【ラグビー】関東大学対抗戦開幕直前インタビュー③金沢篤ヘッドコーチ

対抗戦開幕直前インタビューの最終回を飾るのは金沢篤ヘッドコーチ。HCの立場として対抗戦を迎えるのは今年で2度目だ。昨年度同様、開幕戦の相手は筑波大。「夏合宿からずっとターゲットを絞ってやってきた」。今季はディフェンスのチームとして、戦いに臨むことになる。初戦勝利のため慶大指揮官が描いてきたシナリオとは。春の総括、夏合宿でのチームの成長についてうかがった。

 

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――春季の結果を振り返っていかがですか。

春は運動量とディフェンスのところにフォーカスをしてきてやってきました。結果だけを見ると、大東大にも明大にも負けていますし満足できる良い結果だったというのは難しいのですが、いくつかの試合や時間帯では自分たちの求めているパフォーマンスを出すことができたので、そこはポジティブにとらえています。春に出た改善点を夏にもう一度トレーニングして今ここを迎えている段階です。

 

――春季は鈴木主将(環4)が故障により試合に出場していませんでした。そのような中でチームの状態に関してはどのように感じていましたか。

主将がいないことはチームにとって確かに大きいです。チームの中心的な支えになる選手ですし、慶應の中にはそんなにいない、ボールを持てば必ずゲインするようなボールキャリー能力に長けている選手なので、彼がいなかったことは痛手ではありました。ただポジティブに捉えれば、それ以外の選手にもチャンスが回り別の選手が伸びたともいえます。例えば竹田(法4)など、特に7番、8番のポジションの選手がチャンスをもらって伸びることができたと捉えることもできますね。

 

――夏合宿で重点的に取り組んできたことは。

もう一度個人のタックルを徹底し、さらにディフェンスでセットするスピードと前に上がるラインのスピード、それからコンタクトでの当たるスピード、この3つのスピードに特にフォーカスしてやっていました。

 

――夏の練習試合では春季には対戦することのなかった帝京大との試合がありました。

そうですね。この試合では、自分たちのミスやブレイクダウンでターンオーバーされて、そこから一気にトライに持っていかれたシーンがいくつかありました。そのようなプレーはスキルの高い帝京大だからこそできることだと思いますが、もっと自分たち自身も、一気に点を取られないようにメンタル的にもスキル的にも鍛えていかないといけないと感じましたね。ただ、一方でスクラムをはじめとしてフィジカルの部分では、どのくらいまでキャッチアップできているのかがわかったので、対抗戦でもっと良い試合ができればと思います。

 

――今年の帝京大のチームの印象は。

スキルがありますね。もともとフィジカルがあるチームですが、それにも増してSO松田(力也)くん(教4)など、やはりキーになるところにスキルの高い選手がいて、彼らが軸になって動いているとすごく感じますね。

 

――チームの目標として“打倒帝京”を掲げている以上、夏の試合はチームとしても気合の入る試合だったと思います。この試合をきっかけにチームには何か変化はありましたか。

具体的にそこを境に変化したとは自分はあまり感じていませんが、ただ、彼らが帝京戦を迎えるにあたってすごく緊張していたので、その緊張感は良い経験になったと思っています。春の場合は公式戦といっても実際には秋につながる試合ではないので、そんなに緊張感があるわけではないのですが、夏のあの時点で緊張感のあるゲームができたというのは良かった点です。例えば前半の20分間は全く動けていないんです。それは緊張から呼吸が浅くなって疲労も感じやすくなっていたということです。そのような緊迫感のあるゲームができたのは良かったと思います。

 

――その緊張をほぐすために何か具体的なアドバイスはされましたか。

今年のチームは若い選手が多く初めて対抗戦に出ることになるような選手も多いです。なので、帝京戦の時に選手たちに言ったのは、実際に対抗戦ではそういう緊張感の中でやらないといけないんだということです。おそらく現実的に秋になればもっと緊張するかもしれないので、緊張をほぐすというより、緊張をすることが当たり前なのでそれを受け入れてプレーするしかないという話をしました。

 

――帝京大戦に限らず練習試合を振り返ってみていかがですか。

それぞれの試合において、自分たちがフォーカスしてきたディフェンスで良いプレーがあったので、良くなってきていると感じています。

 

――夏合宿を通して総じてチームの仕上がりは順調ですか。

そうですね。少しけが人が出ているのが心配なところではありますが、自分が思い描いたように仕上がってきていると思いますね。

 

――特に成長を感じる選手はいますか。

レギュラーに絡むかは別にして、例えばPR坂田(経2)はケガ人がいる中で上のチームに上がってきたのですが、経験を積んでだいぶ成長した選手だと思います。あとは、夏合宿で特によかったのはNo.8西村(環4)というJr.チームのリーダーですね。帝京戦Cの試合で、タックルにおいてすごく良いパフォーマンスをして、春では彼が課題としていたところを克服してきたので、伸びてきた選手だと感じました。

 

練習では中心に入っていき指導する

練習では中心に入っていき指導する

――大学選手権の前のステップとして対抗戦ではどのように戦っていきたいと考えていますか。

余裕はないので、一戦一戦勝ちにこだわって貪欲に勝ち抜くことしかないと思います。まずは初戦の筑波大戦ですね。夏合宿からずっとターゲットを絞ってやってきたので、まずはそこをしっかり勝ち切りたいと思っています。

 

――相手の試合を事前に見ることができない点で初戦はより厳しさがあるのでしょうか。

春の試合を撮っているので、それを見ることはあります。あとは昨年度はそうではなかったのですが、今年度はたまたま筑波大が一週間前に青学大と試合をしているので、それを自分たちは見ることができます。当然それもビデオで分析して試合には臨みます。ただ自分が逆の立場だったらプレーを見せないで一戦目はやるので、そういう意味ではお互い良い緊張感で臨むことになると思います。

 

――春の試合にはどのような印象を抱きましたか。

筑波大は昨年度もそうでしたが、もともと個々のフィジカルが強くブレイクダウンが強いチームなので、帝京大に昨年度(筑波大が)勝ったときも、ブレイクダウンのところで勝っていました。慶大が(大学選手権で)筑波大に負けた時もブレイクダウンのところでやられているので、特にそこが大きなキーとなると思っています。

 

――初戦にはベストなメンバーで臨むことができそうですか。

(ベストメンバーという表現は)難しいのですが、そのときのベストなメンバーで臨むということが大切になってきます。自分が思い描いているのとはもしかしたら違うメンバーになるかもしれませんが、どのチームもやはりけが人を抱えながらやっているので、そのときに一番良いパフォーマンスができる選手を出すことしかできません。自分がその選出の役目を背負うので、しっかりとセレクションしたいと思います。

 

――今の段階でポジション争いが激しいところは。

バックローはキャプテンも帰ってきたのでポジション争いが激しくなるところだと思います。

 

――以前から初戦が大切という話をされていました。初戦に向けてチームをどのような状態にもっていきますか。(取材日は9月6日)

ここから一週間はハードなトレーニングをして、筑波大戦までの一週間はしっかり筑波に向けての良い準備をして臨みたいと思います。ピークを初戦に持っていけるようにと春からずっと計画しているので、疲労などをある程度コントロールしながら一番良いパフォーマンスができるようにもっていくことを考えています。

 

――現段階でのチームの雰囲気は良いですか。

はい、良いと思いますよ。

 

――対抗戦開幕に向けて、webを見ている方にメッセージお願いします

いつも応援頂きありがとうございます。私は、皆さんが見ていて慶應のラグビーはこういうラグビーだと分かる試合をしたいと考えていて、特に今年はディフェンスにフォーカスしてやってきています。それは選手にもずっと言ってきていることです。ディフェンスのチームとして、みなさんが見ていて心が震えるような試合をしたいと考えておりますので、応援よろしくお願いします。

 

(取材・室塚あす香)

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