慶應スポーツ新聞会

【端艇】4年間の悔いなき集大成~第96回全日本選手権大会~

 

 失意の全日本大学選手権からおよそ2か月、第96回全日本選手権大会が戸田漕艇場で行われた。結果は男子エイト、男子舵手付きペア、男子舵手無しペアの3種目での入賞。最後のレースに挑む4年生の意地、そしてどんどんと成長してゆく後輩たちの頼もしさを感じた大会となった。

第96回全日本選手権大会 10月25日(木)~28日(日)@戸田漕艇場

 

・大会結果,詳細

 

男子エイト

C:中居誠大(経4)

S:三輪崇(商3)

7:新井勇大(経3)

6:宮嵜裕之(法3)

5:栗野稜平(政3)

4:本多進之介(経3)

3:鈴木魁(経3)

2:麓政人(医4)

B:藤原健太郎(経4)

レース

500m

1000m

1500m

2000m

結果

予選D組

1:30.58

3:03.69

4:37.60

6:10.15

3着⇒敗者復活戦へ

敗復B組

1:29.20

3:00.11

4:34.35

6:09.09

2着⇒準決勝進出

準決A組

1:27.86

2:59.46

4:31.05

6:01.82

4着⇒順位決定戦へ

順位決定戦

1:31.84

3:07.46

4:43.94

6:18.09

4着⇒8位入賞

 インカレでは二日目で敗退し、大きな挫折を味わった慶大端艇部の生命線である男子エイト。今大会に向け組んだクルーには今大会で引退となる4年生が3人名を連ねた。そのうちの一人コックスの中居誠大(経4)は今大会のエイトクルーの特徴を「9人のまとまり」であるといい、宮嵜裕之(法3)も「話し合いを多くできていたクルー」と語る。その話し合いの中心にいたのは、医学部と端艇部の2足のわらじを履く麓政人(医4)と、最後の大会にして初めて“憧れ”の対校エイトの座をつかんだ藤原健太郎(経4)だった。個性と爆発力を兼ね備える3年生6人と器の大きな4年生3人によるクルーの団結力は「4年間乗ってきた中で一番」と中居も胸を張った。

レース前のリラックスしたエイトクルー

 初戦に行われた予選D組、相まみえるはインカレ3位の中大と慶大端艇部のOBも在籍する社会人の強豪中部電力。スタートから先行されると、そのままじわじわとその差を広げられ3着。「すべての面で75点くらい」と本多進之介(経3)はこのレースを振り返る。

 翌日の敗者復活戦、予選のタイムが全体2位の日大、そして8位慶大、9位の東レ滋賀、12位の同志社大と同組に。この中で2着以内が準決勝進出、3着以下なら敗退、4年生は引退。まさしく「背水の陣」であった。そんなレース直前、思わぬハプニングが起こった。前日全体2位のタイムを出していた大学ボート界の絶対王者、日大の棄権が発表された。「自分たちの漕ぎに集中すること」(三輪崇・商3)、慶大クルーにとって練習の時から9人で心がけていたことを実践する絶好の機会になった。

 スタートから飛び出し、2位のまま1000m通過。ここから同志社が怒涛の追い上げを見せるが、「他の艇を全く見ていなかった」とストロークの三輪が語るほど漕ぎに集中していた結果、2着でゴール準決勝に進出し,「このメンバーでまだ漕げる」(新井勇大・経3)ことにクルーは喜びを爆発させた。

喜びを爆発させる4年生コンビ

 

 翌日の準決勝、上位2艇が決勝へそれ以外の2艇が順位決定戦へと進む。強豪の社会人クルー3艇とのレース、慶大は「正直、手ごたえはあった」(麓政人)というレースを見せるもそれでも力及ばず4着、最終日の順位決定戦へと進んだ。翌日の現役最後のレースに向けて「死ぬ思いで、すべてを出し尽くす」と藤原は力強く誓った。

激漕するエイトクルー

 順位決定戦、慶大クルーは前半から積極的に仕掛け、レースは激戦の様相を呈す。しかし、最後の勝負所で攻める体力が残っておらず、3位と2秒差で4着。8位でこの大会を終えた。今大会4レース通して慶大クルーは毎レース成長を遂げ、最後の順位決定戦はその中でも「今出せるものすべて出し切ったレース」、「レース中ずっと笑顔だった」とコックス中居が語ったほどの内容だった。

今大会で引退となる麓がレース後感じたのは何よりもまず「感謝」の二文字だった。苦しいことも多い中、共に戦った仲間たちに。支えてくれた人たちに。そして慶應大学端艇部に。

これから端艇部は次の代へと引き継がれる。後輩に藤原は謙虚さと貪欲さ、そして仲間への信頼の大切さを説いた。自分はまだまだだと思う分、自分の伸び代は増える。ボートはクルーとの信頼がなければ速く進まない。すべてはこの大会を通して4年生がその背中で示してきた。

端艇部の新主将は新井に決まった。失ったものは大きいかもしれない。しかし先人たちの積み重ねてきた想いの上に立つ新たな端艇部の未来は果てしなく広がっている。

(記事・辻慈生)

 

男子舵手付きフォア

C:向井新(経2)

S:鍛治田有史(政2)

3:高崎隼人(商4)

2:吉田高寅(経4)

B:王田恭之(商2)

 

レース

500m

1000m

1500m

2000m

結果

予選D組

1:39.18

3:25.32

5:16.60

7:03.78

2着⇒敗者復活戦へ

敗復C組

1:45.77

3:31.60

5:17.32

7:05.46

2着⇒敗退

 

男子舵手無しフォア

S:八木志洋(文3)

3:永田大智(環2)

2:村上廉太郎(政2)

B:辻井将仁(総4)

レース

500m

1000m

1500m

2000m

結果

予選D組

1:43.84

3:27.46

5:15.52

7:05.28

3着⇒敗者復活戦へ

敗復B組

1:37.57

3:22.32

5:12.08

6:58.31

5着⇒敗退

男子舵手付きペア

 

C:黒田諒(商4)

S:小宮山息吹(経2)

B:田村直親(政2)

レース

500m

1000m

1500m

2000m

結果

予選A組

1:58.44

4:04.97

6:11.55

8:20.52

4着⇒敗者復活戦へ

敗者復活戦

1:53.47

3:54.98

5:56.92

7:59.40

4着⇒順位決定戦へ

順位決定戦

1:59.46

4:02.51

6:08.74

8:10.94

2着⇒6位入賞

 今大会慶大男子舵手付きペアのクルーは、4年生のコックスの黒田諒(商4)と2人の2年生の漕手、小宮山息吹(経2)、田村直親(政2)により構成された。強豪ひしめく厳しい大会でいかにして結果を残すのか。黒田は7年間のボート生活の集大成となる今大会を迎えるにあたって、後輩2人に自分のすべてを伝えていった。勝つクルーはどういうクルーなのか、自分の目指す艇の動きはどういう感覚なのか、最終日にピークを持って行くためにはどのような準備をしたらいいのか、ただがむしゃらに練習しているだけでは知ることのできなかったことも多くあったはずだ。「『黒田さんのために漕ぐ』それくらいの気持ちでいた」。そう小宮山が語るようにお世話になった先輩の期待に応えるべく、強豪相手に果敢に挑んだ。

左右1本ずつのオールで艇を進める

 2日目に行われた予選。優勝候補の日大を筆頭にスタートから引き離され、力の差を見せつけられる形となり最下位に終わってしまう。
 しかし、翌日の敗者復活戦。予選で完敗した明治大、仙台大相手にスタートから攻め、必死に食らいつく。惜しくも結果は4着に終わってしまったが、予選の反省を生かし次に繋がるレースができた。
 そして迎えた順位決定戦。立教大が棄権をしたことにより、一橋大との一騎打ちのレースとなった。一橋大とのタイム差は予選では12秒、敗者復活戦では6秒。1試合ごとに成長を実感していたクルーは自信を持って試合に臨んだ。一橋大に先行されるという想定外の展開でスタートすることになったが、慶大クルーに焦りはない。じりじり差を詰めていき、一橋大に横並びになる。お互い相手の様子を見ながら仕掛けるチャンスを窺う展開に持ち込む。「(敗者復活戦では)1000メートル地点で差された。中盤から後半にかけてどう粘るか」(黒田)と、勝負所は明確だった。一瞬でも気を抜けば追いてかれてしまう。そんなピリピリとした雰囲気の中、わずかな差を維持しながらラスト500メートルに突入。しかし、ここにきて一橋大の方が一枚上手だった。ラストスパートを先に仕掛けると慶大を一気に抜き去る。慶大も必死にスパートをかけ食らいつくも、無情にも0コンマ4秒の差で敗北となってしまった。

デッドヒートを繰り広げるクルー

 「(レースが)めちゃくちゃ楽しかったんですよ」。試合後笑顔で語ってくれたのはこの試合で引退となってしまった4年生の黒田だった。2年前の早慶戦。対校エイトのコックスとして出場した黒田は早稲田相手に惜敗。そのときには、後悔があった。今大会の順位決定戦も同じように競って負けてしまったが、その顔に後悔はない。「クルーとしての100パーセントは出し切ったので、すごい楽しく笑顔で終われました」(黒田)。その充実した表情からは未来の慶大端艇部を担う後輩たちへの期待も見て取れた。観る者すべてを興奮させるような壮絶なデットヒート演じたラスト200メートル。「自分にもう何もできることはないなって2人に任せてしまったんですよね。(2人は)それにもちゃんと反応してくれて」(黒田)と自分のラストレースを2年生2人に任せ、自分が期待したように最後まで食らいついてくれた。6位入賞という結果以上に後輩たちの成長を改めて実感した瞬間だったに違いない。
 そのような4年生の期待を背負い、今大会で大きな自信をつけた2年生は11月に全日本新人選手権を控える。「このクルーで培ったものはエイトで生かせることが絶対にある。他にも4年生と一緒に漕いでいるような人とクルーを組むことになるので、みんなで学んだことや持っていることを教えあっていけたら」と田村は使命感に燃えた。
今大会で引退していく4年生の思いや経験を後輩一人一人が引き継ぎ、大きく成長していく。次世代の慶大端艇部に期待が高まる。

(記事・東修司)

 

男子舵手無しペア

 

S:南雲正樹(商4)

B:古谷高章(商2)

 

レース

500m

1000m

1500m

2000m

結果

予選C組

1:41.85

3:33.58

5:29.30

7:25.36

3着⇒敗者復活戦へ

敗復A組

1:42.08

3:31.39

5:22.05

7:15.60

1着⇒準決勝へ

準決A組

1:41.55

3:30.91

5:24.22

7:18.98

4着⇒順位決定戦へ

順位決定戦

1:41.18

3:31.05

5:27.52

7:20.83

4着⇒8位入賞

 男子舵手なしペアに出場したのは、南雲正樹(商4・巣鴨)と古谷高章(商2・慶應志木)の先輩後輩コンビ。自身を悲観的と表現する南雲を後輩・古谷が持ち前のポジティブさで引き上げ、古谷はそんな南雲の攻めの姿勢に引っ張られるという、お互いを補い合えるクルーでこの全日本選手権を戦った。 

 初日に行われた予選は、反省が多かった。スタートの早いクルーが揃ったレース。慶大は、第2クォーターにリズムが重くなり、その後クォーターを重ねるにつれて、先行するチョープロ、東北大の2艇にどんどん引き離されてしまった。特に第3、4クォーターではガタッとタイムが落ちてしまい、結果は3着。準決勝への出場をここで決めることはできず、翌日の敗者復活戦にそのチャンスは持ち越された。

ラストスパートをかける2人

 2日目の敗者復活戦は、準決勝をかけたレースだけに絶対に突破したいところ。コンスタント(第2、3クォーター)に強い日大を出し抜くため、最初に前へ出て余裕を持ち、それを保とうと考えながら、500mごとに船のスピードを上げるというプランでレースに臨んだ。

 第3クォーターまで、タイム差を5秒以上保ちながらうまく船を進めることができ、ここまではプラン通りだった。しかし、第4クォーターに入った瞬間、想像以上の疲れが彼らを襲う。1250ⅿ付近でスパートを入れ、思い切ってスピードを上げたため、ラスト500ⅿに体力を残すことができなかった。そこに日大の猛追が重なり、「最後は結構どきどきしながらのレースでした」(南雲)。息つまるレースを繰り広げた結果、日大とのタイム差1秒未満で1位通過、準決勝への道をつくった。

準決勝進出を決めた二人

 準決勝ともなると、強豪と剣を交えることとなる。チャレンジャーの気持ちで勝負に臨んだ慶大クルー。「最初の500mは強みになる」(古谷)とした通り、第1クォーターを2位で通過する。前日までのレースのタイムから見ると、第2クォーターで他の艇に差されがちであったため、最初の1000mで多く仕掛ける意識で前に出ようとするも、やはり強豪は速い。艇速をぐいぐい上げ、1000ⅿで慶大は気づけば4位に。その後も少しずつ離され結果はそのまま4着、最終戦は順位決定戦へと駒を進めることとなった。

 最終日の順位決定戦は、これまでのレースの展開から見て序盤先行し、その後逃げ切るスタイルに持ち込むことを狙った。このレースを最後に、引退を控える南雲は「後悔のないように第1、第2クォーターで出し切る気持ち」で臨んだ。思惑通りスタート500mでダントツの1位通過。1000mでも詰められたものの1位を保ち、これまでの3レース以上に冷静な漕ぎを見せた。しかし後半、攻めどころでしっかり攻めるも他の艇との実力差は拭えず、第3クォーターは苦しい展開を強いられる。最後は3着と1秒差と力負けし、4着。全日本選手権8位入賞となった。

 このレースを持って、南雲はこの慶大端艇部を引退する。レースを終えてまず出た感想は「最後は本当に古谷で良かった」という言葉だった。部内でも下からのスタートだった南雲は、今回が最初で最後のインカレ出場であった。これまでを振り返り、「辛いことの方が多かったけど、最後の最後で頼れる後輩と出れて、ここまで来れて、本当に幸せだったと思います」とまとめた。そして古谷は、「こんなに前半に攻められる人はいない」と先輩・南雲を讃えると同時に、「表彰台に南雲さんを乗せて上げられなくて、自分自身の力不足を感じています」と悔しさをにじませた。

最後のレース後、労いあう二人

 乗れる人数が限られているボートは、なかなかチャンスが回ってこない。しかし南雲は「次のチャンスを信じて牙を磨き続けることが重要」と自身の経験から述べ、ボート競技において一番大切なことは「一緒のクルーの人を信頼すること」だとして、後輩へのメッセージに代えた。そして、来シーズンは「自分が乗ったら勝てるなと思えるような選手になりたい」と前向きな姿勢を示す古谷はまだ2年生。ますますの成長が期待できる彼の、今後の活躍にも目が離せない。

(記事・津田侑奈

 

男子舵手無しクォドルプル

 

S:須田祐介(経4)

3:勝野健(経1)

2:桒原侃生(政2)

B:堀江直人(経3)

レース

500m

1000m

1500m

2000m

結果

予選A組

1:34.11

3:17.41

5:00.42

6:46.00

6着⇒敗者復活戦へ

敗復A組

1:31.81

3:12.47

5:00.29

6:47.44

4着⇒敗退

 

男子ダブルスカル

 

S:朝日捷太(経1)

B:田上諒(経1)

レース

500m

1000m

1500m

2000m

結果

予選C組

1:45.36

3:35.82

5:28.34

7:21.89

2着⇒敗者復活戦へ

敗復C組

1:44.78

3:34.00

5:27.64

7:19.60

4着⇒敗退

 

男子シングルスカル

S:磯貝悠(商4)

レース

500m

1000m

1500m

2000m

結果

予選C組

1:52.01

3:51.80

5:49.71

7:44.37

3着⇒敗者復活戦へ

敗復G組

1:48.89

3:52.64

5:57.26

7:54.50

2着⇒敗退

女子エイト

C:安立里菜(文4)

S:青木遥南(法3)

7:流石章代(総2)

6:笠原万緒(政1)

5:兼子佳恵(政1)

4:四元美南(商1)

3:弘田千乃(理1)

2:金旼我(文4)

B:根岸彩子(政2)

レース

500m

1000m

1500m

2000m

結果

予選B組

1:52.91

3:45.51

5:39.37

7:32.93

5着⇒敗者復活戦へ

敗復B組

1:46.48

3:36.82

5:31.59

7:24.59

5着⇒敗退

女子舵手無しペア

 

S:松原佳代子(商3)

B:萩原沙柚子(政4)

レース

500m

1000m

1500m

2000m

結果

予選B組

重量

不足

敗者復活戦へ

敗復A組

1:56.65

3:58.71

6:02.90

8:09.74

4着⇒敗退

女子ダブル

 

S:芝崎佐和子(経4)

B:渥美優(環4)

レース

500m

1000m

1500m

2000m

結果

予選C組

2:04.91

4:03.47

6:08.37

8:12.16

3着⇒敗者復活戦へ

敗復B組

1:55.69

4:00.03

6:04.52

8:10.13

4着⇒敗退

写真:辻慈生、津田侑奈、東修司

 

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