【野球】大怪我から復活したリリーフエース!前田晃宏〜秋季早慶戦直前インタビュー〜

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2024年度の秋季リーグ戦は「5位」と苦しんでいる慶大。一方の早大は、圧倒的な強さで連戦連勝。あと1勝で優勝というところまで来ている。ここまでの戦いは力の差が見受けられる両チームだが、慶大にも意地がある。いよいよ今週末に迫ってきた早慶戦。リーグ戦の一部ではあるものの、対抗戦として意味合いも強いこの一戦に燃える選手たちに話を聞いた。今回は、肘の大怪我から復帰し2年ぶりのマウンドで躍動するリリーフエース・前田晃宏(商3・慶應)投手!

──今季ここまで6試合に救援登板して0勝1敗、防御率2.45、5奪三振

直近の法大戦で打たれてしまい、「打たれる事もある」と割り切ってはいるがあの場面でチームの力になれず残念。大方は頑張っている。チームで2番目に登板試合回数が多い中で、やりたいことはできている。

 

──2年ぶりのマウンド、どのような気持ちで臨んだ

1年生の秋以来怪我で投げられなくて、この2年間は僕の野球人生のどん底。光が見えないような中で、怪我も4個ほど重なるもので、病院も6個くらい周りました。病名をつけてもらうまで時間がかかったし、その最中にも新たな怪我が見つかるなど大変だった。試合に出れないのも自分の野球人生で初めての経験で、野球人として無価値な人間だなと悪い方向に考えてしまった。自分から野球を取った時に無価値な人間だなと思ってしまった。野球もやっている意味があるのかと思うくらい、練習するのが嫌になっていた。その中で家族や友人、チームメイトが助けになってくれた。温かく見守ってくれた人や直接鼓舞してくれる人もいた。一番きつかったのは投げられるようになってからで、3月くらいに復帰しても球も遅く試合でも打たれる。去年までは治ったら投げられると思っていたが、実際はそうではなかった。スタッフ転向してチームのためになった方がいいのではと毎晩のように考えた。同期が「お前はまだやれる」と励ましてくれたり、家族はもう少し頑張れると送り出してくれた。先輩後輩も「まだできる」と声をかけてくれた。この2年間支えてくれる人の素晴らしさ、ありがたさを心の底から感じてこれた。監督、助監督も期待してくれて、復調した途端一軍で起用してくださった。何としても結果を出したいと思っていた。今回の秋リーグは支えてくれた人への感謝と恩返し。自分が抑えることが何より恩返しになる。それを見てもらいたい。

 

──復帰のマウンドを完璧に抑えたときの感情

試合前から、もっと言えばキャンプの前から自分の役割や起用される場面が見えてきて、抑えを任せてもらえると思っていた。初戦は出番がなく2戦目落とせない試合だったので、4点差あるとはいえ監督の期待に応えたいという一心でマウンドに上がった。「自分ならできる」と言い聞かせ、応援してくれてる人のことを考えて、ここでやらないと終わりだという気持ちで投げた。抑えられてほっとした気持ち。神宮にもう1度立てたということが嬉しかったです。

 

──法大1回戦、2被弾の原因は

持ち味である制球力が少し無かったです。直接の原因は、ストライク先行できなくて、甘い球を投げてしまったことですね。

 

──マウンドに上がる時のルーティンは

細かいことはたくさんあります。ロジンを触るタイミングと触り方。合言葉を言ったり。清原(正吾、商4・慶應)さんからボールをもらう際に、清原さんから小ネタをやってもらうくだりがあったり。合言葉は秘密(笑)。

 

──いろんな場面展開で任される難しさは

無いですね。やること決まっているので。与えられたイニングを3人で切るという仕事なので。

 

──最も自信のある球種は

チェンジアップが1番自信あります。その次にカットボール。チェンジアップは「前田のチェンジアップはすごい」と部内からも定評があり、決め球にも使います。

 

──早慶戦で注目して欲しい点は

抽象的にはなるが、立ち姿であったり堂々としたようなたたずまい。マウンドに上がる時はできるというマインドセットをして、強気でいくので堂々としたピッチングを見ていただきたい。

 

──フィールド外で大切にしていることは

アップでゴミが落ちていたら拾ってみたり、試合に応援してくれた方に感謝を伝えるとか。アップの時から平常心、ポーカーフェイスでやっていく。練習では、ルーティンワークを崩さないことを意識している。アップのストレッチに入る順番、トレーニングからキャッチボールの始め方などたくさんあります。

 

──野球における座右の銘は

2つあります。1つは父から貰った言葉で「柔よく剛を制す」というもの。僕は身体がそこまで大きくないし、球速もそんなに出せてないので、スピンのかかった質の良い真っ直ぐを綺麗に四隅に投げる。変化球を綺麗に低めに決める。力だけではなく、丁寧に投げる。もう1つは、祖父から教わった言葉で「Don't ever ring the bell」。アメリカの海軍大将の大学の卒業式からの抜粋ですね。きつい訓練を耐え抜いてこられた方で、兵舎の真ん中に鐘がありそれを鳴らせば訓練をやめて家に帰れる。世界を変えたいなら、鐘を鳴らしてはならないというもの。怪我で苦しんでいる時にとても響いたので大事にしています。

 

──偉大な父の重圧は感じる

多少、少なからずはあります。ただポジションが違うからあまり比較されないですね。いや、そんなに無いかな。皆さんが思ってるほど重圧はないです(笑)。

 

──背番号31は

自分では選べないです(笑)。監督が余った番号から選んでくださっただけですね。

 

──好調の早稲田打線をどう抑える

1〜9番まで良い選手が並んでいて、打率の表を見ると3割以上、4割打つ打者が多くいて、打ってない選手でも2割後半というような打線ですけど、上位打線下位打線問わず1人1人にフォーカスして事前にどんな球種を投げるか対策しますし、細かいところまで試合の前に突き詰めていく。これは前提として、試合になったら自分の直感、勝負勘を大事にしてデータで追いきれない部分を分析します。前の打席でどういう球で打ち取られたかなどまで頭に入れて攻めていきたいと思います。

 

──早大で対戦したい打者は

強いてあげるなら前田健伸(商3・大阪桐蔭)選手。出身が山口県で、広島出身の僕と近い。中学の時から彼の名声が届いていたし、これは私事ですが僕の仲良い友達の「はとこ」だそうで勝手に親近感が湧いています。1年生の時にフレッシュトーナメントで打たれている印象があるので、対戦した時には抑えたいですね。

 

──早慶戦への意気込み

今季はチームは力及ばず下位に低迷していますが、そんなのは関係ないので。伝統ある早慶戦。プロ野球より早慶戦という人もいらっしゃる中で、そんな学生野球の頂点に自分が出場する機会をいただけるかもしれないので、僕自身やる気満々。心が燃え上がっているし、言い表せない気合いが入っている。出番があれば、絶対に最高のパフォーマンスをして今季の早慶戦の勝ち点を取りたい。

 

(取材:大泉洋渡、記事:中村米我)

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