開幕直前特集第4弾は学生コーチ。決して目立ちはしないが、慶大野球部を陰で支え、的確なサポートで優勝への道を作っている。その仕事内容は、練習の補佐から選手へのアドバイスまでと多岐にわたる。今回お話を伺ったのは、一・三塁コーチを務める上野諒介(法4)と吉川智一(経4)の仲良しコンビ。名脇役の集大成として、ラストシーズンへの意気込みを語ってもらった。
――学生コーチとして普段はどのような仕事をしていますか
上野諒介(以下上野):選手のサポートがメインの仕事です。学生コーチは何人かいますが、僕はAチームをメインに見させてもらっています。プレーをしない人間として、客観的にチームを見れる立場で選手に直接アドバイスをしたり、ミーティングを開いたりもします。
――そういった仕事の中でチームに貢献できているなと思う瞬間は
上野:本当に貢献できているかは選手に聞かないと分かりません(笑)
吉川智一(以下吉川):でも、試合に勝ってくれたときはもちろん、僕たちが見ている選手が結果を出してくれたりする瞬間に、貢献というか、やりがいを感じます。
――学生コーチながらの苦労とは
吉川:我々はAチームにいたわけではないので、プレーに関することを選手にいうときはとても気を使います。自分たちより絶対に野球が上手いので口出ししにくい部分はありますね。
上野:たしかに言うのは簡単だけど実際にできるのかというのは全然違うので、そこのもどかしさはありますね。
――学生コーチになろうと思った理由は
上野:キッカケは大久保監督に誘われたことです。自分はコーチになった方がチームの中での存在意義を見出せるかな、と思ったからです。
吉川:自分も上野と同じような感じで、コーチになった方がチームに貢献できるかなと思いました。
――とても仲の良さそうな2人ですが、お互いのことはどう思っていますか
上野:一言で言ってしまえば、いなくてはならない存在です(照れ笑)本当に吉川がいなかったら、もう無理です(笑)こいつがいなかったら、もう投げ出してると思うくらいには信頼してます。1年のときからずっと仲良いので、チーム内では一番厚い信頼関係だと思ってます(笑)
吉川:上野とは同じような立場なのに、申し訳ないくらい全部やってもらってる気がします。僕は上野をサポートしてれば、チームはうまくいくと思ってます(笑)
上野:そんな何も頑張ってないよ(照れ笑)
吉川:でも、メンバーと同じくらいチームに必要不可欠な存在だと思います。
上野:僕たち全然違ったタイミングでコーチに転向したんですけど、たぶんどっちかが選手でどっちかがコーチっていう関係だったとしても、今みたいにチームのことやこれからのことをこうやって話してたと思いますよ。
吉川:今ほど一緒にいることはないかもしれないけど、それは絶対そうだと思いますね。
—最終学年のお2人が4年間を通して一番印象に残っているシーンは
上野:いま思い出すんで待ってくださいね(笑)
吉川:なんだろう、難しいですね。
上野:うーん。春の1−0で勝った明大3回戦ですかね。あの喜びをもう1回味わいたいです。
吉川:個人的な話になってしまいますが、去年の僕がまだ選手だったときに僕は愛知県出身だったので、名古屋のオール早慶戦に連れて行ってもらったんです。1打席だけ試合に出て、早稲田の竹内投手と対戦したんですけど、そのときにすごく自分の力のなさを痛感したのがすごく悔しくて僕は印象的でした。
――チームのことについて伺います。お2人から見たいまのチームの状況は
上野:スコアだけ見ると、勝ち試合も多いですし、安打も多く出ているのでいい感じだと思われるかもしれませんが、実はまだまだやらなきゃいけないことはあるな、と思います。でも、ちょっとずつチームでやろうとしていることができてきているな、とも思います。いままで積み重ねてきたものがちょっとずつ形になってきたな、というか。
吉川:その通りで、やりたいことがちょっとずつできてきているなと思います。いい方向には向かっているんじゃないかと。
上野:けれど、まだ課題はたくさん残ってます。
――春季リーグを終えて、チームの変わったことは
上野:完全にそうとも言い切れないですけど、春に優勝を逃して4位に落ちた経験をして、実力のなさというか、他のチームに劣っているなという自覚を持ってチームを再スタートできたんじゃないかなと思います。そこはいままでとは違うと思います。
吉川:そうですね。いまのチームに足りていないところをもっと考えて埋めていこうという意識はみんな持ち始めたと思います。
――学生コーチとして春季を終えて気付いたことは
吉川:コーチャーとして春ベンチに入る前までは、選手はもっと頑張れるし、もっと打てるだろうと思ってたんですけど、他のチームよりもうちは劣っているんだなというのは実感しました。一緒に試合に出たからこそ、すごく感じました。
上野:そうですね。例えば、外から見てる明大の柳投手はちょっと打てそうかな、とも思ってたんですけど、コーチャーとして真横で柳投手を見たときに、やっぱり六大学のエースから打つというのは本当に難しいんだなと思いましたね。
――夏季オープン戦では、岡野新二投手(商1)や菊地恭志郎投手(政2)といった下級生が多く多く登板していましたが、どんなピッチャーですか
吉川:菊地は自分からジムに通っていて、自分の足りないところを客観的に見つけて補えるような選手だと思います。色々工夫して良くなろうと試みていた成果が今出ているのかな、と思います。
上野:岡野は、自分のやるべきことを冷静に見えている選手だと思います。
――春は出場機会のなかった選手が多くオープン戦では起用されています
上野:岡野、菊地はもちろん、外野手の河合(河合大樹・総2)や天野(天野康大・環3)などの選手らが頑張ってくれているからこそ、チームの理想に近付けているのかなと思います。秋のキーパーソンであるのは間違いないです。
――春はメンバーも打順もほとんど変化ありませんでした
上野:そこは今監督さんが変えようとしています。いい意味で選手たちを競争させることで向上心を養えているんだな、と。
吉川:そうですね。春いなかったメンバーが頑張ることでチームを奮い立たせていると思います。
――オープン戦では捕手争いも目立ちましたが
上野:調子の良し悪しはあると思うんですけど、秋は誰かを固定するのではなく、その時その時で一番状態のいい選手を起用していくと思います。それで、今は郡司(郡司裕也・環1)が調子いいので多く使われているんだと思います。
吉川:まあ、こうやって色々な選手がチャンスをつかめるようになったこともチームとしてはいい方向に進んでるんではないかと思ってます。こういった部分も春とは違うところだと思います。
――秋の初戦は東大ですが、東大との対戦をどう思っていますか
上野:特別な対策とかはしてないです。
吉川:別に東大だとかいう意識はせずに、初戦必ず先勝しようというか、誰が相手だろうとしっかり勝ち抜こうというふうに考えています。
上野:慶大というチームは、6位にもなるし1位にもなれる、自分たち次第のチームだと思っているのでどこと対戦するかではなく、初戦をちゃんと力入れて戦っていこうと思ってます。
――秋リーグに期待している注目選手は
上野:河合には頑張ってもらいたいです。あと、僕は個人的に重田(重田清一・環4)にも期待してます。2人とも外野手でライバルにあたるけど、やっぱり、主将として最後重田が試合に出て活躍して、というのがチームにとって一番いいんじゃないかな、と。
吉川:僕は基本的には同期みんなに期待はしているんですけど、この秋は、岩見(岩見雅紀・総3)がやってくれるはずです。岩見が打ってチームを盛り上げてくれると期待してます。
――これから始まる秋季リーグに向けて一言お願いします
上野:一言、優勝あるのみ!
吉川:勝って笑顔で終わりたいなと思ってずっとやっているので、優勝してみせます!!
――お忙しい中ありがとうございました!
取材:若林 晃平・千綿 加華、写真:村上 慶太