今年もこの季節がやってきた。4月9日、東京六大学野球春季リーグ戦が開幕する。昨年の慶大は春秋ともに最終週の早慶戦まで優勝の可能性を残しながらも、早大に連敗して3位と辛酸をなめた。今年の慶大野球部はスター選手団が卒部し、ベンチ入りメンバーの顔ぶれが大きく変わる。リーグ戦経験の豊富な選手は減るが、投手陣は制球を磨き、打撃陣も冬の間に1日1000スイングをこなすなどの練習を積み重ね、力を付けている。開幕まであと少しと忙しい時期だが、野球部に協力していただき、練習の合間をぬって7組の方にお話を伺った。
開幕直前特集第1弾は重田清一主将(環4)。試合でも試合以外でも常に先陣を切って部員を率いる頼もしい主将だ。前回のインタビューから5か月。冬の練習、アメリカ遠征を経てリーグ戦を間近に控えた今、ご自身の心境の変化、チームの変化、そしてリーグ戦への想い等々を語っていただいた。
――主将になって5か月経ちますが、立場には慣れましたか
そうですね。だいぶ慣れてきましたけど、まだまだかなと思います。
――意識の変化はありましたか
3年までは、頑張って何とか自分がレギュラー取って試合に出て、チームに貢献したいという気持ちが一番でした。でも今は色々な意味で、自分がどんな結果であろうとチームが勝てばそれで良いかなと思うようになりました。
――今のチームのカラーは
難しいですね。これから試合をやっていくうえで、周りの評価で決まるものだと思います。
――主将としてのこだわりはありますか
戦う姿勢を見せることです。いつもどんな時も諦めないということです。
――それは部員には伝わっていると感じますか
難しいですけど、徐々に伝わっていけば良いです。
――主将ならではの苦労はありますか
本当は皆と仲良く、楽しくやりたいんですけど、それだけではチームは勝てないので、時には厳しいことを言って突き放さなければない時があります。そんな時に自分の本心を上手く感じ取ってもらうのが一番難しいです。
――主将は外野手、副将は捕手と内野手とポジションが分かれていますね
練習の時は各ポジションを引っ張っていってくれますし、副将だけじゃなくて4年生が中心になって全てのポジションを引っ張っていってくれているので、そこはありがたいところです。
――副将に任せている部分は
僕自身は方向性を示して、先頭を突っ走っていくと思うので、あとは他の部員との関わり方というか、僕との間を取り持ってくれているんだなと思います。
――アメリカ遠征はどうでしたか
僕にとっては初めての海外だったので、とにかく楽しかったです。今まで体験したことのない、行ったことのない世界に行くことで考え方も変わりますし、大きな刺激になったと思います。それは野球以外のことでもそうで、バスから見える景色も日本とは全然違いますし、純粋にアメリカってこういう所なんだ、と思いました。野球をする環境も全然違いました。
――遠征中、特に心がけていたことは
遠征中やることは部員みな同じなんですけど、なるべくたくさんのことを吸収しようと。色々なことをやったんですが、それに対してどれだけ意味を見いだせるかは自分次第だと思うので、それをどんどん吸収しようということと、あとはチームが良い方向に向かうように、ということを意識していました。
――帰国後の変化は感じますか
目に見えるかどうかは別ですけど、僕自身の人としての考え方が変わるとか、人間としての深みが出たんじゃないかと思います。
―― 一番刺激的だった部分は
メジャーリーガーと話せたことです。そこは、純粋に野球少年として心躍りました。
――OP戦を通して投手陣の成長が著しいです
本当に頑張ってくれていると思います。野球はピッチャーなので、ピッチャーが試合を作ってくれると流れも良くなりますし、そういう意味ではピッチャー陣がよく頑張ってくれていると思います。
――アメリカ遠征で成長したのでしょうか
アメリカではものすごく合理的に、科学的に検証してもらいました。それをどう生かすかは自分たちで考えなきゃいけないと思います。それから林助監督が新しく就任されてからピッチャー陣の意識は見るからに変わったと思いますし、選手では加藤拓也(政4)が中心にまとめてくれているのが大きいんじゃないかと思います。
――それは社会人対抗戦でも出ていましたね
そうですね。エースの加藤拓は投げていないんですけど、その中であれだけしっかり各個人が投げてくれたので、そこはピッチャー陣がしっかりまとまってくれているからだと思います。
――打撃陣も頼もしいと感じます
打撃は打てる時と打てないと時がバラバラですね。うちはそんなに打てるチームじゃないと思っていますし、奢らずしっかりと一点一点取っていきたいです。
――今年イチオシの選手は
皆イチオシなんですけど、ピッチャー陣ですかね。加藤拓はもちろんですけど、小原大樹(環4)や清水洋二郎(法3)あたりが頑張ってくれると思うので、そこは期待したいです。野手では、4年は意地を出すと思うので、3年の倉田直幸(法3)とか岩見雅紀(総3)とか照屋塁(環3)とかそのあたりが頑張ってくれたらと思います。
――1年にも楽しみな選手が多く入ってきました
そうですね。でも、1年生は失敗したら上級生、特に4年がカバーするのでのびのびとやってくれという感じです。
――チームへの刺激にはなっていますか
僕自身も今調子が悪いので、うかうかしていたら1年生に取られてしまうと思って頑張っています。
――もうすぐリーグ戦が開幕します。他大の情報は入っていますか
入っているというか、しっかりとっています。
――特に警戒しているチームや選手は
皆です。それはどのチームも一緒です。僕は全勝するかもしれないし、逆に全敗するかもとも思っていて、紙一重のところでやっていると思うので、油断せずに準備出来る部分はしっかりやっていきたいです。
――リーグ戦で楽しみなことは
こういうのは言ってしまうと実現しないので言ってはだめとよく言われるんですけど、僕はパレードをする夢をよく見るので、それを実現して4年生皆で喜び合ってパレードをしたいですね。たまらないと思います。それをやっちゃいたいです。
――学校も始まり忙しくなりますが、不安はありますか
不安は無いです。幸い単位も取れているので、そんなに心配はしなくても良いかなと。
――今年のスローガン( ~everything is practice~ )について
全ては練習のなかにあるということで、練習でやってきたことが試合に出るので、いかに練習で隙を無くせるかというところだと思います。「練習は不可能を可能にする」にも通じると思います。
――どなたがお決めになりましたか
監督です。
――慶大野球部らしさとは何でしょうか
のびのびやれるところじゃないですかね。もちろん勝つためにやっているんですけど、監督だけに縛られずに選手たちで自主的にやるところが、一番他大とは違うんじゃないですかね。それを良い方向に持って行くのが僕たちの仕事だと思います。慶應の良さを出して勝利に結び付けたいです。
――では、リーグ戦での個人の目標をお願いします
優勝です。
勝負所での一発ですね。守備も勝負所でしっかり守って、そういう一瞬一瞬でしっかり集中力をもってやることですかね。
――ファンの皆さんに一言お願いします。
慶應らしく見ていて楽しい野球をやり、その上でしっかり優勝するので、応援よろしくお願いします。
――お忙しい中ありがとうございました。
取材:木下 恵、下川 薫、 写真:江島 健生