【野球】悲願の賜杯、3大会連続の神宮切符を掴み取れ! 早慶戦展望

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勝ち点制によるリーグ戦が昨季から再開され、春は5カード全てで勝ち点を取った明大が完全優勝を飾った。慶大は明大戦で優勝の可能性が消滅するも、早慶戦を連勝で乗り切り、2位で春季リーグ戦を終えた。今季の慶大はここまで全カードで勝ち点を挙げ、勝ち点4で完全優勝に王手をかけている。一方の早大も明大戦でこそ勝ち点を落としたものの、勝ち点3で早慶戦に突入。優勝の可能性は潰えたが、慶大の胴上げを阻止すべく死力を尽くして立ちはだかるだろう。今回は慶大の優勝が懸かった早慶戦を前に、両校のここまでの戦いぶりや戦力を徹底解剖する。

初戦となった東大1回戦では1点差で惜敗し、出鼻を挫かれた形となった慶大。しかし東大2回戦を制すと、悪天候の影響で3回戦を迎える前に立大戦に突入し、2勝1分で勝ち点を獲得した。そして延期された東大3回戦を、史上4例目の「毎回得点」の大勝で飾り、昨季勝ち点を落とした法大、明大とのカードに差しかかった。両カードともに第1戦を勝利し、第2戦で敗れ第3戦に突入した。それでもエース・増居翔太(総4・彦根東)から守護神・橋本達弥(環4・長田)の継投で凌ぎ、優勝を左右する重要な一戦をものにした。結果として全てのカードで第3戦のもつれながらも、勝ち点を獲得する驚異の粘り強さを発揮し、第8週終了時点で完全優勝に王手をかけている。

巨人2位指名を受けた主砲・萩尾

満身創痍の中でも投打の歯車が食い違うことはなかった。昨季圧倒的な攻撃力を見せた打撃陣は、今季もチーム打率.304(リーグ1位)と好調を維持し、特にチーム本塁打12本は2位に大差をつけてのリーグトップ、打点66もリーグトップの成績である。その中心は打率.429、4本塁打、17打点で3冠王を射程圏内に捉えている不動の4番・萩尾匡也(環4・文徳)だ。先日のドラフト会議では巨人から2位指名を受けた萩尾は、明大とのカードで3ラン2本、9打点の大活躍を見せ、大一番の勝ち点奪取に貢献した。萩尾の前後を打つ3番・廣瀬隆太(商3・慶應)、5番・山本晃大(総4・浦和学院)も3本塁打で萩尾に続いている。また打率上位5人に慶大から萩尾の他に、宮尾将(商4・慶應)、古川智也(環4・広島新庄)が名を連ねるなど、春から打撃面で成長を遂げた選手も多い。今季不振に陥った下山悠介主将(商4・慶應)にも、明大戦では当たりが出始めており、復調の気配が漂う。

完全復活を遂げたエース・増居

チーム防御率がリーグトップの1.76と好調の投手陣は 昨季防御率4.54と振るわなかった増居が9試合の登板で6勝負けなし、57回を投げて防御率1.42と完全復活を遂げた。直球の球速も140km台中盤をマークし、自慢の制球力も戻ってきた。第2先発を務めた外丸東眞(環1・前橋育英)も4試合に先発して1勝2敗ながら防御率2.95と、先発としての役割を十分に果たしている。外丸は昨季の早大2回戦でも先発を務め、リーグ戦初勝利を飾っているだけに、今季も安定した投球に期待が懸かる。リリーフ陣は橋本達と渡部淳一(政4・慶應)が健在で、橋本達は8試合、渡部淳は6試合に登板し、両者ともに防御率0点台を保っている。ターニングポイントとなる場面で実績あるリリーフ陣につなぎ、ワセダを抑え込みたいところだ。

DeNA5位指名を受けた守護神・橋本達

一方の早大は、開幕カードの法大戦で2戦連続完封勝利を飾ると、続く明大戦こそ連敗を喫するも、東大戦、立大戦を4連勝と全カードを2戦で終わらせている。勝利した試合はいずれもロースコアの接戦で、投手力が光る結果となっている。その中心はエース・加藤孝太郎(人間3・下妻一)で、今季4試合に先発して2勝1敗、防御率0.88と、昨季あと一歩のところで逃した最優秀防御率のタイトルに迫っている。そして今季主にクローザーを任されている伊藤樹(スポ1・仙台育英)も、リリーフでは6試合に登板し1失点に抑えている。また第2戦の先発が予想される清水大成(スポ3・履正社)も今季12回を投げて未だ失点0と好調だ。その他にも伊藤大征(社3・早稲田実)、鹿田泰生(商2・早稲田実)、原功征(スポ4・彦根東)といった実績十分な投手たちが控えており、この投手陣から大量得点という展開は望めないだろう。

打線は新戦力の台頭もあり、春と比べると非常に活気づいている印象だ。その象徴が、チームトップの打率.320を誇る山縣秀(商2・早大学院)だろう。リーグ戦初打席で三塁打を放つと、明大1回戦から6戦連続安打を記録し華々しいデビューを飾っている。また山縣に肉薄する打率.310を残しているリードオフマン・熊田任洋(スポ3・東邦)も侮れない。今季は満塁弾含む2本塁打と長打力を見せつけ、早大打線に勢いを与えている。また今季2度3安打をマークしている2番・松木大芽(スポ4・金沢泉丘)も控え、春とは全く別の打線へと生まれ変わった。ただ依然として、3番・中川卓也(スポ4・大阪桐蔭)、4番・蛭間拓哉(スポ4・浦和学院)が打率1割4分台と低迷している。しかし蛭間は、早慶戦で幾度となく慶大が苦しんできた存在であり、蛭間の前に走者を溜めないよう細心の注意を払って、投手陣はワセダに立ち向かってもらいたい。

勝利には主将・下山の復調が不可欠だ

慶大にとっては秋季リーグ戦連覇、そして19年(優勝)、21年(準優勝)に続く3大会連続の明治神宮大会への出場が懸かっている(20年は中止)。幸いにも今季はプロ野球日本シリーズの関係で、29年ぶりとなる9週制でリーグ戦が行われているため、両校とも最後の試合から早慶戦まで3週間という時間が与えられている。ここまでのリーグ戦で出た課題に取り組み、万全の状態で伝統の一戦を迎えられることを願っている。そして4年生にとっては、勝てば明治神宮大会への切符を手にできるが、敗れれば彼らの大学野球が終わりを迎えるという、野球人生を左右する一戦にもなる。野球人生の岐路に立つ4年生たちの勇姿も必見だ!

(記事:宮崎秀太)

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