遂にこの日がやって来た。昇格を目標に2ヶ月を戦い抜いた慶大が挑むのは、1部リーグ復帰の為の入替戦。1部10位の中大と聖地・代々木第二体育館で相見えた。2部リーグで優勝しても、ここで負けては意味がない。過去に2度の降格入替戦を体験したのも、全てはこの日の勝利のために――。絶対に勝つ、という強い信念と覚悟を持って挑んだファーストステージは、終盤までもつれる激しいシーソーゲームに。それでも、最後まで1部相手に臆することなく自分達のバスケットボールを見せつけた慶大が93-74で勝利。重要な初戦で白星を手にした。
2013/11/05(火)@国立代々木競技場第二体育館 | ||||||
第89回関東大学バスケットボールリーグ戦 入替戦第1戦 vs中央大 | ||||||
1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 | ||
慶大 | 22 | 16 | 27 | 28 | 93 | |
中大 | 17 | 19 | 22 | 16 | 74 | |
◆慶大スターティングメンバー◆ | ||||||
PG | #16 伊藤良太(環3・洛南高) | |||||
SG | #21 西戸良(総1・洛南高) | |||||
SF | #14 大元孝文(環2・洛南高) | |||||
PF | #4 蛯名涼主将(法4・洛南高) | |||||
C | #23 黒木亮(環2・延岡学園高) | |||||
◆主要選手スタッツ(背番号/選手名/成績)◆ | ||||||
#16 伊藤良太:32得点、7リバウンド、#14 大元孝文:16得点 |
悲願の1部昇格に向けて負けられない慶大は、満を持してリーグ戦と同じ5人をスタメンとしてコートへ送り込む。リーグ戦17勝1敗の勢いそのままに試合に入りたいところだったが、開始直後は中大に主導権を握られる時間が続くこととなる。慶大の外のシュートが落ちている開始2分の間に、中大のトランディションオフェンスに圧倒され6失点。厳しい立ち上がりとなる。対する慶大も、蛯名からの合わせを黒木が決めてこの試合初得点を記録するが、その後も中大の攻撃を止められず。3分間で2-11と大きくリードを奪われる。しかし、このままズルズルと悪い流れを引きずる訳にはいかない慶大の反撃はここから。ディフェンスリバウンドをしっかりと保持すると、伊藤が速攻から連続得点。直後のプレーで同点となる3ポイントも成功させてみせた2部得点王は、流れを引き戻す立役者となる。堪らずタイムアウトを要求した中大だが、その後も慶大の勢いは止まらず。黒木の豪快なブロックショットから矢嶋瞭(総4・福大大濠高)が速攻を走り逆転に成功すると、Q後半は大元が得意のロングレンジを沈めてチームを牽引。22-17で1Qを終える。5点リードで迎えた入替戦初戦の第2Q。1Qの攻勢を緩めない慶大は、大元のレイアップシュートや伊藤の3ポイントで得点を伸ばすことに成功。開始3分で2桁10点差にまでリードを広げる。このまま慶大ペースで進むかと思われたこの試合だったが、相手は1部リーグを戦い抜いたチーム。そう簡単に勝たせてはもらえない。ボールマンに対するプレッシャーを強めた中大のディフェンスに無理なシュートを打たせられることとなった慶大は、これまでとは一転、シュートミスを連発。その間に中大の素早いオフェンスに翻弄され、27-28、再逆転を許してしまう。更に、中大のエースである#5谷口光貴の豪快なワンハンドダンクも炸裂。このまま引き離されていくかに思われたが、ここでも伊藤が再度奮起。2本の3ポイントを沈め、開きかけていた点差を何とか繋ぎとめる。すると終了間際、このプレーがなければ「チームがおかしくなっていたかも知れません」と佐々木HCが振り返る、大きなターニングポイントが待っていた。西戸のテイクチャージから獲得したラストプレーで、大元が値千金のブザービーターとなる3ポイント。このプレーで38-36とし、前半をリードして終えることとなる。
互いに譲らぬシーソーゲーム。迎えた3Qは、激しい点の取り合いとなる。慶大は、伊藤と大元の個人技で。中大は#31流田和輝の外角シュートとインサイド陣のリバウンドで。互いに長所を活かしながら得点を稼ぎ合う第3Qは、点差が動かない手に汗握る攻防に。中々突破口を見出せない中、その流れを変えたのは、途中投入された本橋祐典(環4・佼成学園高)だった。ゴール下で体を張る本橋の投入によって、それまで苦しめられていたディフェンスリバウンドの問題を解消すると、慶大は徐々にリズムを取り戻していく。その本橋がゴール下で連続得点をマークすると、更には残り1分。活躍を見せるビッグマンの懸命なルーズボールから伊藤がスクープショットを沈め、会場のボルテージは最高潮に達する。しかし、この試合最高のハイライトシーンは、この直後だった。3Q残り1秒、右45度でボールを保持していた伊藤が投じた3ポイントは、ファウルを知らせるホイッスルと同時にネットに吸い込まれていく、ブザービーターとなる3ポイント・バスケットカウントに。試合の流れを決定付ける4ポイントプレイで、65-58とリードを広げて最終Qへと突入する。投入された権田隆人(政3・慶應高)の2本のミドルシュートで幕を開けた、運命の最終Q。追いすがる中大は、差を縮めるためにオールコートディフェンスを展開。慶大はこのディフェンスに立て続けに2度引っかかってしまい、佐々木HCも堪らずタイムアウトを要求する。このタイムアウトで軌道修正を図った慶大は、黒木のジャンパー、西戸のレイアップシュートで点差を再度2桁に広げると、落ち着きを取り戻すことに成功。3Qに引き続きインサイドで活躍をみせる本橋や、得意のミドルシュートで得点を重ねる権田の活躍で、中大の反撃をいなしていく。そんな慶大の勝利が確実なものとなったのは、残り1分を切ろうとしていたその時。ディフェンスリバウンドを拾った権田が相手選手に倒され、これがアンスポーツマンライクファウルに。このプレーで獲得したフリースローを権田が1本沈め、逆転を目指す中大の灯火を完全に鎮火させた。その後も、最後まで手を抜かずに得点を積み重ねた慶大は、93-74で重要な入替戦第1戦を白星で飾ってみせた。
「先に勝ったほうが精神的にも相当有利になる」(権田)。今日の勝利がただの1勝ではないことは、過去に2度の入替戦を経験してきた選手達が最も理解している。入替戦という短期決戦における初戦の白星の重要度は、それだけ計り知れないものがあるのだ。独特の雰囲気に飲まれることなく、「慶應のバスケットが出来た」(大元)ことは、何よりも大きな収穫だといえよう。今日の1勝で慶大が優位な立場に立ったことは、謙遜しても変わることない、誰の目から見ても変わることない事実である。しかし、だからと言って気を抜いてはいけない。入替戦は2戦先勝制。1つ勝って、それで終わりではないのだ。選手達の口から一様に聞こえてきた言葉は、「明日勝って1部昇格を決めたい」(伊藤)。油断もない。慢心もない。あるのはただ、1部昇格という揺るぎない信念のみ。第3戦までもつれ込ませない。明日、大学バスケの聖地である代々木第二体育館には、『若き血』の合唱が鳴り響くこととなるだろう。
(記事: 大地一輝)
◆試合後コメント◆佐々木三男HC
上級生がちょっと硬かったですね。でも中大が、昨年のウチと同じでココという時に中大らしさがなかったので、やっつけられずに上手く行きましたね。(中大戦への準備)リバウンドを粘って来るというのが中大のイメージだったので、それをやらせないということです。それと、#5のところがリバウンドもシュートも上手いので、ディフェンスでしっかり守ろうと。後は、トランディションを早く、ということは言っていました。(リバウンドに関する手応え)本橋がボールに絡んでいたということは、いい材料だとおもいますね。(前半の厳しい時間帯について)苦労する時間帯もありましたが、今日も頑張ったのは西戸でしたね。バックコートのディフェンスとベリメーターの2つのプレーがなかったら、チームがおかしくなっていたかも知れません。(Q終了間際のクラッチシュートに関して)今までは4Qだけはちゃんとコントロールしよう、という話をしていたのですが、今回の秋シーズンではそれぞれのQの残り20秒くらいの時間は早攻め、速攻をやらないで、セットプレーをしっかりやって、最低でもシュートに行ってファウルをもらって──得点取れれば一番いいんですけれど──、というスタイルに変えました。それがここに来て、いい方向に出ているかなと思います。(中大#5に対するディフェンス)オフ・ザ・ボールの動きが少なかったので、それが助かりましたね。それがあると、うちのディフェンスが対応しなければいけないのでノーマークが生じると思うんですが、立って受けてからのプレーだったので。そういう意味では守りやすかったです。(後半からはキックアウトプレーが出来ていたが)前半は伊藤が外からかなり放っていたので。本人は入ると思って打っていますし、こういう試合なので、入る入らないの確率は半分ですし本人の感覚に任せていました。ただ、あそこで簡単に放ってしまっていたので、秋にやっていたキックアウトやピッチパスというのが、ちょっと出来てなかったかなと思います。ただ、大元が後半からしっかりと割っていって、「もっと早くシュート打てばいいのに」とみんな思ったかも知れませんが、それをやると全員がそうなっちゃうので。伊藤がもう少し抜いて攻めていけば、もうちょっといい感じになるかなと思います。ただ、今日は大元がその役割を担ってくれました。(明日へ向けて)僕は30点開けないとダメだよ、という様に言ったのですが、3回戦の試合なので。2試合の場合は得失点差があるので、少しややこしくなるんですが、取り敢えず明日は1点でも勝てばいいので、勝つことにこだわります。もう一回中大の#5を守らないといけません。それと、もうちょっと伊藤にプレッシャーがかかると思っていたんですが、今日は意外とそうでもなかったので、明日もこのままの状態で行って欲しいなと思うのですが。相手がフェイスガードをやったりすれば、こちらも普通の気持ちではやれない筈なんですが、選手も言っていましたが、そうなった時にこそもう一回伊藤にやらせる。という話をしていたんですが、今日はあまりありませんでしたね。明日もないことを願います。
[F]矢嶋瞭(総4・福大大濠高)
第1戦ということでみんな硬かったなかで、それでもしっかり勝ち抜けたというのはすごく良かったなと思います。(中央大学に対して)相手の5番が中心の選手だったのでそこにプレッシャーをかけて、外のシュートだったり5番の選手にボールを持たせなかったりということをすごく集中して今日は行いました。(1Qで矢嶋選手の得点によって流れが変わったように感じたが)やはり1Qの入り皆ほんとうに動きがかたくて、シュートも入ってなかったですし、顔も硬かったので、僕が代わりに入ったときにしっかり声をかけてほかに流れを変えようと思って入ったのが流れを変えるいいきっかけになったのだと思います。(明日に向けて)今日勝って、2日で決めたいという思いがあるので、もう1回みんなで気を引き締めてチーム一丸となって中央大学を倒したいと思います。
[G]伊藤良太(環3・洛南高)
勝ったことが一番の収穫で、結果が大切なので、結果にこだわって明日も勝ちにいきたいです(準備してきたことは)長いリーグ戦の積み重ねと、この1週間いい準備が出来ていて、自分たちの持ち味である前からのディフェンスで相手のキーパーソンを封じることができたと思います。(中大について)早いタイミングでシュートを放ってくるチームで、結構がむしゃらにやってくるので気持ちの部分で負けないようにすることと、オフェンスリバウンドを意識しました。(3年連続での入替戦となったが)本当に慣れとかはなくて、凄い緊張感を持ってやれたと思います。(自身のプレーを振り返って)40分通して攻める気持ちを持つことができましたが、熱くなってしまった部分があって、そこは修正していかないと思っています。冷静さを保っていきたいです。(前半相手に流れを渡してしまう場面もあったが)オフェンス面では足が止まってしまい、シュートが単調になってしまったのが反省点で、そこは自分が周りを動かす必要があると思います。また、ディフェンス面では受け身になってしまいました。(要所での3Pシュートが光ったが)先生からもどんどん攻めていけと言われていました。(中大の執拗なマークにあったが)前半1対1を結構決めたことで相手のマークがきつくなりました。でもどんなプレッシャーがあってもやるべきことは同じです。(明日に向けて)今日良かったことは継続して、悪かったところは修正して明日勝って1部昇格を決めたいです。
[F]権田隆人(政3・慶應高)
入替戦では先に勝ったほうが精神的にも相当有利になるので、今日の勝利は本当に素晴らしい結果だったと思います。(中大に対して)僕たちが今までどのように2部で勝ってきたかということを見せるまでだと思っていたので、対策というよりは自分たちの力をどうやって発揮するかということをリーグ戦後から突き詰めてきました。(途中出場の際に心掛けたことは)途中から出て弱気になってはいけないですし、特に今日に関しては入れ替え戦ということもあって強気で頑張りました。(4Qでの活躍は)前半ふがいない形でしたし、後半はスタートから出させてもらって、4Qではどういう形でチームに貢献しようかと常に考えていたので、その結果が得点という形に結びついてよかったです。前半のプレイを先生に叱咤されて、後半はやってやろうという気持ちが強かったので、うまく修正できてよかったと思います。(明日の第2戦にむけて)今日の勝利はそれとして切り替えて、明日の1試合に全力で取り組まなければいけないと思うので、今日から明日の朝にかけてしっかり準備をして、明日勝って絶対に1部昇格を勝ち取りたいと思います。
[G]大元孝文(環2・洛南高)
前半は競る形になってしまったんですけど、結果後半でああいう形で慶應のバスケットが出来て、本当に第一戦を勝てて良かったです。(今日の収穫は)割と前半、みんな切羽詰ってバスケをやっていた感じがしたんですけど、後半になって伸び伸びとプレー出来た結果が、ああいうトランジションゲームで中央に対して優位に立てたことですね。あとは後半にディフェンスが機能したのでそこで流れを掴むきっかけになったと思います。(試合の入りについて)やっぱり硬かったですね。入れ替え戦の空気は今までのリーグ戦とは全く違うので、そこでみんな少し硬くなってたんですけど、矢嶋さんのフリースローをきっかけに、徐々に自分たちのバスケットが出来るようになったと思います。明日の試合は出だしを改善しないといけません。中央は勢いのある相手だと思うので。(明日に向けて)やっぱり後半にあのような流れで勢いをつけて勝てたっていうことを2戦目にまでつなげて、第3戦にまで持ち込まれないように明日で決めたいと思います。
[G]西戸良(総1・洛南高)
自分にとっては入替戦という初めての舞台で、自分なりのプレーができたことがとても嬉しかったし、チームとして1試合目勝てて、明日に向けていい流れが作れたと思います。(中大への対策は)あまり身長的には変わらないチームなので、ディフェンスで仕掛けて、簡単なゴール下のプレーとかで得点を積み重ねるのを意識して練習していました。(序盤の入りはよくなかったが)やっぱり動きが硬くて、練習通りのプレーというか、慶應らしさが出せてなかったんですけど、オフェンスでできなかったときに、ディフェンスでうまく機能してそこから流れをつかめたので、今日はそこが良かったかなと思います。(時間が進むにつれて良いプレーが目立ったが)僕自身も緊張していたんですけど、ベンチに下がった時に先輩たちのプレーを見て、やっぱりこういうプレーをしなきゃいけないという気持ちを入れることができて、そういうとこから切り替えて、上手くできたと思います。(明日に向けて)2連勝して勝ちたいので、今日はゆっくり休んで、明日もう一度中央大学の特徴とかをおさらいして、相手のやりたいことをやらせないように、プレーを最初からうまくできるように頑張っていきたいと思います。
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