過密日程の最後に迎えた、関東リーグ後期第4節。慶大は序盤からペースをつかむと20分にPK、27分にセットプレーで順調に得点を重ねる。リーグで上位を走る強敵に自分たちのサッカーをさせないまま前半を折り返すと、後半も志鎌奈津美(環3・常盤木学園高)の2得点などでさらに点差を広げ、5-0で快勝。早慶定期戦、皇后杯という3連休3連戦をゴールラッシュで締めくくり、関東リーグ上位進出への足掛かりをつかんだ。
第23回関東女子サッカー2部リーグ 後期第4節
2017/07/17(月)15:30KO@慶應義塾下田グラウンド
慶應義塾大学 5-0 MITO EIKO FC
【得点者(アシスト者)】
〔慶〕20分 工藤真子、27分 加藤楓琳(工藤真子)、58分 志鎌奈津美、72分 志鎌奈津美(鈴木紗理)、90+2分 松木里緒(山本華乃)
〔M〕
◇慶大出場選手
GK野村智美(総4・作陽高) |
DF清水菜緒(環1・文京学院大学女子高)→58分 斎藤宇乃(理4・慶應義塾湘南藤沢高) |
DF奥本くるみ(環2・浦和レッズレディースユース) |
DF加藤楓琳(総2・常盤木学園高)→46分 佐藤幸恵(総1・十文字高) |
DF鈴村萌花(総3・村田女子高)→66分 山本華乃(理1・山手学園高) |
MF松木里緒(環2・常盤木学園高) |
MF中島菜々子(総3・十文字高) |
MF工藤真子(総2・日テレ・メニーナ) |
MF小川愛(総1・神村学園高) |
FW 志鎌奈津美(環3・常盤木学園高)→76分 勝木日南子(総2・大和高) |
FW鈴木紗理(総1・十文字高)→81分 高見澤るり(政4・慶應義塾女子高) |
第16回早慶女子サッカー定期戦(0●1)の熱闘を終えた慶大を、過密日程が襲った。翌日の皇后杯(村田女子高戦、0●1)ではサブメンバー中心で戦い、惜敗。2連敗で迎えた3戦目は、35度の猛暑の下、リーグ前期で唯一黒星を喫した強敵MITOとのリベンジマッチだ。関東リーグで昇格争いをするためには何としても倒さなければならない相手に、「満身創痍」(伊藤洋平監督)の慶大は守備陣のターンオーバーで加藤楓琳(総2・常盤木学園高)、清水菜緒(環1・文京学院大学女子高)らをスタメンに抜擢した。
慶大は序盤からボールを支配し、小川愛(総1・神村学園高)のドリブル、ミドルシュートを中心に攻め立てる。両チームとも何度かチャンスを迎えたが、先制したのは慶大だった。20分、細かいパス回しから工藤真子(総2・日テレ・メニーナ)がPA内に侵入すると、シュートを打とうとしたところで倒されてPKを獲得。これを工藤が自ら沈め、慶大が先制に成功した。慶大は勢いに乗り、給水タイム明けの27分に追加点。工藤のFKを加藤が足で合わせ、リードを2点に広げる。その後も慶大が完全にペースをつかむと、MITOは苛立ちからか激しいフィジカルコンタクトでファールを連発。前半アディショナルタイムにはMITOの右サイドバックが2枚目のイエローカードで退場処分を受け、慶大は2-0でかつ数的優位という俄然有利な展開で前半を終えた。
後半も慶大の勢いは止まらない。工藤、鈴木紗理(総1・十文字高)らが再三ミドルシュートで相手ゴールを脅かすと、58分、今度は慶大の“10番”志鎌奈津美(環3・常盤木学園高)が魅せた。工藤から志鎌へのスルーパスは、一度は相手DFが迅速なカバーで対応。工藤も諦めたような声を出したが、「スピードが売り」と自負する志鎌が快足を飛ばし、先にボールに触る。飛び出していた相手GKに当たってこぼれたボールを、志鎌が拾って流し込んだ。勝利をほぼ手中に収めた慶大は複数の控え選手を投入したが、攻撃の手は緩めない。72分には志鎌が鈴木のクロスにダイビングヘッドで合わせてこの日2点目を挙げ、4-0。中盤の中島菜々子(総3・十文字高)、工藤らは、過密日程を感じさせない運動量で終始相手を圧倒する。終了間際には途中出場の山本華乃(理1・山手学園高)からパスを受けた松木里緒(環2・常盤木学園高)が、相手GKをかわしてダメ押し点。ゴールラッシュを締めくくり、慶大が5-0で完勝した。
試合前、主将の野村智美(総4・作陽高)はある思いを抱いていた。「このチームは良いチームだと証明したい」。定期戦、皇后杯と好ゲームを演じながら結果が出ず、歯がゆさを感じていた。何よりも“結果”を求めていたこの試合。圧勝の後、伊藤監督や選手たちからこぼれたのは「安心した」「良かった」という言葉だった。「証明」はできたに違いない。彼女たちの体力と精神力は過密日程をものともしなかった。久々に先発で出場した加藤や、定期戦でも途中出場で存在感を示した山本らが得点に絡み、層の厚さも見せつけた。約2カ月前に敗れた相手に5-0の完勝。若く粗削りなチームは、すさまじい速度で成長している。彼女たちのシーズンが終わる約5カ月後、このチームはどこまで成長しているのだろうか。
(記事 桑原大樹)
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試合後コメント
伊藤洋平監督
(試合を振り返って)みんな満身創痍だったんですけど、本当にチーム全員の力で勝ちきることができました。(3連戦をメンバーもやりくりして戦い抜いた)そうですね。ターンオーバーしながら。昨日はサブメンバー中心でいって、本当は3試合全部勝つつもりだったんですけど、まあ結果的には1勝2敗ということで…まあ3連敗しなくて良かったかなと思います。(今季出場機会が少なかった加藤選手が攻守で結果を残したが)もともとポテンシャルは高いので、今季はケガなどもあってタイミングが合わなかっただけなんですけど、彼女の台頭は本当にチームの力になると思うし、これからももっともっとチームに刺激を与えていってほしいと思います。(前期唯一黒星を喫した相手に対策は)正直ですね、3連戦だったし早慶戦を主眼に置いてやってきたので、準備という準備はしていなかったです。この1,2週間で早慶戦に対して準備してきたことがこの試合で生きたなという感じでした。(ここまでのゴールラッシュは想定していたか)いや、正直期待以上の働きでした。(厳しい日程に加えて今日も激しい試合だったが、中盤の工藤や中島が最後まで奮闘した)心配になるくらい走ってましたね。まあ90分持つわけないよねっていう前提から始めたので、行くところと行かないところを賢くみんながやってくれたなと思います。(次節に向けて)次節はオフ明けの前橋育英戦のアウェイですけど、この勝ちによってまた上位を狙える位置に来たと思うので、オフは挟みますけど文武両道をしっかりと貫いて練習を重ねていきたいと思います。
野村智美(総4・作陽高)主将
(試合を振り返って)3連戦の中で良い場面は作るけど結果につながらない試合が続いていて、何としても結果で「このチームは良いチームだと証明したい」と意気込んで入った試合だったので、結果を残せて安心しています。(日程も厳しい上に非常に激しい試合になったが最後まで戦い抜いた)まあ私はGKなので体力的にはあんまり厳しくないんですけど、本当にフィールドプレーヤーはよく走っているなと後ろから見ていて思いました。球際もすごく気持ちが入っていけていたので、良かったと思います。(リーグで前期唯一敗れた相手だったが、リベンジの気持ちは)ありましたね。何としても負けられないですし、自分たちは今真ん中の順位に収まりかけていたところをどう上位に食い込むかというところで、勝つのはもちろん得失点差を稼ぐというのも全員で共通認識を持って入ったので、それが結果につながって良かったです。(ゴールラッシュを後ろから見ていて)もうどのシュートも良かったです、本当に。1点目こそPKでしたけど、その後の流れからのシュートとか、自分たちがずっと練習してきたことがピッチ上で表現できて、それが結果にもつながって本当に良かったと思います。(日程の関係もあって守備陣にいつもと違うメンバーも入ったが、感触は)この3連戦はどれも手を抜きたくなくて、誰が出ても戦えるんだっていうのもこの3日間で示したかったので、最後の試合でしっかりそれを示せて本当に良かったと思いますし、後期にも絶対につながると思います。(次節に向けて)一回リーグが落ち着くので、今までチームとして伸びてきたところだけじゃなくて個人としてもっと伸ばせるところに目を向けて練習に取り組んで、それをまたチームの力として発揮できるように練習に取り組んでいきたいと思います。
志鎌奈津美(環3・常盤木学園高)
(試合を振り返って)今日は3連戦でみんな疲労とかいろいろあったと思うんですけど、まずは大量得点無失点で勝てたのが本当に良かったと思います。(FWとしては気持ちのいい試合だったのでは)そうですね。自分でも2点決められたので、本当に良かったの一言ですね。(志鎌選手の1点目はパスを出した工藤選手が届かないと諦めたように見えたが)一応スピードが売りなので、絶対追い付けると思って。相手DFも自分よりは遅くて、GKが出てきていたのでここで触れれば点を取れるなと思って走りました。(シーズン序盤に比べて志鎌選手は得点数も内容もどんどん上がってきているように感じるが)新チームになって1年生の上手い子たちも入ってきて、序盤に比べてチームも個人も合わせるところを合わせられてきていて、お互いに良さも引き出し合えていると思います。でもまだまだ足りない部分はチームとしても個人としてももっともっと話し合って、大学リーグなどに向けて良くしていきたいと思います。(次節に向けて)次節はテストやオフを挟んでの試合になりますけど、その期間にしっかり自分の課題に取り組んで、さらに良い状態でみんなで勝ちにいけるように頑張ります。