24年度に引退を迎えた4年生を特集する「Last message~4年間の軌跡」。第5回となる今回はラグビー部のLO中矢健太(総4・大阪桐蔭)。去年、一昨年と試合に出続け、ラインアウトリーダーも務め、もっとも闘う慶應ラグビーを知る人の1人でもある。18年間という競技人生の最後を慶應ラグビー部で終える中矢の想いを取材した。
ラグビーを4歳で始めた中矢は、大阪のラグビースクールからのスタートが長い競技人生の始まりだった。中学、高校時代は西の名門、大阪桐蔭高に入学した。中学時代も取り組んでいたラグビーであったが、高校進学時にはさらにラグビーにかける想いがより一層高まった。
ラグビー部に入部した中矢に待ち受けていたのは想像を絶するレベルの高さであった。先輩には現在リーグワンのクボタスピアーズで活躍する江良颯や同じくリーグワンのトヨタヴェルブリッツに所属している奥井章仁など、のちにプロになる選手も在籍した。激しく影響を受けた中矢は同期と協力し合い朝練を実行したり、自宅でのトレーニングを家族の協力もありながら徹底した。この大阪桐蔭ラグビー部で培ったハンドリングスキルやフィジカルの部分は慶應蹴球部でも大いに生きた。下級生の頃から試合に出たいという熱い闘争心を持ち合わせており、高いレベルでのラグビーを求めた中矢は慶應蹴球部への進学を決める。

恵まれた体格を活かしたプレーが魅力
その言葉通り、2年生から練習試合やJr選手権への出場をし、3年時には関東春季大会や関東大学対抗戦などといった主要大会ではLOとしての不動の地位を確立し、慶應ラグビー部の支柱となる。その中でもっとも中矢が印象に残った試合が関東大学対抗戦で対戦した絶対王者帝京大学とのマッチアップであった。この試合では10-54と完敗し、内容も課題のある部分が多かったものの、高校時代の憧れでもあり、ラグビー人生において大きな影響を自分に与えることとなった江良や奥井といった当時トップクラスの実力を誇った選手たちとの再会であった。大阪桐蔭では彼らの背を追い続けて戦ってきた中矢はこの試合で再度、刺激を受けリーダーとしての役割を再認識した。この役職について中矢は「春シーズンもラインアウトがうまくいってチームも勝利に導けていたという部分では感じていたのですが、夏以降、一緒にラインアウトのコーチングをしてくれた社会人の方がおやめになって、そこで自分一人で考えるようになったというのは非常に難しかったと思います。やりがいはあると思います。」と語る。リーダーとしての重責を孤独に抱え込むのではなく様々な人とコミュニケーションを取り、協調しあいながら取り組んでいく姿勢がそこにはあった。
このことについては大学を境に競技から退き、新天地へと挑んでいくことに対しても「周りの仲間たちと協力することや、目標に対して努力し続けるということはラグビーから学びえたことであり、それを社会人としても大切にしていきたい」と語り、ラグビーの自分の中での存在の大きさを自覚させた。

新天地への熱い想いを語る
大学選手権で悔しくも競技人生最後の試合となった帝京大学戦を振り返り、「とにかく楽しかった、ラグビー人生18年間への感謝の想いをこの一戦にささげられた」とやりきったという面持ちで語る。
最後の舞台で感じ取った潔さ。インタビューで見せた清々しさは慶應ラグビーで培った4年間の軌跡からしか味わえないものなのかもしれない。
(取材・記事:吹山航生)