【野球】あと1歩及ばなかった栄冠、最長の秋に終止符 明治神宮野球大会決勝 中央学院大戦

野球戦評

11月25日(木)明治神宮野球大会決勝 中央学院大戦 @明治神宮野球場

3冠、準優勝と過去最高を更新し続けた

慶大は初回に萩尾匡也(環3・文徳)の2点本塁打で先制すると、2回にも萩尾が2点適時打を放ち、試合を優位に進める。しかし4回、先発・増居翔太(総3・彦根東)が佐藤晃一(4年・聖光学院)に2点本塁打を被弾。5回にも再び佐藤の適時打と押し出し四球で2点を失い、1点差で終盤戦へと向かう。継投で逃げ切りを図った慶大だったが、6回に中継ぎ陣が打ち込まれ5失点。3イニングで4点を追いかける苦しい展開となった。それでも7回、廣瀬隆太(商2・慶應)の本塁打で反撃の狼煙を上げると、朝日晴人(環3・彦根東)の犠飛で2点差に。8回には橋本典之(環4・出雲)が適時打を放ち、ついに1点差。最終回にも一、二塁のチャンスを作り、同点、逆転への機運が高まったが、あと一本が出ず。8-9で敗れ、明治神宮野球大会準優勝となった。

 
慶大
中院大X

慶大バッテリー:増居、長谷川、●生井、森田、渡部淳、森下-福井

中院大バッテリー:畔栁、清水、古田島、○上原、山﨑-佐藤

 

慶大本塁打:萩尾2号2ラン(3回)、廣瀬2号ソロ(8回)

中院大本塁打:佐藤2号2ラン(5回)

 

◆慶大出場選手

打順守備位置名前(学部学年・出身校)
[7]渡部遼人(環4・桐光学園)
[8] 萩尾匡也(環3・文徳)
[5]下山悠介(商3・慶應)
[3]正木智也(政4・慶應)
[4]廣瀬隆太(商2・慶應)
[9]橋本典之(環4・出雲)
[2]福井章吾(環4・大阪桐蔭)
[6]朝日晴人(環3・彦根東)
[1]増居翔太(総3・彦根東)
長谷川聡太(経4・慶應)
生井惇己(総3・慶應)
森田晃介(商4・慶應)
渡部淳一(政3・慶應)
H綿引達也(商4・慶應)
森下祐樹(総2・米子東)
H宮尾将(商3・慶應)

東京六大学連盟初の4冠をかけた決勝の相手は関東五連盟第一代表・中央学院大。千葉県野球連盟、横浜市長杯を制した実力者であり、どこからでも点を取れる強力打線には気をつけなければならない。今大会初となる先攻での試合。慶大打線が初回から相手を攻め立てる。

バスター本塁打で先制点をもたらした萩尾

1回、先頭の渡部遼人(環4・桐光学園)が四球を選び出塁すると、2番・萩尾がバントの構えからバスターで強打。快音を残した打球は右翼席まで届き、貴重な先制弾となった。続く2回にも、8番・朝日のセーフティバントから1死二、三塁のチャンスを迎え、打席には再び萩尾。今度は外角の変化球を上手くすくって中前に運び、2回までに4得点を挙げた。

先発・増居は安打を浴びながらも粘投していたが、徐々に中院大打線の圧力に呑まれていく。4回、2番・武田登生(4年・中央学院)に三塁打を放たれると、続く3番・佐藤の打球はあわや本塁打かという一打に。適時打で1点を返され、なおもピンチは続く。その後、安打と四球で満塁となり、押し出し四球で点差は2点となった。

粘投を続けるも、悔しいマウンドとなった

じわじわと追い上げる中院大を突き放したい慶大は、5回に5番・廣瀬の四球と盗塁から2死三塁のチャンスを作り、相手の暴投で1点を追加。しかしその裏、走者を置いて再び佐藤を迎える。2ボールからの3球目、外寄りの直球をフルスイングされると、打球は左中間席へ。佐藤の2試合連続本塁打で、中院大ベンチの追い上げムードが高まっていく。慶大ベンチはここで増居から長谷川聡太(経4・慶應)にスイッチ。長谷川は走者を許しながらも後続を断ち切り、試合は1点差で後半戦へと進むこととなった。

慶大はこれまでチームを支えてきた中継ぎ陣で逃げ切りを図るが、中院大打線に捕まってしまう。6回、マウンドに上がったのは前日先発の生井惇己(総3・慶應)。疲れからか制球が定まらず、安打と四球で1死満塁のピンチを招く。続く武田に高めのスライダーを弾き返され、走者一掃の逆転適時二塁打に。ついに形勢は変わった。ここで生井に代わり、エース・森田晃介(商4・慶應)がマウンドへ。しかし、森田は本来の調子ではなく、6球連続ボールとなったところで渡部淳一(政3・慶應)に交代となった。続く打者に四球を与え、なおも満塁のピンチ。ここで5番・度会基輝(4年・拓大紅陵)に中前へと運ばれ、重い2点が刻み込まれる。後続を連続三振に切ったものの、残り3イニングで4点差。苦しい展開となった。

貫禄の1発で流れを変えた

1塁側スタンドに立ち込める重苦しい空気を払い除けたのは、2年生スラッガーの1発だった。7回、先頭で打席に立つのは廣瀬。フルカウントから高めの球をコンパクトに弾き返すと、打球はバッグスクリーンへ。この1発が呼び水となり、朝日の犠飛でさらに1点を返す。その裏には、公式戦初登板となる森下祐樹(総2・米子東)が好投を披露。2死から安打を許すも、主将・福井章吾(環4・大阪桐蔭)が盗塁阻止。流れを引き寄せるビッグプレーに、反撃ムードが高まっていく。8回には萩尾の安打、4番・正木智也(政4・慶應)の四球で一、二塁のチャンスを作り、打席には廣瀬。強く振り抜いた打球は綺麗な放物線を描き、ぐんぐんと伸びていく。本人は手応え十分、球場からも大歓声が沸くも、打球はフェンス手前で失速し中堅手に掴み取られた。それでも続く橋本典が右前適時打を放ち、ついに1点差で9回の攻撃を迎える。

最後まで橋本典の勝負強さが光った

勝負の9回、先頭の朝日が中前打を放つと、代打で打席に立つのは宮尾将(商3・慶應)。宮尾はバントの構えを見せるもバスターで左前に弾き返し、無死一、二塁のチャンスを迎える。しかし、渡部遼の打球は中堅手に阻まれ1死。続く萩尾の打球は投手正面へのゴロとなり併殺かと思われたが、執念のヘッドスライディングで間一髪セーフ。準決勝でサヨナラ本塁打を放った下山へと繋いだ。2死一、三塁。打てば同点、長打なら逆転、打てなければ試合終了。大観衆が固唾を飲んで見つめる中、2球目の変化球を捉える。しかし、やや詰まった打球は右翼手のグラブへ。8-9。わずか1点及ばず、4冠への挑戦は準優勝で幕を閉じた。

歓喜の輪を作ることはできなかった

あと1歩、あと1点届かなかった。優勝に大きく貢献した中継ぎ陣が崩れ、年間最大となる4点のビハインド。それでもベンチからの声が消えることはない。凄まじい気迫、そして執念。終盤の追い上げは圧巻であり、どちらに転んでもおかしくのない紙一重の大激戦だった。試合後、泣き崩れる下山や萩尾の肩を抱く4年生は晴れやかな表情を浮かべていた。

萩尾の肩を抱く米倉

4冠という壮大な目標にはあと少し届かなかったが、日本で最も長く大学野球をできたチームは中央学院大と慶大のみ。このチームで1日でも長く野球をするという目標は果たされたのではないか。3冠+準優勝という輝かしい実績。それを作り上げたのは紛れもなく4年生だった。学年ミーティングを重ねることによって生まれた結束力、ベンチの明るいムード。後輩たちにとって模範となるチーム造りや野球への取り組み方は、来年以降もしっかりと繋勝されていくことだろう。多大なるプレッシャーの中で戦い続けた、個性豊かで最高の4年生たちに「ありがとう」と伝えたい。

森下の好投が反撃ムードを高めた

また、今大会を通して光ったのは3年生以下の活躍だった。準決勝でサヨナラ本塁打を放った下山、2試合連続本塁打と覚醒した萩尾、大会で2勝を挙げた増居、攻守に存在感を表した朝日、別格の打力を発揮した廣瀬、公式戦初登板で快投を見せた森下。名前を挙げ始めたらきりが無い。4年生と最長の秋を送ることができたのは、彼らの活躍があったからだ。これからのチームを支えるのは、この舞台を経験した選手たちだろう。慶大を除く五大学ではすでに新チームが始動し、来季に向けた戦いはもう始まっている。この涙を勝利への活力に変え、最強のチームが残した2つの課題、早慶戦勝利と大学4冠を成し遂げてもらいたい。

(記事:林亮佑、写真:國本葉月)

◆選手コメント

福井章吾主将(環4・大阪桐蔭)

最後まで主将としてチームを支えた

4冠は簡単ではありませんでした。今年のチームは4年生を中心とし、本当に良いチームでした。優勝こそ出来ませんでしたが、とても価値のある準優勝だったと思います。

日頃より弊部を応援してくださる皆様に勝利をお贈りすることは出来ませんでしたが、この借りは3年生以下が返してくれると思います。これからも温かい応援を宜しくお願いします。

4年間ありがとうございました。このチームの主将で本当に良かったです。

◆打撃成績

   
[8]渡部遼四球一ゴロ四球四球中飛中飛
[7] 萩尾右本②中安見三振二ゴロ中安投ゴロ
[5]下山二ゴロ左安二ゴロ左飛見三振右飛
[3]正木遊ゴロ見三振右飛右飛四球
[4]廣瀬左3右中2四球中本①中飛
[9]橋本典二ゴロ空三振一ゴロ死球右安①
[2]福井空三振遊ゴロ四球右安空三振
[6]朝日一安左飛中安左飛①中安
[1]増居四球三飛空三振
長谷川
生井
森田
渡部淳
H綿引一邪飛
森下
H宮尾左安

◆投手成績

 投球回数打者数球数安打三振四死球失点自責
増居4 1/3218384244
長谷川0 2/331601200
生井0 2/352620244
森田0 0/32600211
渡部淳0 2/331712000
森下262312000

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