早慶女子クラシコ過去21大会で未だ勝利を挙げられていない慶大。願いが叶う七夕の日に「早慶戦初勝利」をかけ、強豪・ワセダとの一戦に臨んだ。試合は両者ともにCKや縦へのロングパスから得点を狙うものの、早慶戦の固さがあったか決定機とまではいかずにプレーを終える場面が目立った。しかし前半終了間際、ついに試合が動く。43分、慶大は自陣内でパスを回している隙をつかれインターセプトされると、そのまま左サイドを攻められ痛恨の先制点を許す。なんとか追いつきたい慶大は53分、ペナルティエリア内の競り合いからPKを獲得。これを大橋桜子(商3・INAC東京レオンチーナ)が冷静に決め切り同点に追いつく。しかし同点直後の59分、今度は早大にPKを献上し、そのまま勝ち越しゴールを許してしまう。再度同点を狙う慶大だったが、早大DF陣の鉄壁な守りを崩しきれず、無念のホイッスル。「早慶戦勝利」という史上初の快挙は次世代へ託されることとなった。
2023/7/7(金) 15:30キックオフ @味の素フィールド西が丘
【スコア】
慶應義塾大学1―2早稲田大学
【得点者】
0―1 43分 早稲田大学:白井美羽(スポ科3・ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)
1―1 53分 慶應義塾大学:大橋桜子(商3・INAC東京レオンチーナ)
1―2 59分 早稲田大学:築地育(スポ科3・常葉大付属橘)
◇慶大出場選手
GK
野田明日香(総4・十文字)
DF
深澤菜月(総4・千葉東)
小熊藤子(環2・スフィーダ世田谷ユース)
福岡愛実(環4・横須賀シーガルズJOY)
坂口芹(総2・仙台大付属明成)
MF
佐藤凛(総1・常盤木学園)→69分 山本華(文4・South High School)
岡田恭佳(環1・十文字)
及川莉子(総4・常盤木学園)
守部葵(環2・十文字)
FW
野村亜未(総1・十文字)
大橋桜子(商3・INAC東京レオンチーナ)
4年ぶりの男女同日開催となった早慶クラシコ。慶大ソッカー部女子は過去21大会、ライバル・早大に対して勝利を挙げられていない。だからこそ部員の誰しもが「早慶戦初勝利」という目標に向かって努力を積み重ねてきた。願いが叶う七夕の日、史上初の快挙を目指して戦いに臨んだ。
慶大ボールでキックオフ。序盤は早慶戦の固さもあったか互いにボールが足元に収まらず、両者ともに淡白な攻撃で相手ゴールへ迫る。その中で慶大は最終ラインの小熊藤子(環2・スフィーダ世田谷ユース)が起点となり、前線へ再三鋭い縦パスを送る。このパスに野村亜未(総1・十文字)、大橋の両FWが反応するも、ここは相手DF陣が一枚上手。体を上手く使われボールを持って前を向くことが出来ず。
試合は進み16分、慶大がピンチを招く。早大にハーフウェイラインから細かなパス回しで徐々に侵入を許し、ペナルティエリア付近でボールを回され、そのままシュートを放たれるもここは慶大守護神・野田明日香(総4・十文字)がファインセーブを見せ得点は与えない。その後も左右の両サイドからの攻撃、コーナーキックからゴールへ迫られるも深澤菜月(総4・千葉東)、小熊らが体を張った守備を見せ先制を許さず。
両者ともに得点は生まれずスコアレスで前半を終えるかと思われた43分、ついに試合が動く。早大の攻撃を止め切っていた慶大だったが、自陣でのパス回しの間に一瞬の隙をつかれインターセプトを許す。そのまま左サイドへ攻めこまれると、ダイレクトパスなどの連携プレーに翻弄されペナルティエリア内で前を向かせてしまう。すると早大・白井美羽(スポ科3・ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)に左足で強烈なシュートを放たれ、痛恨の先制点を与えてしまう。なんとか追いつきたい慶大は失点直後立ち直りを見せ45分、この試合初のコーナーキックを獲得。このチャンスを生かしたかったが早大DF陣に跳ね返され惜しくも同点ゴールとはならず、前半は0-1と1点ビハインドで終えることとなる。
エンドが変わり早大ボールで後半キックオフ。なんとか主導権を握りたい慶大だったが早大攻撃陣はそう簡単に止まらず47分、再び左サイドからの攻撃を許しコーナーキックを与えてしまう。早大は変則的にグラウンダーのクロスをペナルティエリア内へ送るも、ここは及川莉子(総4・常盤木学園)が冷静にクリアし追加点は許さず。すると後半初めのピンチを守り切った慶大が猛攻を仕掛ける。50分、慶大は好位置でのフリーキックを獲得。小熊から正確なボールが送られ、相手GKがボール処理をもたつく間にシュートを放つも枠を捉えきれない。しかし続く52分、佐藤凛(総1・常盤木学園)のクロスボールからゴール前の競り合いで慶大はPKを獲得。この同点のチャンスにキッカーは大橋。会場も緊張感に包まれたが冷静に相手GKの逆をつき、ゴール右へ同点ゴールを流し込んだ。このゴールに慶大選手だけでなく、応援席からも大歓声が沸いた。
試合を振り出しに戻したことで流れに乗りたかった慶大だったが57分、早大にコーナーキックをきっかけにペナルティエリア内へ侵入を許すと、早大の選手を倒してしまい、これがPKの判定。するとこのPKを早大・築地育(スポ科3・常葉大付属橘)に決められ同点も束の間、勝ち越しゴールを許してしまう。
再び追いかける展開となった慶大は野村、大橋、及川らが中心となり、早大ゴールへ迫るもののパスがうまくつながらず、シュートまでボールを運ぶことができないもどかしい展開が続く。さらに勝ち越し後も早大攻撃陣が攻撃の手を緩めることなく、コーナーキックやロングシュートから慶大ゴールを脅かす。この影響もあってか慶大は中々大胆な攻撃を仕掛けることができず。その後も試合終了までチャンスらしいチャンスを作ることができずに無念のホイッスル。第22回早慶女子クラシコは1-2で惜敗となった。
試合には敗れたものの、勇姿を見せた慶大イレブンには800人を超える観客から賛辞が送られた。「早慶戦勝利」という史上初の快挙とはならなかったが、確実に人の心を動かす、人の記憶に残る、そんな試合になったことだろう。そして早慶戦勝利への思いは次の世代へと託される。この試合でゴールを決めた大橋、絶対的エースの野村、DF陣の一角である小熊、坂口芹(総2・仙台大付属明成)らが成長を見せ、来年の早慶戦できっと慶大に勝利をもたらしてくれることだろう。早慶戦は黒星となったが、8月からは関東女子サッカーリーグ戦の後期を迎える。もう一つの目標「1部昇格」へ向け、チーム一丸となり慶大イレブンは走り続ける。
次戦:第37回関東大学女子サッカーリーグ戦第10節 8/20(日)vs尚美学園大学 16:30キックオフ @尚美学園大サッカーグラウンド
(記事:金子拓登、写真:上村真子、安田雄貴)