【競走】箱根への問いに立川で答える 雪辱を期す慶大の現在地・第103回箱根予選会展望記事/箱根駅伝予選会直前特集2026⑥

競走

いよいよ明日に迫った箱根駅伝予選会。本記事では、今年の予選会の展望をお届けします。近年の予選会の分析に加え、今年のチーム体制やエントリーメンバー、注目選手を紹介します。これを読んで、当日は選手たちを応援しましょう!

 

2025年、失意の30位

予選会後の集合での安田陸人(商4・開成)

2025年10月18日(土)、第102回箱根駅伝予選会が立川で行われた。前年から競技開始時刻が変更され、午前8時30分にスタート。32年ぶりの本戦出場を目指した慶大だったが、主力の不調や途中棄権が重なり、総合30位という結果に終わった。前年の29位から順位を1つ落とし、悲願の本戦出場には届かなかった。

 

鍵は「気象条件」

予選会を左右する要素の一つが、当日の気象条件だ。特に21.0975kmを走る予選会では、気温の違いが後半のペース維持に大きく影響すると考えられる。

第101回に出走した成沢翔英(環4・山梨学院)

その傾向が顕著に表れたのが、猛暑の中で行われた第101回予選会だ。1位の立教大学と10位の順天堂大学を比較すると、5kmまでの平均ラップはそれぞれ15分12秒、15分13秒とほぼ差がなかった。しかし5〜10kmでは16秒の差が生じ、その後も10〜15kmで16秒、15〜20kmで18秒と、区間ごとの差が広がっていった。立教大学も後半になるにつれて平均ラップが15分13秒、15分38秒、15分53秒と低下しており、暑さによる負荷がレース後半に表れたと考えられる。

第102回に出走した田口涼太(政3・慶應志木)

一方、比較的走りやすい気象条件だった第102回では、異なる展開が見られた。1位の中央学院大学は、上位10人の平均ラップが15分06秒、15分00秒、15分01秒、14分54秒と推移。前半から無理に飛ばすのではなく、10km以降もペースを維持し、終盤にかけてさらにペースを上げる形となった。

この二つの大会を比較すると、暑い条件では「前半でどれだけ速く走れるか」よりも「後半の失速をどれだけ抑えられるか」が重要になり、気温が低い条件では、一定のペースを維持した上で終盤にペースを上げることが、より重要になると考えられる。

 

今年は第102回に近い、比較的気温の上がらない条件でのレースが予想される。そうなれば、暑さによる大幅な失速を避けること以上に、涼しい気候を生かしてどこまで高いペースを維持できるかがポイントになるだろう。

ただし、涼しいからといって序盤からペースを上げすぎることが必ずしも有利とは限らない。むしろ、5km、10kmと余裕を持って通過し、15km以降もペースを落とさず、最後の5kmでさらに上げられる選手が多いチームほど、10人の合計タイムでは強さを発揮すると考えられる。

今年の予選会では、5km地点の順位だけでなく、10kmから15km、15kmから20kmにかけて各大学がどれだけペースを維持できるかに注目したい。第101回のような「後半に差が広がるレース」になるのか、それとも第102回のように「後半にペースを上げるレース」になるのか。比較的涼しい気候を味方につけ、終盤まで余力を残せるチームが、最後のボーダー争いで優位に立つと予想する。

10月12日時点の天気予報では、予選会当日の17日午前9時頃、立川市は晴れで気温20度、湿度60%、北北東の風が秒速2m。当日の降水確率は0%で、現時点ではランナーにとって比較的走りやすい気象条件が見込まれる。ただ、日中の最高気温は25度の予報で、レース中の気温の上昇には注意が必要か。(Apple『天気』アプリ参照)

 

今年の慶大のチーム体制

昨年の予選会を支えた旧4年生たちが今春に卒業し、長距離ブロックはトップダウンの組織から、ボトムアップの組織へと変化していった。

今年で大学5年目になるエース・安田陸人は、長距離ブロック長に就任。昨年の予選会でチームを支えた石野・田口・弓田は3年生となり、上級生としてチームを引っ張る立場になった。そして慶大の異端児・成沢翔英が予選会に復帰。さらにケニア出身の留学生、クリントン・レマションがチームに加わった。

それでも長距離ブロック全体の選手数は依然として少ないままである。予選会の出走には最低でも10人は必要なことを考えると、1人の怪我や離脱がチームにとって致命的になることは間違いない。

 

エントリーメンバー
選手名学部学年
金丸蒼医6
芦野清志郎理4
稲生健人経4
杉森星彦理4
成沢翔英環4
安田陸人商4
石野日向商3
田口涼太政3
弓田一徹環3
松波一翔環2
村松駿平総2
川嶋悠理1
クリントン・レマション環1
吉川響葵文1
渡邊航成総1
*赤字は昨年出走した選手

昨年出走した6選手を中心に、15人がエントリー。当日は最大12人が出走となる。半分以上が、箱根予選会の出走が未経験のメンバーで構成されているのが特徴だ。

 

注目選手

注目選手は、悔しさを知る3人。

安田陸人(商4・開成)

長距離ブロック長の安田陸人(商4・開成)は昨年、脚の痛みを抱えながら出走し、16km過ぎで途中棄権。それでも、走れない時期を乗り越え、5月の関東インカレでは3000mSCで塾記録をマークし、4位入賞と復活を果たした。自ら「5年目は必ず見たい景色を見る」と意気込む安田が、今度こそ立川で激走なるか。

田口涼太(政3・慶應志木)

田口涼太(政3・慶應志木)が、陸上を本格的に始めたのは大学から。昨年の初ハーフマラソンとなった予選会ではチーム最速だった。今年4月には疲労骨折から復帰し、関東インカレのハーフマラソンなど大舞台を経験。今年は「個人40番」を掲げ、チームを更に引っ張る意気込みだ。

成沢翔英(環4・山梨学院)

今大会1番の注目選手は、2年前に予選会を経験し、今年予選会復帰を果たした成沢翔英(環4・山梨学院)だ。今年4月には1500mで塾記録を樹立。6月には、日本選手権の1500mに出場した。中距離で磨いたスピードをハーフマラソンでどう発揮するか。

他にも、昨年チーム3位の走りを見せた弓田一徹(環3・法政二)、同5位の石野日向(商3・横浜国際)ら中核に加え、ケニアから加入したクリントン・レマション(環1・M-PESA Foundation Academy)もエントリー。経験者の底上げと新戦力の力が、慶大の巻き返しには欠かせない。

 

予選会突破へ

「なぜ慶應は箱根駅伝に出ないのか」

こんな声が世間ではよく聞こえる。これは純粋な疑問なのか、それとも哀れみなのか、はたまた皮肉なのか。いずれにしろ、慶應という看板の大きさゆえに、期待や注目は重くのしかかる。

その問いに対する答えは単純で、残酷でもある。「予選会を突破できていないから」だ。箱根路に辿り着くには、予選会を10位以内で突破することが必須。近年の結果を考えれば、これが決して容易なものではないことは明白である。しかし、ここで立ち止まるわけにはいかない。長距離ブロックの先代たちが燃やしてきた情熱は、今の選手たちの心に確かに受け継がれているのだ。何度箱根に嫌われても「白K」は立ち上がり、挑み続ける。

 

運命の一戦は、10月17日8時30分号砲。この挑戦を、沿道やテレビの前で見届けよう。

 

記事:竹腰環、中原亜季帆、森田紗羽