【バスケ】王者相手に一歩も譲らず。インカレ敗退も、拍手の渦に包まれる vs東海大

 

試合終了を知らせる笛と共に、うなだれる選手たち

試合終了を知らせる笛と共に、うなだれる選手たち

インカレの初戦を快勝で飾り、慶大は今シーズンの勢いを未だ維持し続けている。最高のコンディションの彼らが二回戦で挑んだのは前年度王者・東海大。圧倒的な身体能力と豊富なキャリアを誇る選手が揃う大学王者を相手に、どこまで慶大が慶大らしいプレーで善戦を繰り広げられるかが期待された。格上相手にも臆することなく全員が自らの役割を完遂し、一進一退のシーソーゲームを展開した慶大。接戦の末、底力の差がスコアに反映されてしまい白星を奪い取るには至らなかったが、誰もが魅了される一戦となった。

2013/11/28()@国立代々木競技場第二体育館
65回全日本大学バスケットボール選手権大会 vs東海大
  1Q 2Q 3Q 4Q 合計
慶大 17 16 19 21 73
東海大 20 17 23 24 84
慶大スターティングメンバー
PG #16 伊藤良太(3・洛南高) 25得点、4リバウンド
SG #15 西戸良(1・洛南高) 6得点
SF #14 大元孝文(2・洛南高) 9得点、7リバウンド
PF #4 蛯名涼主将(4・洛南高) 5得点、8リバウンド
C #23 黒木亮(2・延岡学園高) 10得点、8リバウンド
その他出場選手
C #7 本橋祐典(4・佼成学園高) 1ブロック
PG #9 平石健斗(4・慶應高)  
SF #10 矢嶋瞭(総4・福大大濠高) 12得点
PF #11 権田隆人(3・慶應高) 2得点
PG #13 吉川治瑛(3・世田谷学園高)  
PG #17 福元直人(2・福大大濠高) 4得点、2アシスト

エースとして、得意のジャンプシュートで存在感を示した矢嶋

得意のジャンプシュートで存在感を示した矢嶋

試合開始直後に大元のレイアップで慶大が先制。その後、主導権を何としても握りたい慶大は、「身体が大きな相手でも15だったら僕らにも分がある」と語った蛯名主将の言葉通り、序盤から厳しいディフェンスで東海大に自由を許さない。高さのある相手インサイドにも負けじと対抗し、リバウンドから西戸が安定感のあるミドルシュートを沈めて得点を重ねてゆく。このまま点差を突き放したい慶大だったが、王者東海大も黙ってはいない。器用なハンドリングで慶大を翻弄する相手ガードに痛恨のファールを誘われると、徐々に東海大のペースに引き込まれ始める。バックドアカットからの失点や、綻びの無い東海大ディフェンスに慶大は苦戦。しばらく無得点の時間が続く。このもどかしい時間帯を打開したのは矢嶋だった。「出たら積極的に持ち味を出そうと思った」と、ショットクロックが残り3秒を刻む中で、持ち前のミドルを確実に決めた。このプレーが導火線となり、今季得点源の一つとして確立した黒木のミドルも続き、開いた点差を地道に巻き返す。東海大がシュートを落とし始めると、蛯名がここぞばかりに3ポイントを沈める。更には2mを誇る相手センターから大元がリバウンドを奪取。終盤は完全に慶大ペースで試合が進み、1720で第1Qを終えた。

蛯名は、主将として体を張りチームを鼓舞し続けた

蛯名は、主将として体を張りチームを鼓舞し続けた

拮抗した試合展開のまま突入した2Q。掴んだ流れを離したくない慶大は、開始直後に東海大のエース・#24田中大貴のレイアップを黒木がブロック。会場は大きく湧き上がる。東海大に精神的ダメージを与えると共に、慶大は更に勢いを増すと、ここで伊藤が懐に仕込んでいた刀を抜刀。リーグ戦でも幾度となくチームを救った3ポイントが、ここでも決まり、遂に慶大が逆転に成功する。その後も手堅い得点で確実にリードを増やしていく。ディフェンスでも、伊藤が激しいプレッシャーで東海大のキーマンである#0ベンドラメ礼生を徹底マーク。攻撃のオプションを制限されてフラストレーションが溜まる東海大を尻目に、「相手が引いた時にどんどん圧をかけて、走る」(蛯名主将)という慶大らしいプレーを体現した。しかし、そう簡単に流れを掴ませてはくれないのが王者。東海大はリーグ戦で全勝優勝を果たした王者としての底力を見せ、僅かな残り時間で一気に逆転されてしまう。対する慶大も、矢嶋のカットインから得点や、伊藤の3ポイントなどで追い上げるも、再度逆転に至ることは出来ず。33-37と4点のビハインドの接戦のまま、後半戦へと折り返した。

 

伊藤は、王者相手に25得点。その得点能力が関東トップクラスであることを証明した

伊藤は、王者相手に25得点。その得点能力が関東トップクラスであることを証明した

勝負の第3Qは東海大ボールでスタート。この時点で、蛯名が3回、矢嶋が2回、伊藤が2回の個人ファールを負っていることもあってか、慶大のディフェンスは、幾分慎重になってしまう。すると、立ち上がりから、前半はなんとか抑えていたインサイドで、連続して失点を喫する。一方、前半で33得点を記録したオフェンスも、ハーフタイムを境に、更に引き締めてきた、東海大の堅いディフェンスを前に、完全にシャットアウトされてしまい、一瞬にして2桁まで点差を更に広げられてしまうことに。しばらく慶大サイドに目立った動きが見られず、暗雲が立ち込める中、投入された福元は、「オフェンスもディフェンスも両方において集中して取り組めた」との言葉通り、落ち着いたアシストやシュートで、流れを変えようと試みる。その福元のプレーが起点となって、矢嶋や黒木が得点していくが、やはり一筋縄では東海大のディフェンスを攻略するには至らず。なかなか点差が縮まらない、もどかしい展開が続く中、ここでも会場の注目を集めたのは、慶大の絶対的スコアラーである伊藤だった。この大事な局面で、立て続けに3ポイントを沈め、会場の注目を一身に集めた。この伊藤の活躍もあり、危機的な状況に追い込まれながらも8点のビハインドと、点差を最低限に抑え、東海大を射程圏内に留めたまま、運命の最終Qへ。

必死に戦い続けた蛯名は、4Q途中で退場に。チームのためにプレーし続けた主将には、大きな拍手が寄せられた

必死に戦い続けた蛯名は、4Q途中で退場に。チームのためにプレーし続けた主将には、大きな拍手が寄せられた

4Q序盤、東海大のシュートが連続して落ち、慶大にチャンスが訪れる。伊藤のフリースロー、更に矢嶋が身を呈したタフショットで3ポイントを決めると点差は3点にまで縮まる。一気に流れに乗るかと思われたが、焦りからかパスミスやファンブルなど雑なプレーが目立ち始める。更には積み重なったファールによるフリースローを相手が着実に決め、地味ながらも痛恨の失点を被ってしまう。この絶体絶命の状況で活躍を見せたのは、またもや伊藤。緩急を利かせたカットインで、上背で劣る相手からも得点すると、3ポイントに対するファールで与えられた3本のフリースローも全て決め、優勝候補を一層焦らせる。その後はなかなか10点の差を縮められず一進一退の攻防が展開される中、残り1分で蛯名主将が5ファールで退場。精神的支柱としての役割を全うし、希望をチームメイトに託した。残り時間が1分を切ると慶大は最後の反撃に出る。大元の3ポイントを皮切りに、黒木がセカンドチャンスを生かしてゴール下を沈め、権田も秒読みの残り時間でミドルシュートを決めた。会場中が固唾を飲む激戦の末、東海大にあと一歩及ばずにタイムアップ。73-84というスコアで慶大のインカレは幕を閉じた。

 

コートに立つ後輩たちを、笑顔で送り出す蛯名。試合終了の瞬間まで、主将としての役割を全うした

コートに立つ後輩たちを、笑顔で送り出す蛯名。試合終了の瞬間まで、主将としての役割を全うした

押しも押されもせぬ優勝候補を相手に素晴らしい善戦を繰り広げた慶大。いかに強い相手にも必死で競合する粘り強さは、今シーズンの一連の試合で手にした賜物だろう。「インカレ優勝」というひとつの大目標は叶わず、「構想通りの試合にはならなかった」(佐々木HC)ものの、この東海大戦を含む秋以降の試合で「全員が成功体験をすることができた」(黒木)ことはこの上ない収穫となったはずだ。この試合をもって、4年生たちは引退となる。「このチームでもっと長くやりたかった」(蛯名)と、誰もが思えるチームを作り上げたと共に、コートの内外を問わず、常にチームのために活動し続けた彼らなくして、今年の素晴らしい慶大は誕生し得なかっただろう。後輩達も、口をそろえて「本当に4年生についてきてよかった」(伊藤)と言うように、4年生11名の誰もがチームにとって欠かせない存在だったのだ。「もう何も不安は無い」という矢嶋の言葉通り、強豪揃いの一部リーグで、来シーズンは慶大の強さを見せ付けることに大きな期待が懸かる。「来シーズンは4年生が築き上げてくれた良い部分を継続して、インカレ優勝を成し遂げたい」(伊藤)―――。彼らの視線はもう先を見据えている。

(記事: 埜村亮太)

◆試合後コメント◆

今季でHC職を勇退される佐々木HCにとっても、この試合が慶大でのラストゲームとなった

今季でHC職を勇退される佐々木HCにとっても、この試合が慶大でのラストゲームとなった

佐々木三男HC

構想通りの試合にはなりませんでした。こういう風にやればもう少しいい試合が出来るという準備が、中途半端でやり切れませんでした。僭越ながら1年間の目標がインカレ優勝、1部昇格、早慶戦勝利ということで、そのうちの1つしか達成出来てなくて、最後の試合でも大事な場面でシュートを決めれないようでは、アップセットというのはあり得ないので。構想外です。(ディフェンスの出来について)まあまあ出来たかなとは思いますが、陸さん(東海大・陸川章HC)の方が、後半の頭でベースラインのところを3本ついてきて、我々としてはあそこを攻められることが弱点になるディフェンスですので、相手の方が上回っていたということでしょう。(リバウンドについて)動きがあるディフェンスなので、シュートの感覚が少し狂って落ちる、ということは相手も想定してリバウンドに来ると思うんですけども、パスレーンをディナイされて悪いシュートを打つとなると、リバウンドのタイミングも相当狂ってくるはずなので。リバウンドのところは、今日は頑張ったのではと思っています。後半はまだ確認してませんが、前半は2つ負けているくらいでしたので。(後半にシュートを決め切れなかったが)本来は大元がもっと決まってくるはずなんですけど、最後に3ポイントが入りましたが、それでは間に合いませんので、あれがもう少し決まって欲しかったかなと思います。ただ、チームとして決めきれないことが差だと思っています。(東海大に対するオフェンス)今回はフォーメーションをほとんど作らなかったので。最後は少し、ナンバープレーが欲しかったなという気もしましたが、それで2部リーグも乗り越えて来たので。この2週間の練習でナンバープレーを作るべきとは思っていたのですが、そこまで手が回りませんでしたね。やっぱりナンバープレーは欲しかったですね。(この試合で引退となる4年生について)彼らが1年の時は決勝まで行っているチームだったので。それから3部との入替戦やったり1部との入替戦やったりで、忙しい学年だったんですが、素質的には二ノ宮達と同じくらいのものがあったと思っています。それを上手く育てきれなかったのは、私自身がちょっと悔やまれます。もうちょっといいチームになったのではないか、と思います。(その成長が予定通りいかなかった理由は)1つは、これを言ったら話にならないんですけど、スターターにならなきゃいけない人間が1年間ケガで出られなかったり、大事な試合の前にスターターがケガしたりということもあって。そういうことも、私がチーム管理を出来てなかったということだと思っています。今年1年は、お陰様でそういうことがなかったので、口酸っぱく言えば、必ず出来る選手達だと思っていますので。インカレ決勝まで行って、下級生の頃にそういう教育がちょっと疎かになったということで、大事な選手がちょっとケガしたりしましたし、そこが上手く行かなかったかなと思います。もうちょっと自己管理が出来るような指導が必要かなと。反省です。

※選手のコメントは、後日別途でアップ致します※

コメント

タイトルとURLをコピーしました