10/28(土)11:30K.O. 関東大学対抗戦vs明治大学
@秩父宮ラグビー場
ついにこの瞬間が訪れた。10月28日、関東大学対抗戦第4戦が行われ、開幕から3連勝中の慶大は、同じく無敗の明大と激突した。重量級FWを擁する明大に対し、試合を通して慶大は真っ向からぶつかった。前半は先制点こそ奪われたものの、魂のタックルで明治の攻撃をシャットアウト。オフェンスではFB丹治辰碩(政3・慶應)の突破などを起点に3トライを決め、21-7で試合をリードして折り返す。後半は明大の猛攻に遭い、一旦は同点に追いつかれたが、LO辻雄康(文3・慶應)のトライで再び突き放す。40分にトライを許したが、最後はゴールの差で凌ぎ切った。明大から実に4年ぶりの対抗戦勝利を果たし、連勝を4に伸ばした。次戦は11月5日(日)、慶大は無敗の王者・帝京大を相手に迎える。
得点 | ||||
慶大 | 明大 | |||
前半 | 後半 | 前半 | 後半 | |
3 | 1 | T | 1 | 3 |
3 | 1 | G | 1 | 2 |
0 | 0 | PG | 0 | 0 |
0 | 0 | DG | 0 | 0 |
21 | 7 | 小計 | 7 | 19 |
28 | 合計 | 26 |
T=辻、江嵜、宮本
G=古田3
ポジション | 先発メンバー | 交代選手 |
1.PR | 渡邊悠貴(経3・慶應) | →後半24分 安田裕貴(政2・慶應) |
2.HO | 細田隼都(商4・慶應) | |
3.PR | 大山祥平(経1・慶應) | |
4.LO | 辻雄康(文3・慶應) | |
5.LO | 佐藤大樹(総4・桐蔭学園) | |
6.FL | 中村京介(文4・明和) | →後半21分 川合秀和(総2・國學院久我山) |
7.FL | 永松千加良(法4・慶應) | |
8.No.8 | 松村凜太郎(商4・慶應) | →後半21分 山中侃(商3・慶應) |
9.SH | 江嵜真悟(商3・小倉) | →後半39分 小宮山大地(政4・慶應) |
10.SO | 古田京(医3・慶應) | |
11.WTB | 宮本瑛介(経3・慶應) | →後半30分 宮本恭右(環1・慶應) |
12.CTB | 堀越貴晴(総4・茗渓学園) | |
13.CTB | 栗原由太(環2・桐蔭学園) | →後半15分 豊田康平(総3・國學院久我山) |
14.WTB | 金澤徹(商4・慶應) | |
15.FB | 丹治辰碩(政3・慶應) |
10月28日、秩父宮ラグビー場。今年も黒黄と紫紺がそれぞれのプライドを懸け、しのぎを削った。対抗戦では2013年以来、明大から勝ち星が無い慶大。昨季は前半を22点リードしながら、それを覆される屈辱を味わった。昨季の経験者が多く残る今回の対戦は、雪辱を果たすべく必勝を期してこの一戦に臨んだ。
試合は明大のキックオフで幕を開けた。先制点を奪ったのは明大だった。スクラムで押され、ディフェンスが対応できず中央にトライされる。待望の初得点が出たのは30分。LO佐藤大樹(総4・桐蔭学園)とLO辻がゲインを切ると、中央ゴールライン付近まで侵入。そこから右サイドに展開し、WTB金澤徹(商4・慶應)がゴール寸前まであとわずかに迫ったところで、明大のタックルが炸裂。寸前で阻まれたかに見えたが、このタックルがハイタックルと判定され、ペナルティートライで同点とした。この得点を皮切りに慶大は得点を重ねる。
32分、FB丹治が相手を引き付け、WTB宮本瑛介(経3・慶應)がフリーになったところでパスを出すと、そのまま独走でトライ。SO古田京(医3・慶應)が難しい角度のキックを成功させ、7点を追加した。更に9分後。またも丹治がトライをお膳立てする。丹治のロングキックにSH江嵜真悟(商3・小倉)が素早く反応。「ボールしか見ていなかった」(江嵜)と無心でボールを追った江嵜が、相手のディフェンスに先駆けて楕円球を掴むと、最後は身をくるりと翻してインゴールに飛び込んだ。この技ありのトライで、更に慶大が点差を突き放す。先制点以降、明大に付け入る隙を与えなかった慶大が、21-7とリードを保って前半を終えた。
だが、そう簡単に引き下がってくれないのが明大。タテ一辺倒の近場勝負だった前半と打って変わって、後半ヨコの展開を織り交ぜてくると、一気に明大のアタックが活発になる。怒涛の攻勢をなんとか凌ぎきりたい慶大だったが、後半14分、ディフェンスのギャップを抜けられ後半最初の得点を許すと、18分には左サイドへの展開から枚数が不足したところを、最後は明大・FB髙橋汰地がパスダミーで自ら突破してトライ。前半のアドバンテージを早くも使い果たしてしまう。
後半ここまで防戦一方だった慶大は、相手のミスから反撃の機会を得る。相手のペナルティーからクイックスタートを選択。FL川合秀和(総2・國學院久我山)の突破は明大に対応されすぐさま止められてしまうが、そこから辻にボールを供給すると、辻が相手タックラーをはねのけトライ。再びリードを奪ったが、それでも依然明大の勢いを止められない。残り11分、7点差を守りきれるか。もう失点を許すまいと必死のディフェンスを見せた慶大だったが、後半40分の土壇場に痛恨のトライを中央で奪われてしまう。これで誰もが同点と思った場面。明大のキッカー、SO松尾将太郎には相当のプレッシャーがかかっていたのだろう。慶大にとっては勝利が近づく、明大にとっては余りにも痛い、ゴール失敗。試合終了まで明大の猛攻は続いたが、最後は慶大がボールを奪い、タッチキックでノーサイド。両者一歩も譲らぬ熱戦の末、勝利の女神は慶大に微笑んだ。28-26。実に4年ぶりに対抗戦で明大を下した。激闘を終え、溢れんばかりの笑顔を見せた選手たちの目は、涙を湛えていた。
最後は相手のミスに助けられた形にはなったが、文句のつけようのない勝利だった。勝因は試合の随所でチームの志向する「慶應らしさ」が発揮されたことだろう。後半こそ厳しい戦いになったが、前半途中から終了にかけて無得点に抑えた慶大の”魂のタックル”は圧巻だった。また、前試合からHO出場の細田隼都(商4・慶應)がスローワーを務めたラインアウトが、終始抜群の安定感を誇っていたことも、流れを引き寄せる大きな原動力になった。
しばしの歓喜を味わった慶大。だが、その余韻に浸る時間は残されていない。次戦の相手は大学選手権8連覇中の王者、帝京大。「大学選手権で優勝することが自分たちの目標」(金沢篤HC)。その達成に向けて、決して避けては通れない強敵である。各ポジションにスタープレイヤーを配置する相手に、充実著しい慶大がどこまで迫れるか。「今日よりも良いラグビーを」。この勝利に飽くことなく、次は絶対王者の打倒を狙う。
(記事:田中壱規、江島健生 写真:江島健生、萬代理人)
◆関東大学対抗戦Aグループ 星取表 10/28現在◆ | |||||||||
| 帝京大 | 早稲田大 | 明治大 | 慶應義塾大 | 筑波大 | 青山学院大 | 日本体育大 | 成蹊大 | 勝敗 |
帝京大 | * | 40-21 | 11/18 14:00 | 11/5 14:00 | 11/26 11:30 | 89-5 | 70-3 | 70-0 | 4勝 |
早稲田大 | 21-40 | * | 12/3 14:00 | 11/23 14:00 | 33-10 | 94-24 | 54-20 | 11/5 11:30 | 3勝1敗 |
明治大 | 11/18 14:00 | 12/3 14:00 | * | 26-28 | 68-28 | 108-7 | 11/5 14:00 | 87-0 | 3勝1敗 |
慶應義塾大 | 11/5 14:00 | 11/23 14:00 | 28-26 | * | 43-26 | 12/3 14:00 | 49-22 | 61-7 | 4勝 |
筑波大 | 11/26 11:30 | 10-33 | 28-68 | 26-43 | * | 11/5 14:00 | 41-10 | 11/12 14:00 | 1勝3敗 |
青山学院大 | 5-89 | 24-94 | 7-108 | 12/3 14:00 | 11/5 14:00 | * | 11/18 11:30 | 26-19 | 1勝3敗 |
日本体育大 | 3-70 | 20-54 | 11/5 14:00 | 22-49 | 10-41 | 11/18 11:30 | * | 11/25 11:30 | 4敗 |
成蹊大 | 0-70 | 11/5 11:30 | 0-87 | 7-61 | 11/12 14:00 | 19-26 | 11/25 11:30 | 4敗 |
関東大学対抗戦Aグループ順位表(10月28日現在) | |||||||||
順位 | チーム | 試合 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失 | トライ |
1 | 帝京大 | 4 | 4 | 0 | 0 | 269 | 29 | 240 | 39 |
1 | 慶大 | 4 | 4 | 0 | 0 | 181 | 81 | 100 | 27 |
3 | 明大 | 4 | 3 | 0 | 1 | 289 | 63 | 226 | 42 |
3 | 早大 | 4 | 3 | 0 | 1 | 202 | 94 | 108 | 30 |
5 | 筑波大 | 4 | 1 | 0 | 3 | 105 | 154 | -49 | 16 |
5 | 青学大 | 4 | 1 | 0 | 3 | 62 | 310 | -248 | 10 |
7 | 日体大 | 4 | 0 | 0 | 4 | 55 | 214 | -159 | 6 |
7 | 成蹊大 | 4 | 0 | 0 | 4 | 26 | 244 | -218 | 4 |
1.勝ち数の多い大学を上位とし、勝ち数が同数の場合には、負け数の少ない大学を上位とする。 2.2校の勝敗分数が並んだ場合、当該校の対戦の勝利校を上位とする。引き分けの場合には、次の順序に従って決定する。 |
以下、コメント
金沢篤HC(共同記者会見より)
——今日の試合を振り返って
一つ自分たちのチャレンジとして、ポゼッションのところをいかに自分たちで持てるかを意識したゲームプランで臨んで、それを選手がよく体現してくれたと思います。最後ラッキーな形での勝利となりましたけど、そこにチャレンジしてくれた選手の勇気を、自分のチームですけど褒めたいと思います。
——ポゼッションをいかに持てるかにフォーカスしていたのはなぜですか
明治はみなさんもご存知の通りハンドリングのスキルが高いですし、今年に入って、アタッキングチームに変わったなと思います。それはHCが変わったこともあると思いますけど、彼らの土俵で自分たちが戦う時間帯をできるだけ少なくしたいということから、そのようにしました。
——ハーフタイムにはどのような指示を与えましたか
選手には、自分たちのやろうとしていることができていること、後半も同じようにやろうというのを伝えましたね。一つだけ、今日のフォーカスで脚にタックルしてバインドを離さないということがあって、先ほどのブレイクダウンの話にも関わりますが、相手を倒さないと、高く(タックルに)いくとゲインされるケースがあったので、そこのところにフォーカスして選手には伝えました。ハーフタイムには自分の方からはできるだけ一つか二つのスキルにフォーカスして、選手を送り出すことを意識していました。
——前半、丹治(辰碩=政3・慶應)選手のランからトライに繋がったシーンが2個ほどあったと思いますが、彼への評価は
アタックの能力に関しては、慶應には珍しく、一人で戦局を打開できる能力を持った選手ですので、良い形にボールを持たせれば、彼だったらチャンスを広げることはできるのかなと思いますし、そういうところで彼は力を持っているな、と再度確認したという感じでしょうか。良いアタックの能力を発揮したなと思います。
——今回4年ぶりの勝利で、この時点での4連勝は久しぶりですが、後半戦の態度やこれからどういった取り組みをしていくのか、教えてください
当然全ての試合で勝利を求めていることは間違いないんですけれども、選手にも今回明治戦に向けて伝えていたことなんですが、やはり大学選手権で優勝することが自分たちの目標ですので、毎試合毎試合自分たちがやらなければならないこと、自分たちがチャレンジしていくことをしっかり整理して、それを実際にゲームでできたかを見ていくつもりです。一つのステップですし、今日がピークではないので、次の試合も大事ですし、一つずつ積み重ねながらステップを踏んでいきたいと思います。
LO佐藤大樹主将(総4・桐蔭学園)(共同記者会見より)
——今日の試合を振り返って
今日の試合では、金沢HCがおっしゃった通り(自分たちの)フォーカスに意識していました。今までの試合では、自分たちのフォーカスしてきたことができないことが多かったので、その試合に対したフォーカスを凄く意識して、試合に臨みました。結果、ラッキーで勝つことができたんですけど、フォーカスも達成することができて、自分たちなりにも満足していますし、次の試合への良いステップになったのではないかと思います。
——今日のブレイクダウンについて、ターンオーバーする場面が多かった要因は
慶應の選手がブレイクダウンでよく判断できたことと、継続するにつれて、明治の選手が疲れてきて、ブレイクダウンのところがルーズになってきたのが原因じゃないかと思います。
——個人的な話になってしまうのですが、古川(満=明大主将・桐蔭学園)くんとこの立場で対峙して、試合を過ごし終えたというどんな気持ちでしたか
高校時代両ロックで、普段から良く話したりする仲の良い友達だったんですけど、昔の仲間と同じ舞台に立って、同じような立場で試合できるというのはすごく嬉しいですし、またこの先もこのような関係が続いていくようにしたいと思いました。
——前半からディフェンスが良かったという印象なんですけど、最後2点リードという場面で、選手間でどういった話をして、ラストワンプレーに臨みましたか
元々キックが入る前提で話をしていて、次のプレーに集中しようと話をしたんですけど、たまたまラッキーで外れて。それでも結局自分たちのやることは変わらないので、次どういうプレーをするかという話を具体的にしていました。
——ディフェンスの手応えは
良かったとは思うんですけど、まだまだもっとできることはあると思います。
(以下、個別インタビューより)
——今日の試合に向けてどのような準備を
日体大戦のフォーカスは、バックラーの足にタックルすることと、二人目がしっかり向き合うことだったんですけど、今週もそれを継続しつつ、明治に対してはボールのポゼッションを相手に長めにとらせないで、自分たちが多く取ろうということをフォーカスしていました。
——試合を振り返って
ラッキーで勝てたんですけど、フォーカスしていたことを80分間全員が意識して実行できたことが一番良かったです。それが勝因です。
——対抗戦では明大に4年ぶりに勝利となりましたが
春も一応勝っていたんですけど、自分は出ていなくて。4年間で実際に僕が出た中で初勝利となって嬉しいです。
——スクラムでは、明大の強力なFWにも負けていませんでした
スクラムは3番が1年の選手(大山祥平=経1・慶應)ということで少し不安だったんですけど、自分たちの練習でやっていることを出せればそんなに負けることはないと思っていました。このような結果になって、自分たちのやろうとしていることができて良かったです。
——帝京大戦に向けて
一つ一つの試合に勝ってちゃんと成長して日本一に向けて、一歩ずつ進みたいと思います。
HO細田隼都(商4・慶應)
——明大に勝利して、今の気持ちを
勝ったことは素直に嬉しいです。しかしその次に帝京大、早大との対戦も控えていますし、大学選手権もあるのでそれに向けてステップアップしていきたいです。
——どのような戦略で今日の試合に臨んだか
FWとしてはスクラムがカギになると思っていたので、スクラムでどのくらい勝負できるかと、相手との接点であるコリジョンラインで負けないことを意識しました。
——スクラムが良かったことに関して
スクラムコーチから日々鍛えられているので、日々鍛えられたことを今日の試合で出せたと思います。
——ラインアウトでのプレーが安定していたことに関して
ラインアウトも含むセットプレーが武器だと思います。そこでしっかり自分たちがコントールできたのは良かったと思います。
——ご自身のプレーを振り返って
前半のディフェンスで結構前に出ることができていましたが、後半は疲れた時にあまりタックルがよくなく、ボールキャリーで前進することができなかったです。次は80分通していいプレーできるようにしたいです。
——帝京大戦に向けて
今日の試合のように自分たちがフォーカスしている部分をしっかりできるようにしていきたいです。
SH江嵜真悟(商3・小倉)
——どのような気持ちで今日の試合に臨みましたか
去年が接戦で負けてしまったので、逆転負けで。今年こそは勝ちたいという思いで頑張りました。
——そこはやっぱり意識されていたか
一番意識しましたね。
——後半点差的には勝っていたが、明大に攻め込まれる場面は多くありました。その時間帯で去年の試合の記憶が浮かんだりはしませんでしたか
少しは思ったんですけど、でもやっぱり今年は今年なので。今年のチームでやってきたことを出そうと思って、そこを一番意識しましたね。
——勝てた最大の要因は
今日はみんなの勝ちたいという思いが多分これまでで一番強かったので、それがまとまっていて、前半からずっと体を張り続けたことが良かったと思います。
——今日の試合チームとして決めていたことは
ディフェンスですね。1人目のタックルを絶対に外されないということを意識してやっていました。
——その部分はチームとしてどれくらい達成できたか
良かった時間帯と悪かった時間帯があったんですけど、それがダメな時は点数を取られて、良かった時は粘れるっていう試合だったので、そこは修正が必要かなと思います。
——今日の結果をどのように受け止めているか
接戦を落としてしまうのが今までの慶應だったので、最後のゴールの差ですけど、接戦で勝てたことは大きかったと思います。
——トライの場面を振り返って
あれはボールしか見てなかったので、あまり覚えていないのですが、トライ取れて良かったです。
——試合中どういう風に試合を組み立てていったか、指示を出したか
ディフェンスに関しては、明治の縦のアタックに対して寄りすぎないことを意識して、後ろから声を出して、アタックに関しては相手にボールを簡単に渡さないことを意識してやっていたので、それがよかったと思います。
——次戦に向けて一言
帝京がチャンピオンなので、自分たちはチャレンジャーという気持ちで、これまでやってきたことをぶつけるつもりで頑張りたいと思います。