大学リーグ最終戦となった今節。入れ替え戦出場のために3点差以上の勝利が必要な慶大は、序盤から猛攻を仕掛けた。連続得点で4-0とし、前半のうちに試合を決める。後半立ち上がりにも1点を追加すると、その後はリスク管理をしながらゲームをコントロールし続け、反撃の機会を与えず。5-0の完勝で危なげなく入れ替え戦出場を決めた。悲願の1部昇格まで、あと1歩――。
第31回関東大学女子サッカー2部リーグ 第4節(延期分)
2017/11/23(木・祝)17:30KO@慶應義塾下田グラウンド
【スコア】
慶應義塾大学 5-0 山梨大学
【得点者】
1-0 11分 鈴木紗理(慶應義塾大学)
2-0 17分 志鎌奈津美(慶應義塾大学)
3-0 42分 松木里緒(慶應義塾大学)
4-0 44分 鈴木紗理(慶應義塾大学)
5-0 47分 オウンゴール(慶應義塾大学)
◇慶大出場選手
GK野村智美(総4・作陽高) |
DF佐藤幸恵(総1・十文字高)→ 86分 泉野玲(環4・法政女子高) |
DF加藤楓琳(総2・常盤木学園高) |
DF熊谷明奈(総1・十文字高) |
DF足立智佳(環1・大阪桐蔭高)→65分 齋藤宇乃(理4・慶應義塾湘南藤沢高) |
MF松木里緒(環2・常盤木学園高)→83分 小茂鳥萌(商4・慶應義塾女子高) |
MF工藤真子(総2・日テレ・メニーナ) |
MF中島菜々子(総3・十文字高) |
MF小川愛(総1・神村学園高)→46分 勝木日南子(総2・大和高) |
FW鈴木紗理(総1・十文字高) |
FW志鎌奈津美(環3・常盤木学園高)→75分 山本華乃(理1・山手学院高) |
最終局面を迎えた大学リーグ。悪天候のために延期されていた第4節・山梨大戦の結果に、慶大の命運は託された。1部昇格を懸けた入れ替え戦に進出するための条件は、3点差以上での勝利。17時30分キックオフという遅い時間にもかかわらず、下田グラウンドにはいつも以上に多くの観衆が訪れ、今季のホーム最終戦を見守った。
大量得点が必要な慶大は立ち上がりからペースをつかみ、積極的にシュートを放った。6分に中島菜々子(総3・十文字高)、8分に小川愛(総1・神村学園高)とフリーで迎えた決定機はそれぞれ味方、クロスバーに当たる不運もあり実らなかったが、「変に焦らず」(野村智美、総4・作陽高)攻めた慶大は11分、中島のスルーパスに抜け出した鈴木紗理(総1・十文字高)が技ありのチップキックでネットを揺らし先制する。6分後には左CKを松木里緒(環2・常盤木学園高)がライン際で折り返し、志鎌奈津美(環3・常盤木学園高)が押し込んで追加点。早い時間帯に2-0とし、3点差のミッションに王手をかけた。その後も中央でゲームをコントロールする工藤真子(総2・日テレ・メニーナ)、中島、鈴木のトリオを中心に攻め続ける慶大。多くのシュートを放つものの、自陣に引いて守りを固める山梨大を崩しきれずにいたが、42分に待望の3点目が生まれる。左サイドに大きく展開すると、オーバーラップした左サイドバックの佐藤幸恵(総1・十文字高)が低く速いクロスを入れ、中央に走り込んだ松木がダイレクトシュートで豪快に叩き込んだ。さらに2分後、先制点と同様に中島のスルーパスを受けた鈴木がこの日2点目を沈める。入れ替え戦出場を大きく手繰り寄せる連続得点に観客も沸き、4-0という完璧な形で前半を終えた。
さらに点差を広げ、2位の座を確固たるものにしたい慶大。後半開始とともに、小川に代えて勝木日南子(総2・大和高)を投入する。すると直後の47分、その勝木のクロスが相手DFの足に当たり、相手GKの逆を突いてゴールへ。点差を5点に広げた。安全圏に入ったかと思われたその直後、GK野村のミスから決定的なピンチを迎えたが、素早いカバーを見せた加藤楓琳(総2・常盤木学園高)がゴールラインぎりぎりでクリアし、難を逃れる。その後は少しペースダウンしながらも、ボールを保持し続けて試合を支配した慶大。工藤の推進力や鈴木の創造性から何度か追加点のチャンスを作ったものの決め切れず、静かに時間が経過していった。交代選手を数多く投入して試合を締め、5-0でタイムアップ。入れ替え戦出場を決め、選手たちは一様に歓喜と安堵の表情を見せた。
伊藤洋平監督は、この試合に向けてある統計を取っていたという。その結果得られたのは、「平均して1試合4得点取っていた」「前半と後半の最後の15分に良く点が入っていた」というデータ。このデータを選手に伝え、“焦らずいつも通りやれば点は取れる”と選手たちに意識させた。野村主将が「そこで緊張がみんなほぐれた」と話したように、伊藤監督の“好プレー”がこのミッション達成の鍵になったのかもしれない。そんな伊藤監督は、12月10日に控える関東学園大との入れ替え戦について、「対策は立てられていると思う。なので、我々のできることは対策に対する対策」と話した。相手は1部チーム。“いつも通り”だけで通用するとは限らない。TEAM2017の最大目標、大学リーグ1部昇格まであと1勝。持てる全てをぶつけて、つかみとる。
(記事 桑原大樹)
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試合後コメント
伊藤洋平監督
(試合を振り返って)まず、これだけの多くの方々に応援していただいて、その前でしっかりと勝利できて良かったと思います。(先週、「いつも通りにやれば3点差以上は達成できる」と話していたが、いつも通りにできたか)そうですね。いつも通りというよりいつもより良かったんじゃないかと思います。統計を取ってみたんですけど、ここまで平均して1試合4得点取っていたので、いつも通りやれば4点以上は取れるという話と、前半と後半の最後の15分に良く点が入っていたので、前半なかなか入らなくてもいつも通り慌てずにやろうという話をしていました。(前半終了間際の2点が大きかった)そうですね。やっぱりポゼッションサッカーをしていると、あっちが前半後半のラストに集中が切れたり、守備のポジショニングがあいまいになったりするので、前半ラストに2点入ったのは偶然ではなく必然だったと思います。(後半は安堵もあって気が抜けた部分もあったか)まあ立ち上がりにまた1点入って、あとはあちらもあそこからひっくり返そうというモチベーションはなかったと思いますし、あとは後ろからしっかりと半面でコントロールして攻めたというところですかね。(ここ数試合、鈴木選手が以前より前でプレーしているように見える)まあそれも試合によるんですけど、今日の場合は相手がかなり引いていたので落ちる必要がないというか、ボランチすら落ちなくてもセンターバックで半面までいけたので、試合ごとの相手のフォーメーションやシステムの要因もあるかなと思います。(入れ替え戦出場が決まった)前節、関東学園大の監督が見にいらっしゃっていて、対策は立てられていると思うんですよ。なので、我々のできることは対策に対する対策、相手の想定以上にまた1週間1週間、1日1日を成長につなげていくことが大事かなと思います。(その前に関東リーグ最終節もある)次がLiga Studentの試合がありまして、その次の週が関東リーグですね。しびれる試合が続くので、今日の結果に満足せずにやっていきたいと思います。
野村智美(総4・作陽高)主将
(入れ替え戦出場を決めて、今の気持ちは)一安心なんですけど、自分たちの目標は1部昇格なんで、もう次に向けてスタートしなきゃなって感じですね。(試合を振り返って)自分たちがゲームをコントロールしているっていう前後半の中で、変に焦らずしっかり得点を決め切ることが自分たちの今日の試合の目標だったので試合全体を通してそれができて良かったなって思います。(下田グラウンドでの最後の試合で感じるものはあったか)そうですね。1年生からずっと試合に出ていたこともあって、何かまだまだ下田での試合が続きそうな気がしているんですけど、正直あんまり実感が湧いてなくて。でもやっぱり応援に来てくれた人の数とか、いろいろな人に言われる言葉を聞くと、「あぁ自分ここ最後であとはアウェイの試合で、しっかり良い結果を下田の人々にも報告しなきゃな」っていう感じですね。(3点差以上の勝利で入れ替え戦が決まる中、どのような気持ちで臨んだか)監督からも試合前にまず「この大学リーグでの平均得点4点以上取れているよ」っていうのを数字でも出されていて、いつも通りやれば、平均出せばその3っていうノルマを超えるっていう、そこで緊張がみんなほぐれたのもあると思うし、本当に3っていう数字にこだわらずに自分たちの強さをしっかり示して、入れ替え戦に臨みたいなって思ってたので、3という数字は通過点みたいな感じでした。(今季の大学リーグを振り返って)今季を通しても大学リーグを通しても、しっかり下から作っていくということを結構意識していて、どんな結果であろうとそれを曲げずにやってきて入れ替え戦に出場できるチャンスを自分たちでつかんだっていうのは、チームとしてもかなり大きな成果だなって感じていて。それを曲げることなく入れ替え戦でもしっかり勝ち切って1部昇格という結果をつかまなきゃなって思っているんで、そこは貫いてやった分成長の幅は大きかったかなって感じています。(入れ替え戦に向けて)自分たちがやってきたことをしっかり試合の中で示すことと、なかなか今季1部の相手とやる機会がなくて自分たちの強さっていうのを示すことができなかったので、それをしっかり示した上で1部昇格っていう結果につなげたいと思います。(まずは関東リーグ最終節を迎えるが)この前まではもう他力しか残ってなかったんですけど、しっかりと私たちに運が回ってきているっていう状態でもあるので、最後、武蔵丘短期大学は1部でも戦ってる相手で、その相手に対してしっかり勝ち切って、引き分け以上っていう条件はあるんですけど、勝ち切った中でダブルで1部昇格を絶対決めたいと思います。
中島菜々子(総3・十文字高)副将
(1部への挑戦権を見事につかみ取った。今の気持ちは)率直に嬉しいという気持ちと、ここからが勝負だっていう感じです。(3点差以上での勝利が必要という点は多少意識したか)結構意識はしていて。「前半で3点は取りたい」っていう話をチームでしていて、前半4点取れて良かったなと思います。(取れる自信はあったか)いつも通りやれば、チャンスを決め切るところで決め切れば、3点は行けるかなという気持ちはありました。(早い時間帯で1点取れたことで楽になれた)1点入って結構安心しました。1点入ればたぶん流れで入るかなっていう感じがあったので、安心しました。(あそこで逆に入っていなかったら分からなかった)そうですね。やっぱり焦っちゃうので。早い時間帯に取れたのは良かったと思います。(工藤選手、鈴木選手との関係性が絶妙で、やっていても楽しかったのでは)距離感も良かったし、1人が落ちたら1人が抜けるとかそういうのが感覚とかでできているので、すごく楽しいし、やりやすいです。(その中でも最近は鈴木選手がフィニッシャーに徹しているが、配給役は工藤選手と2人で担っているのか)そうですね。ポジション的にも紗理が高い位置にいるので。自分たちはリスク管理もあるので、そういう面では紗理に点を取ってもらえるのは心強いですし、自分たちは良いパスを配給できるように頑張ります。(大学リーグを通して、中央を崩しての得点だったりサイドからの得点だったりあるいはセットプレーからの得点だったりと得点パターンが多彩だが、1年間やってきて攻撃面での手応えは)これまでの慶應って“守って守ってカウンター”みたいな感じだったんですけど、今年は勝った試合も負けた試合も点は取れていて、得点力は今までに比べてあるので、自分たちでも手応えは感じています。(今日の試合では前半にノルマは達成していた中で、後半はどう試合を進めようとしたのか)3点差が必要だったので、やっぱり4点だとまだ何が起きるか分からなくて、積極的に行くのと、あとはみんな点を決めたくなっちゃっていたので、もうちょっとゴール前をシンプルに、シュートチャンスを狙っていこうと話していました。(ほぼ試合が決していたので仕方ないところもあるが、最後の方は試合がゆるんでしまった)これから先まだ関東リーグとか入れ替え戦がある中で、そういうところはしっかり締めて、良い形で試合を終わらせないといけないと思うので、そこのところの課題とはしっかり向き合っていきたいと思います。(下田グラウンドでの今季ラストゲーム、結果としては良い形で締めくくれたのでは)試合が始まる前に反対側を見たら、本当にたくさんの人が来てくれていて、すごく心強かったし、それに対して結果で返すことができたのかなと思います。(次は少し間が空いて関東リーグ最終節・武蔵丘短大戦となるが、引き分け以上でこちらも入れ替え戦出場が決まる。意気込みを)やっぱりここまで来たら両リーグ1部に昇格して、来年高いリーグ、高い環境で戦いたいという気持ちが強いので、1試合1試合目の前の試合に勝てるように頑張ります。
鈴木紗理(総1・十文字高)
(入れ替え戦出場が決まった今の気持ちは)3点差以上での勝利が目標とされていた中で、5-0で勝てて内容というよりも結果が出て安心しています。(試合を振り返って)前半から焦らず今までのサッカーをやっていこうという話をしていて、前半は予想以上の出来でできていたのかなと思います。後半は、相手のサッカーが変わったということもあり、相手に対応されたことが課題になったので、次の試合までに修正していきたいです。(3点差以上をつけなくてはいけないという状況でどのようなことを意識していたか)特に3点ということを意識すると気負ってしまうので、「今まで通り行こう」という思いで試合に臨みました。(自身の得点シーンを振り返って)裏に抜ける動きからの動きで2点取ることができて、今までは落ちて背負ってからの展開でのプレーが多かったので、新しい点の取り方ができてプレーの幅が広がって良かったのではないかなと思います。(ここ数試合、より高い位置でのプレーが増えているが)落ちるタイミングを考えてプレーするようにして、全て落ちるのではなくて、スペースが空いたら落ちるようにしています。その結果、前に出るプレーが増えたのではないかなと思います。(大学リーグ全試合を終えてチーム内得点王となった)得点数はあまり意識していませんが、FWとしては嬉しいことですし、もっともっと点を貪欲に取っていきたいなと思います。(関東リーグ最終節に向けての意気込みを)他力ではあったんですけど、残された試合に勝てばいけるという状況なので、勝ちにこだわって必ず勝って入れ替え戦に臨みたいと思います。
熊谷明奈(総1・十文字高)
(入れ替え戦出場が決まった)4年生のために勝てて良かったと思います。(今日は3点差以上での勝利が必要だったが)3点差という点差も大事だけど、「最後だから自分たちのサッカーをしよう」というのはチーム全体であって、そのために得点は前線の人たちに任せて、DF陣はもう何としてでも無失点で抑えるということは試合前に決めていました。(結果、無失点に抑えた)危ないシーンもあったんですけど、そこを無失点で抑えられて良かったかなと思います。(前節は1失点していた中で、改善した部分はあるか)前節の失点は集中が切れていたとかそういうところがあったので、前後半ずっと通してDF陣含めて攻守の切り替えというのは自分たちを中心に早めに声を掛けて、全体として攻守の切り替えのところを意識していたので、そこが今回の無失点に繋がったのかなと思います。(縦パスを狙うシーンも多かったが)トップの鈴木紗理が落ちてきてくれて、やっぱり紗理が落ちてきてくれるとそのまま前を向けてチームもチャンスになると思っているので、積極的に自分がボールを持ったら前を向いて、相手がずれてきたところを、いつも紗理が落ちてきてくれるので、紗理の方は良く見てました。(次の関東リーグ最終節に向けて)やっぱりディフェンスとしては、もう絶対無失点で抑えたいというのがあって、あとはチームとして何としてでも勝ちたいと思います。