いよいよ明日、等々力陸上競技場にて第16回早慶女子サッカー定期戦が開催される。今季、慶應義塾体育会ソッカー部女子は伊藤洋平新監督が就任し、新たな時代をスタートさせた。ケイスポでは、「史上初の早慶戦勝利」を目標に掲げる選手たちにインタビューを実施。今年の定期戦への意気込みをうかがった。
第3弾となる今回は、野村智美(総4・作陽高)主将と中島菜々子(総3・十文字高)副将による対談をお届けする。ともに1年次から定期戦に出場し続ける野村主将と中島副将。チームを引っ張る両選手に、この一戦への思いを語ってもらった。
[取材日:6月28日(水)]
――まずは今季ここまでを振り返っていただけますか?
野村 序盤こそ勢いというか、リーグ戦がどうなるか不安でいっぱいの中、新体制でどうなるかなという中で勝ち切れたものの、終盤に来て自分たちの甘さだったりが顕著に出ていて、まあ山あり谷ありというか、なかなか安定した戦いがまだまだできていないなというふうに感じでいます。
中島 シーズンインとかは本当に勢いという感じで、良い試合も結構できていたんですけど、だんだん慣れてくるにつれてこそ甘さと緩さというのが出てきて。中だるみじゃないですけど、そういうふうになっちゃってるのかなという感じです。
――昨季から選手が多く入れ替わった中で、チームをまとめる難しさなどはありますか?
野村 ありますね(笑)。選手が変わったこともそうですし、人数的に言うと3,4年生が6人ずつで12人、下級生たちがそれぞれ9,10人(1年生:9人、2年生:10人)いて、上級生が3分の1という、本当に上の人たちが引っ張っていかなきゃいけないなかでの人数的なところと、1人1人がどういうことを目標にしてソッカー部女子にっていうのがなかなか一つになりきっていない部分とか、そこに対する難しさというのはチーム全員が思っているなというように感じますね。
――ここまでで印象に残っている試合はありますか?
中島 関東リーグの武蔵丘短大戦(3〇0)は、自分たちのやりたいことが結構できていたなというのがすごく印象的で。堅い守備もできていた試合でしたし、得点も3点決められて、自分たちのやりたいことが一番出た試合だったのかなと思います。私個人的に印象的なのは、皇后杯で自分がロングシュートを決めた試合(日大戦、1〇0)が印象的ですね(笑)。
野村 個人的すぎるでしょ(笑)。武蔵丘短大戦は創設して12年、1回も勝ったことがない武蔵丘短大を相手に勝てて、今季初の「史上初」を刻めたという意味でも確かに印象的な試合だったかなと。まあでもあんまり攻められてないからね、個人的には(笑)。
中島 ああ、そっかそっかそっか(笑)。
――GKの野村選手からするとやっぱりたくさんセーブした試合の方が印象に残っていますか?
野村 そうですね。自分のセーブもなんですけど、目の前で味方が体を張ってブロックしてくれたシーンが多い試合、特に関東リーグの開幕3試合は本当にディフェンスラインがこんなに体張れたのかってくらい1人1人がゴール前で相手に突っ込んでいくくらいの迫力があって、あのプレーが毎試合できればもっともっとこれから結果につながっていくかなと思います。
――開幕当初は1-0の試合が多かったですよね。
野村 多いですね。逆に昨年とかは1点差で負けるとかも多かったし、そういった意味では前線が取った1点の重みも分かって、いかに失点を抑えるかというところに集中できているかなとは思います。
――お2人は昨季本当に苦しい思いをされましたが、今季は楽しさも感じられているのではないでしょうか?
中島 去年と違って、プレー的な面で細かいパス回しだとか自分たちが攻撃で主導権を握れる時間帯とかがある試合も多いので、そういう意味ではプレーの面で楽しいことはあるんですけど、自分が引っ張らなきゃいけない立場になって、去年までにはなかった苦しさというのと難しさというのを感じる場面が多くなってきました。
――中島選手は今季より副将に就任されましたが、やはりいざやってみて難しさを感じていますか?
中島 全て難しいんですけど、まずピッチでみんなをやる気にさせるというのが本当に難しいなと思って。まずは自分が一番やることでみんなを巻き込んでいきたいと思っているんですけど、みんなの変化が見られなかったりすると「まだまだ足りないのかな」って悩んだり…。いろんなこと、全てが難しいです。
――野村選手から見て、中島選手の中で「変わったな」と思うことは何かありますか?
野村 こっち見ずに言いますね(笑)。
中島 (笑)
野村 前は本当にオフの場面でも自分で言って自分で笑うようなそういうキャラの持ち主で、1人でも人生楽しいなっていう部員からの印象もあったんですけど(笑)、その矢印がすごく他に対して向くようになったなというのは感じていて、でも自分がまずやらなきゃいけないという責任感もありつつ、そこのバランスが見ていて本当に頼もしいなと思います。
――野村選手も主将としての難しさを感じたりしていますか?
野村 私すぐ熱くなって、その熱量のまま周りに対してすごく求めることが多くて、でもやっぱり1人でできることってすごく限られていて、特に今関東リーグの方で出るメンバーは下級生が多い中で、同じ熱量で求めるだけじゃ響かないこともたくさんあって、その立場に立って考えることだったりとか、私に対してなかなか言えないこととか、そういう小さな気づきに目を向けるというのが、本当にシーズンインしてからすごく難しいなと感じていて。周りのみんな、同期とかからは「肩の力を抜いてピッチに立ってほしい」とすごく求められていて、私にとってはそれがすごく難しいです。
――中島選手の目には、野村選手はどのような主将として映っていますか?
中島 やっぱり関東リーグもそうですけど、ピッチに立っている選手に下級生が多くて、去年までだと上の学年が多くていつも助けてもらっているっていう感じだったんですけど、今年は私が頼れるのは本当に智美さんしかいないかなっていうのがあって。試合中も後ろから「ナイス!」とかの声が掛かると「もうちょっと頑張ろう」とか思えるし、本当に心強いです。
――お互いに頼もしさを感じているというところですね。
中島 (笑)
野村 それが聞けて良かったです(笑)。「ちょっと不安」とか言われたらどうしようかと思ってた(笑)。
――今季のチームで一番の変化と言うとやはり伊藤洋平監督が指揮を執ることになったことだと思いますが、これについてはいかがですか?
野村 変わりましたね~。監督の年齢が近くなった分、すごく選手の立場になってというか、選手目線で考えてくれることが多いことと、あとはまずは何でもやってみようという、今までの11年間で変わっていなかったこと、変えられてこなかったことに対しても、どんどん良いと思うことにはチャレンジして、それでだめだったらまた違う方法を考え直せばいいじゃないかというのは、本当に今季一番大きく変わったことなのかなと。それでもちろんうまくいったこともあればうまくいかなかったこともあるんですけど、その結果からさらに良くしていこうという雰囲気があるのは、すごくやりやすいなというふうに感じています。
――サッカー的な面ではいかがですか?
野村 サッカー的な面では、監督と一緒に考えることが、もちろん主将になったからというのもあると思うんですけど、ピッチの中で起きたことに対していっしょに考えようとする場面がすごく増えたかなって感じますね。
中島 攻撃の自由度が増えた。
野村 確かに。それはあるね。
中島 でも、その分規律がなくなっているという表裏一体な感じなんですけど、楽しいです。
――下級生も増えていますが、チームの雰囲気はいかがですか?
野村 若いな~って思いますね(笑)。良い意味で本当に盛り上がってやっていることもあれば、でもそれがチームの勝敗に影響されやすい。良い雰囲気の時は本当にその勢いのまま試合に臨めますし、逆にうまくいっていない時はみんな何でそれがうまくいっていないのかも分からないくらいチームの結果に左右されているのかなという部分はすごくあって。それを常に良い状態に持っていける何かがあれば、もっと安定して試合に臨めるのかなと思います。
――では、話を定期戦の方に移していきたいと思います。お2人とも1年次から定期戦に出場されていますが、これまでの定期戦について振り返っていただけますか?
中島 1年生の時に初めて定期戦に…そりゃ初めてか(笑)。初めて定期戦に出て、1年生のあの1年間で一番緊張した試合は本当に定期戦で、「こんな試合あるんだ」っていうまず驚きっていうのが1年目で。2年目は、自分自身スタメンじゃなくてそこにちょっと納得いっていないところもあったんですけど、後半から自分が出るといった時に負けていて、「少しでも流れを変えてやろう」と思ってすごく強い気持ちで入って、あっという間だったという感じで、本当にあっという間に終わっちゃったなと思います。
野村 私はですね、1年生の頃からスタメンでフル出場させてもらっているんですけど、本当に毎年「お前が失点しなければ負けることはないんだ」と言われ続けていて(笑)。
中島 確かに(笑)。
野村 本当に数週間前から体調不良みたいな(笑)。その中で臨んでる定期戦で、1年生の頃は無失点に抑えられたんですけど、本当に入学して間もない中でもうピッチに立っているのが精一杯っていう。自分として何かを出そうとかではなく、守りに入っていたっていう印象があって、2年生の頃は得点した後「これを守れば史上初の勝利が見えるんだ」というふうに肩の力ガチガチに入ってやっていたんですけど、本当に「こんなに攻められるのか」というくらい攻められて(笑)。
中島 めっちゃ攻められたよね(笑)。
野村 「もうツラい!」みたいな(笑)。もう自分の何かを出そうというよりはうまく守備で逃げよう逃げようと、奪ったボールも1個大きく高い位置に蹴り出そうとか、積極的にというよりはマイナスを出さないようにというような考え方がすごく強くて。やっと3年の時に、攻撃的に出て格上である早稲田だけど自分たちは強気で臨むんだということで、積極的に攻撃のパターンを作ったりだとか、そういう形で攻めていたにもかかわらず、(自身が出場した中で)初めて早慶定期戦で大量失点して負けてしまった。内容的には1,2年の時より良くなっている部分もあったり、見ていた方から「今までで一番面白い試合だった」という声も上がったんですけど、でも結果としては遠のいていて。本当に史上初の勝利をまだ挙げられていない状態なので、今年こそしっかり内容と結果で示したいなというふうに思っています。
――大学の女子サッカーにおいてあれだけの環境で試合をすることはほとんどないと思いますが、やはり独特な雰囲気があるのでしょうか?
野村 ありますね~。何か本当に「こんなに恵まれていていいのか」って、すごく不安になるくらいだし、応援に来ている人もね、身近な人とかもいるんですけど、「どこからこんなに人が来ているのか」って思うくらい、ね(笑)。
中島 1年生の時に定期戦が終わった後に学校で全然知らない人に「定期戦出てたよね?」みたいに言われて(笑)。「慶應すごいな」って思いました。本当に。
――今季のチーム目標にも定期戦勝利を掲げていますが、本当に「何としても!」というところですよね。
野村 はい、何としても。もう死に物狂いで、戦います。
――年々勝利が少しずつではあるものの近づいているなと感じますが、いかがですか?
野村 私たちとしてもそこに近づいていると信じて今やっているので、そこで結果を残したいなという思いと、自分たち以上に応援してくださっている方が「今年こそ、今年こそ」と年々力強くなっているので、その期待に本当に応えないといけないなと思います。
――慶大の注目選手を1人挙げるとしたら誰を挙げますか?
中島 注目選手か~。工藤真子(総2・日テレ・メニーナ)かな。去年から中盤で一緒にやっていて、最近は本当にプレーとか試合中の一つ一つの味方への声掛けとかが変わってきていて、隣にいつもいるんですけど、本当にやりやすいし、心強いです。
野村 私も真子かなって思っていて、その理由は今中島も言ったんですけど、私たちは成長し続けるチームでありたいというのを掲げていて、そういうチームであり続けるためには1人1人の成長が欠かせなくて、そういう意味では今季一番良い意味で成長しているのが真子かなって感じていて。それは絶対ピッチの中でも表れてくると思うし、味方を引き締める、みんなの士気を高める上でもその存在はすごく大きいのかなと感じています。
――定期戦で「自分のこういうプレーに注目してもらいたい!」というのはありますか?
中島 私は体を張ったプレー、厳しい守備というのが持ち味だと思うので、最後まで泥臭く戦うところを見てほしいです!
野村 私はですね、ビッグセーブと言いたいんですけど、それ以上にディフェンスラインが中心となって味方と連携してゴールを守るというところに注目していただきたくて。それってなかなか見えづらいところではあると思うんですけど、自分たちとして取りたいところに相手を誘導してゴールに向かわせないとか、シュートを打たせないって意外に難しくて、それがうまくいけば失点が少ない試合だし、うまくいかない時は大量失点につながっていて、どうしても最後に目が行きがちなんですけど、そこに行かせない守備力というのに注目して見ていただければなと思います。
――野村選手的にはビッグセーブを見せる機会がない方がいいですよね。
野村 そうですね(笑)。私の得意なプレーは声を出すこと、コーチングで相手にシュートを打たせないことなので、そのプレーにも注目していただきたいですね。
――それでは最後に今年の定期戦に向けた意気込みをお願いします!
中島 今季、早稲田と真剣勝負できる場は定期戦しかなくて、その中で自分たちが目標に掲げている早慶戦勝利というのを達成するのも今回の機会しかないので、もう今年こそ絶対に早稲田に勝ちます!
野村 まず早慶戦は本当にいろんな方のお力添えがあってできる試合で、その思いをくみ取ってプレーできるのはピッチに立っている選手だけだし、私たちしかいないので、その思いもしっかりくみ取って、創設史上初の勝利を、応援してくださる皆様と一緒に喜び合える場を、自分たちの手で作りたいなと思います!
――ありがとうございました!史上初の早慶戦勝利、期待しています!
(取材 小林将平)