春季大会の2戦目、慶大の相手は大東大だ。強力な外国人選手を揃える、大学ラグビー界屈指の攻撃力を持ったチームである。慶大が鍛え上げてきたディフェンスがどれほど通用するのか、それを測る格好の相手だ。試合は序盤、大東大に猛攻を許し点差を離されてしまうものの、徐々に追い上げ、後半22分に同点に追い付く。その後一進一退の攻防が続いた末、最後は相手FWに決勝トライを許してしまう。白星こそ挙げられなかったものの、昨年の大学選手権では大敗を喫した大東大相手に粘りを見せ、好ゲームへと持ち込んだ。今後の躍進に期待が持てる内容となった。
2016/5/8(日)13:00K.O.@慶大日吉グラウンド
得点 | ||||
慶大 |
| 大東大 | ||
前半 | 後半 |
| 前半 | 後半 |
1 | 4 | T | 3 | 3 |
1 | 4 | G | 3 | 3 |
0 | 0 | PG | 0 | 0 |
0 | 0 | DG | 0 | 0 |
7 | 28 | 小計 | 21 | 21 |
35 | 合計 | 42 |
得点者(慶大のみ)
T=松岡、中本2、高野、辻
G=古田4、齊藤1
ポジション | 先発メンバー | 交代選手 |
1.PR | 細田隼都(商3・慶應) | →17渡邊悠貴(経2・慶應) |
2.HO | 松岡大介(環4・小倉) | →16中本慶太郎(経2・慶應) |
3PR | 角田匠輝(法4・慶應) | →18榎本雄一(商4・慶應志木) |
4.LO | 辻雄康(文2・慶應) |
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5.LO | 豊田祥平(総4・ 國學院久我山) | →19山中侃(商2・慶應) |
6.FL | 廣川翔也(環4・東福岡) | →20 中村京介(文3・明和) |
7.FL | 竹田和正(法4・慶應志木) |
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8.No.8 | 永末千加良(法3・慶應) |
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9.SH | 中鉢敦(経4・慶應) | →21櫻井修(経4・慶應) |
10.SO | 古田京(医2・慶應) | →22 斎藤大介(商4・慶應) |
11.WTB | 権正拓也(政3・慶應) |
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12.CTB | 豊田康平(総2・國學院久我山) | →23 今泉宏健(総3・清真学園) |
13.CTB | 木口俊亮(経4・仙台第三) |
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14.WTB | 高野慎也(商3・慶應) |
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15.FB | 楠本遼(経4・慶應) |
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試合はすぐさま動いた。前半1分、大東大CTBにラインブレイクを許し大幅にゲインされると、ボールはWTBに渡りトライを決められてしまった。「相手の波にのまれてしまった」(廣川)と振り返るように、立ち上がりでつまづき、与えたくない先取点を許した。たちまち追いかける展開となった慶大は、SO古田のパントを中心に攻撃を組み立てる。CTB木口、LO豊田祥らの連続攻撃によって相手ディフェンスを脅かす場面もあったが、得点には至らない。その一方、大東大は屈強な外国人選手にボールを持たせて、ゲインを狙う。慶大は、2人、または3人以上の選手が外国人選手に食らい付き、サイドラインの外へと押し出す。工夫が施されたディフェンスがはまり、簡単にゲインを許さない。すると慶大にチャンスが訪れる。相手ゴール前でマイボールラインアウトの権利を得ると、HO松岡が投げ入れたスローは見事キャッチされ、モールを組むことに成功。そのモールは徐々に前進し、トライは間近だった。しかし、あと一歩のところで相手ディフェンダーにグラウンディングを阻止され、絶好の好機を逃してしまった。このプレーで流れを渡してしまったのか、相手BKによる強烈な攻撃を止め切れず、慶大は立て続けにトライを許してしまう。スコアを0-21とされ、序盤は厳しい展開となった。なんとかして一矢報いたい慶大は33分、先程のプレーと同じようにマイボールラインアウトからモールを形成する。今度はHO松岡が見事トライに成功し、この試合チーム初得点を奪った。古田のコンバージョンも決まり、7-21。追い上げをみせたところで、前半を終了した。
後半、相手SOによって放たれたキックオフが10メートルラインを越えず、慶大は早速ボールの所有権を獲得する。その後ラインアウトからFW陣が連続攻撃を仕掛け、最後は途中出場のHO中本が抜け出し、インゴールへ飛び込んだ。さらに古田が難しい角度からのコンバージョンを成功させ、スコアを14-21とした。その後、再び1トライを許すものの、慶大が追い上げをみせる。後半16分、前に出るディフェンスでプレッシャーをかけると、たまらず大東大は長いパスを放る。パスの乱れをWTB高野は見逃さず、すかさずターンオーバー。そのまま相手ゴール内へと持ち込み、右隅にトライを決めた。再び難しい角度からのコンバージョンとなったが、この日の古田の左足は冴え渡っていた。難なく決め、またも追い上げに成功した。さらに22分、マイボールスクラムからSH中鉢が右に展開すると、木口がギャップを突き、相手ディフェンダーを振り切る。見事ビックゲインに成功しチャンスを演出すると、最後は木口からボールを受けとったLO辻がグラウンディング。「いいプレーを見せられた」という木口の活躍で、スコアを28-28とし、最大21点差あったこのゲームを振り出しに戻した。その後はお互い譲らず、両軍とも1トライ1ゴールを追加し、試合は同点のまま終盤へと突入した。試合終了が刻一刻と近づく中で、何とかして決勝点を挙げたい。その心の表れか、ボールの所有権は目まぐるしく移り変わった。一つのプレーが命運を分ける好ゲーム。軍配が上がったのは大東大の方だった。慶大は相手FW陣の連続攻撃を止められず自陣への侵入を許すと、最後はトライを許してしまう。その後のコンバージョンが入ったところで、試合終了。終始粘りを見せ、なんとか食らいついたものの、最後の最後で耐えることが出来ず、35-42で敗れた。
敗れはしたものの、昨年の大学選手権では大敗を喫した大東大相手に好ゲームを演じた。この試合、特に光ったのが、外国人選手への対応だ。学生離れしたフィジカルを持つ相手に対し、複数人の選手でタックルに行くことで動きを封じた。さらに、ボールを持って外から抜こうとするランナーに対しては、サイドラインの外へと押し出すディフェンスを施し、真正面から衝突することよりも容易に、その足を止めた。これら工夫された対策の甲斐あって、大東大本来の攻撃力を発揮させなかった。大学ラグビー界屈指の攻撃力を持つ大東大相手に、ディフェンス面で成果を上げることが出来たのだから、選手達は自信を深めたはずだ。一方、課題は試合の入りの部分だろう。「後半の良いテンポが前半から出せなかったことが今回の反省点」(豊田祥)、「前半は慶應らしいプレーが出来なかった」(楠本)と振り返るように、この試合では、立ち上がりでつまづいてしまい、大量失点を喫してしまった。結局、前半の大量失点が終盤まで響いただけに、より一層試合の入り方の重要性について認識させられた。いかにして、立ち上がりから100%のパフォーマンスを発揮するのか。この点において改善を図れれば、さらなる躍進が期待出来るだろう。次戦の相手は法大。立ち上がりに重点を置き、勝利を掴み取ってほしい。
【ケイスポ的MOM】攻守に渡る存在感・CTB木口俊亮
後半22分、辻のトライに繋げたビックゲインはまさに圧巻だった。それまで突破出来ていなかった相手ディフェンスを振り切り、相手ゴールへと激走。「オフェンスでもディフェンスでも強く前に出るプレーを期待されていると思う」と語るように、その「前」への意識が如実に現れたプレーだった。この他にも、ゲインに成功する場面が何度も見られ、貴重なペネトレーターとしての役割を果たした。また、ディフェンス面でも大柄な外国人選手へ果敢にタックルを仕掛けるなど、まさに攻守の両面において存在感を示した。春季大会では、2試合連続でスターティングメンバーに名を連ね、フル出場を果たした木口。今後の試合でも、中心選手としての働きに期待したい。
(記事・小沢光市)
選手コメント
LO豊田
(試合を振り返って)後半立て直せたところは良かったのですが、後半の良いテンポが前半から出せなかったのが今回の反省点です。(試合にどのような意識を持って臨んだのか)僕たちはディフェンスからリズムを作らなければならないチームなので、ディフェンスにフォーカスして練習に取り組んできました。今日のゲームも、外国人選手相手でも良いディフェンスをして、そこから自分たちのラグビーをしていこうと話をしていました。(スクラムでの相手のプレッシャーは)そこまでは感じませんでした。自分たちのプレッシャーが通用しているという実感はありました。(ディフェンスを総括して)スペーシングをフォーカスしていたのですが、やはりもっと前に出ていかないといけないなと思いましたし、そこは反省点です。内側からもっと前に出るディフェンスが僕らの目指しているものなのですが、今回はあまり内側から出られなかったです。(他に見つかった反省点は)やっぱりフォワードがもっと走れなきゃいけないなと思いました。前に出てシェイプを作って良いアタックをしなければなと。後半、それができた部分では良いテンポが出たので、一試合を通してできるようにしていきたいと思います。(ラインアウトから連続で得点をあげた)そうですね。ラインアウトは去年から引き続きやっているので、良いテンポでできたという実感はあります。(再来週の法大戦に向けて意気込みを)やはり僕らはディフェンスのチームなので、ディフェンスからいい流れを作って、いいセットプレー、アタックをしていくという形で勝ちにこだわる試合をしていきたいと思います。
LO辻
(今日の試合を振り返って)先週の青学大よりもフィジカルの強い相手だったので、どれだけ自分がアタックで力を見せれるかが自分の中で勝負でした。相手に下から入られたり、フィジカルで圧倒できなかったところがあって、あまりアタックで前回よりも貢献できなかったところが自分の中では悔しいなと思っているので、もっとしっかり力をつけてどんな状況でも冷静な判断をできるようにしたいと思います。(慶大は後半に勢いづいたような印象を受けたが)慶應の方が大東大よりもたくさんフィットネスの練習をしていると思うので、慶應は前半よりも後半に走れるチームになったと思います。(ゲインの場面が多かったが、相手のタックルの印象は)相手に大きい選手が多かったので上にタックルが来るシーンがあって慶應とはタイプが違うのかなと思いました。(昨冬以来の大東大戦だが、チームとして成長した点は)去年の試合と今年の試合を振り返ってみると、勢いが去年よりもあったかなと思います。昨年の試合では、試合の入りから外国人選手に圧倒されていましたが、今年の試合は皆が気持ちも高まって試合に臨めたために去年よりは圧倒されなかったので、そこが違ったのかなと思います。(再来週の法政戦に向けては)法政戦では自分の持ち味のタックルと自分の持ち味であるドライブ力のあるプレーを見せていきたいです。
FL 廣川
(今日の試合を振り返って)最初は相手の波にのまれてしまったんですけど、チームとしては盛り返したな、とは思いますね。個人的には余計なペナルティが多かったですね。今はFLとして大事な時に仕事をすることを目標に金沢さんと話してやっているんですけど、まだまだ余計なペナルティをしてしまうので、そこはダメなとこです。試合中熱くなるのは良いんですけど熱くなりすぎず、仕事をするところは仕事をするところはまだまだ出来てないのが反省点です。(外国人への対応は)やはり1人でいくと力負けしてしまうところはあるので、1人に対して2人、3人行くことは出来ていたと思います。(後半うまく立て直したが)外国人選手に限ったことではないですが、うまくプレーシングして、ディフェンスを効率よく行うというのが話にありました。(接戦になりましたが)チームとしては良いディフェンスだったり、ゲインされてもみんな返ってきたりという、諦めない気持ちがあったんですけど、やはり最後に取られてしまったのは今後の課題なのかな、と思いますね。(法大戦に向けて)まだまだプレーを向上させないといけないので、勝つ為に日吉でまた頑張りたいと思います。
CTB木口
(今日の試合を振り返って)今日は相手に大きい選手が居たので、前に出ていこうということでした。前半は、少し後手に回ってしまったので、後半は修正してやっていったのですが、あと一歩及ばず、でした。(今日の試合で良かった点は)前半は良くなかったのですが、後半はみんなの前に出る意識と、ディフェンスのセットの早さが良かったです。あとはアタック面でも、先手先手を取って、ペナルティの場面でもすぐに攻撃を仕掛けたりしました。そういったことが、後半になって徐々に出来たかな、と思います。(ご自身のプレーを振り返って)僕は、オフェンスでもディフェンスでも強く前に出るプレーを期待されていると思いますし、アタックではいいプレーを一つ見せられたかなと思います。ディフェンスはもう少し前で止められた部分もありました。(外国人選手への対応について)大きくて強いので、チームとしてダブルタックルでいこう、という方針でした。一人が下に入って、もう一人が上に入ることを意識していました。(次戦以降への意気込みをお願いします)課題も多いですが、一個一個クリアして、秋に良い結果を残すために、良い春シーズンにしたいと思っているので、これからも応援よろしくお願いします。
FB楠本
(今日の試合を振り返って)チームとして引っ張る立場になったので勝ちきる部分を僕中心に4年生が言ってもっと結果にこだわらなきゃいけないのかなと思います。(フィジカルの強い外国人選手が相手でしたが)慶應がやることはどの試合でも変わらないのでディフェンスから前に出て組織で守る。足低くタックルに入ってダブルタックルで止める。そこは崩れないのでそこをみんなに意識させたいです。今日は特にウィングのプレーヤーが大きい相手にも低くタックルが入っていたのでその部分は良かったと思います。(大東文化のディフェンスの印象は)結構外側から内側に被ってくるなという印象があったので外側のプレーヤーが意識して下がったり、オフェンスのチョイスなどをもう少しうまくできた所はあったのかなと思います。(次戦に向けて)今日は勝ち切れず、前半は慶應らしいプレーができなかったので次回の法政戦からは最初の1秒から慶應らしさを80分出し続けられたらなと思います。(攻撃面で良かった点は)前半は自分たちのラグビーが出来てなかったのですが、後半は意識してペースを上げられて少しずつ良いプレーが出てきた。もっとたくさんバックスで課題は出ているので修正して次の試合に臨みたいです。