充実の1年目
ルーキーイヤーから試合に出続けるということは決して簡単なことではない。その中で、今季ここまで関東女子サッカーリーグと関東大学女子サッカーリーグ合わせて18試合中16試合に出場、そのうち6試合では先発フル出場というスタッツは申し分ないだろう。平田朋(環1・日ノ本学園)は第32回関東大学女子サッカーリーグ第5節の東洋大学戦でもスタメン起用されると、不慣れなボランチのポジションながら安定したプレーを見せ慶大の勝ち点1獲得に貢献。フル出場ながら終盤まで積極的なプレーを見せた。大学1年目ながら早くも慶大の主力選手になりつつあるということは間違いないだろう。
平田の強みとしてまず挙げられるのは、そのドリブル技術だ。仕掛けるドリブルはもちろん、運ぶドリブルや時間を作るドリブルなど、その技術の範囲は広い。本人も自身の強みとして挙げるこのドリブルは中学時代に身につけたものだという。中学時代、平田は滋賀県野洲市にあるサッカークラブ、YASU clubに所属。選手の個人能力を伸ばすことを目指しているこのクラブでひたすら「ドリブル、ドリブル」の日々を送った。こうした経験が今の平田のドリブルテクニックを育てたのだ。
1対1へのこだわり
本来は攻撃的な選手である平田だが、東洋大戦ではけが人の影響もあり守備的なポジションでの起用となった。しかしこれも平田の球際の強さが買われたが故だろう。1年生ながら大学のカテゴリーの中で決して劣らない球際の部分もまた彼女の特徴だ。中でも1対1は「自分が目の前に絶対に勝つということを意識しています」と本人も言うように、特別なこだわりを持っている。「チームプレイなんですけど個人で局面に勝っていかないと成り立たない」と話す平田は実際に試合中、1対1の場面で仕掛けることも多く、東洋大戦では体を張ったディフェンスでチームのピンチも防いだ。個人技で優れる選手が多い大学サッカーにおいて、この特徴は必要な要素だ。
そんな平田が試合に出続けている要因は、サッカーにおける技術面だけではない。いわゆるサッカーIQ、賢さの部分もまた伊藤洋平監督から評価されているところだ。高校時代、日ノ本学園高校では主にトップ下で攻撃のタクトを振っていた。しかし慶大に入ると左サイドにポジションを変更。もともと走るタイプではなかった平田は「正直やりにくさはあった」と言うように慣れない部分もあったが、持ち前の順応力と器用さ、そしてサッカーIQの高さでそれを克服した。今節も不慣れなボランチでの出場となったが、「チームに何が求められているかというのを凄く意識してポジションをとるように」と、初めてとは思えない安定したプレーでチームを中心から支える活躍を見せた。普段は、好きだというFCバルセロナの試合を個人的に見て選手の動きやプレーを参考にしているという平田。もともとの賢さに加え勉強熱心なところもまた彼女を成長させている理由だろう。
ピッチ外では先輩っ子な一面
しかしピッチ上で頼れる存在である反面、私生活では意外にも「抜けているところがある」という平田。大学生活では勉強との両立に苦慮することもあるという彼女だが、そんな時は周りの先輩たちがいつも助けてくれるという。これも“先輩っ子”である平田ならではのことだろう。寮生活で同部屋の松木里緒(環3・常盤木学園)をはじめ、先輩たちには「感謝している」と話す彼女は、ピッチ外でも周りの選手たちと良い関係を構築している。また、サッカー面でも先輩の助けは大きく、上手くいかずに落ち込んでいるときには相談に乗ってもらったり励ましてくれることもある。このようなエピソードもいつも自然体でいる平田ならではのものなのかもしれない。
目標、そしてその先
そんな彼女も慶大に入り、はや半年近くが経った。1年目のシーズンも終盤に差し掛かろうとしている今、目標は当然インカレ出場、そしてその先に見据えるのはインカレベスト4進出だ。今のチームで絶対にインカレベスト4の舞台に進みたいという彼女には、早くも慶大の看板を背負って立つ覚悟が芽生え始めている。これからは「学年関係なく引っ張って行けるように」、そしてゆくゆくは「絶対的な選手を目指していきたい」という平田。シーズンインから約半年の間だが、試合での経験といつもサポートをしてくれる周囲の環境もあり、選手としても人としても一回り成長した。最後に、「周りの人が慶應のサッカーを見たいなとか応援したいなってなるようなチームになっていけるように頑張っていきたい」と話した彼女は、慶大の新たなホープとして日々着実に成長している。大学リーグも残すところあと4試合。充実のシーズンを送っている慶大期待の星から今後も目が離せない。
(記事:岩見拓哉)
☆ギャラリー