましたしね。そういうのもよい自信につながったと思います。この二人以外にも1年生、2年生にこれから出てくるであろう投手がいっぱいいますから、投手の育成面という意味では、収穫の多かった一年だったかな、と思います。
―野手も現在の戦力が来年も数多く残りますが、そこはどのようにお考えでしょうか
そうですね、来年も戦力は落ちないでしょうし、むしろ彼らの能力からすればもっと打ってしかるべきなので、そのようにやっていきたいと思っています。落とすのではなく伸ばしていきたいですね。
―新主将の佐藤旭主将(商3)に関してはどのようにお考えでしょうか
責任感も強いし、気を遣うことのできる主将としては申し分ない選手です。ただ気を遣いすぎて本人の負担になることがあるので、そこを4年生がバックアップして各々リーダーシップをとっていただけたらな、と思います。
―今年のスローガン“How to play, How to win”はどのような経緯で考えたのでしょうか
これは腰本寿さんです。さっきも言った慶應大学二代目の監督、この方が監督としての在任期間は一番長いと思うんですけど、その方が使っていたスローガンをそのまま使用させていただきました。このスローガンを是非やっていきたいと思っているんですよ。どうやって練習するのか、どうやって考えるか、あるいはどうやって勝つか、皆がそういったことを考えられればすごく強いチームになると思うんですよ。だから、みんなに考えてもらう、そう思います。
―12月から新チームとして始動しましたが、チームの雰囲気はいかがですか
入りとしては最高だと思います。私の考えもみんなに話すことができたし、それを真摯に受け止めてこうやっていこう、という努力も認めますし、私と選手をつなぐパイプ役であるスタッフが本当に良く動いてくれているんですよ。そのスタッフを信頼してこれからもやっていきたいな、と思っています。
―選手にグラウンド内外で望むことというのは何かございますか
色々あります。例えば、野球であったらさっきも言ったように憧れる選手になってもらいたいし、学校に行って授業を受けてほしい、と思いますね。
―今後練習で徹底していきたいことというのは何かございますか
何かというわけではなく、すべてにおいて徹底なんですよね。それをやろう、ということには200人全員徹底させていきたいです。みんなでそれを共有する、押し付けじゃなくて自分達のなかから出てきたものでもいいですよ。今やっていることとしては、グラウンド内では移動するとき必ず走る。これは、私や江藤さんが言ったものではなくて、自分達から自発的に出てきたものです。小さな事だろうと大きな事だろうととにかく徹底するということが大事だと思っています。
―竹内監督にとっての理想のチームとはどのようなチームでしょうか
試合に臨むに当たっては0点に抑えてガンガン攻めていく、というのが理想ですね。現実はそうじゃないですけど、現実と理想のギャップを埋めて勝ってゆくのが私の仕事だと思っています。他を寄せ付けないようなチームをつくっていく、というのが理想です。
―どのような野球を目指してらっしゃいますか
私は、選手たちに格好良く野球をやってもらいたいと思っています。でもみんなが格好良く見えるというのは、一生懸命プレーしている姿というか、泥臭くプレーする姿が一番格好良いと思っているので、そういう野球をしたいです。
―最後に一言ファンの方々へのメッセージをお願いします
優勝目指して頑張ります。今まで以上に熱いご声援、ご支援お願いできればな、と思っております。また、土日空いている時間がございましたら、神宮まで足を運んでいただけたらなと思っております。
―お忙しい中、ありがとうございました
(取材 赤尾大、堀越ゆかり)
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