2024年12月21日、秩父宮ラグビー場でベスト4を目標に挑んだ大学選手権準々決勝。前半から必死に喰らいつくも、帝京大相手に対抗戦のリベンジ、そして目標達成の夢は叶わず、125代最後の試合が終了した。
その後「日本一」を掲げて始動した2025年度シーズン、先頭に立って新生・慶大蹴球部を牽引する幹部9名に1年間の意気込みを伺った。
第1弾の今回は、主務・中井優(政4・慶應)、FW学生コーチ・藤田祥平(経4・慶應)、BK学生コーチ・安田雄翔(法4・甲南)の3名。チームからの絶対的信頼を持ってして学生スタッフに選ばれたこの3人が、今年のチームをどう熱くしていくのか。
ケイスポ取材デビューだという3人の対談をぜひ最後までご覧ください!
――対談ということで、他己紹介を
中井→藤田:新4年のFWコーチ藤田祥平くんです。彼とは慶應普通部からの仲なのですが、普通部・塾高時代にキャプテンをやっていて、今はフォワードの学生コーチということで、リーダーシップに長けている部員なので、彼が言ったことには絶対にみんなが従う、という心強い存在だと思います。非常に助かっています。
藤田→安田:ありがとうございます。安田雄翔くんです。新4年BKコーチです。彼との出会いは大学1年のときで、最初の印象は「めちゃくちゃ明るい関西人が来たな」という感じでした。グラウンドに出ても、とてもパッションを持ってやってくれる相方なので助かっています。ヤスのためにも頑張ろう、という思いがあります。
安田→中井:ありがとうございます。慶應義塾高校出身の中井優くんです。彼も僕との出会いは大学1年生のときでした。BKというポジションで、とても真面目に取り組んでいるという印象でした。その真面目なところは今も変わらず、主務という立場でしっかり業務を行っていて、なかなか自分にはない能力を持っている人だと思います。僕も中井のために、(藤田)祥平のために、チームをどうすれば勝たせられるかを考えているので、そういう意味では、中井からとても刺激をもらっています。
――中井さんの好きなところは
安田:(中井)優は物知り。
一同:(笑)
藤田:初めて聞いたけど。
安田:自分が知らないような人のことを知っています。あとは、オフもちゃんとしているところ。主務らしく生活しているなという感じです。
藤田:僕もヤスと同じで真面目なところかな。僕とヤスは真面目かと言われたら、クエスチョンマークがつくので、優はスタッフの中では真面目な人だなと思います。
――藤田さんの好きなところは
安田:いつも美味しいものを食べていて、それがいいなと思います。
一同:(笑)
藤田:やせたい思いはあるのに、食べ過ぎちゃう。
安田:そういうところが好きです。
中井:食と酒が一番の大好物です。オフはリカバリーする期間で、みんなリフレッシュするのですが、彼はいつ見ても美味しそうにご飯を食べています。あと、こんな大きな身体ですけど、細かい気配りができるナイスガイで、見習いたいと思っています。
――安田さんの好きなところは
中井:根っから明るい人で、友達が多く、こんなこと自分には真似できないな、と思うくらいです。ヤスの人脈の広さは、彼のオフを語る上では欠かせない・・・
一同:(笑)
藤田:(中井)優が言ったこともそうですけど、行動力がすごいなと思っています。僕は旅行とかの計画は絶対できない。ちょうど昨日ヤスが「来週海外行ってくるわ」と言っていて、すごいなと思いました。
――慶應義塾大学蹴球部を選んだ理由を教えてください
中井:僕は5歳からラグビーをしていて、幼稚園時代からずっと一緒にやっていた仲間と世田谷ラグビースクールや普通部、塾高でラグビーをしていました。実は大学に入る際には別の進路を考えていたのですが、自分からラグビーがなくなると考えたときに、自分が自分ではなくなって、空っぽになってしまう気がして。大学はいろいろな選択肢がありますけど、ずっとやってきたことを続けようと思って、蹴球部に入りました。怪我とか大変なことはありましたけど、それと同時に充実感もあって、成長できたと思っているので、最後に集大成として大学日本一を目指したいです。
藤田:今の話にもありましたけど、本当に同期を始めとする仲間に恵まれていて、そのメンバーと一緒に新しい景色を見たいので、入部したという感じです。
安田:僕は二人と違って大学から慶應で、最初は蹴球部に入るつもりはなかったのですが、僕の憧れの中高の先輩が蹴球部にいて、その人の背中を追いたいという思い。それと、日本最古のラグビー部という伝統あるチームで大学日本一を目指したいなという思いで、入部を決意しました。
――スタッフに就任した経緯はなんですか
中井:僕たち3人に共通していることなのですが、もともと選手として入部して、3年生に上がるタイミングでFWとBKの学生コーチと、副務(4年生になると主務)を選ぶというのがありました。その同期全員のミーティングで、自分たち3人がふさわしいと選ばれてスタッフになりました。
――スタッフに就任した際の印象に残っている言葉などありますか?
藤田:僕は二つあって、一つ目は静岡ブルーレヴズというプロチームでスクラムコーチをやられている長谷川慎さんに「ラグビーは選手としての活動が終わったら終わり、ではなく、ずっとラグビーに関わっていける。それがラグビーの良さだから、選手を辞めても頑張れ。」と言われたこと。二つ目は同期の渡邉哲暉(政4・慶應義塾)の言葉です。中学からずっと同じような体型でラグビーをやってきた彼と二人きりで話したときに、「本当はこれからも一緒にライバルとしてやりたかったけど、お前しかいない。」と涙ながらに言われて、こいつのために頑張らないと、と思いました。
安田:印象に残っている言葉は特にないのですが、コーチを決めるときのことは印象に残っていて、「安田を選手として残したい」という意見や「コーチとしてチームに貢献してほしい」という意見があって、みんなが客観的に自分を評価してくれた上で、推薦された形でした。もちろん今でも死ぬほど悔しいですけど、みんなが考えた上で推薦してくれたので、いろいろな意味で印象に残っています。
――普段のスタッフ活動。部活がある日とない日、それぞれについて
藤田:部活ない日のこと(記事に)出せる?(笑)
中井:じゃあまず僕から。僕は主務をやっていて、運営など裏方のようなことをやっています。試合や遠征のときはラグビー協会への連絡、宿泊するホテル・交通機関の手配をしたり、大学側とやりとりをしたりなど、いろいろな人と連絡を取って、蹴球部と外部の窓口になるような仕事をしています。部活がない日は、特別何かをすることはないのですが、メールや電話に対応していますね。
藤田:僕はFWコーチなので、一番の目的は強いFWをつくること。今年は特に、去年のように目立つスター選手がいないので、8人全員で強いFWをつくることを意識してやっています。オフの日は、社会人コーチの方とミーティングをしています。それ以外の日は、FW陣と美味しいご飯を食べたり、お酒を飲んだりしています。
安田:僕はBKコーチということで、去年からの主力の選手が多いですけど、その中でも大学日本一のBKをつくるために、「ベーシック」を徹底してやっていこう、という風に活動しています。オフは基本的に月曜日なのですが、一週間後の日曜日に選手のどのような姿が見たいのかを、その日に監督・コーチと話し合っています。あとはBK陣と遊んでいます。
――スタッフ活動で意識していること
安田:僕は一番情熱を持ってグラウンドに出る、ということを意識しています。僕がコーチに選ばれた一つの要素として「パッション」というのもあるので、この一年間それを体現し続けないといけないな、と思っています。
中井:僕は気付きや気配り。僕は、OBの方や大学、協会と話をする立場なので、相手の方に迷惑にならないようにするのはもちろん、密なコミュニケーションを取ったり、提出物の期限を守ったりなど、細かいところに気を配るようにしています。
藤田:僕はヤスと一緒に仕事をすることが多いのですが、ヤスが前で声を出して、僕は後ろでケツを叩くイメージです。とにかく選手とラフにコミュニケーションを取ることを意識しています。
――ラグビーに対する見方は、選手時代と変わりましたか
中井:僕は結構変わりましたね。選手時代はただ試合会場に行って、ラグビーを必死にプレーするだけだったのですが、裏方の運営側に回ってから、試合・ピッチの環境にはたくさんの人の努力が詰まっているということに気付きました。選手時代にはなかった、「ラグビーができることが当たり前ではない」という考えや、たくさんの人への感謝の気持ちが改めて生まれました。
安田:僕も優と同じで、コーチになってから運営の大変さを知りました。あと、選手のときは自分の成績しか考えていなかったのですが、コーチになってからは人に興味を持つようになった、というか。一人一人をよく観察するようになりましたね。
藤田:僕も選手のときは自分のことばかりだったのですが、コーチになってからは、試合に出る選手全員とコミュニケーションを取るようになって、人との関わり方という部分では変わったのかなと思います。
――主務・学生コーチのやりがい
安田:学生コーチは選手にはできないことができる、というのがまず一つ。ただやっぱり一番は、自分がコーチングしてきた選手たちが試合に勝つ瞬間。それが一番嬉しいし、やりがいを感じます。
藤田:模範解答です。
中井:試合に勝つことはもちろん嬉しいのですが、僕は試合が始まった瞬間が一番やりがいを感じます。去年、佐賀で早慶戦(第28回佐賀招待ラグビー)をしたときのことなのですが、主務・副務は試合中の業務よりも試合前の準備が大変で。無事に試合が始まって、観客の方たちが楽しんでくれていて、選手も全力でプレーができていた瞬間を見たときに、すごくやりがいを感じました。
――昨年度の蹴球部を振り返って
藤田:去年は部として一貫性が欠けていたと思っています。春シーズンに上手くいったことを秋まで継続できず、波の大きい年だったと感じているのでそれを反省しています。ヤスの話にもありましたけど、今春からは基礎の部分を徹底して、チームの基準を高めていきたいと思います。
中井:去年はチームとしては中山大暉さん(令7卒)というキャプテンがプレーでも引っ張ってくれる強い存在で、リーダー陣が積極的にチームを変えようと動いてくださったのですが、今年の4年生は絶対的な存在というのがいなくて。ただ、みんなでチームを引っ張っていく、という今年の体制もまた違った良さだと思うので、頑張っていきたいと思います。
――オフシーズンに重点的に取り組んだこと
安田:ラグビーはフィジカルスポーツなので、まずは体重を増やすというところで、今も「鍋」という追加で食べる食トレをやっています。あとはウエイトの回数を増やすことですね。BKに関しては基礎の部分というのを、徹底してやってきました。
藤田:FWは基準を高めるというところで、自分が100%を出すから、相手にも100%を求める「100:100」をテーマにやっていて、その基準をぶらさない、ということに重点を置いていました。
――今年のキーマンは
中井:SHの橋本弾介(法4・慶應)です。彼は1年生のときから対抗戦にも出ていて、プレーでチームを引っ張ってくれる存在です。さらに、今年からチームの文化を変えていこう、という取り組みがあって、そのリーダーもやっています。ピッチ内では背中でチームを引っ張る良さがあって、それをグラウンド外でも発揮して、オフグラウンドでもチーム全体を良くしようとしてくれています。やっぱり日本一を達成するためには、ただラグビーが上手いだけじゃダメだと思うので、彼がキーマンなのかなと思います。
安田:僕は石垣慎之介(政4・慶應志木)。去年から結構レギュラーに定着するようになりました。彼のランはトップレベルだと思うので、どうやって彼にボールを供給するのかというのが重要になると考えています。
藤田:僕は笠原大介(商4・慶應)。
安田:言おうと思ったのに。
藤田:FLの選手で、すごく良いキャラをしていて、チームを良い方向にも悪い方向にも導くことができる存在です。彼次第で、FWは良い方向に行くのではないかなと思います。
――春季リーグの目標
安田:チームとしては全勝を目指しています。BKとしてはトライにこだわり続けるというところ、冬にベーシックに重点を置いて練習してきたので、それを体現したいと思います。
藤田:この春の目標はBKからの信頼を得るというところ。BKは去年の主力が残っているのですが、FWは結構抜けてしまって目立つ選手もいないという中で、8人でどれだけ相手を上回れるかということをテーマにやってきました。スクラムやモール、ラインアウトというセットピースで、どれだけ安定したボールを供給できるかというところにこだわってやっていきたいと思います。
中井:抽象的になってしまうのですが、僕としては日本一のチームをつくること。昨秋は試合が始まるとどうしても目先の試合が大事になってしまうと思うのですが、チームの根幹、土台の部分をつくることができるのは春季だけなので、そこを頑張っていけたらなと思います。
――意気込みを一言で
藤田:8人で相手を上回るFWパックをつくる。
安田:情熱を持って、日本一のBKを作り上げます。
中井:縁の下の力持ちとして、揺るがないチームをつくる。
ーー貴重なお話をありがとうございました!
第2弾は4月17日、恩田優一郎(政3・慶應)、笠原悠真(政3・慶應)、中野誠章(文2・桐蔭学園)のリーダー3名の対談を掲載予定です!ぜひご覧ください。
(取材:梅木陽咲)