「有原さんと投げ合って勝ってやろうという思いで」
―昨シーズンは加藤選手にとってどんなシーズンでしたか
自分の中で課題を持って臨んだシーズンで、9イニング投げることも去年の秋はなかったので、今年の春に関しては9イニングを通して自分の投球をできたのが一番の収穫かなと思います。
―法大戦での15奪三振を奪っての完封勝利は圧巻でした
それまでずっと、完投。完封がなくて課題としていたので、それが達成できたことは自分の自信にもなりました。15奪三振に関してはあまり意識していなくて、三振を取るということよりも0点に抑えることを考えて投げていました。
―9イニング投げられるようになった要因というのは何だと思いますか
1回から9回まで球威を落とさずに、ずっと同じスピードで投げられたことが一番の要因で、スタミナもついたのかなと思います。
―昨秋から春にかけて何か取り組みを変えたことはありましたか
特に大きく変えたことはなくて、継続してウエイトトレーニングだったり、投げ込みを行ったりしてきた結果だと思います。
―それまで第2戦を任されていましたが、早慶戦では第1戦に先発登板となりました
立大戦で勝ち点を落として、1勝2敗で早慶戦で勝ち点を取ったら優勝ってなった時に江藤助監督(当時)から、立大戦の試合後に「お前は1戦目に有原(航平)とぶつけるから」と言われました。本当は今年の春シーズンすべてを通して1戦目に投げる準備をしていました。法大の石田(健大)さんであったり、明大の山﨑(福也)さんだったりと投げ合って勝つというのが僕の目標だったので、それまでちょっと歯痒い思いも2戦目投げていてあったんですけど、最後有原さんと投げ合って勝ってやろうという思いで投げました
―有原投手と投げ勝ったというのは自信になりましたか
投げ合えることが本当に幸せなことで、それで勝ちを得たのは自信になったと思います。
―第2戦では胴上げ投手となりましたが、優勝の瞬間は改めて振り返っていかがでしたか
優勝の瞬間は、余裕のある場面だったら僕も優勝に関して考えられたんですけど、結構しんどい場面だったので…(笑)。優勝したというよりは、全力で投げてバッターを三振にとってホッとした方の気持ちが大きかったですね。
―では優勝を実感したのはいつぐらいですか
優勝インタビューで江藤さんやキャプテンが話しているのを見てやっとという感じですね。
―そのあとの優勝パレードや祝賀会を経験してどうでしたか
すごい多くの方がかかわってくれていたんだなというのを改めて実感して、その応援してくれる人が一番喜んでくれるのが優勝だと思うので、パレードを経験してもう1回優勝したいなと、より思うようになりました。
―優勝して周りから祝福はありましたか
そうですね、友達からはおめでとう!みたいなメールはありましたね(笑)
―優勝へ近づくにつれて新聞や雑誌などのメディアの扱いも大きくなっていきましたが、ご覧にはなりましたか
僕自身はあんまり見なかったんですけど、親からは「載ってたよ」って連絡は来ました。
―ご両親とはよく連絡は取り合うんですか
親からはよく「明日は投げるの?」って連絡がくるので、投げるか投げないかは僕からも連絡しています。普段は「頑張って」「頑張るわ」くらいのやり取りしかしてないですけど、
結構球場まで見に来ているみたいです(笑)
―新聞では「慶大のライアン」なんて見出しも踊りましたが、実際どう捉えていますか
それ聞くんですか…(笑)あんまり否定しちゃうと失礼にあたるので否定はしないんですけど、僕の中で特にノーラン・ライアン投手を意識していることはなくて、この投球フォームにして、「お前活躍したら絶対ライアンって呼ばれるよ」って周りからずっと言われたんですよね。それでその話をしたら、「参考にしている」って書かれてしまって、僕としては特にそんなことなかったんですけど(笑)それでも、そういう風に言ってもらって注目してもらう分には悪いことではないので、それに恥じないようなピッチングをすればいいかなと思うようにしています。
―実際に目標にしている投手はいますか
目標にしている投手というと、ちょっと漠然とした投手像になってしまうんですけど、僕は日本よりメジャーリーグをよく見ているので、あえて名前を挙げるとしたらマックス・シャーザー(現デトロイト・タイガース)投手ですかね。
―では現在の投球フォームになったいきさつを教えてください
体があまり大きくないので、体全部を使わなきゃいけないと考えていて、それで体を大きくみせられるような投球フォームを求めた結果がたまたま足が高く上がっただけで、勝手にそうなっちゃったって感じです。
―この春を通して一番成長したなという点はどこですか
得点圏にランナーを背負ってから粘り強くなれたかなと思います。
―四死球の数も昨秋の20個から11個に半減しました
四球から失点することが秋は多かったので、そこはしっかり直していこうとこの夏も含めて取り組んでいます。春は結構3ボールになることも多かったんですが、そこから粘れたのが減った結果になったのかなと思います。
―粘れるようになったというのはメンタル的にも成長したのでしょうか
ストライクを取りにいかなきゃと思うようにするのはやめて、自分がしっかり投げられるようにするというか、自分のフォームできっちり投げられればストライクは取れると割り切れるようになりました
―その結果最優秀防御率という素晴らしいタイトルも付いてきました
自信にはなったんですけど、運がよかった部分もあったなと思っているので、こういう投球を毎シーズン続けてこそ本物だと思うので、しっかり気を引き締めていきたいと思います
―リーグ戦優勝後、今度は全日本選手権に出場しましたが、どのような感想を持たれましたか
神奈川大戦は結局自分のせいで負けてしまったので、そこはいちばん反省しなければいけない点だと思うんですけど、負けたら終わりというトーナメントの試合の入り方というか、それの難しさというのを改めて痛感しましたし、結構優勝して、パレードして気が緩んでいた部分も少しはあった中でどういう風に気持ちをもっていかなきゃいけなかったのかというのが難しかったので、そこは今後の課題ですね。
―負けたら終わりの全日本選手権とリーグ戦との間の一番の違いはなんでしたか
リーグ戦では相手チームや打者のデータもある程度揃っている中で戦っていたのですが、なかなか初対戦のチームなので手探りな部分が多かったですね。
―やはり緊張もありましたか
緊張は特にはなかったんですけど・・・もうちょっと緊張した方がよかったですかね(笑)
―リーグ戦、全日本、オランダ遠征に加え期末試験もありましたが、オフはありましたか
それが一番聞いちゃいけないことですよ(笑)期末試験が7月23日からあったんですけど、僕22日にオランダから帰ってきたんですね。試験中も合間に休みはあったんですけど、オフと呼べるものではなかったですね。それで試験終わったらキャンプだったので、少し大変でしたが、しょうがないですね。そこは割り切って頑張ってます。
―加藤選手なりのリラックス方法とかはあるんですか
僕の場合特に意識してないんですよね。たとえばルーティーンとか作っちゃうと、それができなかった時に「あ、今日やってない」って思うのがすごく嫌なので、作ってないです。
「ストレートに関しては通用すると思った」
―大学日本代表に選ばれた時の気持ちはいかがでしたか
選考合宿の出来が僕はよくなかったのでうれしいというよりはびっくりした気持ちのほうが大きかったです。
―海外遠征は初めてでしたか
中学生の時に台湾に行ったことはありましたが、今回のような大きな大会で日の丸を背負っていくのは初めてでした。
―ハーレム国際に参加して感じたこと、収穫は何でしょう
大会中は調子がよくない中で投げなければいけなかったのですが、通用する球としない球、やるべきことがわかったのでそこは収穫だったと思います。
―通用した部分とは
ストレートに関しては痛打もされず、空振りも取れたので通用すると思いました。一方で慣れないマウンドでどうするかや先頭打者にどう入っていくかという部分がつかみきれなかったのでそこをしっかりやっていけばいいかなと思います。
―代表メンバーで仲良くなった人はいますか
同学年の選手とはみんなと仲良くなりました。神奈川大の濱口や創価大の田中、立教の佐藤とは行動も一緒だったので。
―濱口選手や田中選手は同じ投手ですが刺激は受けましたか
濱口は全日本選手権でもやっているので。真っすぐがベース上で強いイメージ。田中は球が速くて投げ方もきれいですごいなと思いました。
―キャンプではどういった練習に力を入れましたか
あまり変えることはなかったです。真っすぐの精度をどれだけ上げられるかに着目して投げ方を考えたり変えたりしていました。
―取り組んだ結果、真っすぐの精度はどうなりましたか
こういう形で投げればいいかなと大体はわかってきました。最近の練習試合でも痛打されることはそんなにないのでそこはよくなったのかなと思います。まだリーグ戦まで少しあるのでもうちょっとあげられるように頑張ります。
―昨季後半からバッテリーを組むことが増えた須藤選手。彼はどういった選手に見えますか
見た通り体が大きいのですごく投げやすいです。あと、野球に関してすごく考えている人間で、意見を僕に言葉で伝えてくれるのでやりやすいです。
―髙多助監督の印象はどうですか
以前からの面識は全くないです。技術的な指導をあまりしない方なので、僕は引き続き自由にやらせてもらっています。まだ助監督の野球自体はあまり見えてこないのでリーグ戦にならなければわからない部分が多いと思います。
―優勝して迎えるシーズン。これまでと心境に違いはありますか
優勝したからと言って僕のやるべきことは変わらないので意識はしないようにしています。ただ優勝したことで相手チームから警戒されることが多くなるので、警戒されても結果が出せるように頑張ります。
―名実共にエースとして迎えるシーズンになると思いますが、その気持ちは
今年の春も1戦目に投げる準備はしていたので変化はないです。(早大有原や明大山崎など)ドラフト候補と投げ合うことになるがそこで負けてしまうとチームの士気にも関わるからそこで全部勝てるようにしたいです。
―個人的な目標は何ですか
春は最優秀防御率を獲得しましたがベストナインは有原さんが取りました。ベストナインは勝ち星が一番多い人が取るものなので、ベストナインを取れればチームが優勝に近づくかなと思います。
―意識するチーム、打者はいますか
特別意識することはないですが同学年以下には負けないようにしたいと思います。立教の佐藤や早稲田の中澤であったり。中澤とはけっこう仲がよくて打たれると何か言われそうなので絶対抑えます。
―抱負を一言でおねがいします
僕がチームに貢献できることは試合で投げて勝つことだけなので最大の貢献ができるように頑張りたいと思います。
―お忙しい中、ありがとうございました!
(取材 荒川智史 松下聖)
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