【野球】オレンジ旋風に待ったをかけろ 法大戦展望

第4週、慶大が3戦目として戦うのは法大だ。これまでスタートダッシュに失敗して早々に優勝争いから離脱してきた法大だが、今季は2カードを終えて4勝1敗勝ち点2。慶大と同率で首位に立っている。勝った方が優勝争いで大きくリードすることになる大事なカード。今季の法大の好調の要因を探るとともに、慶大がいかに戦うべきかを考察した。

1.法大はなぜ今季は好調なのか

高校時代に名を馳せた逸材を大量に獲得しながら、なかなか勝利を掴むことが出来ず11季連続でV逸してきた法大。

昨季の戦力分析で、法大が優勝できない理由は投手陣にあるとした。昨季の数字を見てもチーム防御率が3.34でリーグ5位。エース菅野秀哉(キャ4・小高工)がリーグ8位の防御率3.89で1勝に終わると、2戦目先発に台頭した高田孝一(法2・平塚学園)もリーグ6位の防御率3.45で2勝。両投手ともQS(6イニング以上投げて3失点以下)を3回ずつ記録して試合は作っていたが、HQS(7イニング以上投げて2失点以下)が計3回と、投手力の高い他大学と比べると物足りない数字だったかもしれない。実はQS、HQSともに慶大は同じ回数。それでもチーム防御率に大きな差があることを考えると、中継ぎを含めた投手力の層の差が表れているともいえるだろう。また、被本塁打が慶大は4に対して法大は8。一発で一挙に点数を取られて形成を変えられることが少なかったことも大きいと考えられる。

大学

QS

HQS

慶大

6(髙橋亮3、菊地2、津留﨑)

3(髙橋亮2、津留﨑1)

立大

7(田中誠6、川端健1)

6(田中誠5、川端健1)

明大

9(森下暢6、伊勢3)

4(森下暢2、伊勢2)

早大

8(小島7、徳山1)

7(小島6、徳山)

法大

6(菅野3、髙田3)

3(菅野1、髙田2)

東大

1(小林1)

1(小林1)

中継ぎで頭角を現した石川

さて、今季の法大投手陣を見てみると6試合を戦ってQSは4試合、HQSは3試合で達成している。三浦銀二(キャ1・福岡大大濠)がここまで第1戦、第3戦に先発しQSとHQSを3回、開幕戦で法早1回戦を1失点完投を挙げるなどリーグ4位の防御率1.61を記録し、大車輪の活躍で投手陣を支えている。2回戦で先発する髙田もリーグ5位の防御率2.25と春季以上の好調ぶり。先発の失点が1、4、2、2、2、0と大崩れしないことが勝利につながっているのだろう。被本塁打も2カードを終えて2本と課題も修正済みのようだ。

中継ぎ陣に目を向けると先発から抑えに菅野が回ったが、ここまで3登板で投げたのはわずか3回2/3。初登板の早大2回戦で3失点し防御率は悪く(7.36)起用法も最終イニングのみと不調に陥っていることが予想されるが、ロングリリーフとして最後まで残っているということは終盤の悩みの種になるだろう。本来抑えを任されていた朝山広憲(法3・作新学院)も接戦の終盤で3登板したが、2試合で失点するなど調子は上がっていないようだ。そんな中で左腕の石川達也(キャ2・横浜)が大活躍。主にセットアッパーとして起用され5登板。初戦の早大2回戦ではピンチで登板して痛打を浴びたが、その後は安定した投球を続け、中継ぎながら3勝を挙げている。先発の三浦が完投するか、三浦、髙田で試合を作り石川で締める形が法大の必勝パターンだ。

 

打者を見てみると、ここまでチーム打率はトップの.294。本塁打数も慶大に続く2位の4本と破壊力も兼ね備えている。個人に目を向けてみると主に2番を任されている小林満平(法4・中京大中京)がリーグ4位の打率.474で打線をけん引。6番の川口凌(人4・横浜)もリーグ8位の打率.391を記録している。1番の宇草孔基(営3・常総学院)と8番の相馬優人(営3・健大高崎)の3年コンビも3割を越える打率を残している。宇草は早大3回戦の延長11回に勝ち越しソロホームランを放つなど勝負強さと長打力にも警戒したい。一方で向山基生(営4・法政二)、中山翔太(人4・履正社)、中村浩人(営4・多良木)の4年クリーンナップトリオは打率3割を切っており、本来の調子からは離れているようだ。

法大打線で気になるのはここまでの6試合全てで”最終回に点を挙げていること”だ。そのうち1度は明大2回戦での代打吉岡郁哉(営4・智辯学園)のサヨナラ打、2度は勝ち越し打(早大3回戦、明大3回戦)、1度は同点打(明大1回戦)と終盤の勝負どころで得点を挙げている。

高い投手力で接戦に持ち込み、終盤に勝負強い打線が試合を決める。春季に慶大が繰り広げたような試合展開でここまで勝利を掴んできた。

 

2.両者の明大戦を振り返る

1年ながら主戦を任されている三浦

法大は第2週、慶大は第3週に明大と対戦し、それを退けて勝ち点を獲得してきた。両者の明大戦を振り返ることで戦力分析を再び行っていきたい。

法大は1回戦、序盤は明大の森下暢仁(政経3・大分商業)から塁にすら出れなかったが、中盤に連打を浴びせて先手を取る。しかし、7回に先発の三浦が少ないチャンスをものにされて同点に追いつかれると、8回に朝山が2死から3連打を浴びて勝ちこされる。土壇場の9回、宇草が同点の適時打を放ちなんとか引き分けに持ち込んだ。

2回戦は初回に先制を許すのの、中盤に逆転に成功。しかし、7回に髙田が追いつかれて再び同点に。2番手の石川が安定した投球で流れを作ると、9回に先頭から連打でチャンスを作り、代打の吉岡がレフト前に運んで、春と同じくサヨナラ勝ちを収めた。

3回戦は森下暢、三浦による投手戦。1回戦同様、序盤は森下暢の前に封じ込まれた法大だが、終盤は毎回をランナーを作り出していく。そして9回、1死二塁から不調の向山、中山が連打で2得点。8回から登板の2番手石川が9回も抑えて2つ目の勝ち点を獲得した。

この3戦とも最終盤の得点で試合を決めているが、一方で終盤に得点されている場面も見られる。3連戦全てで石川が登板しており、石川を捉えることが法大の攻略には必須だろう。

 

慶大の戦いを振り返ると、1回戦は今季初先発の髙橋佑樹(環3・川越東)が8回1失点で試合を作ると、6回に好調の中村健人(環3・中京大中京)の適時打で同点に追いつき、9回に嶋田翔(環2・樹徳)が値千金の勝ち越し本塁打。9回は髙橋亮吾(総3・慶應湘南藤沢)がランナーを背負いながらもリードを守って先勝した。

2回戦は先発の菊地恭志郎(政4・慶應志木)が制球に苦しみワンアウトも取れずにKOされると、スクランブル登板となった石井雄也(商3・慶應志木)もつかまり大量ビハインドを追うことになった。打線も森下暢から反撃の糸口をつかめなかったが、5回にエラーで初めて走者を出すと、連打と中村の3ランで一気に4点を返すことに成功した。しかしそれ以降は慶大のブルペン陣、森下暢が譲らなかった。結局5回の4得点に抑えられて森下暢に完投を許して1勝1敗のタイに持ち込まれた。

3回戦は1番に座った中村の適時打で先制するも、すぐに同点に追いつかれる。だが5回、マウンドに上がった森下暢を捉えて内田蓮(総4・三重)の適時二塁打で勝ちこすと、嶋田が打った瞬間それとわかる2号3ランを左翼席にたたき込んで試合を決めた。中1日で先発した髙橋佑も粘り強く投げて8回3失点で2勝目。2つ目の勝ち点を獲得した。

慶大は髙橋佑の好投が目立った3連戦だった。打線では好調の中村、嶋田に一発が飛び出して長打力アップの結果が表れた試合だったと言っていいだろう。

 

3.法大戦対策とは

投手では三浦、髙田の両先発の牙城をなんとか打ち崩すことだ。主に速球、スライダーを投げ分け、左打者に三浦はチェンジアップ、髙田はフォークを使うオーソドックスな本格派である2人の右腕。ストライク先行のテンポの良い投球で、ボールを低く集めて打者を打ち取っていくスタイルだ。石川もダイナミックなフォームから直球とスライダー、チェンジアップを投げ分けて打者を打ち取っている。

 

防御率

K/9

B/9

WHIP

被打率

被長打率

被出塁率

被OPS

三浦

1.61

8.04

1.29

0.82

.194

.276

.225

.501

髙田

2.25

6.19

1.69

1.19

.276

.345

.302

.647

石川

0.00

4.91

2.45

0.95

.208

.333

.269

.602

以上の表のように四死球が少なく、自滅しない投球が目立つ。長打も多く打たれているわけではなくつかみどころがない。

 

被打率

被長打率

被出塁率

被OPS

三浦

.237

.316

.256

.572

髙田

.320

.360

.370

.730

石川

.250

.333

.250

.583

上の表は対右打者のものだ。一般的に右投手は左打者より右打者が得意とされているが、三浦髙田の右投手はむしろ右打者の被打率が悪いという結果が表れた。好調の中村、嶋田がしっかり捉えられるか、復調の兆しが見える郡司も大事な一本が求められるだろう。左の石川は右打者をあまり苦にしていない印象がある。大きなモーションゆえに、少しでも粘って突破口を見つけたい。法大投手陣は四球が少ない傾向があり、チャンスをもらう場面は少ないだろう。明大2回戦のように一瞬のスキを突いた連打で一気に試合を決め、石川が登板しない展開が理想的だ。

 

打者を見ると好調な打者は宇草、小林、川口、相馬と左打者に偏っている。先発起用が濃厚な髙橋佑がどこまで投げられるかがカギになりそうだ。もちろん中軸に座る右打者を目覚めさせないことも法大打線攻略の大きなポイント。1番の宇草と2番の小林をしっかり抑えて落ち着いた状態でクリーンアップと相対したい。

法大打線のウィークポイントは粗さだ。1試合あたりの四球は2.5と5位、1試合当たりの三振数8.5はワースト1位と大味な結果が残っている。うまく変化球を使いボール球を振らせることができれば強力打線を抑えることも不可能ではない。

今週も中村の大爆発に期待がかかる

勝てば優勝が大きく近づく一戦。相手の勢いに飲み込まれることなく、自分たちの野球を貫いて勝ち点をつかみ取りたい。

(記事・尾崎崚登)

対戦成績(第3週終了時点)

 

慶大

立大

明大

早大

法大

東大

慶大

 

第6週

○2-1

●4-7

○7-4

第8週

第4週

6―4

10―4

立大

第6週

 

第7週

第5週

○○

明大

●○●

第7週

 

第6週

●●

第5週

早大

第8週

○●○

第6週

 

●○○

第4週

法大

第4週

第5週

○○

●○○

 

第7週

東大

●●

●●

第5週

第4週

第7週

 

 

 

順位表(第3週終了時点)

順位

大学

勝ち点

試合

勝率

慶大

0.800

法大

0.800

立大

0.600

早大

0.500

明大

0.200

東大

0.000



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