25年度に卒業を迎える4年生を特集する特別企画「光るとき」。第33回となる今回は、ソッカー部女子の守部葵(環4・十文字)。けがに苦しんだ4年間の中で、彼女が見つけた役割とは。そして、周囲を照らす守部の明るさが、チームにもたらしたものとは。
小学校3年生の時、友人に誘われサッカーを始めた。
高校も、選手権やインターハイの常連である名門・十文字に進んだ。しかし、高校2年生に上がる直前、Aチーム入りを目指す中で前十字靭帯を断裂。1年間のリハビリが続いた。高校3年時は副将を務めたが、最後の全国大会に出場することは叶わず。一方、けがをしたことで多くの学びを得られた3年間であった。
受験に合格し、晴れてソッカー部の一員となった守部。1年目はリハビリからのスタートとなったが、途中からはスタメン出場も増えていった。同期は守部の第一印象を「明るくて、誰とでも仲良くなれる性格だった」と口をそろえて語る。周囲を照らす太陽のような存在が、チームを、同期を支えた。一方、守部の明るい性格がチームに与える好影響が大きかったゆえ、彼女が暗くなるとチームまで暗くなってしまうこともあった。
2年目もけがに苦しんだものの、リーグ戦中盤に復帰。夏に開催された早慶定期戦にも初出場を果たした。勝利には届かなかったが、憧れの舞台で躍動した。故障を繰り返していた膝の状態も良好で、プレー面で着実に成長していった。
彼女はプロを目標としていた。夢を叶えるためには、目に見える結果を残さなければならない3年目。しかし、膝の状態は芳しくなく、リーグ戦の出場機会は限られた。早慶定期戦もわずか5分程度の出場にとどまり、敗戦。悔しい1年間となった。
苦しい中で、最終学年に。副将に就任した守部は、「行動や姿で誰よりもチームへの想いを体現し、誰よりもチームのために力を使う」ことを目標とした。同期の中村美桜(理4・慶應湘南藤沢)は、「自分が沈んだ気持ちになっても、それを一旦抑えてチームのためにどう立ち振る舞えばいいのか考えてくれるようになった」と、副将就任後の変化を語る。副将として、最高学年として、フォアザチームをより徹底するようになった。
ラストイヤーはなかなか出場機会に恵まれなかったが、8月の早慶定期戦でスタメン起用された。会場は、等々力陸上競技場。中学3年生の時に観戦したあの試合と、同じ舞台だった。
13年間のサッカー人生の集大成。全てをかけて臨んだ。最終ラインから得意の縦パスでチャンスを演出する場面もつくった。それでも、早大の壁は高かった。1点ビハインドの後半、交代を告げられた。ピッチを去った守部は、ベンチに座らず、立って戦況を見つめた。ピッチ上の仲間に声をかけ続けた。給水タイムを終えてピッチに向かう仲間を励ました。試合はそのまま慶大が敗れた。4年間、自らの力で早慶戦の勝利に導くことは、達成できなかった。しかし、負けていても、ベンチに下がってからも、最後まで戦い続ける姿は、彼女が中学3年生の頃に憧れを抱いたソッカー部の選手たちと同じだった。
早慶定期戦後の遠征中、縦割りで班をつくり、個人の課題について話し合った。守部の班は、なかなか試合に出られない選手が多かった。「けががあっても、試合に出られない時間が長くても、最後に活躍できる姿を見せる」。引退まで残りわずかとなった守部は、自らの活躍で後輩たちの道標となることを心に誓った。
リーグ戦最終盤の3試合。守部はいずれもスタメンで出場した。黄大城監督は、「4年生になって「自分のエネルギーをどのように周りに還元していくか」という点での成長が見えたからこそ、最後の3試合は彼女が持つエネルギーをチームに注いでくれることを信頼してスタートから使った」とこの起用について語った。相手の攻撃の芽を摘むインターセプト。華麗なボールさばき。集大成にふさわしいプレーを続けた。
サッカー選手・守部葵の引退試合となった関東大学リーグ最終節。後半、守部の“背番号6”が電光掲示板に表示され、ピッチを後にした。観客席からは、割れんばかりの拍手とチャントが送られた。あの日見た早慶定期戦で、選手たちに送られていたような慶應の応援に包まれ、4年間のソッカー部人生、そして13年間のサッカー人生を終えた。
「人のために頑張れる人が多いからこそ、自分も誰かのそういう存在にならなくてはいけないというのを強く思わされた」。ピッチにいるときは、誰よりも声を出した。ピッチにいない時は、リザーブメンバーのアップをけん引し、仲間がゴールすれば目一杯喜んだ。明るい性格でチームを照らし、仲間の姿に成長させられた4年間。守部は、太陽であり、チームメイトに照らされて大きく育った向日葵でもあったのかもしれない。
“プロサッカー選手になる”。彼女が掲げていた夢は、惜しくも断たれた。今の彼女の目標。それは、“フットサル日本代表になる”こと。夢の続きは、新たなフィールドで。守部葵の戦いは、これからも続いていく。

(取材・記事:柄澤晃希)


