第7週時点で優勝の可能性を残していた立大が明大に敗れたため、慶大は優勝を決めた。初戦こそノーヒットワンランと厳しいスタートを切ったものの、堀井監督がターニングポイントだったと語った翌日の法大2回戦で大勝。以降、一人ひとりが自分の役割を担って粘り強く戦い抜き、早慶戦を前にして目標の一つだった「リーグ戦優勝」を達成した。また、全日本選手権の切符を掴んだ慶大。もう一つの目標として掲げた「日本一」への挑戦権も手に入れた。だが、まだ目標は残されている。「ワセダに勝つ」。昨季あとアウト1つが奪えずに悔しい思いをさせられた早慶戦。屈辱を晴らさずして日本一への挑戦はできない。
今季の慶大はチーム打率 .258(リーグ3位)ながら、1試合平均6点以上を奪う強力な打線を誇っている。特筆すべきは四死球の多さだ。ここまでリーグトップの47四死球を選び、効率的に得点を重ねている。また、チーム本塁打数8本もリーグトップ。走者をため、長打で返すスタイルで大量点を奪ってきた。中でも本塁打3本、11打点を挙げている4番・正木智也(政4・慶應)の活躍は大きい。早慶戦では、いかに正木の前に塁を埋められるかが鍵となるだろう。また、勝負を避けられる傾向にある正木の後ろを打つ下山悠介(商3・慶應)が打撃好調。上位から中軸にかけて切れ目のない打線で早大投手陣を打ち崩したい。
さらに、今季は投手陣が安定感抜群。リーグトップの防御率 1.27を誇る森田晃介(商4・慶應)、4戦4勝と勢いに乗る増居翔太(総3・彦根東)と、両先発の活躍なしに今季の躍進は語れない。また、今季から守護神に定着した橋本達弥(環3・長田)も非常に良い投球を続けている。先発、抑えが計算できるだけに、その間をいかにつなぐかが勝敗を左右するだろう。生井惇己(総3・慶應)や渡部淳一(政3・慶應)といった面々がそれぞれの持ち場で存分に持ち味を発揮し、稲穂打線の勢いを削ぐことに期待したい。
今季のチームスローガンは「繋勝(けいしょう)」。切れ目のない打線、磐石の投手リレーといった、つながりを武器に昨季の雪辱を誓う。
対する早大は現在5位と、本来の発揮できていない。投打ともに精彩を欠き、フラストレーションの溜まる結果となっている。しかし、たとえ優勝の可能性がなくとも侮れないのが宿敵・ワセダだ。これまで幾度となく慶大の優勝を阻み、早慶戦で無類の強さを見せてきた早大。早慶戦通算成績は早大235勝、慶大 193勝、10の引き分け。早慶戦にリーグ戦成績は関係ない。
早大で最も警戒しなければならないのは、やはり蛭間拓哉(スポ3・浦和学院)。昨季は1回戦、2回戦ともに蛭間の本塁打によって試合を決められた。今季も7戦3発と恐ろしい長打力は健在。外角球を逆らわずに左翼席まで運ぶ打棒は圧巻であり、場面によっては勝負を避けるという選択も必要だろう。また、蛭間の前後も侮れない。リードオフマン・鈴木萌斗(スポ4・作新学院)は .355、5盗塁と好調。今季は長打も多く、出塁を許すと得点につながる可能性が高い。また、4番・岩本久重(スポ3・大阪桐蔭)も、打率こそ高くはないものの本塁打2本と要警戒。一振りで流れを変えられかねない。
投手陣では、1回戦は徳山壮磨(スポ4・大阪桐蔭)、2回戦は西垣雅矢(スポ4・報徳学園)が先発を務める。今季ここまで万全とは言えない2人だが、実力は十分。両投手ともに制球力を軸に勝負するタイプであり、本来の実力を発揮するとなれば、投手戦となることが予想される。早大も守護神・山下拓馬(法4・早大本庄)が安定感抜群なだけに、先発がいかに粘りを見せるかが重要なポイントとなるだろう。
順位こそ1位と5位で差があるものの、チーム編成は比較的似ている両チーム。正木、蛭間といった打のキーマンの前に走者をためること。制球力が軸となる両校先発投手が長いイニングを粘ること。そして橋本達、山下という絶対的守護神まで投手をつなぐこと。勝敗を左右するポイントは至ってシンプルだ。両校の意地とプライドがぶつかる伝統の一戦。全日本選手権を前に宿敵撃破で勢いに乗りたいところだ。
(記事:林 亮佑)