【ラクロス(男子)】「ここからって時に…」突如断たれた“日本一”への道 明学に完敗で悔し涙の引退/第37回関東学生ラクロスリーグ戦 FINAL4vs明学大

男子ラクロス

「勝てば全国、負ければ引退」そんなFINAL4の会場は、これまで何度も死闘を乗り越えてきた大井ホッケー競技場。対するは、U20日本代表のスーパーエース・奥山廉汰郎(経営3・世田谷学園)擁する明学大。スタンドから満員の観客が見つめる中、言葉にならない緊張と高鳴る鼓動に包まれ、運命の60分が幕を開ける。第1Qは、敵陣に迫りながらも思うようにオフェンスを展開できず、明学大に先制点を献上。なんとか主導権を奪い返したい慶大だったが、15分の間に0ー2、0ー3、0ー4とビハインドが膨らんでいく。第2Qには、AT・福田天真(法3・國學院久我山)が意地の1点を奪うも、パスが繋がらず。決定機が生まれないまま1ー5で後半へ。第3Qでは、さらに1点を許し1ー6。第4Qには、福田天真が再び明学大の鉄壁を打ち破り1点を返すも、立ちはだかった明学大の壁は高く。3点の追加点を許し、2ー9で完敗。FORGEシーズンの終わりは、突然に訪れた。

♢得点♢

 1Q2Q3Q4QFINAL
慶大
明学大
得点者福田天福田天

◇スタメン

ポジション#背番号 名前(学部学年・出身高校)
AT
#3 池田朋史
(商4・慶應)
#4 福田天真
(法3・國學院久我山)
#52 鈴木孝人
(法2・学習院高等科)
DMF#0 山田洸土
(政4・慶應NY)
LMF#17 関根瑠偉
(政4・慶應)
DF#5 峰岸諒
(環3・慶應湘南藤沢)
#16 増田友翔
(経4・慶應)
#19 築地泰志
(経2・本郷)
G#2 岩城敦大
(法3・慶應)
FO#33 鈴木ケン春海
(商4・慶應NY)

「Let’s go 春海!」リズムの良いチャントと裏腹に、高鳴る鼓動。FO・鈴木ケン春海は、一度サークルの外に下がり、大きく深呼吸。そして、大井ホッケー競技場のフィールドに膝をつく。スタンドから満員の観客が見つめる中、言葉にならない緊張感に包まれて運命の60分が幕を開ける。最初のポゼッションこそ奪われてしまうが、この舞台で怪我からの復帰を果たしたDF・増田友翔(経4・慶應)がチェイスを勝ち取り、すぐさま慶大オフェンスに。主将/AT・池田朋史(商4・慶應)がシュートを放つが、明学大Gに阻まれ先制点とはならない。すると7分、瞬く間にシュートを叩き込まれ0ー1。重みのある1点、そして明学サイドの歓声が緊張を増幅させる。スタンドからは、「慶應ラクロス 負けるわけがないさ」というチャントが響き渡る。しかし、パスカットされてボールを失った直後。明学大エース・奥山廉汰郎の迷いのないシュートに圧倒され、立て続けに2失点。さらに終盤、DMF・福田崇斗(商2・本郷)が必死のマッチアップで明学オフェンスに喰らいつくも、ゴール右から一突き。0ー4の4点ビハインドで、最初の15分を終える。

相手選手とクロスを交えるFO・鈴木ケン春海

「慶應なら大丈夫。」そんな想いを胸に臨んだ第2Q。FOでポゼッションを勝ち取るも、再びパスミスでポゼッションを失ってしまう。守備では、DMF・山田洸土(政4・慶應NY)とDF・築地泰志(経2・本郷)が厳しいマッチアップで相手のシュートコースを消しにかかる。さらにDF・増田友翔がサイドライン際でうまくボールダウンを誘い、すぐにボールを奪取。なんとかオフェンスに繋げるも、その先のパスが繋がらない。再び明学大ポゼッションに転じると、相手オフェンスにうまく2対2に持ちこまれ、ディフェンスが崩れた隙に失点。0ー5と点差を広げられてしまうが、13分。3年生エース・福田天真が、慶大の沈黙を打ち破るゴールでまずは1点を返す。そして、G・岩城敦大(法3・慶應)がファインセーブで失点を防いだところで前半が終了する。

昨季から鉄壁の砦を築いてきたG・岩城敦大

「今までで一番早い15分」1ー5で迎えた後半開始のFOは、相手のプッシングにより慶大がポゼッションを獲得。一気に反撃へ転じたい慶大は、AT・池田朋史、AT・福田天真、MF・山崎将英(法3・慶應志木)らが積極的にシュートを放つも、シュートコースを狭められゴールネットを揺らすことができない。さらに、明学大DFの強烈なチェックでクロスをはじかれ、ボールダウン。DF・増田友翔が身体を張ったチェイスでボールを奪い返すが、シュートを決めきれずにポゼッションは再び明学大へ。DMF・関志翔(政4・國學院久我山)が厳しいマッチアップで応戦するが、悔しくも捲られ1ー6。その後もLMF・関根瑠偉(政4・慶應)の決死のボールダウンからDMF・山田洸土がスクープするも、その先が繋がらず。前年度の全日本選手権大会でも、後半ビハインドの場面で使われた「慶應ラクロスの選ばれし者たちよ 勝利を掴もうぜ」のメロディーが、大井メインピッチに響き渡る。追加点を奪えないもどかしさを抱えながら、気づけば15分が終了。1ー6で、最後の15分へ。

FINAL4で怪我からの復帰を果たしたDF・増田友翔

「まだ終わらないで。」運命を分かつ第4Qは、今季最大の5点ビハインドという苦しい展開。これ以上の失点は避けたい慶大だったが、皮肉にも開始早々1ー7とリードを広げられてしまう。慶大の勝ちを信じながらも、信じたくても折れそうな心を支えるように、そして4年生と一緒に全国の舞台を戦えるように。DMF・山田洸土とDF・峰岸諒(環3・慶應湘南藤沢)の必死のボールダウンから、AT・福田天真がゴールで仲間を鼓舞し2ー7。その後は、MF・中西海(経4・海城)、MF・大類慈英(商3・慶應)らも懸命にクロスを振りかざすが、電光掲示板にスコアを刻むことはできない。焦燥感が募る中、残り6分で痛恨の8失点目。慶大はクロスチェックで最後の賭けに出るが、勝利の女神は微笑まず。クロスチェック失敗により、残り5分で3分間の数的不利を背負う。両校の意地と気持ちがぶつかり合い、グラボから激しい混戦が繰り広げられる。最後まで、幾度もゴールに迫った慶大だが、明学大の牙城を崩すことはできず。ほどなくして、現実を突きつける無情のホイッスル。明学サイドが歓喜に包まれる中、慶大選手たちはその場に崩れ落ちる。スコアは2ー9。悔しいが、慶大の完敗だった。

チーム随一の得点力でチームを鼓舞し続けたAT・福田天真

立ち上がれない4年生。そんな先輩に、来年の慶大ラクロス部を担う福田天真がぐっと涙を堪えて寄り添う姿が印象的だった。想定外の負け方に、誰一人として「終わり」を受け入れることができないまま最後の挨拶を終えた。歓喜と悲痛な沈黙が交錯する大井ホッケー競技場。その景色を、この悔しさを胸に、来年こそは日本一の景色を。来年こそはきっと。

山田洸土の肩にそっと手を置く福田天真

▽以下、選手インタビュー(池田朋史、増田友翔、関根瑠偉)

主将/AT・池田朋史選手(商4・慶應)

アーセナル出身ながら主将を務めたAT・池田朋史

ーーいろんな想いを抱えて臨んだFINAL4だったと思います

本当にチームが一番良い状態で臨んだので、負けるイメージとかも全然沸いてなかったから。本当に勝つことだけを考えてた。でも一番良い状態だったからこそ、目の前の勝利にこだわれなかったのかなと。相手の方が一戦一戦に懸けている気持ちが大きかったからこういう結果になったと思っています。1プレー1プレーの重み、詰めの甘さが出たのかなと思います。

ーー試合内容を振り返って

普通に明学は強かったですね。ハーフのオフェンスもディフェンスも、フェイスオフのシチュエーションも、流れの持っていき方も、完全にやられたなという感じです。相手の方が上手でした。

ーー六大戦は苦しみながらも、早慶戦、リーグ戦と勝利を積み重ねてきました

めちゃくちゃ良いチームになったなというふうに思っていて、本当にここからって時に負けてしまった。チーム全体としては本当に良い雰囲気で来ていて、チーム全員が勝ちしか見ていなかったと思うから…本当に良いチームだったなと思います。

ーー後輩にどんな言葉をかけてあげたいですか

これをバネにして頑張ってほしい。その一言しか言えないかな。

DF・増田友翔(経4・慶應)

随所で好プレーが光ったDF・増田友翔

ーー怪我からの復帰戦・FINAL4を終えて

負けたという実感がまだなくて、明後日の練習にもまだまだ自分は行くつもりだったので。急に終わっちゃったなと…実感がないです。

ーー試合内容を振り返って

明学はずっとやりたいことをやれていて。自分たちは今シーズン練習試合とかでもずっと明学に勝っていたのでどこかで慢心ではないけれど、向こうの方が気持ちが強かったのかなという流れになってしまいました。

ーー六大戦は苦しみながらも、早慶戦、リーグ戦と勝利を積み重ねてきました

リーグ戦が始まる直前まで全然うまくいかないことの方が多くて、めちゃめちゃ悩んだけど、勝てなくても同期で同じ方向を向いてやってこられたので、すごい感謝しています。

ーー後輩にどんな言葉をかけてあげたいですか

今シーズンは後輩がすごい助けてくれて、みんなすごい上手い選手が多いので、来年は同じ方向を向いて必ず日本一をとってほしいなと思います。最後に自分が試合を観にいきたいなって心の底から思っています!

LMF・関根瑠偉(政4・慶應)

長らくチームの中核を担ってきたLMF・関根瑠偉

ーーいろんな想いがあると思いますが、FINAL4を終えて

完敗ですね。悔しいけど、自分の中ではもうやりきったので。やり切って負けたら仕方ないと思います。明学の方が単純に強かったです。

ーーDFリーダーとして、4年生として素晴らしいプレーが光るシーズンでした

本当に最初はうまくいかないことしかなかったし、六大戦のシーズンとかはすごい苦しかったですけど、徐々に良いチームになっていったなというか。チームとしてもまとまっていったし、ディフェンス組織もまとまっていったし、最後の試合は崩壊しちゃったけど、これも含めて今年のチームかなと。本当に苦しかったけど、4年間で一番苦しかったけど、今思えば一番楽しかったです。

ーーそんな同期とのラストシーズンは

本当にこんなに仲の良い代はなかなかないし、みんながそれぞれの立場で活躍しているような、支え合いながらもがいて、活躍して、本当に綺麗事ではなく良い代だったな。自分はこの代で良かったなと、最後は本当にちょっと良い終わり方じゃなくて申し訳ないけれど、またどっかで集まれたら嬉しいなって思います!

ーー後輩へどんな言葉をかけてあげたいですか

本当に不甲斐ないことに、良くも悪くも後輩に支えられたシーズンだったなというふうに思っているし、ラクロス大好きな人も多いし、上手な人も多いから、いろいろ不安なことも多いと思うけれど、もがいていればなんとかなるし、必死に一個一個やっていたらいずれ結果はついてくるから、この負けを忘れずに切り替えて頑張ってほしいです。

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