＠バッティングパレス相石スタジアムひらつか
紅白戦では慶大対決が実現した
７月１１日～２０日にかけてオランダで開催される第２７回ハーレム・ベースボールウィークに出場する大学日本代表の選考合宿が行われ、慶大からは谷田（商３）、加藤拓（政２）が参加した。紅白戦では全国から集まった代表候補選手を相手に、それぞれが持ち味をアピール。見事に谷田、加藤拓とも大学侍JAPAN入りを果たした。
日の丸を背負うのはオレだ――。平塚の地に、全国各地から５１人のトッププレイヤーが集結した。３日間を通して行われる練習、紅白戦の結果をもとに、最終的に選ばれた２４名の選手のみが、侍JAPANのユニフォームに袖を通す権利が与えられる。慶大からの参加者は今春最優秀防御率のタイトルを獲得した加藤拓（政２）とベストナインに選ばれた谷田（商３）。ともに大学キャリアハイの素晴らしい成績を引っ下げての参加となったが、それだけでは選ばれないのが全日本代表。持ち味を存分に出し代表の座を射止めるため、勝負のときが始まった。
合宿２日目の午前はフリーバッティング、シートノックなどが行われた。アップ中は選手同士が和やかに言葉を交わす場面も。また、シートノック中の声の掛け合いからも、彼らにとってこの合宿で競うライバルたちは、同時にお互いを高め合う仲間であることが伝わってくる練習風景だった。
逆方向に鋭い打球を飛ばした谷田
午後は紅白戦。試合は投手が１人２回を投げ、打者は１６人制、守備はローテーションで行う特別ルールで行われた。加藤は白組４番手投手、谷田は紅組１４番打者として出場した。
谷田の初打席は４回。対する投手は國學院大・田中大輝。今春東都大学１部リーグでベストナインを受賞したエース左腕だ。初球から積極的に振りファールにしたあとの２球目。振りぬいた打球は逆風を切り裂きながらレフトへ伸びていき、そのままスタンドへ。記憶に新しい早慶戦での優勝決定本塁打を彷彿とさせる、逆方向へのライナー性の本塁打。「すごく緊張していた」と振り返ったが、その緊張をはねのけ見事持ち前の長打力を見せつけた。谷田は第３打席でも創価大・田中正義から左越二塁打を放ち２打数で２長打の大活躍。代表入りへこれ以上ないほどのアピールに成功した。
一方の加藤拓は対照的に苦しい展開。７回、登板直後に明大・高山に安打を許し、打席に迎えるは谷田。奇しくもこの代表合宿の舞台で慶大対決が実現する形となった。しかし加藤本人も試合後「調子が悪かった」と話したように、制球が定まらず慶大対決は四球という結果に。ピンチが拡大した加藤はその後立大・佐藤拓に２点適時三塁打を許し２失点。さらに８回にはこの回先頭の早大・武藤が放った打球が脚に当たるハプニングがあり、予定の２回を投げきれず降板。普段から対戦のある六大学の打者に手痛い一打を浴びる悔しいマウンドとなってしまった。
合宿２日目は谷田と加藤拓で明暗が分かれた。バッティング練習時からライナーで鋭い打球を飛ばしていた谷田。紅白戦でもたぐいまれな実力、そして現在の調子の良さを存分に発揮することができた。しかし加藤拓はこの日四球後の長打など、課題が露呈してしまう投球となった。しかし慶大の右腕エースとしてこのままでは終われない。谷田に負けじと、最終日の巻き返しに期待したいところだ。
◆２日目選手コメント
加藤拓也（政２）
（本日を振り返って）調子が悪かったので、悪いなりに投げようと思ったのですが、点を取られてしまったのでもったいなかったです。（脚に打球が当たったが具合は）はじめ当たったときは腫れていましたが、今はアイシングをして大丈夫だと思います。重傷ではないです。（全日本合宿という舞台だが）特に意識はしていないので、できることをやろうと思って挑んでいます。（仲良くしている選手や、技術を吸収したいと思う選手は）同学年の澤田（＝立大）とは仲良くしています。色んな活躍している選手が集まっているので、特に誰とかはなく色んな物を盗んでやっていきたいなと思っています。（今後についての意気込み）全力でやるだけかな、と思います。
谷田成吾（商３）
（１打席目の逆方向への本塁打について）すごく緊張していたんですけど、１本出てホッとしました。（２打席目は加藤拓投手との慶應対決となったが）あまり調子がよさそうではなかったので加藤も大変そうでしたけど、その中でしっかり球を見極めてフォアボールを選ぶことができたのでよかったなと思います。今日は加藤と別チームで声を掛けることができなかったので、その時だけベンチでは静かにしていました(笑)。（３打席目にも逆方向への長打を放った）逆方向に長打が出るようになったので、追い込まれてからでも楽に打席に入れるようになりました。（明日の最終日に向けて）最後まで気を抜かずに、代表に入れるように頑張っていきたいと思います。
最終日、１イニングをピシャリと抑えた加藤拓
合宿最終日の２２日は午前から小雨の中、紅白戦が行われた。２回表、紅組の２番手として加藤拓がマウンドへ。前日の登板は満足のいかない内容だったが、この日は本来の投球を披露。先頭打者を詰まらせて右飛に打ち取り、簡単に１死を奪う。特別ルールにより、１死一塁という状況から迎えた次打者は味方内野手の失策で出塁を許すが、加藤拓はここから本領を発揮。１５０キロに迫る自慢の力強い直球で２者連続三振を奪ってみせた。前日の不安を一蹴する、素晴らしい投球だった。また、４回表で試合終了となったため谷田に打席は回ってこなかった。
その後、首脳陣の選考を経て行われたメンバー発表の記者会見で、全日本監督を務める善波監督から代表２４名が発表。慶大から選考合宿に参加した加藤拓、谷田の両名が選出された。この日１イニングを完璧にまとめた加藤拓は、抑え候補として名前が挙げられた。「ゲームを締めていく、まとめていく」（善波監督）役割を任せられそうだ。パワフルな外国人打者をねじ伏せる投球に注目が集まる。一方、谷田は逆方向への長打を２本放つなど、鋭いスイングを首脳陣にアピール。「打者陣はしっかり振れていること」（善波監督）を選考基準とされた中で、それを見事体現する形に。JAPANの中軸として、谷田のバットに大きな期待が寄せられる。
代表チームは日本でのオープン戦、米国遠征を経て７月１１日からオランダで行われる第２７回ハーレム・ベースボールウィークに臨む。善波監督は「ハーレムで１００％勝つ」と力強く宣言。日の丸を背負う２人の〝若き血〟が、勝利のために世界の舞台で躍動する。
（記事 角谷明香 山内貴矢）
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