「思わず胸が熱くなるような良い勝負でした」――昨日ついに初勝利を掴んだ慶大バレー部が続いて相手にするのは強豪・中大。課題の第1セットは大差で落としてしまうものの、第2セット以降はレシーブが安定し、サーブも効果的に決まるようになった。一進一退の攻防が続き、試合は最終セットへ。先行するも追いつかれる展開の中で、最後は富澤太凱(経3・慶應)が決めた。2時間近い激闘を制して2連勝。リーグ後半戦に向けて弾みのつく結果となった。
4月22日(日)春季関東大学男子1部バレーボール第6戦 慶大×中大
@ウイング・ハット春日部
得点 | ||
慶大 | セット | 中大 |
15 | 1 | 25 |
33 | 2 | 31 |
21 | 3 | 25 |
25 | 4 | 16 |
15 | 5 | 13 |
4連敗、取ったセットはわずか2つ。そんな長いトンネルを抜けて日大戦で初勝利を掴んだ。ここから勢いづきたいところで迎えた相手は中大。最強世代こそ抜けたものの、ここまで高さを生かしたスパイクとブロックで無傷の5連勝を誇っている強敵だ。初勝利によって得た自信でひるまずに対抗できるだろうか。
第1セット、いきなりマルキナシム(総3・川越東)のスパイクをブロックされると、さらにサービスエースを決められ点差を広げられていく。これまで見られたような「サーブで崩されて連続得点を許す」パターンが続き、ブロックポイントを積み重ねられる。ほとんどいいところなしでこのセットは大差で落としてしまった。
第2セットから岩本龍之介副将(商4・仙台第二)、清水柊吾(総2・広島城北)を投入し、立て直しを図った。すると開始から樫村大仁(環2・茨城高専)のサーブで相手を崩すと、富澤のブロックなどで4連続得点を挙げる。しかし、直後に相手に4連続得点を許し、そこからは互いに譲らぬシーソーゲームに。23―24と、あと1点取られるとセットを落とす状況でサーブを放つのは富澤。鋭いサーブで攻めて相手を崩すと、マルキのブロックが炸裂しデュースに持ち込んだ。デュースに入ってからは息詰まるサイドアウトの応酬が続く。均衡が崩れたのは30―31から。清水がクイックを決めてまず追いつくと、マルキの強烈なサーブが相手からダイレクトで返ったところを冷静に展開し、富澤が決めてセットポイントを奪う。続くマルキのサーブも1回で返ったところを岩本が冷静に相手コートに落とし、劇的な展開で1セットを返した。
良い流れを続けたい第3セット。マルキのジャンプサーブがこのセットも冴えるが相手も譲らず、一進一退の攻防が続く。大崩れすることなく互角の勝負となったが、終盤に相手のサーブで崩されて一気に連続失点を重ね、惜しくもこのセットを落とした。
第4セットは要所でブロックが決まった。清水がブロックを決めてリードを奪うと、相手に翻弄されながら富澤が相手のスパイクを一枚でブロックして得点を伸ばす。中盤には吉田祝太郎(政2・慶應)のサービスエースも決まり、優位に試合を進めていった。途中には、リベロ永田将吾(総1・高松)が必死に繋いだボールがそのまま相手コートに落ちて得点につながるシーンも。サーブレシーブでも安定感を見せた慶大。このセットでブレイクを許したのはわずか2回と安定した試合運びでこのセットを大差で取った。
勝負は運命の第5セットへ。序盤、岩本のサーブから相手の攻撃をいなしてチャンスを作ると、富澤が立て続けにスパイクを決めて5連続得点。勝負は早くも決まったかに見えたが、直後に3連続得点を許して試合は振り出しに。それでもマルキがスパイクを決めてブレイクに成功し、2点リードで折り返しを迎える。その後サイドアウトが続くも、吉田が再びサービスエースを決めてさらにリードする。今度こそ決まったと思いきや、相手もサービスエースを決めて1点差に。直後の攻撃を樫村がクイックで打ち込みマッチポイントに達する。直後のサイドアウトは取られて、14―13で相手のサーブ。岩本が拾い、吉田がライトに上げて、富澤が強打した。ブロックで跳ね返った打球は富澤のはるか右、コートの外に落ちて勝負あり。コートにはレギュラーメンバーの喜びの輪と、滑り込む控え選手の笑顔が広がった。
ここまで弱点であったレシーブを強化し、それを軸にするスタイルにまで生まれ変わった慶大。しかし、それを生かすためにサーブをコートに入れていこうとした結果、「サーブを打つ形が変わってしまった(宗雲監督)」。そして、上位校との対戦の中でやりたいことが上手くいかずに自信を失いかけてしまった。
そこで立ち直ったのが、慶大の強みであるサーブを生かす戦い方だった。今日の試合ではマルキや岩本が巧みなサーブで相手を揺さぶり、吉田の強烈なサーブでエースを奪い優位に試合を進めていった。
一方、昨年まではそのサーブを上手く返された時に太刀打ちできず、もろい部分が目立っていたが、その部分を強化してきた今年は全員がつなぐ意識を持ってプレーし、それが少しずつ形となって表れている。今日に関して、サーブレシーブ成功率は中大を上回っていたほどだ。
「やっと自分たちの満足いくようなバレーができた(伊藤主将)」「自分たちがやってきたことを出すだけと再確認できた(岩本副将)」。自分たちの道は間違いではなかった、と自信を深める1勝となった。強豪相手の2度目の勝利で今度こそ気が付いたはずだ。リーグ戦もこれで折り返し。これからの後半戦は、迷いを振り切った慶大がさらに躍動するだろう。苦しんだ道の先には必ず輝く栄光が待っている。栄光へと続く自分たちの道をこれからも迷わず進んでいってほしい。
(記事:尾崎崚登 写真:藤澤薫)
以下、コメント
宗雲監督
――今日の試合を振り返って
いい試合でしたね。こっちもベンチで思わず胸が熱くなるような良い勝負でした。1セット目は良くなかったですが、2セット目に岩本が入ってから副将らしい良い働きをしてくれました。彼がまとめてくれたと思います。
――今日の入り方が悪かった要因は
気持ちは乗っていました。でも最初のダイレクトボールを、落としてしまったところで雰囲気が悪くなってしまいました。あそこで悪い慶應が出るなという予兆がありました。よく(吉田)祝太郎もあそこから我慢して、切り替えてやってくれました。岩本もだいぶまとめてくれたと思うので、よかったです。
――選手を入れ替えた理由は
守備は小出も遜色なくできていると思いますが、岩本の方が攻撃力はちょっと上がるので、そこを狙いました。清水に関しては、空中での攻撃力が高いので出てもらいました。
――岩本副将に関してはそれ以上の効果があった
岩本はプレーでしっかりやってくれたので、他の選手のストレスにならなかったと思います。小出の守備が悪いわけではないですが、決めるところは決めてくれたので、そういうところじゃないですかね。
――サーブもよく決まっていたが
リーグの前半は自分のたちのスタイルに迷ってしまって、サーブが良くなかったので、戻ってしっかり打つスタイルに戻して、それを通そうと言いました。通してうまくいけばこういう試合もできるので、残りもスタイルを通していきたいです。
――前半戦を振り返って
ディフェンスが強くなったので、サーブでギャンブルしないで、ブロックとワンタッチ取れる形でいこうとしましたが、そこでサーブを打つ形がおかしくなってしまいました。そこは私の責任なので、しっかりサーブを打たせて慶應らしい部分にブロックとレシーブを合わせるスタイルでこれからやっていきたいです。
――そこは「サーブアンドブロック」に立ち返るということか
サーブあってのブロックなので、ブロックが大きくても変に中途半端なサーブを打ったら機能しません。サーブで攻めてこそと考えて、基本の慶應のスタイルに立ち戻ってやります。
――For the Quickの面は
サーブレシーブが安定しないとダメですが、今日はいいところで樫村が決めてくれました。ミドルの打数は普通1人1セット3本くらいですが、樫村の脅威や清水の上手さを出せるようにあと1、2本増えればそのスタイルに近づけると思います。パスをしっかり返すところをこれからしっかりさせていきます。
――後半戦に向けて
良い雰囲気で練習できると思います。せっかく勝ったので、調子に乗ってやらせます(笑)
伊藤祥樹主将(総4・清風)
――見事な2連勝となったが
正直嬉しいです。4連敗して苦しかった部分もあったので、ほっとしたというか、よかったなと思います。
――ベンチから声がたくさん聞こえたが
ベンチからは、次の具体的な作戦の指示やムード上げとか。コートの中ではできないですけど、まあできるだけ近いところまで出て、声を掛けてチームを外から引っ張ろうと思って、今週はベンチの近いところから指示を出していました。
――中大対策は
都築(仁)君が高かったのと、レシーブ位置とか特徴ある選手が何人かいたので、それに対するブロックとレシーブの対策をしました。あとは、向こうのセッターのトス配分とかそういうところを自分は注目していて。駆け引きができていたのかなと思います。
――チームスタイルについて
やってきたところができたというところと、個人のパフォーマンスが上がってきているのかなっていうのがあります。
――春季リーグ前半戦を終えて
最初は硬さとかもあって上手くいかなかったんですけど、やっと自分たちの満足いくようなバレーができているので、そこらへんは良いかなと思います。
――来週の2戦に向けて
自分たちの力も出て、プラス控えメンバーも上(応援席)にいるメンバーも一体となってバレーボールができれば、かなり強い力が発揮できて、上位のチームにも負けることはないのかなと思うので、一致団結して勝ちます。
岩本龍之介副将(商4・仙台第二)
――2連勝となったが
非常に嬉しいです。
――第2セットからどういう心持ちでコートに入ったか
1セット目は、ほんと何もかもがだめで試合になっていなかったので、まずはサイドアウトをしっかりとり続けるっていうのを周りに声を掛けて、継続して毎回1本ずつ切ろうっていうのは心がけてやりました。
――スパイクについて
5本くらいしか打ってないですけどね(笑)スパイクはもうちょっと練習しなきゃいけないなって思っています。でも他にも打つ選手はいて、マルキと富澤が点を取ってくれるので、自分の役割をもうちょっと確認して、リバウンド取ってもらうところはもらったりできればいいなって試合中に思いました。
――ブロックアンドレシーブについて
相手をしっかり分析して、この選手だったらしっかりここ跳んで抜けてきたら拾おうとかって、みんなが共通認識を持ててたので、今日はすごく機能していたと思います。
――今リーグ前半戦を終えて
ずっとブロックアンドレシーブってやってきたのを、最初の方は出せそうで出せない、もうちょっと出せれば絶対に勝てるのにっていう試合が続いて、2週目とかちょっと悩んで上手くいかないことがすごいあったんですけど、今回の2連勝で、やっぱり自分たちがやってきたことを出すだけなんだなってみんなが再確認できたというか、そういう折り返しになったので、後半戦に向けてもっともっと自分たちのやってきたことの精度を高めてどの相手にもやっていければいいのかなと思います。
――来週に向けて
ここも勝たなければならないところだと思うので、しっかり2戦勝利をもぎ取りたいと思います。
富澤太凱(経3・慶應)
――今日の試合を振り返って
序盤は相手の高さだったり、上手さにひるむ場面もあったんですけど、自分たちがミーティングを重ねてきた、自分がやるべきことを徹底してやった結果、自分たちの形に上手くはまって今日は勝てたと感じました。
――サーブでは崩す場面もあったが
個人的にはあまりよくなかったです。チーム的にはフローターが昨日確認した狙うべきところにしっかり狙うことができていたのが、相手を崩せた要因かなと思います。
――ブロックもよく機能していたが
欲を出さないでしっかりシステムで止めようという意識の下やっていました。割り切るところは割り切って、自分たちのリズムに持っておくための必要なコミットブロックをするために多少は振られても仕方ないなと思っていました。
――最後の得点を決めた瞬間の気持ちは
点で点で、来ていたのが1本の線でつながって、やっと自分たちのやりたいことができてかなり嬉しかったです。とりあえず、めっちゃ嬉しかったです(笑)
――前半戦を振り返って
やっと自分たちのやりたいことが形になってきたので、後半戦も引き続き1戦1戦全力でやりたいことをやって勝ちます。
――来週に向けて
もっともっとよくして、勝てたらいいなと思います。
マルキナシム(総3・川越東)
――今のお気持ちは
嬉しいです。中央大は力的には格上だと思うので、勝ててよかったです。
――第1セットからの切り替え
1セット目は序盤で自分たちがまた硬くなってしまって、それ以外では相手もミスが多かったですし、こっちのやってることはきまっていたので落ち着いてやり直そうとやっていました。
――サーブも好調だった
監督とかベンチの方が毎回どうしろこうしろって言ってくれて、それでやっとつかめたので、本当にそこは感謝しています。
――スパイクは
スパイクは、体勢が悪い状態で決められないのがまだまだ課題なんですけど、まあ個人的には良かったかなと思ってます。あとは勝負所でエースとして切れるように。富澤頼りになっているところがあるので、信頼してトスを上げてもらえるように頑張りたいと思います。
――リーグは折り返しを迎えたが
最初は4連敗してチームも暗くなったところがあったんですけど、ここで2連勝できたので、この勢いのまま後半も勝ちを多くとりたいと思います。
樫村大仁(環2・茨城高専)
――今日の試合を終えての感想
昨日と今日連勝できてシンプルに嬉しいです。
――クイックとブロックが機能した
今日は技術うんぬんより気持ちが今までより前面に出ていたことが結果につながったと思います。自然に体も軽く動いて、それが気持ちから技術につながって、ブロックもクイックも決まったと思います。
――集中できたということか
集中して、悪いトスもただミスをするのではなく、繋いで決まったりという場面も多かったので、集中力を保てたと思います。
――最後にクイックを立て続けに決めました
たまたまですけど、決まってよかったです(笑)
――前半戦での手応えは
負けている試合も今季は手応えがあります。昨年は太刀打ちできなかった筑波大相手にもいい試合展開に持っていけたりしました。僕自身は手応えを感じているので、残り半分もチーム一丸となって戦って勝てるように頑張っていきたいです。
――次の試合に向けて
今週はシニアの合宿があるのでチームにはなかなか合流できませんが、短い時間の中でしっかり合わせて、今日や昨日よりいい姿を見せられるように頑張っていきたいと思います。
セッター | 吉田祝太郎(政2・慶應) |
サイド | 小出捺暉(環1・駿台学園) |
センター | 片波見和輝(文3・成田) |
オポジット | 富澤太凱(経3・慶應) |
サイド | マルキナシム(総3・川越東) |
センター | 樫村大仁(環2・茨城高専) |
リベロ | 永田将吾(総1・高松) |
途中出場 | 谷舜介(環1・徳島城東) |
| 岩本龍之介(商4・仙台第二) |
| 清水柊吾(総2・広島城北) |
| 宮川郁真(総1・松本県ヶ丘) |
順位表(4月22日終了時点) | |||
| 大学 | 勝利数 | セット率 |
1位 | 早大 | 6 | 18.0000 |
2位 | 日体大 | 6 | 2.5714 |
3位 | 筑波大 | 5 | 3.0000 |
4位 | 中大 | 5 | 2.1250 |
5位 | 順大 | 3 | 1.1818 |
6位 | 明大 | 3 | 1.1818 |
7位 | 東海大 | 2 | 0.6923 |
8位 | 慶大 | 2 | 0.5333 |
9位 | 駒大 | 2 | 0.5333 |
10位 | 日大 | 1 | 0.4375 |
11位 | 国士館大 | 1 | 0.4375 |
12位 | 学芸大 | 0 | 0.1667 |
◇順位の決め方◇
勝利数が同じ場合、セット率(得セット数/失セット数)の高い方が上位となる。
セット率も同じ場合、得点率(総得点/総失点)の高い方が上位となる。