83回目を迎えた、早慶バスケットボール定期戦。両校のプライドをかけた、伝統の一戦が「バスケの聖地」代々木第二体育館で幕を開けた。序盤から格上・早大の勢いに押される展開となった慶大だが、後半にかけてじわじわとリズムをつかみ、最終クォーターには26得点を挙げて猛追。勝利には届かなかったものの、粘り強さと闘志あふれるプレーで“慶大らしさ”を体現した一戦となった。
2025/5/31(土) @国立代々木競技場第二体育館 | |||||
第83回 早慶バスケットボール定期戦 | |||||
| 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 |
慶大 | 13 | 12 | 12 | 26 | 63 |
早大 | 28 | 27 | 24 | 20 | 99 |
◆慶大スターティングメンバー◆ | |||||
F | #4 中山璃音(文4・湘南) | ||||
C | #5 網野梨加(環4・Irvine High) | ||||
F | #7 河村さくら(文4・松陽) | ||||
G | #10 岡部愛(薬3・仙台二) | ||||
F | #12 砂山ひかる(政3・慶應女子) |
第1Qは開始早々、慶大ファウルで2本のフリースローを与え、先制点を献上する。さらに2ポイントを許し4ポイントを追う中、まずは副将・網野梨加(環4・Irvine High)がジャンプシュートで2ポイントを返す。テンポの速いバスケットが展開される中、慶大はエース・河村さくら(文4・松陽)が華麗に相手をいなして得点を重ね、一進一退の攻防を繰り広げる。しかし、10点台に突入すると、徐々にビハインドを広げられてしまう。立て続けにシュートを決められ、10ー14、13ー23、13ー27とダブルスコアに。残り1.9秒には、慶大のファウルからフリースローで1ポイントを追加され、13ー28で第1Qが終了する。

力強い得点力で存在感を放った河村さくら(文4・松陽)
何とか反撃の糸口を掴みたい第2Q、開始早々チーム1の長身を誇る濵月綾菜(商3・長崎西)がシューティングファウルを受けフリースロー2本を放つが、味方のバイオレーションを取られるなど得点には結びつかない。その後、早大に正確なスリーポイントシュートを決められ、点差をさらに広げられる展開になってしまう。慶大は河村を中心に攻撃を展開するが、シュートはリングに嫌われ続け、大きなランを許してしまう。この状況を打開したのはコートに再び入った岡部愛(薬3・仙台二)だった。第2Q最初の得点をスリーポイントシュートで奪うと、直後に再びスリーポイントシュートを沈め会場を大いに沸かせる。身長の高さで劣る慶大は終盤に入っても粘り強いディフェンスで何とか早大に食らいつくが、早大の注目ルーキー・橋本芽衣(スポ1・京都精華)に3本目のスリーポイントシュートを決められるなど、前半を25−55で折り返した。

攻撃の流れを引き寄せた岡部愛(薬3・仙台二)
ハーフタイム中、後半の早大への逆襲に向けて慶大は笑顔で円陣を組んだ。第3Q、開始早々からディフェンスで奮闘し、相手のリバウンドを奪いブレイク。自陣優勢の攻撃を試みるも、しばらくは無得点の時間が続く。その中でも開始約2分、主将・中山璃音(文4・湘南)が体を張ってボールを獲得。そのまま自陣に運ぶと、岡部がノーマークでパスを受け、冷静にスリーポイントを決める。さらに2分後、山形楓(商1・函館中部)からロングパスを受けた岡部は外側からディフェンスの隙間を抜けシュート。その後、今度は山形がセンターライン付近から自ら攻め込む。体制を崩しながらも相手選手のプレッシャーに耐え、レイアップイン。残り約3分時点でフリースローも含めスコアを37−73とした慶大。その後もリバウンドへのセットプレーから多彩な攻撃展開を魅せるも得点には結び付かず、点差を詰められないまま第3Qを終了する。

攻めの姿勢を見せ続けた山形楓(商1・函館中部)
追い上げたい第4Q、慶大は網野のシュートで先制。その後は何度かシュートチャンスをつくるが、決定力に欠け得点は伸び悩む。しかし、中山と網野による主将・副将ダブルチームで守備のギアを上げると、直後に河村が華麗なレイアップを沈め、攻勢に転じていく。ここから慶大は泥臭くも意地のプレーを連発。砂山ひかる(政3・慶應女子)がスリーポイントのこぼれ球を拾い得点を決めれば、網野はリバウンドやゴール下で奮闘し、フリースローでも加点する。さらに、野見山洋実(文4・聖心女子)のパスカットから中山がスリーポイントシュートを決めるなど、攻撃のテンポが徐々に整っていく。残り3分台になると、ディフェンスを交わし決めたゴール下など、網野が怒涛の反撃を牽引。吉田千里(理4・田園調布雙葉)や今井楓子(商4・吉祥女子)も攻守にわたり気迫のこもったプレーで流れを支える。終盤には、網野が圧巻のパスカットを見せ、河村がスピンムーブからのレイアップで続くなど、最後まで勢いを緩めることはなかった。

最終Qの攻勢を引っ張った網野梨加(環4・Irvine High)
執念のディフェンスも光り、第4Qだけで26得点を奪取した慶大。最終スコアは99-63と開いたものの、ベンチメンバーを含む全員が一丸となって走り抜けた最終クォーターとなった。最後の最後まで粘りのバスケットを体現し、闘志に満ちた40分間は「慶大らしさ」の詰まった一戦となった。

試合終了後には早大選手とハグを交わす場面も
▼以下、選手インタビュー
主将・中山璃音(文4・湘南)

主将・中山璃音(文4・湘南)
ーー今日の試合を振り返って
やっぱり、楽しかったです。試合の入りはプレーもあまり良くなかったのですが、第4Qに4年生で出場した場面では意地を見せられたかなと思います。
ーー主将として迎える最後の早慶戦でしたが、どのような心境で迎えましたか
不安はなかったです。やっぱり自分達(慶大)はコーチが対策を考えて作戦を練ってくれて、試合に出る選手も出ない選手もチームのためにできることを考えて行動してくれるので、私はみんなが安心してプレーできるように、自分は緊張しないように心がけて試合に臨みました。
ーー実際の試合は、前半は大きくリードされましたが、後半に入りリズムを取り戻したような印象でした。どのようなことを意識していましたか
第3Qに入る前、9番の野見山洋実(法4・聖心女子)が「円陣を組もう」と言って熱い言葉をかけてくれたんです。あと20分しか試合が残っていなかったので、最後力が余らないように、自分ができること全部やり切ろうという気持ちで臨みました。
ーー今後のリーグ戦への意気込み
今年の目標は、入替戦出場、2部昇格です。2部昇格は、私が1年生の頃からずっと掲げてきた目標なのですが、これまで成し遂げられていないので、今年は絶対に達成します!
副将・網野梨加(環4・Irvine High)

副将・網野梨加(環4・Irvine High)
ーー今日の試合を振り返って
試合の入りがあまり良くなくて、自分たちのやりたいプレーが格上の相手に通用せずに点差が開いてしまって。でも最後の方は、「4年生で最後まで戦い切ろう」ということで、チームとしても盛り返すことができました。
ーー最後の早慶戦でしたがどのような思いで臨みましたか
もちろん緊張もしていましたが、それよりとにかく楽しみでした。前日も朝3時に起きちゃって(笑)。それくらい楽しみでした。
ーーご自身のプレーで印象に残っているのは
やっぱり2本のバスケットカウントを取れたことです。第3Qまであまりパッとしないプレーが続いていたのですが、最後の最後でしっかり得点に繋げられたのが嬉しかったです。
ーー流れが早稲田に傾きそうな時、どのようなことを意識していましたか
「オフェンスがうまくいかなくても、ディフェンスでしっかり足を動かさなければいけない」とチームで話していたので、当たり前のことを徹底することを意識していました。
ーー最後はコートに4年生が揃う場面もありました。どんなお気持ちでしたか
同期が6人いるのですが、もうこんなに最高な舞台で、みんなで一緒に戦えて、本当に幸せだったと思っています。とにかく一瞬一瞬を大切にして楽しもうと思っていました。
#7 河村さくら(文4・松陽)

河村さくら(文4・松陽)
--今日の試合を振り返って
正直に、チームとして早稲田の強さに圧倒された部分がありました。早稲田は個人の力はもちろん、リバウンドやアウトなど、細かい基礎を誰もが徹底していて、さすが格上のチームだなと感じました。
ーー最後の早慶戦でしたがどのような思いで臨みましたか
やっぱり、自分たちの代で早稲田に勝って終わりたいという思いで、チームで一つになって戦った試合でした。
ーーご自身のプレーで印象に残っているのは
最後のバスケットカウントを決めた場面かなと思います。残り時間が少ない中で、意地と気持ちだけでねじ込んだようなシュートだったので、それをしっかり決めきれたのは良かったなと思います。
ーー秋のリーグ戦に向けてどう調整されますか
2部昇格のためには、限られたチャンスの中でいかに得点できるか、1回1回のアウトやリバウンドをやり切れるか、という部分が大事になってくると思っています。そういったところをチームで誰一人欠けることなく徹底して、全員で勝ち切るバスケを目指して質を高めていきたいです。
#10 岡部愛(薬3・仙台二)

岡部愛(薬3・仙台二)
ーー今日の試合を振り返って
自分たちが積極的に攻められていた時間は点数に繋がっていましたが、受け身になってしまった時にやはり流れを持っていかれてしまったので、そこが反省点でした。後半は自分たちで流れを引き寄せられて良かったと、試合を通して思いました。
ーー第2Qではスリーポイントシュートにより流れを変えましたが、意識したことはありますか
点が入っていない時間、みんなでゴールを向くことができていませんでした。積極的にシュートを打つのが自分たちの持ち味だったのですが、それが欠けてしまっていたので、自分が先陣を切って打とうと意識しました。結果的にそれが点数に繋がったので良かったです。
ーー今後のリーグ戦への意気込み
秋のリーグ戦では、今年こそ必ず目標を達成したいので、4年生だけでなく下級生の私たちも一丸となり、チーム全員で一戦一戦勝ちにいけるように頑張りたいと思います。

取材を受けていただき、ありがとうございました!
(取材:長掛真依、本橋未奈望、大泉洋渡、島森沙奈美、野村康介、新妻千里、土屋乃々佳)