2ヶ月にわたって激戦が繰り広げられた2026春季リーグ戦も、いよいよクライマックスの早慶戦を迎える。今季の早慶戦、図式はシンプルだ。慶大が勝ち点を取れば、慶大の優勝。勝ち点を取れなければ、現在2位の明大に2季連続のリーグ制覇を献上することとなる。慶大は今季、10試合を戦い8勝2敗。勝ち点4を挙げて首位を快走中だ。いっぽうのワセダは10試合で3勝6敗1分、苦しいシーズンを送っている。だが、早慶戦は下馬評のあてにならない舞台だ。この試合、慶大に課された唯一にして最大の使命は、宿敵ワセダよりも先に2勝を挙げること。まさに「All or Nothing」、天下分け目の戦いが幕を明ける。
今季のワセダが苦戦している背景には、投手陣の不調がある。チーム防御率はリーグ4番目の4.75、慶大の2.35と比べると、1試合でおよそ2倍の失点を許していることがわかる。2年時に頭角を現した宮城誇南(スポ4・浦和学院)は今季防御率7点台と苦しみ、越井颯一郎(スポ4・木更津総合)や安田虎汰郎(スポ3・日大三)といった実績・経験ともに豊富な投手たちも打ち込まれるゲームが続いている。
そんな投手陣の中にあって今季躍進し、エースの座を手中に収めつつあるのが髙橋煌稀(スポ3・仙台育英)だ。高い制球力を活かした速球と変化球のコンビネーションが持ち味で、安定感のある投球を続けている。とくに法大2回戦では9回を投げて10奪三振、140球の熱投でチームの勝利に貢献し、ワセダの新エース誕生を予感させた。早慶戦でも1戦目の先発が予想される髙橋煌をいかに打ち崩せるかが、慶大の試合運びに大きく影響することは間違いない。
2戦目の先発は、主将の香西一希(スポ4・九州国際大付)が務めるか。東大2回戦ではあわやノーヒットノーランの快投も、明大戦では2試合で7失点、2戦連続で敗戦投手となる苦い経験を味わった。主将として、早慶戦には強い気持ちで臨んでくるはずだ。新戦力では齋藤士龍(文3・早稲田実業)と佐宗翼(スポ2・星陵)の活躍が目立つ。齋藤は今季がリーグ戦初出場、法大2回戦では4回途中からマウンドに上がると、4回1/3を投げて2失点と好リリーフを演じた。長身から投げ込む速球を持ち味とする右腕だ。佐宗は今季奪った22個のアウトのうち12個が三振と、支配力の高い左腕だ。救援登板が予想される両投手の出来が、試合中盤から後半の展開を左右するだろう。

ワセダ主将・香西
投手陣と比較して、打者陣に目を向けてみよう。こちらもチーム打率が.248でリーグ5位、1試合あたりの得点数も3.3点でリーグ5位と、打撃にも強みを作れていないのが現状だ。そんなワセダ打線だが、慶大にとって警戒すべき打者は誰か。まず挙げておきたいのが德丸快晴(スポ2・大阪桐蔭)だ。5番に座る德丸はリーグトップの打率.389をマーク。明大1回戦では先制のソロ本塁打を放つなど、チームの中軸打者へと成長しつつある。上位打線を抑え、德丸の前に走者を溜めないことが勝利への近道となるはずだ。
德丸とともにクリーンアップを務めるのが、ラストイヤーにしてレギュラーの座を掴んだ岡西佑弥(スポ4・智辯和歌山)と3年時から中軸を担う寺尾拳聖(人4・佐久長聖)。そして下位打線で起用されている尾形樹人(スポ3・仙台育英)にも注目しておきたい。尾形はチーム2位の打率を誇るとともに、その強肩も持ち味。髙橋煌との「仙台育英バッテリー」は少なからざる脅威となる。
ワセダに相対する慶大は今季、投打ともにリーグトップクラスの成績を残してきた。チーム防御率2.35、チーム打率.302はともにリーグ1位だ。今季の投手陣は渡辺和大(商4・高松商業)なしには語れないだろう。法大戦では1回戦と3回戦に先発し、法大からの勝ち点獲得に大きく貢献。40回2/3を投げて防御率1.11と、その投球は大エースの域に達しつつある。1回戦で予想される髙橋との投げ合いは、最優秀防御率のタイトルを懸けたものになる。今季、最多勝のタイトルを手中に収めた渡辺和。早慶戦では最優秀防御率・最多奪三振との「投手三冠」に向けて、勝負のマウンドに上がる。

慶大のエース・渡辺和
2戦目の先発には広池浩成(経4・慶應)が起用されるか。先発に転向し臨んだ今季は15イニングを投げて防御率1.50と、着実に結果を残している。とくに速球の出力は一級品だ。高校時代から続く沖村要(商4・慶應)との投手リレーで、ゲームの流れを作りたい。

第2戦の先発が予想される広池
リリーフで注目したいのは熊ノ郷翔斗(環2・桐蔭学園)だ。法大2回戦では1点差に迫られた9回2死、一打逆転のピンチでの登板だったが、後続をしっかりと打ち取った。ストレートの最速が150キロを超える剛腕、熊ノ郷。早慶戦の舞台でも、痺れる場面でマウンドに上がる彼の姿が見られそうだ。

法大3回戦で粘りの投球を見せた熊ノ郷
今季の慶大野手陣はリーグ随一の選球眼と長打力を両立させ、さらに三振数もリーグ最小を記録。破壊力と嫌らしさを兼ね備えた、まさにスキのない打線を形成している。3割打者は打率の高い順に林純司(環3・報徳学園)、小原大和(環4・花巻東)、中塚遥翔(環3・智辯和歌山)、一宮知樹(経2・八千代松陰)の4人を揃えており、どこからでも点の取れる打線だ。
そんな慶大野手陣の注目選手として、彼らに繋ぐ上位打線を担っている丸田湊斗(法3・慶應)と主将・今津慶介(総4・旭川東)を挙げる。丸田は今季からレギュラーに定着、武器はリーグ屈指の走力と走塁意識の高さだ。塁をかき回す丸田の走塁が、慶大にさらなる得点のチャンスをもたらすはずだ。今津は昨季のスランプを脱し、三番打者としてチームを牽引。コンバートされた二塁守備でも高い安定感を誇っている。打線の軸として、チームの精神的支柱として、今津の存在は欠かせない。

1番・丸田の出塁がカギを握る

主将の打撃で打線に火をつけたい
慶大が勝ち点を取れば、2021年以来5年ぶりの春季リーグ制覇、全日本大学野球選手権大会への出場権を獲得する。ワセダは何度も慶大の優勝を阻み、そして慶大もワセダの優勝を幾度も阻んできた。今季のワセダは4位以下が確定している状態、失うもののないチームの強さは説明するまでもないだろう。ここまで勝ち点を順調に獲得してきた慶大は、ワセダ相手にどんな戦いを見せるのか。そして、打倒ワセダを完遂することができるのか。「チーム今津」の真骨頂が問われる一戦が、いよいよ始まる。
(記事:鈴木拓己)


