【ソッカー男子】早慶サッカー定期戦特集 / 第1弾・須田監督編

須田監督が目指すサッカーを色紙に書いていただいた

  慶大に再びこの男が帰ってきた。今年度より3年振りに慶大ソッカー部監督に就任した須田芳正。自身のオランダ留学の経験や、慶大で過ごした学生時代を振り返って頂いた。また、6月29日の早慶戦に向けて慶大注目の選手からサッカー観戦の楽しみ方についても語って頂き、これを読めば早慶戦も楽しめること間違いなしだ!!!!!

――慶大の監督に就任したきっかけ

他の大学と違ってOB会の組織が慶應は強いんだよね。だからOB会が監督を決める。それで以前も5年前まで3年間くらい慶大の監督をやっていたんだよね。その後僕はオランダに留学してその間は李君が監督をやってた。まあ僕が監督をやってた頃も練習で指導していたのは実質彼の方だったんだけど。それで彼もコーチを含めて8年くらい慶應でやってたということで、そろそろ新しい体制でやろうじゃないかとOB会から監督の話が来たという経緯だね。

――李前監督との接点は

彼は慶應と包括提携している延世大学の出身で、ソッカー部は国交の正常化前から延世大と定期戦をやっているんだよ。その付き合いで毎年韓国行ったり日本に来たりで仲良くやってたんだよね。あと、毎年こっちの期待の若手選手を韓国に短期留学をさせる行事があたりして、そういうので韓国にはよく行ったね。李君はその後アトランタ五輪に出て、J2の大分の前身チームでプレーした。それで引退してからは延世でコーチをしていて、その時も会ってたんだけど彼が日本で勉強したいと。そうして色んな流れもあって彼が慶應に来ることになったんだよね。まあ、7,8年前はどこの大学もまだ体制が整ってなくて、週末にOBの監督が来るだけで平日は学生コーチが指揮を取ってたようなものだったんだけど、Jリーグが始まってサッカーの人気が高まるにつれ大学のレベルも上げようという動きが出てきてどこの大学も専任のコーチや監督が就き始めた。そこで慶應も専属のコーチをつけようとして李君が呼ばれたんだよ。

――とても長い付き合いですね

もう僕と彼は兄弟みたいなものだから。僕がオランダ言ってた時も彼が遊びに来たりしてね。

 ――オランダと言えばソッカー部は去年遠征に行ったようですね

そう。B,Cチームで連れてったんだけど、まあ慶應だから社会に出ればインターナショナルな人たちなんですよ。だから学生のうちにね、折角サッカーっていうインターナショナルなスポーツをやっているんだからどんどん外に出てサッカーの強化だけじゃなく、外の文化に触れるというのをやっていくべきだね。もう堅気に遠征行きますという感じじゃなくて気軽にぱっと海外に行って試合して、観光して、現地人と触れ合ってっていう時代じゃないかと思うよ。もうボーダーはないですよ。今の世界は。

――須田監督は慶大出身ということで、学生時代を振り返って

今の子はサッカーやって授業にも出て勉強してっていうのが多いけど、僕の時代は今みたいに勉強する体制が整ってなかったね。授業に出させてくれないんだもん(笑)特に1年生の頃は仕事が多くてさ。体育会の上下関係が厳しくてね。あとは、サッカー部で汚い掘っ立て小屋に寝泊まりしてね(笑)あんまり好きじゃなかったけど、楽しかったし今思えばいい思い出だね。あと、練習も厳しかったな。僕が入学した前の年に東京都リーグっていう3部にあたるリーグに落ちちゃってさ。その時はものすごい練習が厳しくてさ。山中湖合宿とかずーっと走りっぱなし。でもそれも終わってみればいい思い出だしさ。成績も2年の時に日本一になったりして結構強かったから良かったね。

須田監督のサッカー観を存分に語っていただいた

――須田監督はプロを経験されたそうですが、そのきっかけは
 
 
 
 
 

 

まず僕はJが始まってなかったころに東京ガス(FC東京の前身)にいたんだよ。そこでJリーグが始まるということでプロでやってみたかったので浦和レッズの方から話をもらって、練習して契約したんだよね。

――プロ時代を振り返って

楽しかったというか最高だよね。サッカーで飯が食えるなんて夢だったし、小さいころはサッカーはマイナースポーツでプロのサッカー選手になりたいと小学校の時に思っても現実的ではないよね。海外に行くというのも難しいしさ、日本リーグもプロじゃなかったからね。だからJリーグが始まってからの変わりようってのはすごかったね、これまで試合で何百人しかお客が入らなかったのが練習でも何百人も来るようになって、試合は超満員でテレビ放映されたりで大注目で、僕はそんなに試合に出なかったけど最高の経験ができたなと。

 ――サッカーがプロ化されたことでプロ選手も増えて、サッカー選手になることの可能性が広がりました。今年慶大は河井選手(政4)がプロ入りを決めましたが他にプロの可能性のある選手はいますか

今の4年生で2,3人はJ1かはわからないけどJ2でなら十分できるし、2,3年にもいい選手はいるよ。ただ、それなりに努力しなければいけないね。特に若い選手は今上手いとしてもプロになれるかは分からないから努力することが大切。

 ――今慶大出身のプロサッカー選手は中町公祐(総卒・現J1アビスパ福岡)など少数ですがこれからは人数を増やしていきたいですか

もちろん僕はサッカーの研究者でもあり指導者でもあるからプロの選手を育てたい気持ちはある。でもだからといって慶應はそういう選手ばかりでもないし、やっぱりベースとなるのは社会で活躍できる人間を作りたいということ。それがサッカー選手でも一般企業なのか、自分で何かを興すのか、いずれにしたって社会に出て活躍できる人間を形成する。けどやっぱり指導者だからプロで活躍できる選手を育てたいとは思ってるよ。

――オランダ留学を経験されたということですが

オランダのSIOSっていうスポーツリーダーを育成するための学校に行っていたんだよ。向こうでは有名でヒディンクとかベーン・ハッカーとかが出身なんだよ。あとサッカーだけじゃなくて他のスポーツの有名な指導者もそこの学校出身の人が多かった。それで、そこに所属して授業を受けることによってオランダサッカー協会のライセンスが取れる。3,2,1級とスペシャルっていう所まであって、そこの学校では2級まで取ることができたから、僕は1年目で3級を取って次の年に2級を取ったんだ。授業には実技というか実際にピッチで指導するものだったり、講義を受けたり、分析したり、っていうのがあって、それを年間通してやっていたんだよね。向こうではオランダ語を学ぶよりかは皆英語が喋れるんだよ。だから「あなたはオランダ語はいいから英語を学びなさい。」と言われて、そこの学校の英語の授業を取ったりとか。あとはライセンスを取るためにはどっかのクラブに所属して、そこで指導しなければいけない。最後のテストはそのチームを指導してるのをインストラクターが見て、オッケーだとかダメとか評価が下される。僕はアマチュアの4部のブルメンダールっていうアンダー14のチームを見ていたんだけど、そこではコーチをしながら自分でもサッカーが出来るんだよ。それで、向こうには20~30歳くらいのチームから10代の若い世代、僕と同じ位の40代のチームもあってそれぞれの年代別のリーグがあってそこで戦うことができる。それがオランダの強さの秘訣ですよ。強ければ全国リーグ、弱ければ地域リーグというように各カテゴリーでリーグ戦があるし、どれもホーム&アウェー方式で行われる。年間通してホーム&アウェーで30試合くらいを小さいころにやるから、経験も増えて戦い方も分かってくる。あと、リーグ戦のいい所なんだけどいくら負けたとしても次の試合があるし、今日はここが悪かったからトレーニングでここを修正しよう、というのが出来る。

 ――日本のユース年代の大会はトーナメント方式が多いですよね

確かにそうだね。けど最近はトーナメントじゃいけないんじゃないかということで、もっとリーグ戦を増やそうという風潮が高まっているね。育成年代というのは、もちろん勝敗も大切なんだけど育てることが大切なんだよ。トライすることが大事なのにもし1発勝負だったらトライできないし、だからボンボン蹴ってリスクの少ない戦い方にしようとする。そうするとサッカーは育たないし、だから日本はリーグ戦にしようと大会方式を全部変えようとしている。今年から東日本と西日本のプリンスリーグ、関東のプリンスリーグ、その下に都道府県のリーグというように色んなレベルのリーグを作って活性化を図っている。それを中学高校から初めて、小学校も今はやろうとしているんじゃないかな。日本は環境も含めてよくなっていると思うよ。けどオランダとかは昔からそういうリーグ戦が定着してるからサッカーが文化になっているんだろうね。サッカーやるのはプロだけじゃないというのがすごいよね。オランダは7部まであるんだけど、そういうリーグでも年間通して30試合くらい、しかも芝生のグランドでやるんだよ。オランダのサッカー環境は抜群だよ。

 ――他にオランダのサッカーに特徴はありますか

向こうはセレクションとかもしっかりしていて、アヤックスとか強豪チームが5~6歳の子を集めてテストをする。それで入団したとしてもダメだと見られたら1年ですぐ首を切られる。まだちっちゃな子供だよ。その時からシビアな争いが行われているんだよね。アヤックスは世界各国から優秀な子どもが集まってくるからね。でも、オランダのいい所なんだけど首を切られた子はまた違うクラブに行けるんだよ。ちょっとレベルの落ちたチームか、違うプロのチームが引き抜くこともあるし。日本の場合は、もうここのチームじゃだめだと思っても、次のクラブが見つかりにくいでしょ。けどオランダは仮に今いるクラブをやめても、近所の別のクラブに入ることができる。そこでまた敗者復活じゃないけどいいプレーでアピールしてプロのチームに呼んでもらうということができる。それがすごいいい所だよね。遅咲きの人だっているわけでしょ。あと、スカウト網もすごい。だからいい選手が絶対埋もれない。それは選手だけじゃなく指導者にも言えるよね。沢山指導者がいるけど皆がプロのチームで指導できるわけじゃない。けれどアマチュアのチームが沢山あるからそこで成績を残して監督としての自分をアピールできる。しかもアマチュアでもお金を貰えるからね。指導者も失敗できる環境だから育つよね。やっぱり失敗を恐れてたら、トライできないよ。そういうトライする環境がいいよね。

 ――サッカーの内容はどんなことを学んだんですか

向こうではサッカーの局面を攻撃・守備・切り替えに分けて研究、分析する。だからすごく分かりやすい。たとえば分析するときにこのチームはどう攻撃するのか、どうやって守備をするのか、切り替えの時はどういう動きをしているのかを見る。これはすごい勉強になったね。集中してみないと分からないんだよ。特に見るのが難しいのが切り替えで、ボールが奪われてから1~5秒の間にどういうポジションを取っているのか。これは本当に集中しないと見逃す。それで、分析のテストがあるんだけど、例えばA対Bチームの試合を見て、終わった後にAチームの攻撃パターンについてとか聞かれるんだよ。2時間で答えるんだよね。それで最初のころはテストじゃなくてレポートを書く練習があったんだけど、なかなか書けないんだよ(笑)切り替えが特に難しかったね。あと、ポジショニングもオランダで学んだんだよ。それから戦術理論だけじゃなくてコンディショ二ングも学んだね。現代サッカーでは技術・戦術・体力のうち、特に体力が重視されてる。やっぱり体力がないと相手に勝っていけないんだよね。向こうではfoot ball training is conditioning, conditioning is football training って言われるくらいコンディションが重視されてて、常にボールを使ってゲームをして体力を上げるっていう方針なんだよね。それはすごい勉強になった。ブラジルではボールを使わない長距離のランニング形式だったり、サーキットトレーニングっていうステップワークや、飛んだり跳ねたりして敏捷性を鍛える練習があるんだけど、そういうのは文化の違いだよね。

 ――実際に指揮を執る時ベンチからだと画面上に比べてそういう切り替えと選手の動きを把握するのが難しいのでは

難しいけどちゃんと観察しないとね。自分達が攻撃の時のポジションはどうか、守備の時はどうか、あとは切り替えだよね。切り替えが遅いんじゃないかとか。一番わかりやすいのはボールを取られて「あー」って悔しがってる時。悔しがってないで、すぐ戻れと。それで切り替えの時に1番大切なのはまずファーストディフェンダーをつけること、そして自分のポジションに戻ることだね。

 ――やはりオランダ留学は大きな影響を与えたのでしょうか

やっぱりサッカーを見る目は変わったよね。それが一番勉強になったかな。

 

試合後の須田監督。慶大は9節を終え3位。その手腕を存分に見せつけている

――今季の慶大の特徴は

攻撃に関してはサイドを起点にして、守備は前からがんがんプレスに行く。見ていて分かりやすいでしょ。プレスが弱い時はまずい雰囲気の時なんだよね。プレスに行かないと相手に自由にやらせて主導権も握られてしまう。けどファーストディフェンダーが厳しくチェックに行けば、つぎのプレイヤーも連動して動けるから仮にパズを出されても次の人がすぐプレス出来る。そうしていけばそのうちボールも取れる。ボールを奪ったらすぐにサイドに展開して、キープして大城(黄・総4)、奏一(田中・環4)が上がるなりしてクロスを上げるっていうような攻撃していこうと。

 ――今度早慶戦があるのですが監督の一押しの注目選手は

それ言った方がいいの?(笑)まあ皆なんだけれどもね。無難に河井かな。やっぱりプロに決まったからね。どんな選手がプロに行くのかを見れれば面白いんじゃない。彼なんか小さくて見た目からするとどうなのという感じだけど、ああいう選手が日本のトップレベルで出来るんだからね。サッカーは小さくても出来るんだよ。

――サッカーを見ててよくわからないという人に観戦のアドバイスはありますか

まずは自分の好きなチームの攻撃だっやり守備の特徴に注目することじゃない。攻撃にしたってそのチームごとに一番多い攻め方っていうのがあるわけじゃない。例えばFWにすごい大きくて強い選手がいて、まずそこに当ててキープしてタメを作ってその間にサイドが駆け上げるとかさ。守備も前からどんどんプレスしにいくなり、自陣に皆引くなりそれぞれのチームによって変わるからね。ただ漠然と見るよりかは自分の好きなチームの特徴を掴むことがいいんじゃないかな。慶應の場合はさっきも言ったように攻撃はサイドを起点にして、守備は激しいプレスをするっていうのが特徴だからそこに注目すれば楽しめると思うよ。

 ――須田監督の早慶戦の思い出は

1年生の時は負けたんだけど、途中出場して左サイド駆けあがっていいプレーしたの。あとは、2年の時は勝ったね。早稲田は当時からものすごい強かった。

 ――早稲田の印象は

やっぱり強いよ。まあ定期戦は1発勝負だからどっちが勝ってもおかしくないんだよ。あんまり実力差は関係ないし、今の早慶の実力なら五分五分でしょ。

 ――どんな戦いになるでしょうか

本当に勝ちたいっていう気持ちが強い方が勝つんじゃないかな。もちろん戦術もあるんだけど、最後は気持ちと気持ちのぶつかり合いだからさ。サッカー的にはがちがちの試合にはしたくないし、楽しいフットボールをしっかりやりたいね。まあある意味僕は何も言わない方がいいのかもしれない。やろうぜとか、頑張れとか。元々今もあまり言わないんだけど、あの舞台で頑張らない選手はいないでしょ。ただ、僕はらケガ人が多いから総力戦になるね。

早慶戦への意気込みを色紙に記して頂いた

 ――最後に早慶戦に向けて

まあ、早稲田と慶應しか出来ない試合だし、一万人も集まるんだからさ、フェアプレー精神でのびのびやってほしいよね。小泉信三さんの言葉に「we are hardfighter and good looser」というのがあって、要するに精一杯果敢に戦いましょうと。準備を含めてね。よきライバルとしてお互いに死力を尽くして闘って、負けたとしても相手のことを称えてよき敗者になろうじゃないかと。言い換えると本当に精一杯闘った人しかよき敗者にはなれないし、早慶戦でもそういうのを大事にしてお互い自分達の力をフルに発揮してほしいね。それが学生スポーツの原点だからさ。

By Shota Kajigano

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