「リーグ戦の時よりも少しは早大や明大に近づけた試合でした」――記念すべき70回目の全早慶明定期戦。2戦でスタメンを変えて挑み、ともに第1セットを先取する上々の立ち上がり。しかし、徐々に相手と自力の差を見せられて逆転負け。全カレでも順調に勝ち進めば3回戦で当たることになる早大が明治も下し、優勝を飾るなか、全カレへ向けて自信と課題を得た試合となった。
11月12日(日) 第70回全早慶明バレーボール定期戦@慶應義塾高校日吉会堂
早大戦
得点 |
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慶大 | セット | 早大 |
25 | 1 | 22 |
16 | 2 | 25 |
21 | 3 | 25 |
早大は秋季リーグで11戦全勝という圧巻の成績で優勝を果たした。そんな強敵相手に今年3戦(早慶定期戦、東日本インカレ、秋季リーグ戦)全敗も、秋季リーグの対戦では1セットを先取している。少しずつ、それでも確かに差は縮まっているだけに今回こそは勝利を挙げたい。
負傷の富澤太凱(経2)に代わり、この試合ではオポジットに清水柊吾(総1)を置くフォーメーションで戦った。第1セットはその清水がライトから強打を放って存在感を見せると、慶大得意のブロックも見事に機能し序盤からリードを奪う。センターの佐藤康平(環4)と樫村大仁(環1)がともにクイックを決めると、黒田彪斗(環4)も負けじと強打を打ち込んでいく。途中OBの野田剛(H5卒)がピンチサーバーとして出場し、盛り上げるシーンも見られた。中盤徐々にブレイクを成功させて差を広げていくと、最後はマルキナシム(総2)のスパイクがブロックアウトを誘った。秋季リーグ戦の時と同じように第1セットは慶大が先取する。
ただ、第2セットには覇者が目を覚ました。相手の強力なサーブが効果的に決まるようになると課題である守備力の弱さが露呈してしまう。果敢に攻め込むも、「プロでも通用する」相手の守備を崩せず、連続失点を止められない。大きくリードされた終盤に佐藤と吉田祝太郎(政1)がブロックポイントを挙げたが序盤の大量失点が尾を引きこのセットを落とした。
3セットマッチで行われるため次が最終セット。序盤からペースをつかみたい慶大は清水が、センターも務めたその高さを生かしたスパイクで得点すると、マルキが1枚ブロックを成功させるなど、4―8と理想的な形でリードを奪う。このまま逃げ切れるか、と思った矢先相手のサーブに崩されてしまい5連続失点で逆転を許してしまう。中盤はミスの少ない早大に付け入る隙を見つけられず、リードを広げられていく。だが、意地を見せる慶大はマルキのスパイクや佐藤・黒田両4年のブロックで3連続得点して相手にタイムアウトを使わせる。まだまだ諦めたくない場面ではあったが、ここからブレイクを奪うことは出来ず。早慶戦4連敗という悔しい結果となった。
明大戦
得点 | ||
慶大 | セット | 明大 |
25 | 1 | 21 |
22 | 2 | 25 |
18 | 3 | 25 |
早大との一戦を終え、次の対戦はリーグ戦で接戦の末惜しくも敗れた明大との一戦となった。定期戦とは言え、リーグ戦の借りを返したところ。試合は、第1セットを幸先よく取ったものの、第2、3セットで明大に対応されセットカウント1-2で敗戦。前回のリベンジとはならなかった。
明大戦では、エースの富澤太凱(経2)の欠場もあり、セッターのポジションには尾木将(政4)が入り、普段セッターとしてプレーしている吉田祝太郎(政1)が高校以来のアタッカーに回った。
第1セット。吉田がブロック3枚の上から強烈なスパイクを決め幸先よく先制すると、黒田も次々と強烈なスパイクを決めていく。黒田、吉田両選手の強気なアタックで序盤の主導権を握ると、最後は黒田、清水のブロックで明大のスパイクを叩き落し、一度も逆転されることなく第1セットをものにする。
第2セットは、序盤から清水のクイックが冴え、連続ブレイクで慶大が5点のリードを奪う。しかし、ここから明大の反撃が始まる。普段とは違うポジションでのローテーションからかレシーブの連携ミスもあり、14―17と逆転されてしまう。ここでタイムアウトを取って悪い流れを断ち切りたい慶大だったが、タイムアウトが明けても流れは変わらず。マルキの絶妙なコースへのスパイクや、尾木のツーアタックなど随所に好プレーは見られたものの、追いつくとまでは行かず、22-25で第2セットを落とす。
まずは流れを変えたい最終第3セット。吉田がレフトから2連続でスパイクを決め、ようやく慶大らしさを取り戻したかと思われたが、ライトからスパイクを次々と決められ連続ブレイクされると、気づけば点差は10点に。ここから慶大が、マルキ、吉田らの奮闘で反撃に出るも、序盤に作ったビハインドを埋めることは出来ず。このセットを18-25で落とし、セットカウントは1-2。リーグ戦のリベンジとはならなかった。
秋季リーグを終えて1か月経ったが、持ち味であるサーブアンドブロックを存分に発揮できた場面を秋季リーグの試合以上に見ることができた。その一方で課題である守備力が大事な場面で顕著に表れてしまったことが敗因となってしまった。
2週間後に迫った全日本インカレは負ければ1年が終わるという大事な一戦だ。順当に2つ勝ち進むと当たるのはまたしても早大。今日も1セット取ったとはいえ、4回も苦い思いをさせられこれ以上黙ってはいられない。早大と対戦して「勝ちへの感触は掴めている(黒田)」。ここまで1年間伸ばし続けたその手はもうすぐ届くはずだ。今度こそ勝利を掴もう。有終の美を飾るための最後の戦いが間もなく始まる。
(記事・尾崎崚登、内田貴啓、写真・岩本弘之、太田彩恵、津田侑奈、藤澤薫)
試合結果
| 早大 | 明大 | 慶大 |
早大 |
| ○2-0 | ○2-1 |
明大 | ●0-2 |
| ○2-1 |
慶大 | ●1-2 | ●1-2 |
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優勝:早稲田大学
宗雲監督
(今日の試合の感想は)内容はまずまずだったと思います。
(守備力の強化は出来たか)学生は速い打球へのディグ(スパイクレシーブ)の練習をしていました。その効果があったかどうかはわかりませんが、気持ちは大事なことです。また、守備力とは別に今回は富澤がいないので、2つのチームで準備をしていました。インカレに向けてという意味ではこちらの引き出しも増えるかなと思います。今後練習試合もあるので、新しいパターン、吉田が打つ場合もまだ継続していく予定です。その前のオポジットに清水が入るパターンも機能していたので、悩みどころです。いい内容でした。
(どちらの試合も逆転負けとなったが)自力の差が出てしまいましたね。ただ、早大戦も2セット目大きく離されても最後に立て直しました。ずるずる大崩れしないようになってきたのでほんのちょっとずつ両校とは差を縮められつつあるんじゃないかなという感じです。
(手応えの感じられた試合ということか)早稲田さんはディグが信条なのかVリーグに近い守備力を持っています。対早稲田さんというところではまだ手応えというにはおこがましいかなと思いますが、チーム単体で見ればよくなっています。
(OBの野田さんの影響は)ベンチでタイムを取ったり、セット間で一言いいことを言ってくれていたので、学生もとても新鮮でよかったと思います。ケガだけ心配していましたが、効果がすごくあったので助かりました。
(全カレに向けて)点取り屋の富澤が出れそうにないので、どうなのかなと懸念はしていました。でも前向きにチームを2本立てで作っていくなかで、周りの人間がいいチャンスを掴みかけているので、最後のチームで納得のできる試合をしたいと思います。
尾木将副将(政4)
(明治戦を振り返って)正直1セット目は勝てるなという感じでやっていました。でも2セット目、3セット目となるにつれて、自分たちが崩れて、自滅で負けてしまったという印象です。
(セッターとして久しぶりの出場だったが)今年はセッターとして全然試合に出てなかったんですけど、エースの富澤がけがをしたということで、急遽こういう形も練習でやってみて、今回の試合で試してみようという感じです。自分としては、そこそこ出来たんじゃないかなと思っています。
(普段と違うポジションで出ている選手も多かったが)うちではこのフォーメーションだとスパイカーは全員、強い選手が揃っていて、セッターとしてはやりがいがある形だと思っているので、まずは丁寧に、スパイカーが気持ちよく打てるようにトスを上げるっていうことを心がけていました。
(秋季リーグからおよそ1ヶ月が経ったが)富澤がけがをしたっていうのもあるんですけど、チームとしては全カレに向けてしっかりやっていこうと団結して、雰囲気よく練習できているかなと思います。
(全カレまで20日を切ったが)僕ら4年生にとっては最後の大会です。出せる力をしっかり出し切って、有終の美を飾りたいので、精一杯、一日一日を大事にしていきたいと思います。
黒田彪斗(環4)
(今日の試合をそれぞれ振り返って)リーグ戦終わって富澤がけがしてしまって2パターンのポジションで練習するようになりました。今日の試合はもちろん勝ちに行っていたんですけど、試す目的もありました。負けたのがとても悔しいですが、リーグ戦の時よりも少しは早大や明大に近づけた試合でした。
(今日の敗因は)やはりサーブレシーブの安定性がうちは欠けていると思うので、今後の試合はサーブレシーブを返し続けてセットを取りたいと思います。
(今日のプレーを振り返って)点数をつけるとしたら40点くらいです。秋リーグの反省を生かすことが出来なくて、2段トスなどの工夫をもう少しできるかなと思います。
(定期戦で普段と違う点は)やはり歴史がある定期戦なのでOBの方々も出ていただいて、慶應全体で戦っているんだなといつもよりも強く感じました。
(次の全日本インカレに向けての意気込み)勝ち進んでいくとやはり早大にあたりますが、秋リーグと定期戦では負けてしまいましたが勝ちへの感触は掴めているのでリベンジを果たしたいと思います。
マルキナシム(総2)
(今日の2試合を振り返って)1試合目は担当するいつものポジションでやって、2試合目は僕がカットをしないでスパイクを打つという新しいポジションでやりました。まだどちらも練習が足りていなくて、良い時は良くて悪い時は悪いという感じでした。
(今日のご自身の攻撃は)自分の良いところは高さだと思っています。それを出し切れているところと、出せずに決め切れないところがあったので、そこは直したいです。
(今日戦った2校の印象は)どちらもレシーブが上手いチームなので、しっかり打てる時は100%打って、弾き飛ばすくらいの勢いでやりました。
(ラリーが続く場面が多く見られたが)僕は割れたトスや高いトスと言った二段トスをしっかり打ち切るというのが仕事なんですけど、それがまだできていないので、しっかり練習したいと思います。
(次戦に向けて一言)次は慶関定期戦なんですけど、その2日後に全日本インカレがあるので、そこにベストを持っていけるように頑張ります。
清水柊吾(総1)
(今日の試合を振り返って)早稲田戦は最初決まっていたんですけど、後半から対応されてあまり決まっていなかったので、そこをもっと直していきたいです。2試合目はミドルでの出場で、早い攻撃に対応できていなくて間を抜かれることが多かったので、まだ課題がいっぱいあるなと思います。
(早稲田戦で意識していたことは)一つはレシーブをしっかり入るということと、スパイクに関しては思いっきりブロックを避けて打とうと思っていたんですけど、あんまりうまくいっていなかったですね。
(今日までに意識してきたことは)リーグ戦と違ってオポジットもやらないといけなかったので、どっちに選ばれても自分の仕事ができるようにということと、ブロックとディグも練習していました。
(全カレに向けて)オポジットならもっと決定率を上げて、ミドルだったらしっかりクイックを回してブロックも速いトスについていけるように早稲田と当たる前の2回戦もしっかり自分の仕事ができるように頑張りたいと思います。
吉田祝太郎(政1)
(今日の2試合振り返って)練習でやっていたことは出来たとは思います。1セット目は2試合とも取れたんですが、2、3セット目で相手が対応してきて自分たちは1セット目以上のことが出来ずに負けてしまったって感じですね。
(リーグ戦との雰囲気の違いは)早慶定期戦はもっと大々的にやる感じで、オール早慶明はOBの方もチームに加わってくださって、あまりピリピリした感じはなく伸び伸びプレーできたと思います。
(OBの方からアドバイスなどはもらったか)OBの野田さんから、「余計なこと考えなくていいから弱気にならずに次の一本次の一本を考えろ」という言葉をいただきました。
(明大戦では、久々のセッター以外での出場でした)高3の春高以来ですね。ここ一週間練習ではやらせてもらって、完全に実力不足だなと気づかされました。大学ではずっとセッターに専念していたんですが、リーグ戦後に富澤さんがけがしちゃったので、穴埋めとして僕がサイドをやるかもしれないってことで練習していました。
(サーブの調子は)良かったと思います。今までライト側から打っていたんですけど、レフト側から打つように変えて最初の試合だったので悪くなかったと思います。
(全カレに向けて)もう今日で早大とは4回も当たっているんで、だいぶわかってきたと思うので、全カレでは作戦をしっかり練って勝てればと思います。
サイド | マルキ ナシム(総2・川越東高) |
セッター | 吉田祝太郎(政1・慶應義塾高) |
センター | 佐藤康平(環4・桐蔭学園高) |
オポジット | 清水柊吾(総1・広島城北高) |
サイド | 黒田彪斗(環4・富山一高) |
センター | 樫村大仁(環1・茨城高専) |
リベロ | 長澤翔吾(環4・盛岡一高) |
松岡海(文4・慶應義塾高) | |
途中出場 | 野田剛(H5卒・株式会社野田屋) |
岩本龍之介(商3・仙台二高) | |
尾木将(政4・修道高) | |
谷口聡(環2・韮山高) | |
浦部連太朗(総2・高松一高) | |
五味渕竜也(環2・習志野高) | |
片波見和輝(文2・成田高) | |
増田拓人(環4・習志野高) | |
立木智大(政4・慶應志木高) |