7種目入賞、内2種目でメダル獲得。「変化」を掲げ、数々の困難に立ち向かってきた131期の集大成は近年稀に見る好成績で幕を閉じた。目標としていた日本一に届かなかった悔しさはもちろんあるだろう。しかし、厳しい状況下でも131期が部をまとめ上げたからこそ、後輩たちも躍動し、これだけの好成績を残せたのだ。
第47回全日本大学選手権大会
10/22(木)〜25(日) @戸田漕艇場
・大会結果・詳細
男子舵手なしフォア
S:鍛治田有史(政4)
3:勝野健(経3)
2:足利海知(商3)
B:野村瑛斗(総2)
レース | 500m | 1000m | 1500m | 2000m | 結果 |
予選C組 | 01:33.44 | 03:12.18 | 04:52.42 | 06:31.69 | 3着→敗者復活戦へ |
敗復B組 | 01:33.43 | 03:13.07 | 04:54.31 | 06:34.28 | 1着→準決勝へ |
準決B組 | 01:32.11 | 03:10.16 | 04:53.15 | 06:31.92 | 1着→決勝へ |
決勝 | 01:30.55 | 03:07.46 | 04:47.40 | 06:24.59 | 2着→全体2位 |
全日本選手権で5位となり、日本一への期待がかかる男子舵手なしフォアはまさかの滑り出しとなった。しかし、焦りはない。クルー唯一の4年である鍛治田有史(政4・慶應義塾)は「修正できるチャンスが増えた」と前向きな声かけでクルーをまとめる。すると、翌日の敗者復活戦は、「少しずつ自分たちの良い感覚を取り戻し、本来やりたいレースを再現できた」と1着で通過。続く準決勝は、予選で敗れた早大相手に終始リードを保ちながらレースを進め、見事1着で決勝進出を決めた。
全日本選手権以来の決勝レース。試合前鍜治田は「目の前にあるレースに集中して死ぬ気で漕いでくれ」と共に闘う後輩たちに思いを伝えた。全日本選手権の決勝前は「レースを楽しもう」と伝え臨んだものの、結果は5位。本気で日本一になるために甘さはいらない。アップ中から一漕ぎ一漕ぎに向き合い、レース直前まで自分たちの理想を追求し続けた。
「自分たちのベストタイムを狙う」というレースプランで臨んだ慶大クルー。スタートからぐんぐん加速し、1500メートルまでリードを保ち続ける。日本一までラスト500メートル―。しかし、立大の追い上げのほうが一枚上手だった。慶大は日本一へ向け必死に食らいつくも、力及ばずそのままゴール。惜しくも2着となった。
「全てを出しきることが出来たので悔いはない」と清々しく語ってくれた鍜治田。さらに「引退後もこの負けから学び、成長し続けたい」と力強い言葉を残してくれた。こんな頼もしい先輩と共に漕いできた勝野健(経3・慶應義塾)も「楽しかったと心の底から思えるレースだった」と振り返る。近年、慶大を阻み続けた準決勝の壁を見事乗り越え、日本一まであと一歩と迫った男子舵手なしフォアクルー。特にこの試合は3人の後輩たちにとって何ものにも代えがたい経験になったはずだ。
「3年間一緒に暮らし、思い返せないくらいたくさんお世話になった」と語った勝野。その恩に報いるためにも「132期の代は結果にこだわっていきたい」と決意を示した。来シーズンこそ日本一へ-。131期の思いは後輩たちに受け継がれた。
男子舵手なしペア
S:橋本健之介(法2)
B:大森琉斗(政2)
レース | 500m | 1000m | 1500m | 2000m | 結果 |
予選E組 | 01:47.27 | 03:37.21 | 05:26.92 | 07:20.30 | 1着→準決勝へ |
準決C組 | 01:47.59 | 03:36.68 | 05:25.17 | 07:16.20 | 1着→決勝へ |
決勝 | 01:45.07 | 03:35.53 | 05:28.38 | 07:22.05 | 3着→全体3位 |
男子舵手なしペアには、大森琉斗(法2・慶應義塾)と橋本健之介(法2・慶應義塾)の同期コンビが出場した。「最低でもメダル」(大森)を目標にして臨んだという今大会は、十月初旬に開催された全日本選手権からわずか2週間後。決勝に進むことができなかったその結果を受け、二人はコーチや先輩の助言をもとに短い期間のなかで調整を行ってきた。
彼らの基本的なレースプランは、初日の予選から最終日の決勝を通して一貫していた。全日本選手権の経験から、試合の展望について、「スタートが遅いので前半は出られる展開になるだろう」(橋本)と予想、また自分たちを「レース中盤から終盤にかけてタイムをあまり落とさずに、後半で勝負を仕掛けることのできるクルー」(大森)だと分析し、「1500メートルを過ぎたところでトップになれるように」(橋本)という目標を設定した。予選と準決勝では、スタート直後にリードを許すものの、冷静さを忘れず勝負どころを見極めることで、このプラン通りのレースを展開。決勝へと駒を進める。
しかし、仙台大を筆頭に強豪校の集まる決勝戦は、レース序盤に上位2艇と大きく差を付けられてしまい、3位の早大を追いかける厳しい出だしとなった。それでも、徐々に距離を詰めていき、1500メートル地点では1艇身もの差をつけるなどして逆転に成功。追い上げを見せる早大を最後まで寄せ付けず3着でゴールを決め、目標としていたメダルを手にした。本番までの短い練習期間で発揮された修正力や自己分析力、そして何より互いへの敬意と信頼があったからこその結果だろう。
「引退される先輩に対して“感謝と恩返し”ができるよう、なんとしても目に見える結果を」。大会後、大森が放ったこの言葉が印象に残っている。艇を漕ぐ二人の姿から、その思いは十分に伝わったのではないだろうか。
男子エイト
C:向井新(経4)
S:村上廉太郎(政4)
7:古谷高章(商4)
6:朝日捷太(経3)
5:石田新之介(法2)
4:田村直親(政4)
3:亞厂拓海(経3)
2:大下陽士(法2)
B:永田大智(環4)
レース | 500m | 1000m | 1500m | 2000m | 結果 |
予選B組 | 01:31.63 | 03:06.45 | 04:44.38 | 06:21.02 | 4着→敗者復活戦へ |
敗復B組 | 01:28.80 | 03:01.18 | 04:35.04 | 06:07.66 | 2着→準決勝へ |
準決B組 | 1:27.74 | 02:58.63 | 04:30.14 | 06:01.07 | 3着→順位決定戦へ |
順決 | 01:28.84 | 03:01.01 | 04:34.81 | 06:08.34 | 4着→全体8位 |
悔しい結果となった全日本選手権から2週間。短い準備期間の中で課題と向き合い、村上廉太郎(政4・慶應志木)率いる131期の「日本一」を目指す最後の挑戦が幕を開けた。
予選から良いスタートを切りたい慶大。しかし、全日本選手権の時に強みであったコンスタントで良さを出せず、「最も悪いパフォーマンスが出てしまった」(村上)と4着となり、敗者復活戦へ回ることに。予選を終え、「船全体のイメージを統一し直した」(向井新=経4・慶應義塾)敗者復活戦では、見事修正に成功。2着で準決勝へ駒を進めた。
準決勝の相手は、優勝候補筆頭の仙台大に加え、全日本選手権で敗れた早大など強敵揃い。また、慶大にとっては、昨年果たせなかった決勝進出のかかる大一番となる。大会期間中も各レース後にクルー全員でミーティングを行い、「練習中には気づききれなかった課題を1つ1つ克服していった」(村上)という慶大エイトクルー。自分たちの強みであるコンスタントで食らいつき、後半に勝負をかけるレースプランのもと、運命のレースに臨んだ。スタートで少し遅れをとったものの、レースプラン通りコンスタントで艇速を伸ばした慶大。1500メートル地点での2位の早大との差は1.4秒。ラストスパートで十分捉えきれる艇差まで迫っていた。しかし、スタートでついた差をそこまでに埋めることで「いっぱいいっぱいになってしまった」(向井)と、その差を最後まで覆すことができずにゴール。またしても、あと一歩のところで決勝進出を逃す結果となった。
「ベストパフォーマンスをしたが、地力の差があった」と振り返った村上。実は、全日本選手権が終わってからインカレまでの練習は、「なかなかうまくいかないことが多かった」という。そうした中でも、クルーのメンバーは沈まず、前向きな姿勢で「できることを惜しまず全力で行」ってきた。結果は8位。日本一に向けて練習してきたからこそ、この結果は悔しいに違いない。しかし、練習環境が整わない中でも、「ボートに対する熱意や真摯さ」を武器にこの大会に向けて歩んできた道のりは、慶大端艇部にとって大きな財産になったはずだ。
7種目入賞、内2種目メダル獲得とチーム全体としても「着々とステップアップしている」慶大端艇部。「変化」をもたらした131期の思いを継ぎ、新チームは「全てのライバルを打倒し、チーム一丸で勝ちにこだわる」という「打倒」というスローガンのもと始動した。新主将である朝日捷太(経3・慶應義塾)は「強い慶應を復活させ後輩たちに繋いでいきたい」と力強く意気込む。初陣は隅田川での早慶戦。今シーズン1度も勝てなかった早大を「打倒」し、先輩方に勝利を届ける。それこそが、最高の恩返しになるはずだ。
女子舵手付きフォア
C:水谷智咲(環4)
S:遠藤佳奈(商4)
3:兼子佳恵(政3)
2:伊地知真優(環2)
B:根岸彩子(政4)
レース | 500m | 1000m | 1500m | 2000m | 結果 |
予選A組 | 01:50.88 | 03:48.55 | 05:46.73 | 07:44.52 | 3着→敗者復活戦へ |
敗復B組 | 01:49.19 | 03:43.68 | 05:41.44 | 07:38.79 | 4着→敗退 |
女子主将の遠藤佳奈(商4・豊島岡女子)率いる女子舵手付きフォアは、水谷智咲(環4・小林聖心女子学院)、兼子佳恵(政3・慶應湘南藤沢)、伊地知真優(環2・伊奈学園総合)、根岸彩子(政4・白百合学園)という4年生3人が乗る安定感抜群のクルーで臨んだ。これをもって引退となる4年生にとっては、まさに大学競技生活の「集大成」とも言える今大会。「クルーとして優勝を目指していた」と遠藤は言う。
クルーは1日目の予選を3位でフィニッシュ。翌日の敗者復活戦へ望みをかけることとなった。レース序盤、勢いのあるスタートで前半500メートルを1位で通過。しかし徐々に他のクルーに逆転を許し、追いかける展開となるもあと一歩及ばず結果は3位。準決勝に進むことはかなわず今大会を終えた。
大会を振り返り遠藤は、「人に支えられた4年間だった。結果で恩返しすることができなかったのが情けなく心残り」と話した。「優勝」という目標を掲げていただけに敗者復活戦での敗退は悔しい結果として残っただろう。
大学での競技生活を通じて、遠藤は「信じる」を大切にしてきたと言う。特に、クルー、さらにはチームを引っ張る主将という立場になってからは、「自分が伝えたいことをはっきり示したり、考えを決めずにチームの一人ひとりと向き合ってきた」と話す。そうして自身の大切にしてきた「信じる」を実現した互いを信頼できるチームをつくっていった。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で例年通りとはいかないことが多かったここまでのシーズン。今年の早慶レガッタは中止となり、今大会も無観客での開催というイレギュラーな形だった。4年生には思い通りにならなかった悔しさや様々な思いがあるだろうが、これかもまだまだ競技生活が続いていく後輩に対して、遠藤は「チーム全員で考えて、強気で戦っていって欲しい。今年開催できなかった早慶戦での優勝、日本一を後輩に託したい」と語った。これからも先行き不透明な状況が続くだろうが、その中で4年生の思いを受け継ぎ新体制となった部がどのような形となり、どのような結果を残していくのか楽しみだ。
男子シングルスカル
S:武岡大雅(政3)
レース | 500m | 1000m | 1500m | 2000m | 結果 |
予選B組 | 01:51.17 | 03:46.56 | 05:43.36 | 07:44.58 | 2着→敗者復活戦へ |
敗復E組 | 01:49.87 | 03:46.53 | 05:44.79 | 07:44.43 | 1着→準決勝へ |
準決B組 | 01:53.46 | 03:51.38 | 05:50.64 | 07:49.21 | 2着→順位決定戦へ |
順決 | 01:51.34 | 03:48.61 | 05:48.14 | 07:49.09 | 4着→全体8位 |
男子舵手付きフォア
C:森田大陽(商4)
S:赤堀太一(商2)
3:浦敬太郎(経4)
2:大島諒也(政2)
B:磯田大貴(政2)
レース | 500m | 1000m | 1500m | 2000m | 結果 |
予選C組 | 01:39.24 | 03:23.13 | 05:08.99 | 06:52.31 | 1着→準決勝へ |
準決D組 | 01:39.73 | 03:22.16 | 05:04.58 | 06:45.09 | 2着→順位決定戦へ |
順位決定戦 | 01:41.25 | 03:23.64 | 05:09.99 | 06:52.36 | 3着→全体7位 |
男子ダブルスカル
S:田上諒(経3)
B:小宮山息吹(経4)
レース | 500m | 1000m | 1500m | 2000m | 結果 |
予選D組 | 01:45.01 | 03:36.71 | 05:30.70 | 07:21.93 | 2着→敗者復活戦へ |
敗復D組 | 01:39.36 | 03:25.65 | 05:15.01 | 07:06.11 | 2着→準決勝へ |
準決A組 | 01:42.33 | 03:28.10 | 05:18.45 | 07:07.98 | 2着→順位決定戦へ |
順決 | 01:41.18 | 03:27.83 | 05:16.65 | 07:08.25 | 4着→全体8位 |
男子舵手なしクォドルプル
S:佐藤晴信(経3)
3:三浦治樹(商4)
2:笹生洪太(法2)
B:七條怜史(法3)
レース | 500m | 1000m | 1500m | 2000m | 結果 |
予選E組 | 01:37.44 | 03:17.36 | 05:01.79 | 06:43.43 | 1着→準決勝へ |
準決D組 | 01:37.72 | 03:20.89 | 05:06.76 | 06:50.26 | 3着→敗退 |
女子舵手なしペア
S:三神真優子(政2)
B:松井萌(経2)
レース | 500m | 1000m | 1500m | 2000m | 結果 |
予選B組 | 02:00.09 | 04:05.57 | 06:16.84 | 08:27.80 | 4着→敗者復活戦へ |
敗復A組 | 02:04.69 | 04:13.73 | 06:27.02 | 08:33.39 | 3着→順位決定戦へ |
順決 | 02:02.95 | 04:07.64 | 06:13.18 | 08:22.35 | 3位→全体8位 |
女子シングルスカル
S:流石章代(総4)
レース | 500m | 1000m | 1500m | 2000m | 結果 |
予選D組 | 02:05.91 | 04:20.61 | 06:38.03 | 08:54.91 | 3着→敗者復活戦へ |
敗復C組 | 02:08.91 | 04:24.04 | 06:41.16 | 08:57.30 | 3着→敗退 |
(記事:東修司、宮崎柚子、和田舞香/写真提供:慶應義塾體育會端艇部)