【バレーボール】自分たちのスタイル貫き有終の美 vs東海大

バレー戦評

浦部に駆け寄る選手たち

 

先週、一度崩れたチームは自分たちらしさを取り戻せず、2連敗という結果に終わってしまった。――あれから1週間。慶大は自分たちのやるべきことを見つめ直してきた。今試合では、相手の高さと決定力のある攻撃に苦しむシーンもあったが、最後まで気持ちを切らさずに自分たちのバレーを貫き、最後は見事な逆転で勝利を掴んだ。慶大は、5勝6敗、全体8位という結果で今リーグを終えた。

 

 

5月19日(土)春季関東大学男子1部バレーボールリーグ戦 第11戦 慶大×東海大

@日本体育大学健志台キャンパス米本記念体育館

得点表

慶大

セット

東海大

25

22

25

13

18

25

25

23

 

大活躍だった富澤

両校のオポジットによる強烈なスパイクで幕を開けた第1セット。先週途中から調子を落とした富澤太凱(経3・慶應)がスパイク、サーブ、そしてスパイクレシーブでも大活躍。富澤と樫村大仁(環2・茨城高専)のブロックポイントなどで11-8とリードする。しかし、中盤には相手の連続サービスエースが決まり、同点に追いつかれてしまう。だがここで大崩れすることはなかった。タイムアウト直後、マルキナシム(総3・川越東)の鋭いスパイクで嫌な流れを断ち切る。相手スパイカーに対して常に2枚以上のブロックでプレッシャーをかけ続けた慶大。3連続で相手のスパイクをワンタッチにかけてしのぎ、攻撃に切り返すなど、順調にブレイクを重ねていった。最後は富澤の強烈なスパイクで得点し、第1セットを先取した。

 

 

ブロックで相手攻撃を幾度も阻んだ

迎えた第2セット。マルキのスパイクがアウトとなり先制を許してしまうが、すぐに富澤が強烈なスパイクを叩き込み同点に追いつく。マルキのスパイクや清水柊吾(総2・広島城北)のクイックでブレイクし、6-2とリードを広げるとたまらず相手がタイムアウトを要求。だが、慶大の勢いは止まらない。強烈かつ正確なサーブで相手を崩すとそのまま攻撃に繋げ、確実にスパイクを決める。得意のリードブロックで相手のスパイクを封じ込め、確実に得点を積み重ねた。東海大が2度目のタイムアウトを取った時点で17-9と、差は8点まで広がっていた。終盤にはセッター吉田祝太郎(政2・慶應)のスパイクや樫村のクイックも飛び出し、このセットを25―13と圧倒的リードを持って取った。

 

勝利まであと1セットとなった慶大。第3セット序盤は相手のサービスエースやブロックポイントなどで細かい失点を重ねてしまった。後半は一時サーブレシーブが乱れ、思うようにスパイクを決められない。慶大はここで岩本龍之介副将(商4・仙台第二)を投入するなどして立て直しを図った。しかし、東海大の両サイド陣が調子を取り戻し、スパイクで得点を量産。打点の高い相手スパイクをブロックでとらえることができなくなり、一度もブレイクのチャンスを掴めなかったほか、タッチネットなどのミスも出してしまった慶大。第2セットから一転、7点の差をつけられてこのセットを落とした。

 

 

ピンチサーバー浦部が流れを引き寄せた

第4セット序盤、吉田のトスと清水が合わず、先週の記憶が頭をよぎる展開に。しかしすぐに切り替え、直後にもう一度トスを受けた清水は確実にクイックを決めた。5-7の場面から吉田の強烈なサーブで崩して同点に追いつくも、直後にはサーブレシーブの乱れから4連続失点を招いてしまう。慶大はここでタイムアウトを要求。最大5点差がついたが、冷静さは失っていなかった。相手エースのスパイクをワンタッチで速度を緩め、リベロ永田将吾(総1・高松)がコート外まで走って繋いだボールを富澤が打ち切る。チーム全体が活気づく理想的な展開に持ち込んでブレイクに成功した。16-18の場面でコートに入ったのは浦部連太朗(総3・高松第一)。効果的なフローターサーブで相手の守備を乱すと、コート内の選手も浦部が作ったチャンスを逃さなかった。相手の攻撃を切り返して富澤がスパイクを決め17点目、続けてマルキと樫村のブロックポイントで同点に追いついた。その後試合は1点差で進んだが、最後は相手のミスが続き、慶大の3連続得点で25-22。5点ビハインドからの見事な逆転劇だった。

 

 

チームを指揮する伊藤主将

 

「うちの得点パターンが多くできた」と富澤が振り返るように、今日の試合では、チームスタイルであるブロックアンドレシーブで自分たちの得点に繋げていく場面が多く見られた。相手のポイントゲッターのスパイクを何度もブロックで阻み、何度もレシーブで繋ぎ、何度も攻撃に切り返した。自分たちのスタイルを崩さない。長いリーグ戦、その最後の試合でチーム一丸となって掴み取った大きな勝利となった。

 

 

今リーグを通し、悩みながらも自分たちのスタイルを磨き、そして自分たちの強みと課題を見つけてきた。今後慶大が強くなるための材料は揃ったはずだ。次の試合は6月10日の第82回早慶バレーボール定期戦。早大は昨年の秋季リーグ、全日本インカレ、そして今リーグで優勝を果たしている強敵だ。チャレンジャー・慶大は、王者・ワセダ相手にどんなバレーを見せてくれるだろうか。

 

 

(戦評:藤澤薫 写真:染谷優真)

 

 

以下、コメント

 

 

宗雲監督

 

――今日の試合の振り返り

まあ良かったですよね。最終戦で選手たちも気持ちが入っていて、3セット目に東海大さんあがちょっと息を吹き返した、あの辺まではすごく良かったですね。

 

――先週は自分たちらしさが出せていない、楽しめていないという話だったが

作戦が当たると優位に進めるので、楽しいんですけどね。でも押されているときはピリピリしているし。結局、自分たちのスタイルを貫くことじゃないかなと思います。それはちょっと、先週私もベンチワークでコミュニケーション不足だったので、選手を迷わせた部分もあったので、それは私も反省しなくてはいけないんですけど。

 

――ブロックが好調だったが

基本的にうちのブロックは大きいです。しかも相手の東海大さんがあまりサイド攻撃が速くなくて、ゆっくりしたボールを十分な態勢で打ってくるという作戦なので、うちのブロックは完成できるので、そういうのが要因だと思います。

 

――第4セット5点差のシーンもあったが崩れなかった要因は

チームワークが乱れそうなミスが出てしまって、(吉田)祝太郎がそういうプレーを好きじゃないので、一瞬そのプレーで次への準備に時間がかかりそうで、ちょうどタイムを取ったところなんですけど。でも祝太郎がタイムの後に、頭冷やして、次の一点を取りにいって、周りも答えて。そこからじゃないですかね。そのあとサーブとかブロックとか色々あるんですけど、多分私はそこだと思っています。

 

――浦部選手については

最近出る機会がなかったんですけど、あの子の人柄というかな、自分のチームにおける役割がプレイヤーとして以外でもあるので、それも悩みながらも一生懸命やってくれていて。それで今日の最終戦でね、その浦部は頑張るだろうと思って、昨日キャプテンと「最後は浦部入れようよ」と話していて。期待に応えてくれてほっとしています。

 

――春季リーグ全体を振り返って

選手にも話したんですけど、私が慶應の試合を観客席から見ていたら、慶應は強いなと思うんです。強いサーブ、強いスパイク、それから強くて高いブロックがあるので。その強さを引き出せば、慶應は上位まで行くのにな、と観客席で見ていると多分感じると思うんですよ。それを実際ベンチに入って、サーブがなかなか走らないときに、色々と作戦やスタイルで迷ってしまったことは私がだめだし、選手も迷わせたことは本当に反省しないといけない。同じミスをしないように、これから先、準備しないといけないと思います。やっぱり自分たちの武器は何かっていうのはきちんと理解して、それを引き出すことの方が大事だと、改めて認識したリーグでした。

 

――早慶戦、東日本インカレが控えているが

まずは、早慶戦ですね。早稲田はミスがほとんどないし、強いので。同じようなバレーをしてもダメなので、できれば圧倒できるような何か策を考えて、早稲田にないものを、慶應の良さを出して勝てればと思います。

 

 

伊藤祥樹主将(総4・清風)

 

--今日の試合を振り返って

ブロックが機能したのと、あとは自分たちのサイドアウトが切れたことが勝ちに繋がったのかなと思います。

 

--先週、サーブで攻めたいと話されていたが

今回の東海大相手には、入れるサーブと攻めるサーブを使い分けていて、そこは相手によって、というのもあるんですけど、今回はそれがはまったのかなというのはありますね。

 

--第4セット、劣勢から切り替えて逆転できた要因は

切り替えるというか、自分たちのことをきっちりやろうというのをずっと言っていたので、それをやっていた結果、向こうがミス出したりとか、こっちのたまたまいいプレーが出た、という感じです。我慢できましたね。

 

--ブロックが好調だったが

相手が高いトスだったので、こっちはブロックの高さには自信があって、プラス、トスが高いから追いつける。きっちり自分たちの高さも出せていましたし、ブロックのマッチアップみたいなのは良かったと思いますね。

 

--浦部選手を起用した理由

彼は今Bチームを動かしていて、それに対してすごく責任感をもって一生懸命やってくれていて、そういう選手だからこそ、勝負の局面に出たときも必ず良いサーブを打ってくれると思っていますし、信頼度がかなり高いので、入ってきたときにみんなが落ち着くというか盛り上がるというか、良い影響を与えるんじゃないかなと思って入れました。

 

――春季リーグを振り返って

やっぱり波がありますね。良いときもあれば悪いときもある。それが勝敗にも関係しているところでもありますし、自分たちの力をコンスタントに発揮することができないというところが一番課題かなと思います。

 

――早慶戦、東日本インカレに向けて

例年このリーグが終わった後は長期オフがあるんですけど、そこを今回削っていて、早慶戦と東日本インカレに向けてさらに今のバレーボールから進化させようとみんなで取り組む予定ですので、それがきっちり詰められて、春リーグの反省、ダメだったところとかを改善できれば、早慶戦に関しても勝てると思いますし、東日本でも上位狙えるんじゃないかなと思います。

 

 

浦部連太朗(総3・高松第一)

 

――今日の試合振り返って

1戦目にメンバーに入れてそこからずっと外れてたんですけど、昨日祥樹さんに「お前が今までやってきたことを買って試合に出すから、お前のやれることをやってこい」ということでメンバーに選んでいただきました。チームの雰囲気を変えるという役割を持っていたので、声出したり、ここで一本というところでポイントを取れるサーブが打てたので良かったと思います。

 

――ブレイクのきっかけとなったが、ご自身のサーブを振り返って

本当にサーブ自体は弱いんですけど、相手の嫌なところを考えて打てたので結果的に良かったなと思います。

 

――今日の勝因は

1・2セット目楽に取れて、3セット目しんどかったんですけど、4セット目の苦しいところで追いついて。そこからうちの競ったときの粘り強さが出たのが勝因じゃないかと思っています。

 

――ベンチの雰囲気は

これまでずっと盛り上げていた本多(本多一大=商3・慶應)がいないという状況でしたが、祥樹さんと監督を中心に的確な指示を出して、次やることを明確にできていたと思います。

 

――次に向けて意気込みを

チームとしては早慶戦で勝つことが目的なので、できることを多くしていって完成度を高めるのがこれからの期間やるべきことだと思います。

 

 

富澤太凱(経3・慶應)

 

――今日の試合を振り返って

先週かなり悔しい負け方をして今日にしっかりと照準を合わせて臨んだのですが、みんなに助けられてチーム全員で掴めた勝利だったので、本当に大きな勝利だったと思います。

 

――今日の勝因は

自分たちの強みにしようとしているブロックが機能して、ブロックで引っかけたボールを処理してサイドが打ち切るという、うちの得点パターンが多くできたのが要因だと思います。

 

――第3セットは苦しいセットだったが

相手も自分たちと同じかそれ以上の高さがあって波に乗られてしまう部分があったので、それは仕方ないと切り替えて4セット目は臨みました。

 

――先週不調だったスパイクが今日は絶好調だったが

まずしっかりとセッターと話して、不調の要因になっているかもしれないことを一つ一つ潰していった結果、トスが合うようになったので、良い修正の仕方ができたかなと思っています。

 

――試合中はそのセッター吉田選手とよく話をされているが

やることをやってください、と(笑)。いつも言われていることなんですけど、 そうやって学年関係なくフランクに言ってくれるのはありがたいことなので、そこは日々感謝しつつ、彼のその強気な姿勢は見習っていくべきなのかなと思っています。

 

――サーブについては

先週負けてからサーブ練習への取り組みも伊藤主将を中心にかなりシビアなものに変化していったので、そこで練習の成果を発揮できたのはすごく大きな収穫だったと思います。

 

――春季リーグ全体を振り返って

結果として5勝できて昨季より上の順位にはいけましたが、自分たちが思っている以上に波が激しくて安定的に勝てないという課題が浮き彫りになりました。これから早慶戦、東日本インカレと春シーズンが続きますがどんどん修正していけるようにしたいと思います。

 

 

吉田祝太郎(政2・慶應)

 

――今日の試合を振り返って

こっちのサイド陣のサーブレシーブが安定していて、攻撃の組み立てをちゃんとできていたので、良い形でサイドアウトの得点を取れていたかなと思います。

 

――先週は自分たちらしさが出せないかったが

先週は、中だるみじゃないけど中盤4連勝してちょっと疲れちゃったのかな、ちょっといいかなぁってなっちゃって、けど今週は最終戦だし引き締めよう、最後は勝って終わろうって気持ちの面で先週よりも良い状況に行けたんじゃないかなって思います。

 

――今日のサーブについて

初週の日体大とか筑波大のときからサーブは課題だったので、ここずっと取り組んできてたんですけど、なかなかサーブの成果が出ていなくて。色々な練習を試してたんですけど、それが今日はちょっと形になったかなって。練習通りにちゃんと入って、練習通りに流れを作れたと思います。

 

――ツーアタック、スパイクなど攻撃的だった

気持ちよかったです(笑)。最初から狙っているとかではなくて状況次第ですね。ネットにちょっと近かったりしたときに、いかに(サーブ)カットが近くないように見せてぴしっとやるかっていうのを心がけています。カットカバーをするという意味でも。今日は上手くいったんじゃないかなと思います。

 

――第4セット、気持ちを切らさず逆転できた要因は

一回切れちゃったんですけどね、僕自身。一回ベンチでちょっと「あー、終わった」ってなったんですけど、そこから切り替えようってなって。サーブ頑張ったり、みんなで。たしかにベンチにのときだけかもしれないです。コートに入っているときはみんなでしっかり一本一本、諦めないで行こうってできてたのかなって。ちょっと成長してたのかもしれないですね。

 

――春季リーグを振り返って

自分たちの練習してきたブロックが通用するチームもあれば、しないチームもあって。リーグ前は、どのチームに対してもリードブロックでいこうってなってて。やっぱりそうすると早稲田とか速い攻撃してくるチームにどうしても対応できないっていうことがこのリーグで分かったので、リーグの途中からコミット(ブロック)に切り替えたり、色々な対策を祥樹さんがやってくださって。そこがまず収穫ですね、リードだけじゃきついんだなっていうことが分かったこと。あとは課題のサーブ。前までは武器で、ガンガン攻めようっていうだけだったけど、武器であり、やっぱり課題であるなっていうことに気付けた。その2つ、見つかってよかったなって。これを早慶戦、東日本インカレ、秋とかに生かせていけたら、もうちょっと実力も上がってくるのかなと思いました。

 

――来月の早慶戦、東日本インカレに向けて

去年はどっちも負けて、思い通りの結果を出せていなかったですが、とくに早慶戦はあんなにたくさん応援来てくださったりしていて。そういうところで情けない試合はできないので、準備して頑張りたいと思います。

 

 

出場選手

セッター

吉田祝太郎(政2・慶應)

サイド

小出捺暉(環1・駿台学園)

センター

樫村大仁(環2・茨城高専)

オポジット

富澤太凱(経3・慶應)

サイド

マルキナシム(総3・川越東)

センター

清水柊吾(総2・広島城北)

リベロ

永田将吾(総1・高松)

途中出場

宮川郁真(総1・松本県ヶ丘)

 

浦部連太朗(総3・高松第一)

 

岩本龍之介(商4・仙台第二)

 

最終順位

 

大学

勝利数

セット率

1位

早大

11

6.6000

2位

筑波大

2.0000

3位

中大

1.9286

4位

順大

1.8571

5位

日体大

1.0476

6位

明治大

1.0500

7位

東海大

1.0000

8位

慶大

0.7500

9位

駒大

0.5600

10位

国士館大

0.5000

11位

日大

0.4483

12位

学芸大

0.3226

 

◇順位の決め方◇

勝利数が同じ場合、セット率(得セット数/失セット数)の高い方が上位となる。

セット率も同じ場合、得点率(総得点/総失点)の高い方が上位となる。

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