【ラグビー】痛すぎた前半の拙攻、正月越え成らず/大学選手権2回戦・天理大戦

敗戦し、涙を見せる選手たち

ノーサイドの笛が鳴った瞬間、必死の形相で試合を戦っていた選手の表情は一斉に変わった。呆然と立ち尽くす者、膝をつき涙を流す者、気丈に前を向く者……それぞれが見せた顔は多様だったが、意味するものは同じだった――日本一への挑戦が終わってしまったと。

天理大に喫した15-32での敗戦は今までのどの敗戦よりも重く、残酷に仲宗根組の戦いに終わりを告げた。

2011/12/25(日)14:00KO

大学選手権2回戦VS天理大@瑞穂ラグビー場

得点
慶大 チーム 天理大
前半 後半 VS 前半 後半
0 2 T 1 3
0 1 G 0 3
1 0 PG 0 2
0 0 DG 0 0
3 12 小計 5 27
15 合計 32
【得点者】(慶大のみ)

T=古田、鈴木貴裕

G=仲宗根

PG=仲宗根

出場選手
ポジション 名前(学部学年) 交代選手
1.PR 古田 哲也(環4)
2.HO 高橋 浩平(経4) →後33分16.渡辺 祐吉(経3)
3.PR 平野 裕馬(環3) →後33分17.山田 亮介(環3)
4.LO 熊倉 悠太(政4) →後24分18.遠藤 洋介(環3)
5.LO 藤本 慎二郎(環4)
6.FL 石橋 拓也(環1) →後19分19.明本 大樹(総4)
7.FL 茂木 俊和(理3)
8.NO8 栗原 大介(総4)
9.SH 星 卓磨(政1) →後31分20 猪狩 有智(経2)
10.SO 宮川 尚之(環2)
11.WTB 児玉 健太郎(環2)
12.CTB 仲宗根 健太(総4)
13.CTB 高田 英(経3) →後19分21.柴田 クマール サンディープ(総4)
14.WTB 鈴木 貴裕(経3)
15.FB 新甫 拓(経3) →後33分22浦野 龍基(政1)

果敢に突破を図っていった藤本

前半、コイントスで勝った慶大は風上を選択し、SO宮川(環2)やWTB児玉(環2)らのキックでエリアを取りながら試合を進める。風に乗った好キックで陣地を取っていくが、ハベア、バイフの両外国人CTBや日本A代表も経験した立川で形成する強力フロントスリーを擁する天理大の前にBksが思うように得点までつなげることができない。対する慶大も茂木(理3)、石橋(環1)の両FLを中心とした出足の早いタックルで応戦。試合は両チーム一歩も譲らないこう着状態となる。そんな中、試合が動いたのは28分。慶大ゴール前中央でできたラックから素早く展開されると、人数を余らせられたところで飛ばしパスを通されてトライ。風上に立ちながら先制を許してしまった。このままで終われない慶大は33分にハーフライン付近で得たペナルティでPGを選択。CTB仲宗根主将(総4)が50メートルのロングPGを決めて3点を返した。さらに37分にもPGで逆転を狙ったが、ここは外れてしまい3-5で前半を折り返した。

鈴木貴裕が快速を活かしトライを挙げるも、点差は開いていった

逆転を狙う後半、早々にPGを決められて追加点を挙げられるがすぐさま試合をひっくり返す。4分に敵陣ゴール前10mでラインアウトのチャンスを得ると、秋冬で整備を進めてきたモールで押し切ってトライ。「Fwdはモールでどんどんいく」(LO藤本・環4)と戦前の分析から優位に立てると踏んだFwdでこの試合初めてのリードを奪った。しかし、慶大はこの後が続かない。天理大・立川の風に乗ったキックにより自陣での攻防が続く苦しい展開を強いられる。さらに前半は抑えこんでいた外国人選手に対しても、「後半の途中からCTBを押さえきれなくなってしまった」(藤本)とラインブレイクされるシーンが目立っていく。後手に回り始めた慶大は11分、18分と立て続けにトライを献上。21分にWTB鈴木貴裕がトライを挙げるが、流れを引き戻すことはできずに試合が経過していくと共に点差は離れていった。終わってみれば後半は27点を許して最終スコアは15-32。2年連続で正月越えを果たせず、夢半ばにして仲宗根組の戦いは終わりを告げた。

「勝とう、国立に行こう」(NO8栗原副将・総4)。流通経大戦の勝利から勢いに乗る慶大フィフティーンはそう誓って試合に臨んだが、待ち受けていたのは無情にもダブルスコアでの敗戦だった。この結果が象徴するように今季の慶大は戦績が振るわなかった。しかし同時に得たものも多い。昨季まで課題だったスクラムやモールは最後には強みとなった。試合中の判断力も養われた。そして何より今までAチームで出る機会が無かった選手が黒黄ジャージに袖を通して試合に出たことは大きな財産となっただろう。「蒔いた種は必ず芽が出る」(田中監督)。花となるより根となろう――。仲宗根組の挑戦は来年こそ咲く日本一の大輪の花の根であったことを信じて、今はただ選手たちに拍手を贈りたい。

【ケイスポ的MOM】チームを支え続けた仲宗根健太、栗原大介

試合後、相手選手と健闘を称え合った仲宗根主将

対抗戦7試合、大学選手権2試合計9試合720分。チームが勝っている時も負けている時も仲宗根健太(総4)と栗原大介(総4)の二人は常にグラウンドで戦い続けた。試合中の役割でも仲宗根はシーズン途中からキッカーを務め、栗原は大学選手権からNO8へのコンバートを経験。競争が激しく出場するメンバーがめまぐるしく変わる中で多くの役割をこなし、天理大戦でも二人は存在感を発揮。仲宗根はラインブレイク、栗原はエイトアタックで厳しい局面を幾度も打開しようと突破を試みた。

自陣から抜けだすべくボールを運ぶ栗原

 

 

 

 

 

 

 

1年間チームを引っ張り、体制の転換期にチームのために尽力した二人。結果だけは無情にもついてこなかったが、思いは後輩たちが必ずやついでくれるはずだ。

By Tomoki Kakizaki

コメント

田中監督

(振り返って)早稲田にああいう形で負けた後、ジュニア選手権で帝京大学と競って優勝できて、今回流通経済大学さんに勝って、この天理さんに臨んだが、チームとしては非常に雰囲気も良く、流れもあっただけに残念だったなと思います。前半あれだけ風が吹くなか、風上に立ちながら前半スコアを取り切れなかった、相手に1トライ許し、うちは3点取って5-3で折り返したという形に対しては、今年の得点力のなさがこのラグビーにつながったのかなと思います。やはり天理さんは後半風上に立った時は上手にテリトリーを取って、そして自分たちの強みであるBKsをやってきましたね。本当に立川君はキック一本で一気に自陣から敵陣まで食い込み、そういったゲームメイクの上手さというのはやはり天理さんはさすがだなと思いました。(早明も2回戦で敗れてしまったが)残念ですね。国立に早慶明3校が立ちたいという思いが非常にあったので、早稲田さんに明治さんに思い入れがあるわけではないですけど、2019年に向けてラグビー界を盛り上げていくのは大学ラグビーであって、その中で伝統3校が果たすべき責任はあるなと僕は思っていました。ですからOBからも1月2日の国立は早慶明3校で必ず会おうとOB会でも話に上がっていたようでございますので、そういった意味では残念ですね。国立を6万満員にしたいなという思いもあったので、そういった意味では国立に出られなかったというのは残念です。(早慶明3校が4強入りできなかったのは史上初だが)寂しいですね。おこがましい言い方ですが、日本のラグビー界の中で早稲田さん、明治さん、慶應が果たすべき役割は僕はあると思います。お互い3校が切磋琢磨して取り組んできた。特に今年は3校で力を合わせて、東日本大震災の募金活動を3校でやって、この3校でやらせていただいた時にあらためて早稲田さん、明治さんに対してリスペクトする気持ちにお互いなりました。この早稲田さんに敗れたら、この明治さんに敗れたら、潔しとしようと思えるくらいリスペクトできる相手だったので、その早稲田さん、明治さん、慶應含めて国立に出れないというのは大変残念ですね。またラグビーファンの皆さまに対してはおこがましいですが裏切ってしまったなという気持ちがあります。(今年1年間新体制となり不安もあったと思うが)これは学生スポーツの宿命だと思うのですが、今の4年生にしてみれば3年間は林前監督の下でやってきて、最後の大事な1年に監督を含め体制が変わると。しかもどちらかというとやってきたラグビーも変わる、考え方も変わるという現実に直面した時に、学生たちはとまどいがあったと思います。林監督が突き詰められてこられたのは緻密なラグビーですし、戦術戦略というのも非常に細かいところまで落とし込めてこられた。私たちのラグビーというのはそうではなく学生たちが主体で考えていくラグビーをしてきた。でも私の基本的な考え方は学生スポーツですから自分たちで自ら考えて行動する力を身につけることが大事だと思ってそれを貫いてきましたので、もちろん学生からしてみれば与えられなかったことに対する不満足もあるだろうし、もしかしたらフラストレーションもあったかもしれません。ですが考えて自ら判断して行動する力をつけることが僕は大事だと思うし、少なくとも私が監督を拝命している限りは必ずそこは貫いていきたいと。そういった意味では今年の学生はそのギャップは感じていたのではないかという思いです。1年目だから難しいなという思いはありました。ただ学生たちにとってはこの1年は最後の1年なので、私としては申し訳ないなという気持ちです。(ただこの1年で蒔いた種が来年以降につながると思うが)今年のこの敗戦を通じて学んだこと、そして変えなきゃいけないところがあるといっても、今回蒔いた種は必ず芽が出ると信じていますので、継続こそ力なりだと思いますので、そこを信じてやり抜いていきたいなと思います。確実に選手たちは変わりましたし、成長したと思います。

CTB仲宗根主将

(ここで引退となってしまったが)実感はないというのが正直な気持ちですね。1年間やってきて、何かがよくなかったからこういう風に結果が出なかったのかなと思います。その中で僕たちは目指すことはできないが、後輩たちはチームのことや僕のことを見ていたと思うので、しっかりそこを反省して、何かを変えなければ変わらないと思うので、そこを変えてまたスタートを切ってほしいなと思います。(今日の試合に関して天理大が強かったのか、それとも慶大が及ばなかったのかどちらだと思うか)慶應のミスから取られたというのはあると思うんですけど、負けてしまったので、そこのちょっとした隙を走られたというのはやっぱり天理は強かったのかなと思います。(天理の強みであるBKsに対して何か対策はあったか)特にはなかったが、そこまで相手にこだわらず、自分たちのラグビーをやろうという話はしていました。(前半得点を取り切れなかったのも大きかったと思うが)前半は個人的にはいい出来だったのかなと思いますけど、後半相手のゲームメイクが上手かったというのと、ディフェンスのところでギャップが生まれて走られてしまったのが敗因だと思うので、トライを取り切れなかったので負けたという感覚はあまりないですね。(後半タックルでのミスからトライを奪われてしまったが)早稲田戦からタックルをやってきて、個人個人のタックルは良くなってきて改善されたので、そこは後輩たちは自信を持って継続していってほしいなと思うのと、後半にタックルミスが多くなってしまった原因として組織的なディフェンスがなかなかできていなかったかなと思います。(様々なことがあった仲宗根組だがどんな一年間だったか)4年生が僕が主将として出来の悪い部分をサポートしてくれていたので、僕としてはスムーズにやれていたんですけど、自分のリードミスというかそういう部分で今年は勝てなかったと思うので、結果が全てというか、結果を出さなければやってきたことは証明されないと思うので、その一年間を振り返ってみて考えてみるとよくなかったのかなと思います。(早慶戦の敗戦から一回り大きくなって大学選手権を迎えたと思うが変わった点は)大学選手権という大きな目標があったので、みんな一つにまとまりやすかったのかなというのと、あとはジュニア選手権ですごい熱い試合がいくつもあったので、そこでチームがまとまれたのかなと思います。(慶大がこの先さらに強くなるために必要なことは)やっぱり慶應らしさを突き詰めてやればいいのかなと思います。(下級生へのメッセージは)ここで負けるとは思ってなかったので、何も用意はしていないのですが、しっかり僕たちの代の一年を振り返って何がいけなかったのか、何がよかったのかを明確にして、しっかりミーティングをして、来年に向けた指針を出して、一つになってやっていってほしいですね。(最後に4年間蹴球部、そして仲宗根選手を応援してくださったファンの方々に一言お願いします)4年目になって、主将になって、たくさんの人が支えているということを実感することができました。その中で今年はなかなか結果が残せなくて本当に申し訳ないなと思います。ですが僕たち4年生は多くの方々の応援や支援があって、人間的にも4年間で成長することができたので、今まで支えてくださったファンの方々であったり、OBの方々であったり、スタッフの方々に本当に感謝して、前を向いてこれからも過ごしていければと思います。

NO8栗原副将

(試合を振り返って)前半の風上の時にもっと風を利用して陣地を取れたと思います。アドバンテージの使い方もうまくなくて、結果的に完敗してしまいました。(タックルについて)慶應らしいタックルが見えたところもありましたが、途中で抜けてしまいました。ラインブレイクされた以上は徹底できていなかったのが事実です。止めきれませんでした。(オフェンス面について)Fwdで行って取れた場面もあったので、もっと自分たちの強みと弱みを認識してFwdで落ち着いてから行っても良かったと思います。(早慶明が揃って敗退することになったが)僕たちが強くならないと大学ラグビーが盛り上がらないと思います。新しく強いチームが出てきたのは良いことですが、それに負けてしまってはいけないですね。僕たちなりの伝統あるものを持って、徹底して勝っていかなければいけないと思います。早慶明が負けてしまったことは残念ですが、この現実を自覚して進んでいけたらと思います。(1年間を振り返って)新体制になって試し試しやってきました。それが実を結ぶ形があまりなくて、前回どっちが勝つか分からない試合を始めて勝って自分たちの形が見えてきたところで負けてしまいました。今日は冷静な判断力を養っていくという課題が出たと思うので、下の代にはしっかり引き継いで改善していってもらいたいです。田中野澤体制は来年も続くので、僕らの代で得られた反省を生かしてくれたらいいなと思います。(試合前に良い流れはあった)初めての勝ち、みたいなものだったのでみんな前を向いて勝とう、国立に行こうと話していました。結果が得られなかったのが残念です。(後輩へ向けて)焦らずにじっくりと自分たちのやるべきことを見つめながらやっていくことが大切だと思います。よく吟味しながら現状不満足の気持ちを持って前に進んでいってもらえたいです。

 

PR古田

(今日の試合の感想は)悔しい以外無いですね。特に感想とかは無いです。(天理大のスクラムについて)スクラムはこっち優位に組んでいたと思う。マイボールの時に相手が回してきてちょっと押されたとは思うが、それ以外はこっちのペースで組めたかなと。良かったと思っています。負けちゃ意味無いと思いますが。(タックルについて)外国人に一人目で低く行って、二人目で高く行った。その結果、一人目が外されて、二人目が強さで負けてビビって受けてしまった。それでゲインを切られて、悪い方向に流れが行っていたかなと。(後半風の影響は)敵陣に行けないのはすごく厳しかった。どうにか脱出する方法を練っておかなければならなかった。またペナルティをしてしまって、どうしても前に出切れなかったシーンが何回かあった。風下の時こそ、ノーミスでチャンスをものにしないといけなかった。(4年間を振り返って)僕はずっとスクラムばかりを考えて、その中で自分の持ち味をどう生かすかを追求していた。まだ納得いかないままで終わってしまうが、今までやってきたことは後悔していない。悔いはないです。(後輩に向けて)絶対日本一になってほしい。もっともっと努力して優勝してほしいです。

HO髙橋浩

(どんな意識をして試合に臨んだのか)相手のFwdがそんなに強くないとわかっていたので、そこをついていこうと意識していました。あとはBksの外国人選手をしっかりとめようと思っていました。(自身のプレーを振り返って)そんなに悪くはなかったです。でも負けてしまったので、それを考えると部員の代表として試合に出て行った身としてはふがいないな、という感じです。(慶大で最後となる試合を終えて)まだ実感が湧いていないです。まあこれから普通の大学生に戻っていくうちに、蹴球部にいたことがいかに自分を成長させてくれたかということに気付けるんじゃないかと思っています。(10年間慶應でラグビーをしたことについて、髙橋選手にとっての慶大ラグビーとは)僕のいわば青春時代全てをラグビーに費やしたので、僕の全てといっても過言ではないです。(蹴球部の後輩へのメッセージを)いろいろとあるとは思いますが、最後はやはり勝たないとどうしても悔いが残ってしまいます。自分がやってきたことは正しかった、と証明できるように、(引退までの)残りの時間、精一杯頑張ってほしいです。

LO藤本

(今の気持ちは)あまり整理できていないですけど、僕たちの代が終わってしまったということは凄く残念ですし、天理に負けたっていうことも凄く悔しいです。(試合を振り返って)前半は、僕たちがやろうとしてきたことができていて、後半もいけると思ったんですけど、後半の途中から向こうのCTBを押さえきれなくなってしまいました。そこが負けた原因だと思います。(どんな気持ちでこの試合に臨んだか)負けたら終わりだってことを考えて、来週もまだみんなとラグビーがしたいという思いでした。(天理大対策は)向こうの12番13番が良いプレーヤーなので、そこを抑えて、あとハーフ団にもしっかりプレッシャーをかけていこうと話していました。Fwdはモールとかどんどんいこうと、実際にモールでトライ取れましたし、そこは良かったと思います。(寒さや天候の影響)前日から、寒いということは分かっていたので、心構えていました。実際とても寒かったですが、気にはならなかったです。(4年間を振り返って)僕たちの代で日本一になろうということを最初からずっと言ってきて、結果は2回戦敗退で。凄く悔しいですし、4年間で一度も日本一を味わえなかったことに対しては後悔は残ります。でも、僕自身やってきたことには悔いはありませんし、確かだと思います。後輩たちにその思いを託したいです。(後輩に向けて)大学日本一をとることは難しいことだと、今試合に出ている後輩たちは分かっていると思うので、そのことを皆にいかに伝えていけるか、1年それを意識し続けていくことが大切だと思うので、それを後輩たちに伝えたいと思います。

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